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ファウストパトローネ  作者: 喜右衛門
七章 異世界の真実
287/317

エルフの意思

696ポイントだ。

上がってる!

応援ありがとう。


まだまだ続くよ!

明日もヨロシク!!

ありがとう。


 t-34が放った砲弾は、旋回途中のシャーマンの横っ腹に突き刺さった。

 無理矢理動きを止められた戦車から、ワラワラと三人の兵士が飛び出してくる。

 M4シャーマン中戦車の乗員は5名。

 残りの2人は中で気絶したか、それとも弾の当たった衝撃で跳んだ中の部品に殺されたか?


 出て来たあの中にエルフは居るのだろうか?

 ここからではそれも判別出来そうにないな……と、双眼鏡を握る。


 ほぼ同時に、別のシャーマンに穴が空いた。

 t-34が従えていた4号の7.5cm弾。

 そちらは脱出する間も与えずに火だるまになっている。

 その他の敵戦車も狙われている事を理解した様に逃げ惑い始めた。

 繋がっている事によるエルフ軍の悪い癖が出た様だ。

 不利な状況で一人でも逃げようと意識するとそれが皆に電波する。

 反撃をする者が1人でも居れば、逃げる時間も稼げたのかも知れないが、今は固まって同じ動きだ……狙ってくれと言わんばかりの動き。


 俺はキューポラから抜け出して、戦車のリアのエンジンフードの上に立ち、後方から来るペトラに合図を送る。

 真横に着けろ、と。

 

 ルノーは加速を初めて、38(t)と等速で並んだ。

 俺は思いっ切り良く、勢いを着けて飛び移った。

 着地はルノーの背中、砲塔の後ろ。

 ハッチを開けて、ヴィーゼを通り越してペトラに叫ぶ。

 「フル加速だ、あの中に突っ込め」

 指示した先は、敵の戦車の集団の中だ。

 

 頷いたペトラは右足を目一杯に踏み込んだ。

 俺はルノーの背中にしがみついて前方を覗き込む。

 右往左往するシャーマン戦車にt-34と4号の砲弾が降注ぐ。

 あまりに不規則な動きで狙いは着け難い様だ。

 外す弾も掠めるだけの弾も、もちろんマトモに当たる弾も有る。

 そして、俺が見ているのはそんな戦車では無く、頭を抱えて蹲る1人の兵士。

 逃げ出した戦車兵の中に居たエルフだ。


 「ペトラn2oを使え、左足のスイッチを踏み込め」

 頷いたと同時に車体の前を持ち上げるかのように加速した。

 後方は履帯が蹴り上げる土と草が舞い上がる。


 俺はエンジンの音に耳を済ませてタイミングをはかりつつ、目線はエルフに留めたまま、一気に近付いた。

 そんな俺達に気付いたエルフ兵が逃げようと立ち上がる。

 必死の形相だ。

 それそうだろう、戦車がもうスピードで迫れば恐ろしくない筈がない。

 その上に、頭の上や側に攻撃されている砲弾が掠める様にして突き刺さるのだから。


 俺はペトラに微妙な方向の指示を何度も出して、戦車の進路を修正させた。

 そして、エルフ兵の恐怖の眼に俺達が映ったのが見えたその瞬間に叫ぶ。

 「右のレバーを引いて……両足でブレーキを踏み込め!」


 ミシリと車体が軋み、グイっと右に曲がり始めたと同時に履帯がロックして、戦車は滑り始めた。

 ……味方の撃った砲弾の白い筋が見えるようだ……。

 華麗なアイススケートの様に流れる車体。

 ……視線の端では土が爆散している……。

 そして滑りながら回転し、お尻を振りだして真横に成り。

 ……目はスローモーションの様に捉えているが耳はリアルに爆発音を捉えている……。

 その姿勢のまま安定してまだ滑る。

 ……エルフ兵の悲鳴迄もが耳を裂く……。

 最後はエルフ兵の真横で、車体を波打たせる様にして停まった。

 

 「ゴーレム! ソイツを捕まえて持ち上げろ」

 声で指示を出す必要も無いのだが、戦車の激しい挙動に耐える為に目一杯の力でしがみついていた俺は思わず声が出る。

 戦車の後ろエンジンフード上、俺のすぐ後ろに投げ捨てる様に転がされたエルフ兵を押さえ込んで。

 もう一度ペトラに叫ぶ。

 「フル加速だ!」

 

 回転数が落ちて、チリチリカラカラと音を立てていたエンジンが再び唸り出す。

 「そのままマンセルの所まで走れ」

 エルフ兵が暴れない様に銃を突き付けながら。

 

