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ファウストパトローネ  作者: 喜右衛門
七章 異世界の真実
275/317

ダンジョンでのお宝

666ポイント。

今日はそのままだ。


そんなに毎日上がらないよね。


うん。

あした頑張ろう。

またあした。


 ホテルの前にまで行くと、ローザがコチラに気付いたのか歩いてくる。

 ダンジョンの中なのにスッカリ軽装で丸腰だ。

 

 ダンジョンで魔物が転生される条件は、ダンジョン転生で大量に溜まった魔素や、人や魔物の死で溜まる魔素のバランスが崩れた時だ。

 もうこのダンジョンでは、その魔素を使い切ってしまっているのだろう。

 ここで転生されたラプトルは、死ぬ事も無く外に出ていってしまったのだから、それらの魔素が循環する事も無い。

 ドワーフの里がそれを証明している、あそこも元はダンジョンだ。


 そのわりにはマンセルはダンジョンを嫌うのが、何故か不思議でなら無い。

 ここはもう魔素の揺らぎは起きないと理解出来そうなモノなのに。

 理屈では恐怖を上書きするのは難しいのか。


 「生きていたんだ」

 ローザがそう俺に問い掛けるのだが……もうその件は散々やった。

 俺は簡単に答えて、ローザを手招きして車に載せる。


 「何処かに行くのか?」

 それにも肩を竦めて、それを答えにした。

 

 

 何時ものスーパーに着いて、食料の調達。

 適当に子供達に選ばせて、それを土塊ゴーレムが運ぶ。

 その土塊ゴーレムは、もうケッテンクラートの装備品の様に後ろに2体並んで座っていたヤツだ。

 それを端で見ていた俺は。

 「後は任せた、トラックが一杯に為ったらキャンプまで運んでくれ」


 「何処か行くの?」

 エルが俺に聞いてくる。

 今は落ち着いて居るのはエルだけだった。

 何時ものメンバーはお菓子を集めるので夢中で、初めての者達は店そのものに興奮していた。

 店は、さしずめダンジョンの宝箱みたいなものか。


 「チョッとな……探し物だ」

 エルにはそう告げて、ローザを引っ張りまた車で移動。

 エルは行ってらっしゃいと、手を振っていた。


 

 小さな交番を見付けて、中で地図を見る。

 「ここに何か有るのか?」

 ローザは不思議そうにしているが。

 「いや、探し物は見付かった」

 そう言って、地図の一点を指差した。

 

 昭和無線電気店

 

 わかりやすいそのまんまの名前だ。

 地図で見るにそんなに大きくは無いが、近くに電気屋が幾つか並んでいる競合して潰れていないのは売っているモノが微妙に違うのだろう。

 家電や部品や……この年代ならパソコン部品とかはどうなのだろうか?

 ここは1997年の筈だ。

 そして、その頃はまだ携帯の電波のエリアが狭くて繋がらない所も多かった筈。

 特にスキー場とか田舎の山とかは圏外で、たとえ繋がっても通信料金が高くてタダで話せる無線機が流行ったと思ったが……それはもう少し昔の事だったかも知れない、少しあやふやだが……でも無線機は、特に省電力無線は何処でも売っていた筈だ。


