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ファウストパトローネ  作者: 喜右衛門
七章 異世界の真実
250/317

奴隷紋の真実

602ポイントだ!

今日も上がってる!

応援ありがとう!


本当にうれしい。

ポイントは読んでくれてる証拠だもんね。

みんなありがとう。


明日もがんばる。

またあした!!


 町の住人である年老いた神父が、俺の奴隷で部下であるポリーナを指している。

 そして、その背後には、銃で脅されて無理矢理に手を上げさせられた住人達。

 

 そこは教会の中。

 屋根の一部や壁には砲撃で開けられた穴が所々に見え、そこから軽い雪がヒラヒラと教会内に迷い込んでくる。

 

 「ポリーナは確かに俺の奴隷だが……それは、ロンバルディアで生きる為には必要な事だ」

 その事に俺は納得しているわけでも無いが、それがロンバルディアの法だと言われれば従うしかない。

 元の世界にだって納得のいかない法律は有った。

 こちらのフェイク・エルフの国にだって有るだろう?

 「それに俺の奴隷は誰一人として、縛ってはいない……皆が自由意思だ」

 目線はポリーナの胸元へ。

 セーラー服の胸元を開けて、その奴隷紋を見せてやってもよいが……そこまでしてやる義理もないかとも思う。

 俺の流儀をエルフに示してやっても意味もない。

 「どんな命令にも従う、そんなロボットの様な人間は見るのも……側に居られるのも気持ち悪いだろう」

 言葉だけで十分だ。


 その見ていたポリーナが、自分でセーラー服の胸元を開いて、奴隷紋を見られる様にした。

 一瞬、驚いた。

 へー……そんな風に開くんだ!

 そんな所が外れるのか!

 何てのもそうだが……それ以上に、ワザワザ胸元を見せてやる事にだ。

 「別に見せんでも良いのに」

 そんな事を今までも強要されてきた筈だ。

 だから、俺の奴隷であるうちは遣りたく無い事は否定しても良いのだと言っておいたし、実際にクリスティナは戦場よりも屋敷のメイドを選んだ。

 「見せたところで、その違いがわかるもんでも無いだろう?」


 だが予想外の答えが、耳に飛び込んだ。

 「確かに……欠けているな」

 神父はポリーナの胸元をジッと見て呟いた。

 見た目はエロジジイにしか見えない姿だが。


 「欠けているとは……何が?」

 しかし、その言葉の意味の方が知りたい。

 奴隷紋を見て何かがわかるのか?


 「これは魔法紋として成立していない」

 神父はポリーナの左の乳房の上を指差している。

 そして、そのまま1人村人を呼んだ。

 「イワン、ここに来なさい」

 呼ばれたのは小さな男の子、見た目は俺の知っている耳の長い感じのそのままだ。

 「イワン、胸元を見せてやってくれ」

 言われた、男の子は自分のシャツのボタンを外して、魔法紋を見せる。

 神父はそれを指して。 

 「それは、エルフ紋でコレが有るから言葉のわからないエルフとも意思疏通が出来るのだが……ほぼ同じだろう?」


 俺はポリーナと男の子の魔法紋を見比べて見たのだが……小首を傾げるしか出来ない。

 「わからん」

 そんな知識はサッパリだ。

 「ポリーナのそれは、初めて会った時からそのままだ……本来ならソコにカードを当てて奴隷にするとかなんとかだが、俺にはそれは必要無いとそのままだ」

 懐からカードを出した。

 最初の獣人の子供達にはそもそもそんな魔法紋も無かった。

 バルタ達だが今も胸元にも体の何処にも、そんなモノは無い。

 確かあの時はと思い出す。

 アンは俺のカードで仮に所有権をとかなんとか言っていたが?


 その次の村娘達には魔法紋はもう胸元に有った。

 今度はカードで逆らえない奴隷にする様にと言われた……その時は冗談じゃあ無いと断ったが……?

 最近のポリーナ達も、同じ様にカードは当てていない。

 

 俺はカードを裏表と見る。

 奴隷紋はコチラに有るのか?


