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ファウストパトローネ  作者: 喜右衛門
七章 異世界の真実
281/317

トンネルの中の迎撃

682ポイントだ!

今日も上がってる。

みんな応援ありがとう。


やっぱりポイントが上がると嬉しい。

明日も頑張るよ。

みんな、またあした。


 「弾幕を張れ、狭いトンネルの中だ上も下も隙間なく撃ちまくれ」

 戦車の上を跳び跳ねるラプトルだ、対処は低空飛行をしている攻撃機となじだ。


 俺はハンドマイクで叫んだ。

 ラプトルの叫びと銃撃音で無線越しでも聞こえているのかが心配に為る程に、トンネルの中は音が響く。

 「弾を切れさせるな、銃が過熱して使えないなら予備を握れ」


 俺もルノーft-17(改)のフロントハッチを全開に開いてmp-40を撃ちまくった。

 ラプトルも3突や4号が不規則に並び障害物となり、狭いトンネルの通路をもっと狭くしている、それは液体ではないラプトルにはホースの先を摘まんで勢いが強く為るなんて事は無い。

 狭い所に殺到して、後ろからの勢いに押されて前からも後ろからも攻撃されている、そんな感じに成っている筈。

 弾が有る限り圧倒的にこちらが優位だ。


 それでもコチラにも弱点は有る。

 後方部隊のトレーラーやトラックだ。

 ここに取り付かれると、不用意に銃が撃てなく為る。

 柔らかく薄いエアストリームのキャンピングトレーラー等は簡単に穴だらけだ。

 だから取りこぼしは許されない。

 「一匹も通すな! 確実に仕留めろ」

 何が有っても越えさせられ無い最終防衛ラインが、コチラには存在していた。

 

 「誰か、ワシの戦車を動かしてくれ」

 無線からマンセルの声。

 先頭に居た筈だが、そこまでラプトルが行ったのか?

 見逃した筈は無いのだが……。

 と、続けてマンセル。

 「弾を造る、ニーナとオルガはローザのトラックに来てくれ」

 2人のスクーターで配らせるのか。


 その時、クリスティナの小さな顔がハッチ越しに俺を覗いた。

 「弾はクルツ弾ですか? 9mmですか?」


 驚いた俺は、少し間の抜けた顔に成っただろう。

 「9mmだ……」


 クリスティナは頷いて、ごそごそと抱えて居たバックからマガジンを出して寄越した。

 そして、去ろうとするその背中に俺は声を掛ける。

 「どうしてここに? まさかムーズも居るのか?」


 振り向いたクリスティナは首を振って。

 「ムーズ様は来ていません……私は、役に立てるのなら行きたいってムーズ様に相談したら、もう自由だって言われたので来ました」

 

 「そんな事は考えないでムーズと一緒に居れば良かったのに」

 

 「ムーズ様と居れば楽しかったのです」

 頷いたクリスティナ。

 「だから思ったんです、こんな楽しい場所をくれたファウスト様には絶対に恩を返さないといけないと……だから来ました」

 

 「いや、恩なんて……」

 俺は話を続けようとしたのだが。


 「誰か、弾を頂戴!」

 何処かで大きな声がする。


 「済みません、仕事です」

 クリスティナは俺に頭を下げて、そのまま低い姿勢で走り去って行った。

 小さな体に大きな布のバックを肩から下げて腹に抱える様にしている、とても大事な物の様にして。



 どれくらいの時間が経ったのだろうか。

 俺の足元、戦車の中の床には空薬莢と空のマガジンが大量に転がっていた。


 「最後の一匹です」

 無線からはバルタの声。


 「見えてる」

 コチラはたぶん、夜目の効く獣人のお姉さんの誰かだろう。

 同時に銃声が止んだ。

 

 「終わったの?」

 誰だかはわかっていないが、女性の声なのでエルフか獣人かだ。

 

 「その様だな」

 その誰かはわからない者に向けて返事を返す俺。

 

 無線の場合は最初に名乗りを上げてくれないと人の判別が難しいな……と、そんなどうでも良い事が頭をよぎる。

 緊張で疲れたのだろう。


 「先を急ごう……補給は移動しながらだ」

 何処かで休憩もしなければいけないが、ここは死臭が酷すぎる。

 ラプトルの死体で山が出来る程だ。


 何処か安全な場所を探さねば。

 だが、3日も掛かるトンネルだそんな場所が有るのかも怪しいが。


 