 「よし行こう」

 首を傾げているローザを引っ張り、また車に戻る。



 そして辿り着いた店は、完全に無線の専門店だった。

 ローザを引き連れて中に入り、店の一番に目立つ場所に置いてある小さな無線機を2つ手に取る。

 ケンウッドの省電力無線機……幾つも色が有り、横にズラッと並んでいるモノの赤色と黄色。


 適当にスイッチを入れて周波数を合わせる。


 「聴こえるか?」

 片方、赤色をローザに渡して無線を飛ばした。


 驚いているローザはそのまま声を上げた。

 「聴こえる、聴こえる」


 「これは一方通行の無線機で、話す時はココを握るんだ」

 ローザの持つ方の無線機の横を指差した。


 「成る程……」

 ローザ本人の声。

 「成る程……」

 コチラは無線機から聴こえるローザの声。

 そして俺を見て興奮気味に。

 「これは凄いな、こんなに小さいのに……」

 手の中で転がして、上や下から覗き込んでいた。


 「省電力無線だから、だいたい300m位の距離で話せる」

 少し考えて。

 ダンジョンの外だと2・3kmは届くんじゃあ無いかな?」

 電波は鉄やコンクリートで遮断されるが……コチラの異世界のフィールドではそれは無いので距離も伸びる筈だ。


 「でだ……」

 俺はローザを手招きして、奥の少しゴツイ見た目のを指差す。

 「コイツは5w型の無線機で距離は10kmは届くと思う」

 あくまでもダンジョンの外での話だ。

 「距離にすればそれで十分なのだが……戦車の中からだと距離が極端に短くなるんだ」

 俺はその無線機を手に、アンテナの根元のネジを外して。

 「このアンテナを線で繋げて戦車の外に出したい……序に長さも変えられるならもっと長くにだが……出来そうか?」


 俺の手から無線機とその外したアンテナを取り、目を細めてあれやこれやと見ながら考え出すローザ。

 「マンセルじいちゃんにも相談してみる」

 何か出来そうな雰囲気も醸し出しているが、今一確信は持てないようだ。


 「駄目なら、戦車長が体事を外に出せばそれでも使えるのだろうが……戦術的には通信士に任せたい」

 俺はその店に有る通信機を幾つか抱えて車に運んだ。

 

 それを何度か繰り返していると。

 「これは?」

 と、別体の長いアンテナを指差しているが……それはもっと高出力のヤツのものだ。

 使えるのだろうか?

 「試しにそれも持っていくか?」

 そこにはハンドマイクも置いてある。

 それも纏めて大量に車に積み込んだ。


 「相談何だけど……」

 今度はローザが俺に。

 「この仕事の対価ではないんだけど……欲しいモノが有るんだ」


 「なんだ?」

 金はもう無いぞ。


 「うん、あのキッチンカーを見ていて思い付いたんだけど」

 ローザ少し考えて。

 「あれのキッチンの部分を工房にすれば移動工房が出来るんじゃあ無いかと」

 

 ウォークスルーのキッチンカーか?

 「狭いがそれで良いなら動くようにしてやるぞ……何処かに良さげなトラックでも有ればだが……」


 「アテは有るんだ」

 ローザは俺の手を引っ張り、車に乗って運転する。


 連れて来られた場所は……宅配専門の猫の運送屋。

 成る程……これか。

 幾つも停まっている緑のそれを見て。

 「どれか、希望は有るか?」

 俺のその問いにローザは迷わず指を差す。

 「これで」

 並んでいるトラックの中でそれを選ぶ理由は? と、乗り込んでみるとコラムミッションとシートの横にも、もう一本のギアが這えている。

 4wdのセレクトギアだ。


 エンジンを掛けようとキーを探すが、見付からなかった。

 「鍵がないな……」

 運送屋なので、事務所か何処かに鍵が有るんだろうけど、探すのは大変じゃあ無いかな……と、考えていると、横からローザがその鍵を差し出してきた。

 成る程……もう随分と前からこれに決めて準備をしていたようだ。

 後ろを見れば、荷物も積んでいない空だ。

 先に下ろして居たのだろうか?


 俺はエンジンを掛ける。

 ガラガラと車内に響く音。

 決して静かでは無いが、戦車よりは遥かにマシだ。

 「でも、コイツはディーゼルだぞ? 良いのか?」

 

 「それはキッチンカーでも同じでしょう?」


 「まあ、そうだが」

 そう言えば、ガス欠はしたことが無いな。


 「あれと同じようにタンクを増設するし……予備の燃料も積むから大丈夫」

 勢い込んでいるローザ。


 それでか……と、俺も納得した。

 

 「じゃあもう一度、さっきの店に戻りましょう」

 ローザは俺を運転席から引っ張り出して、クイックデリバリートラックから追い出された。

 もうこれ以上ゴチャゴチャ言われたくないって感じか。


 俺は自分のシュビムワーゲンに乗り込んで、先に走り出した。

 さっきに積んだ、後席の荷物が邪魔に感じる。

 トラックを動かすなら、そっちに積めば良かったと今更に思う。

 ローザも先に言ってくれれば良かったのに。

 

 

 そんなこんなで、ダンジョンの外の難民キャンプに戻った。

 もうスッカリ日もくれていたが、マンセルはまだ作業をしている。

 そのマンセルにローザは手に入れた通信機を見せていた。


 2人で何かを話している。

 と、ここで気になる事を思い出した。

 話し込む2人に尋ねる。

 「なあ……アンと花音を見掛けないが、何処だ?」


 ローザは少し驚いた顔で俺を見て。

 「元国王と一緒に行ったよ」

 少し首を捻る。

 「パトもその事は了解しているって言っていたのだけど……」

 

 侯爵の意識の中で……勇者召喚にアンを使うと言っていたが、それか?

 ……。

 「そもそも勇者召喚とはなんだ?」


 「何を藪から棒に……」

 マンセルが唸る。

 あまり良い顔はしていない。

 「それを知りたいなら、ヴェルダン伯爵に聞いた方が早いですよ」

 吐き捨てる様な言い様だ。

 あまり宜しくない事なのか?


 俺は慌ててヴェルダンのジジイの所に走った。

 どうも、嫌な予感がする。

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