 「それも元はエルフ紋の筈」

 神父は俺のカードを指して。

 「エルフ紋は基本は繋がるという魔法なので、人でなくても構わない……それを見付けたのは人間でソコからヒントを得たのか……奴隷紋を造り出した」


 ふむ……と、もう一度カードを見る。


 「中佐、ここでしたか」

 そこに、教会の扉の音を大きく立てて少尉が入って来た。

 「コイツらが、敵ですか」

 町の住人に敵意を向けて睨んでいる。

 

 「ややこしいのが来た……」

 少尉には聞こえない様に小声で呟いた。

 俺の回りで、唯一のロンバルディアの人間だ。

 そして、俺の直接の部下でも無い。

 「捕虜の処遇を決める審議中だ……それが決まる迄は手を出すなよ」

 余計な事をしないようにと釘だけは刺しておく。


 そして神父に向き直り。

 「場所を変えよう、もう少し詳しく知りたい」

 奴隷紋の知識は、どうしても興味が有る。

 戦争の事の発端はそれに有るような気もする。

 

 ポリーナに目配せして、神父を教会から連れ出した。

 向かったのは、表に停めてあるトレーラーの中。

 そこには少尉も不用意には入って来ない。

 そして、エルとペトラも呼んだ。

 魔法紋の有り無しと、半エルフとの違いが知りたかったのだ。

 そこに何故かヴィーゼも着いて来たが、まあそれは構わない……ただ、変な格好なのは気にしない。

 気に入ってしまったのか、自分の背よりも長い銛を手に立てている。

 胸を張るそれは、何処ぞの原住民のそれの様だ。

 

 「私は邪魔かしら」

 最初から居たクロエが呟いたのだが、それには別に居ても構わないと告げる。

 が、そこで思い出した。

 クロエの村では奴隷紋の付け替えが出来る方法を見付けていたと。

 もしかすれば、クロエも奴隷紋の何かの知識を持っているのか?

 「クロエにも聞きたい事が有るので、居てくれ」

 もう一度、言い直す。

 


 「で、私に何が聞きたい」

 奥のソファーに座らせた、神父が口を開いた。


 「そもそもだ、奴隷紋とはなんだ?」


 「そんな事を人が聞くのか?」

 不思議そうに俺を見た。


 「正直に言えば、俺は奴隷には反対だ」

 この世界に無い、人権と言う言葉は使っても意味は無いのだろうから。

 「人種の違いも関係無く、普通に接したい」


 「貴族なのでしょう?」

 俺の紋章衣を指している。

 エルフでもそれはわかるのか。

 「身分制度も……場合に依っては雇用関係も奴隷紋と変わらないと思いますが?」

 

 「それらは、人と人との付き合いだ……お互いが納得出来る条件で初めて成立するものだ、無理矢理に押し付けるモノでも無いと思っている」


 「それは貴族様で、上から見ているからでしょう」

 嫌な物言いをするものだ。

 俺は顔をしかめるしかない。

 確かにそうかも知れない、大して才能の無い俺に、皆が着いて来ているのは俺が貴族だからかも知れないとは自覚はしていた。

 

 「それでも、ここでは貴族は関係が無い……まあ奴隷紋が有るのだから、今は所有物とは成っては居るが、それが無ければ自由だ」

 所有物で有る奴隷が逃げ出せば、たぶん俺にも罰が着くのだろう事も予想できる。

 それも、皆が俺から離れない理由でも有ると信じたい。

 損得勘定での事でも構わない。

 俺が貴族として何事も無ければ、また何処かの奴隷を引き取るかも知れない。

 そうなれば、今の自由な立場の仲間が増えると、そんな打算でも良いのだ。

 俺の周りの奴隷達は皆が自由に振る舞えている筈だ、唯一の例外は俺の仕事を手伝う事くらいか……。

 それが戦争で命を掛ける事なのだが。


 「ならば、その奴隷紋を消せば良かろうに」

 神父が呟いた言葉に俺は飛び付いた。

 「消せるのか?」


 俺の勢いに驚いた神父は。

 「魔法紋なのだから、描いたり消したりは自由だ」

 

 「なら、消してくれ」

 勢いは止まらない。


 「いや……描くのは簡単だが」

 しどろもどろに返事を返す。

 「消すのは少し……面倒では有る」


 「なんだ……消せないのか」

 俺の勢いは萎んでしまった。


 「描くのは私1人でも出来るのだが……消すにはもう1人……」

 溜め息と共に。

 「修道女が必要だ……」


 「修道女か……それは、さっきの教会には居たのか?」


 それには首を振る。

 「居たが……死んでしまった」


 顔をしかめて、大きく首を捻った俺。

 「しまった……あの中に居たのか」

 表で砲撃っていた誰か?

 それとも、機銃の誰か?

 たぶんだが、俺の指示で殺してしまったのだろう。

 仕方の無い事なのだろうが、今更ながらに悔やまれる。


 と、瞑った目を開けば……そこにクロエが居た。

 「修道女とは、何でも良いのか?」

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