表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ファウストパトローネ  作者: 喜右衛門
異世界の秘密
229/317

アンの仕事

512ポイントだ!

今日も上がった!

応援ありがとう。


あしたもがんばる。

またあした!!


 プレーシャの町の中央に仮設で仕立てた、アルロン大佐が率いる大部隊の司令部の中。

 その大佐は俺の顔を見て、指は隣に座るアンを指して聞く。

 この御嬢さんは誰だと……。

 さて、それにはどう答えようか。

 俺が連れているのは確かだが、俺の部隊の兵では無い。

 素直になんで居るのかはわからんと答えるべきか?

 実際に俺も理由がわからんのだし……。

 いや、アンの父親に守ってくれと預けられたのは確かだ。

 だが、それが戦場にまで連れて来なければいけない意味がわからん。

 そして、アンの父親の言うわけのわからん言葉。

 離縁は許さん?

 何時、結婚した?

 考えずにいた事……先送りにしていた問題を今考えろってか?


 「シャロン・アン……元? 国防警察軍の地方司令官……」

 取り敢えずの名前と肩書きを並べてみる。

 「だよな?」

 この確認はアン本人に聞いた。

 今の役職は俺も知らん。

 何時も暇そうにしているのだから……クビの可能性も有るのではと疑ってもいる。


 そのアンは椅子から立ち上がって。

 「国防警察軍の本省、総司令官付きの秘書官をさせて戴いておりますシャロン・アンと申します」

 深々と1礼。


 それを横で聞いていた俺は椅子から転げ落ちそうなのを辛うじて耐えた。

 なんだ、その大層な役職は?

 どっかのキャリアか?

 絶対に嘘だ!

 でまかせに違いない。

 そんな人間が、暇そうに俺の所にしょっちゅう遊びに来れる筈がない。

 そんな嘘を付いて……バレたらどうする?

 背中に流れる汗が止まらなくなった。


 「男爵の娘さんか」

 しかし、大佐は普通に受け入れた。

 バレないのか?


 「この度は、ファウスト中佐に御同行させて頂いてアルロン大佐に面会の機会を是非にと参りました」


 「私に?」


 「はい、総司令官より預かりました……」

 懐から2つの封筒を出して、大佐の前に出す。

 「コレを……お届けに参りました」


 「手紙?」

 だが、その封筒は厳重に封印されている。

 見た目だけでは無く、明らかに機密文書だ。

 

 本当に秘書官なのか?

 呆気に取られている俺を見る事も無く、大佐はその2つを手に取った。

 それは魔法が掛けられている様だ、微妙に光を纏っていた。


 大佐は表と裏を交互に確認して……その1通を開封した。

 中の文書を目で追っている。



 「成る程……」

 読み終えた大佐は、俺とアンを交互に見ていた。

 そして、その文書を机の上に置く。

 俺やアンや少尉にも見える様にだ。

 読めという事なのだろう。

 その間に、大佐はもう1通も開けていた。

 そちらも気になるが、先ずは目の前。 


 1枚の紙。

 冒頭の数行で文字は終わっている。

 その下には絵……机の上に置かれた地図と同じものが描かれている。

 だが、その指し示すものは視点が違った。

 机の上の地図はロンバルディアから見たこの辺り。

 差し出された紙には、エルフから見たこの辺りと為っている。

 そして、時間は今では無くて1週間後ぐらいの先だ。

 そう1目見ればわかるが、これはエルフの侵攻計画だった。

 

 今現在は、橋の向こうに集結しつつある軍勢。

 時間表示は二段に成っていて、上がそのままの日付と時間。

 下段は……数字が動いている。

 これも魔法なのだろう。

 カウントダウンだった。


 そして、侵攻ルートは……先に歩兵が橋を渡る、次に戦車だ。

 すぐに分散して、プレーシャを包囲。

 簡単では有るが、数で圧倒する様だ。

 そして2波目。

 歩兵が川を渡ると有る……これは水軍はどうするのだろうか?

 味方に着けている?

 それとも蹴散らす?

 移動手段は……アメリカ装備なら水陸両用車も持っていた筈。

 それとも上陸用船挺を用意したのか?

 その辺りの物はノルマンディーの何処かの1部でも転生させれば幾らでも手に入りそうだ。

 が、この作戦は準備に相当な日数が掛かると見たが……それが1週間後?

