村の切り札
またポイントが増えた!
今は26pだ!
嬉しい。
ムフってなってしまった。
そして、今日は調子良く書けた。
いい感じだ。
ありがとう!
砲撃は続いている。
花音の言葉をそのまま聞いていると、村の建物は穴だらけらしい。
村人が右往左往と走り回っているのだと。
それは逃げている者が半分……。
銃を手にしている者が半分……国防警察軍の馬車を狙って撃っているのだそうだ。
そして、花音の砲撃指示はその国防警察軍の支援を目的としていて、それは成功している……ここまでは。
「馬車が村に突入します」
花音が俺の顔を見た。
国防警察軍の兵士が村にバラけてしまい火砲支援も難しく為ったのだろう。
もっともこの戦車の主砲は3.7cm,kwkなので鉄鋼弾だ、重い鉄の塊の砲弾を飛ばす事しか出来ないのだが。
せいぜい建物に穴を空けるくらいのモノだ。
的の小さい人には、そうそう当たるもんじゃない。
15cm,sig33重歩兵砲クラスの大口径の流弾なら建物ごとドカンといけるのだが……。
残念ながら3.7cmの砲弾では火薬を詰めた流弾でも流石に小さ過ぎて意味が無い。
そんなものが有るのかも怪しい。
俺も……ライターの意思だが見た事がないそうだ。
そんなわけで、今までの砲撃も牽制レベルのものだったのだが。
それでも意味が無いわけではない。
撃たれた方は恐ろしくて震え上がるし……何よりも撃つ方は安全な場所に居られる。
今はこちらにはハンデが多すぎた……子供達をハンデとは言いたくは無いが。
それが弱点で有るのは明らかだ。
「どうするかな……」
少し考えて。
「暫くは……様子見かな?」
だが、そうも言っていられない状況に成りそうだ。
「変な戦車が出てきた!」
花音が叫ぶ。
「ベレー帽を被ったアヒルさん見たいな形の戦車だ……目玉も描いてある……チョッとかわいいヤツ」
「ルノーFTか?」
右手にルガーp08拳銃を、左手にはライター握りながらに叫ぶ。
二人の専門家の知識を借りねばいけない場面だろうからだ。
「良くわからないけど……大砲? 丸い大きな筒が二本見える」
「その太い方は、アヒルの胸の辺りか?」
「そうそう! 頭のクチバシ見たいなヤツの方が細い感じ」
「シャールb1か!」
ルノーFTなら軽戦車で、しかも第一次大戦の時代だから38(t)依りも旧くて弱い……だが、シャールb1なら同年代だが向こうは重戦車だ、勝てない。
今でいえば盗賊達のt-34依りもマシだろうが……それでも固すぎるのだ。
砲の威力が弱いのと速度が遅いのが救いだが……。
『その戦車……私のかもしれない』
p08の意識、小次郎が出てきた。
『もしそうなら、bisの方だ……改良型で砲もエンジンも少しばかりパワーアップしている』
「その戦車に、村長さんが乗り込んだよ」
花音が自分の後頭部を手でパタパタ。
「アヒル戦車のここから入っていった」
村長が乗り込んだのなら、おそらくその一台だけだろうと思われるのだが……。
他にも有る可能性は見過ごせない。
「その戦車に一発、お見舞してやれ」
念話のオープンチャンネルだ。
有るのなら炙り出すだけだ。
戦車が撃たれれば、喩え撃破はされなくても残りの持っている戦車を総動員するだろう。
ましてや、村長の乗った戦車が撃たれたのだ。
すぐにバルタの返事も帰ってきた。
「花音ちゃんお願い」
そして、砲撃音。
「当たったけど……平気な顔してる」
花音の情けない声。
「そうだろうな……やっぱり固すぎるか」
呟いて。
「マンセル、HEAT弾は……無いよな?」
それはノイマン効果を利用した成形炸薬弾の事、物理での攻撃ではなく科学の攻撃方法を利用したモノ……ファウストパトローネ30と同じ原理の大砲版だ。
……有ればt-34の時に出して居るだろうけど。
「そんなの有るわけ無いよ、3.7cm砲だぜ」
マンセルはそもそも無いと言っているのだろうが。
「その砲専用のアタッチメント式のが有るんだよ」
戦車砲弾型は7.5cmからの筈だ。
あれは、ある程度の太さが必要なのと、回転をさせてはイケナイという制限が有る為に滑腔砲……砲内にライフリングが刻んで無い物でないと撃てない。
つまりは殆どの砲では撃てないのだ。
口径が合えば無理矢理に撃つ事は出来るのだが、その場合は飛距離が出ないのと当たっても回転していてはノイマン効果は期待できずに火薬の少ない流弾の軽量版の様な感じになる。
つまりは撃っても無意味だ。
アタッチメント式は外付けなので回転は掛からない、それが第二次世界大戦の丁度半ば頃に出てきた簡易的なモノだ。
「そうなのか? 今度……探しておくよ」
半信半疑なのか言葉を濁すマンセル。
いや……今、無い物を言われてもとそう思ったのかもしれない。
確かにその通りだが……。
「なら……仕方無い」
乾いた唾を飲み込み。
「至近距離で横か背面なら、もしかすれば装甲を抜けるかも知れない……ギリギリだが、やるしかないか……」
花音は未だに他の戦車の事は言わない……それはもう無いとそういう事だろう。
「それって……近付けって事か?」
「そうだな」
一対一での近距離戦闘だ。
「向こうの砲は……」
言いたい事はわかる、だから先に言う。
「上の砲も下の砲も一発でも食らえばアウトだ」
「無茶苦茶だな……」
「良いじゃん、やっつけてやろうぜ」
エレンが銃を叩いて言った。
それに頷いたアンナとネーヴ、三人が戦車の背中に手を掛けた。
「いや、三人は残れ」
それをせいして。
「何でよ、まだ下手だけど私達だって戦えるよ」
ブー垂れて。
戦えるの意味をわかっているのだろうか?