 移動を再開して数時間。

 見える景色には何の変化も無い……俺には暗くて見えるモノも制限されるが。

 そして無線から聞こえる、皆の口数も目に見えて減ってきた。

 そろそろ疲労の限界か……。


 「ここで停まろう……休息だ」

 ここまでの事を考えると……何処まで行っても同じだろう。

 「キャンプを張る」


 無線を使わなくても、ホウッと皆の溜め息が聞こえるようだ。


 「戦車は前後を固めろ、警戒は怠るな」

 軍曹の叫びが、無線から聞こえた。

 もう任せても良さそうだと、俺は戦車から降りてクロエのトレーラーに向かった。


 そのトレーラーには人だかりが出来ている。

 「並んで……怪我の人からよ」

 叫んで居るのはコリン。

 色の着いた札を順番に手渡していた。

 前に見た怪我の大小を判断する為の札だ。

 今回は赤色の札は無い、それは重傷者は居ないという事なのだろう。


 俺はホッとして、静に息を吐く。

 暗闇で銃を撃って、味方に誤射は無かったのだ。

 それをする確率は、見えていない俺が一番に大きかったのだが、それも含めての安堵だった。

 

 クロエやコリンに一声かけようと思っていたのだが、それも必要無さそうだと、今度はローザのトラックに向かう。


 その猫のトラックは、マンセルを筆頭にローザもレオも大忙しの様だ。

 永遠と銃弾を造っている。

 出来た弾をマガジンに詰めているのはクリスティナだ。

 単純作業を延々と繰り返している。

 

 「材料は足りているのか?」

 マンセルに一声を掛ける。


 「鉄は使えない砲弾が有りますし……火薬は、前に戦車長が拾ったニトロがたっぷり有りますからね、問題ないですよ」

 マンセルは手を止める事なく返してきた。


 「問題は有るよ」

 そこに声を挟んだのはローザ。

 「疲れた……」

 俺と話す事を口実にか、トラックを降りようとするのだがそれをマンセルに止められていた。

 「サボるな」

 一喝する声。


 肩を竦めたローザは項垂れて作業に戻る。

 そしてもう1人ビクリと肩を震わせたのはクリスティナ。

 マガジンに詰める弾の速さが上がった。


 「クリスティナ、それはもういいから別の仕事を頼まれてくれないか」

 マンセルがクリスティナに声を掛ける。

 

 なにと、そちらに顔を向ける。


 「今から1時間後に飯を持って来てくれ」

 それに頷いたクリスティナは、また弾を詰める作業に戻るとした。

 「それまでは……戦車長の手伝いを頼む」

 その作業を止めさせて。

 俺の顔を見たマンセル。


 俺は、クリスティナに休みをやりたいのだと理解した。

 わざと仕事だと言ったのは、そう言わないとクリスティナは手を止めないのだろう。

 ここに居る者の中で一番に年下だ。

 自分に出来る事も少ないとわかっていて、そして奴隷時代の癖として何かをしないとと脅迫観念をも持っている。

 これは最初の頃のバルタと同じだ。

 役に立たなければ棄てられると、そんな恐怖も有るのだろう。


 俺はクリスティナを手招きして、持ち歩いて居た省電力無線を手渡した。

 「通信士を頼む」

 戦車のエンジンも切っている今は、そんなにウルサくも無い。

 皆の喋り声は無線を使わなくても聞こえるのだが、クリスティナの仕事としてそれをさせる事にした。

 

 そして、目に着いた38(t)。

 マンセルは誰に操縦を任せたのだろうかと、少しの興味で運転席を覗いたら。

 そこにはウサ耳のララがグッタリと突っ伏している。

 38(t)はクラッチは重いしギアも固い。

 ウサギの獣人でそんなに力も無さそうだから、普通の娘にはキツイだろう。

 「ララ、俺と変わるか?」

 優しく声を掛ける。

 「ヴィーゼの戦車はそんなに疲れないぞ」

 ララは重い頭を上げて、苦笑いで頷いた。


 俺はララを連れてルノーft-17(改)の所に向かう。

 その戦車の運転席にはペトラが乗っていた。

 ヴィーゼに操縦の仕方を聞いている。

 

 「それを踏めばズドーンって行って……これはギューンとなるの」

 わけのわからない説明を頷いて聞いているペトラ。


 「何してんだ?」

 俺は2人に声を掛けた。


 「ペトラが運転するって、だから教えてた」

 ヴィーゼが笑って答える。


 「成る程……」

 頷いて、ペトラを見て。

 「で……出来そうか?」

 それに苦笑いのペトラ。

 俺は言葉を変えてもう一度聞く。

 「理解は出来たか?」

 ヴィーゼの言う事がわかったのかと聞いたのだが。

 やはりかペトラは首を振った。


 俺は肩を竦めて。

 「なら、俺が教えてやる」

 

 そしてララに顔を向けて。

 「ララは……またアレだな」

 ケッテンクラートを指差した。

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