 その答えは、最終下段の最後のサインに有った。

 シャロン・コネリー総司令官、そして日付……これは俺達が王都を出る前日だ。

 次にムーアとクレイブと連名で……日付は2ヶ月前

 大佐がここに来てほぼ1ヶ月の筈。

 これはその日付よりも古いと為っている。

 

 俺は、その署名の部分を指差してアンを見た。


 「コネリーは父だ」

 それはわかる……総司令官と有るのだから。

 

 「ムーアとクレイブの二人は……兄だ」

 少しづつだが、想像が着いてきた。

 

 「二人の兄の役職は?」

 ここに書かれて居ないが……これに署名が有るのだから平の筈もない。


 しかし、その俺の問いには首を捻るアン。

 「ここ何年かは……顔も見ていない、何か仕事はしている様だが誰も知らないといとしか言わないし……」

 

 ……そうだろうな……。


 俺は、もう1枚の方の文書を読み込んでいる大佐に目を向けて。

 「質問をしても宜しいですか?」


 「なんだ?」

 その顔は険しい。

 俺に向けてでは無くて、文書に向けての様だが……。


 「この町の建物に、立ち入り禁止が多いようですが……なぜ?」


 「ここに入った時からトラップだらけだったからだ……まだ全てを解除出来てはいないのだ」

 やはりか……。

 「エルフに占領されて居たと為れば……地下都市は?」

 エルフは地下に住む事を好むと聞いた事が有るからだが……。

 それにも首を振る大佐。

 「全く入れん」

 険しい顔に怒りが滲んできた大佐。

 俺の聞きたい事も、そしてこの文書の持つ裏の意味も理解できている様だ。


 大佐は少尉とアンを交互に見て。

 「二人を信用していないわけでは無いのだが……済まないが、後ろを向いて居てくれ」

 そう言って、俺の前に手に持つ方も差し出した。

 二人には見せたく無いもの?

 この情報が危険な物?

 ……それを俺には見せるのか。

 仕方無いと目を落とす。


 今度は文字だけ。

 だが、そこには3ヶ月後の作戦が書かれていた。

 エルフがプレーシャを越えてロンバルディアの王都へと進軍。

 同時に、フェイク・エルフがヴァレーゼに集結させていた大部隊で進撃……俺達が取られた町だ。

 ロンバルディアの王都は、北東のエルフと北西のフェイク・エルフに挟まれる形に為るわけだ。

 今の王都にはその2面作戦に対応出来る軍事力は無い……その作戦が実行される時は大佐も死んで居るのだから。


 そう大佐は、エルフにここに誘導されたのだ。

 いや、エルフとの交渉の材料にされたと言った方がいいのか?

 ここに書かれているアンの兄二人、その仕事はスパイだ……それも2重スパイ。

 スパイと言っても、単身敵地に乗り込んで情報を得るだけでは無い。

 特に2重スパイは、敵地には入り込む事は少ない。

 そして、この世界ではエルフは相互通信の能力を持っている、そこに何もない人間が入り込んでもスグにバレるだけだろう。

 フェイク・エルフの方は見た目が明らかに違う……奴等は相互通信の能力は無いが、姿形が特徴的だ……耳が横に伸びて尖っている、身長も高くてやたらに細い。

 そこに混ざれば悪目立ちも良いところだ。

 では、情報をどうして得るかと言えば、敵の同じ様な2重スパイと取引をするのだ。

 国境か、それに近い町でだ。

 相手の欲しそうな情報を差し出して、こちらの欲しいと思う情報を受け取る。

 その時の材料次第では釣り合わない事も有るだろうが、それは次回に帳尻合わせだ。

 そして、この情報を手に入れる為に大佐は売られた?

 

 俺は頷いて、その文書をひっくり返して大佐に戻す。

 この話は出来ない。

 下手に話をして誰かがこれを広めれば……未来の作戦が変わる可能性が出てくる。

 情報はその鮮度と確証度合いが重要なのに、鮮度は元から古いときて、その上で確証度が下がれば……もはや役に立たない代物に為る。

 折角、大佐の命を掛け金にして手に入れた情報だ、有効に使わねば……大佐の丸損だ。

 

 そして、俺はもう1つの答えを見付けた気がした。

 アンが狙われた理由だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