「わかっている、ここで仕事が有るんだよ」
三姉妹にはそう言って宥めて。
今度は花音とヴィーゼに向かい。
「ここで町の様子を観察して、それを俺達に教えてくれ」
「教えるだけ?」
「そうだ、それがとても大事なんだ」
頷いて。
「戦車は視界が悪い、それが村の中だと建物が邪魔をして余計に見えなくなる、見えない敵の位置を正確に知りたいんだ」
居ないと決めて掛かった他の戦車がもしもと、それも有る。
「わかった……やる」
花音とヴィーゼが同時に答えた。
そして、今度はエルだ。
「エルの通信の能力は受信よりも送信の方が楽なんだろう?」
それに頷くエル。
「なら、ここに残って送信を頼む」
もう一度、頷いたエルを確認して。
三姉妹に向き直る。
「そういうわけで、三人にはここで皆の護衛を頼みたい」
「わかった」
素直に頷いてくれた三姉妹。
護衛って響きが良かったらしい、少し誇らしげだ。
本当はイナとエノも置いていきたいのだが……今回はギリギリに成りそうだ。
俺が指揮に専念しないと、ミスれば総てが終る。
勝てると信じて連れていくしかない。
「よし! 作戦開始だ」
戦車に飛び乗り。
「みんなを助けるのを手伝ってくれた国防警察軍を、今度は俺達が助けてやろう」
「うん!」
子供達が元気に返事を返してきた。
まあ、ここに居れば安全だろうとの思惑もあるし。
個人的には人を売り買いする奴等が許せないと言うのも有る。
それに、俺に悪意も向けた。
罠を仕掛けて殺そうとしたようだしな、そのお返しはキッチリと返してもらおうじゃないか。
戦車は一路、村の中心を目指す。
標的はもちろんシャールb1,bis重戦車だ。
まずは気付かれずにゆっくりと接近だ。
「花音、敵戦車にバレ無いルートを探してくれ」
「うんとね……町の真ん中でじっとしている見たい、最初に馬車を置いてたとこ」
「動いてないのか?」
「うん、移動はしないでたまに撃っているって感じ……その後ろに銃を構えた人達が隠れてる」
「成る程、トーチカ代わりか」
「でも国防警察軍の人達……大丈夫かな? そんなに沢山いなかったよ」
花音がそう言っているって事は武装している村人は、その人数で明らかに上回っているのか。
「大丈夫だ、アンならもう援軍を呼んでいる筈だ」
多少は抜けた所も有るが、あの若さで兵士達の信頼も勝ち得ている、それが身分の差だけでは無い筈だ。
戦車を保持していた盗賊と繋がっているとわかった時点で増員は考えて居たろうから。
ましてやその戦車を用立てたその村に行くのだ、無策では要られる筈も無いだろうしな。
だが、その増員も歩兵どまりだろう事は想像がつく。
戦車の一台も寄越せれば良いのだが。
そもそも国防警察軍は戦車を持っているのかも怪しい。
機動車輌が有っても装甲車か移動の為だけの車か……。
所詮は警察だ軍とは付くが、本物の軍隊じゃない。
やはり、シャールb1,bisは俺達が相手をしなければいけないのだろう……ソコは、確定か?
乾いた唾を飲み込んで……覚悟を決めるしかない。
15cm,sig33重歩兵砲
大戦中のドイツの歩兵砲。
火力支援の大口径の流弾を4.5km先にまで撃ち込める野砲。
流弾とは普通の弾、鉄の塊のだけの鉄鋼弾とは違いその中の火薬を詰めたモノだ。
物理的な重さと硬さは減るが、それを火薬の爆発で補う形。
火薬が有るので着弾の攻撃範囲が広くなる。
広く浅くが流弾なのだ。
戦車の装甲を撃つには向かないが、軟目標……詰まりはバラバラと居る歩兵には絶大な脅威となる。
ただし、弾も砲自体も重くて動かし難いので固定砲……もしくは戦車に積んでの自走砲として使われた。