 

 38(t)の横で停まったルノー。

 その背中にはエルフそのモノと見立てた男が左肩を押さえて踞っている。

 左肩はゴーレムに無理矢理引き揚げられた時に脱臼でもしたのだろう。

 そして、俺がコイツをエルフだと思ったのは簡単な理由だ。

 コイツだけが逃げしなに、鉄帽を投げ棄てたのだ。

 エルフ紋で縛られる奴隷なら有り得ない行動だ。

 それが無ければ敵に情報が敵に漏れると、わざわざ魔法陣を描き込んで命令で被る様に強制しているのだ。

 それを自らの意思で覆すのは無理な筈だ。

 

 俺は銃を向けながら、仁王立ちでエルフに冷たく声を投げる。

 「俺達は敵ではないぞ」

 この場でも何人も殺して、今も銃を突き付けている俺がそれを言う。

 38(t)からはマンセルが銃を構えてコチラを向いている。

 戦車の下からは三姉妹がやはり銃を構えている。

 ヴィーゼは俺の背後で槍を手にして居た。

 そんな中で、もう一度言葉を繋げる。

 「もうロンバルディアは国として機能はしていない……俺達も元ロンバルディア軍だ」


 そんな俺を下からの覗き込むエルフ。

 目は鋭く敵意が見える。

 

 「この先に用が有るだけだ」

 その言葉に目を細めた蹲る男。

 「大陸間弾道魔法陣にだろう……」

 小さく呻いた。

 視線は動かさず瞬きもしない。

 このエルフは喋れる様だ、言語を持たない者も多いと聞いていたので少し驚いた。

 だが、それなら話は早いと続ける。

 「そうだ、それを動かそうとする者が居るので……」

 ニコリと笑みを顔の下半分だけでつくる。

 「それを止めに来た」


 「嘘を着け……お前達も仲間なのだろう」

 辺りを探る視線を振りながら。

 「赤い車のジジイ……元国王か? お前と話をしているイメージを受け取ったぞ」

 

 さっきのクリスティナの……か。

 そうか、元国王と俺が一緒に居るところも見ていたのだから、それも筒抜けに飛ばしてしまったか。


 俺は肩を竦めて。

 「意見の違いが出ただけだ、元国王はそれを撃つ……俺は止める、それだけだ」

 

 エルフは尚も何かを探していた。

 たぶん探しモノはクリスティナだろう。


 「マンセル、クリスティナのヘルメットを外してくれ」

 一瞬、戸惑った様だが。

 「ハイよ」

 そう返事を返して戦車に潜り込んだ。


 そして、間の前の男の形相が変わる。

 俺自身はクリスティナには酷い事はしていないと自信が有る。

 だが、俺の処に来る迄は何をどうされたかはわからない。

 まだ5才だ、そう酷い扱いはされて居ないだろう……物心着いてからだとしても2年か3年の事の筈だ。

 他にも居るエルフは……とてもではないがヘルメットを外す様には言えない程の事をされているのは知っていた。

 だからクリスティナなのだが……。


 「なるほど……」

 俺をチラリと見たエルフ。

 「同胞に良くはしてくれて居たのか……」

 だが、それでも目には敵意が込められている。

 「だが、お前はエルフでは無い」

 俺を指差して。

 「エルフはこの大陸の最も古い種だ、そして世界でも際優位な種でもある、その証拠が総てのエルフが1つに成れる能力だ」

 ギリリと歯を食い縛り。

 「お前らの様な劣等種ではないのだ……それを、それなのに、敬い崇め無ければいけない我々に牙を向けた……野良犬の様に」


 「だからエルフ以外は躾が必要……ってか?」

 エルフの話の途中だが、どうにも我慢が切れた俺は吐き捨てた。


 「そうだ、我々が導き世界の秩序を取り戻すのだ」

 頷いて。

 「そして、貴様らの蛮行の償いも同時にされなければいけない……罪は消えないがそれを代々と受け継いで未来永劫償い続けるのだ」

 目を瞑り、自分に酔い始めたエルフ。

 「それが劣等種で有る貴様らの唯一の救いの道だ」


 俺は溜め息を吐き出して。

 そして、目の前の男を蹴飛ばした。

 

 揉んどり打って戦車の背から転げ落ちたエルフ。

 地面に這いつくばる。

 その転がった男の膝裏を銃で撃ち抜いてやった。

 

 「これで動けないだろう? 優勢種ならその運で生き延びて見せろ」

 

 俺は体を反転させて、ヴィーゼにマイクを貰う。

 「さあ……続きだ」

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