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ファウストパトローネ  作者: 喜右衛門
異世界の秘密
222/317

470ポイントだ。

増えてる。

もう諦めかけていたのに……良かった。


応援ありがとう。

みんなが居るから明日も頑張れる。


またあした!


 翌朝、日が昇ると同時に森に入った。

 舗装はされているが、整備はあまりされていない道だ。

 所々に穴が空いて、草も生えている。


 先頭は俺達。

 少尉達の補給部隊は後方から着いてくる。

 戦車や自走砲も有るのだが……俺達の装備を見て、そして俺の階級を考えて、少尉は妙な勘違いをしたようだ。

 中佐の階級で小さな戦車に自走砲、バイク兵や自動車兵、後方部隊が揃って一緒に居るのだが……その規模が小さすぎる。

 しかも……女子供ばかり。

 特殊な任務を背負っていて、無茶苦茶優秀な特殊部隊か何かだと見たようだ。

 いや、単に疑問の答えが出ないので、そうしておけば自身に問題も降りかからないとひよっただけかも知れないが。

 

 しかし、その答えは間違っている。

 俺達は、単純に部隊編成がされていないだけだ。

 指令部にも本部にも一度も顔を出して居ない、昨日今日に中佐だと言われただけの存在だ。

 だからそのまま貴族軍を引きずっているのだ。

 ……国軍と貴族軍の急な再編なので、もしかすればそんな部隊は多いのかも知れないが。

 国軍はまだしも、貴族軍は駄目そうな奴も多そうだし……あれ?

 もしかして、俺達も駄目貴族軍だと思われている?

 今も、単に上官の俺が先に行くと言ったので頷いただけ?

 なんなら、後ろから俺達の実力を伺ってやろうかと……そんな感じか?

 ……。

 ぐるりと自分の回りをみた俺は。

 明らかにピクニック気分にしか見えない。

 最前線はまだ遠いとしても……こんな編成のチームに大事な部下を預けられないと、俺なら思うだろう。

 そう、そんな上官がいれば、俺なら適当に頷いて置いて……後は囮にでも使う、か……。

 まあ、決めつける気も無いが、それならそれでも良いけどな。

 あまりこちらにズケズケと入って来られないだけ、その方がましかも知れんし。

 俺も、下手に恨みを買う様な無茶な命令は避ける様にしておこう。

 元々からそんな積もりも無いのだが、気を付けて置いて損は無い筈だ。

 


 先頭を走る38(t)軽戦車。

 左右は森の木々、次第に鬱蒼としてきた。

 太陽も遮られて、その暖かさも感じられない。


 「しかし……冬なのに葉を着けた木が多いな」

 薄暗く、薄寒い体感と景色な筈なのだが……緑も多い気がする。


 「この辺からエルフ領までは魔素が濃いんですよ、だから木や草も元気なんです」

 マンセルが教えてくれる。

 「気温は冬そのものですけどね」


 ふーんと、考える。

 「なら……ヤッパリ魔物も多いのか?」


 「平地よりも多いですね」


 こんな、見通しが立たん所で出会いたくは無いものだと、回りをもう一度見る。

 森の木々と、後ろから着いてくる車列。

 その車列の最後部は全く見えない状態だ。


 「バルタ……少し回りを気にして置いてくれ」

 これは何時もバルタは手を抜いて居るとは思ってはいないのだが、たまに俺に教え損ねる事が有るからだ。

 戦車の中に首を突っ込んで、そのバルタの頷いた姿を確認していたら、その奥から声が聞こえる。


 「コレ……甘くて美味しい」

 クリスティナの声だ。

 通信士としてペトラの膝の上に座って、ヴィーゼやエルに貰ったお菓子を食べている様だ。

 大人しくて分別の有る子。

 補給部隊に居る他のエルフの子供を見てもその印象は変わらない。

 ヴィーゼやエルもそうだが……やはり通信能力に意味が有るのだろうと思う。

 小さい時から大人の考えを共有していると、意識の成長が早い様だ。

 ヴィーゼはエルフでは無いがエルの側に一番に長くに居たからその影響だろう。

 それでも子供は子供だ。

 時折それを覗かせてくれる。


 「何か居ます」

 バルタが俺の服を摘まんだ。

 

 俺も今、言った側からかと顔をしかめた。

 「クリスティナ……後方に連絡だ、行軍を一時停止する」

 頷いたクリスティナ、お菓子を横に置いてなにやら呟いている。

 クリスティナの能力はエルフ間でのイメージの送受信、それも言語でも映像でも無いものだそうだ。

 だから本来のエルフはとても無口で……場合に依っては言語の能力もない。

 クリスティナはロンバルディア王国で育ったので、言葉がわかりそして喋る事にも抵抗感を持っていないのだ。

 そして、エルやペトラと違って念話の概念もない。

 だから、クリスティナは後方のエルフとの通信には意識して誰かを指定している事もなく、ただ自分で頭に思い浮かべて、また何処からか頭に浮かんだそれを俺に言葉で伝えるだけなのだ。

 その繋がったエルフ達とはヘルメットの魔方陣で制限を加えて居るので、それを持たない他のエルフにはわけのわからないイメージにしか為らないのだそうだ。

 しかし、それでも他にエルフが居るという事はわかる。

 それが何処で誰でかは、ヘルメットを被っている限りでは全く判別は出来ないそうだが。

 じゃあ敵が居そうな所で、ヘルメットを脱げば策敵が可能かと為れば出来るのだが……その場合、敵にもこちらの位置が知られて、しかも秘密も作戦もその全てが瞬く間に筒抜けに為る。

 だから、ヘルメットを脱ぐときは気を付けて貰わねば為らないし、こちらも重要な事は教えられないとなる。

 綺麗な金髪なのだが、あまりそれは見られないし……頭を洗う事も制限されるので本人も辛いだろうとも思う。

 国軍はその事には全くの配慮はしていない様だし、可哀想でもある。

 備品として扱いなのだから、壊れれば取り替えれば良いだけと……そんな感覚でのモノでしか無い様だ。

 エルフ軍も、この事実を知ればその戦意に火に油を注ぐ様に怒り狂うだろうが……それも国軍には、戦略として有るのかも知れない、冷静さを欠いて行動を混乱させるという作戦。

 録なもんじゃあ無いなと、顔をしかめるしかないが。

 しかし、それが自軍だと諦めるしかないのが余計に胸糞が悪くなる。

 

 だが、今はそんな事にとらわれている暇はない。

 『何が居るのかはわからないが……バルタが感知した周囲を警戒しろ』

 これはペトラを通しての、俺達の部隊だけに飛ばした念話だ。

 

 『少し先の……右側の森の木の中』

 バルタの捕捉。


 『ヴィーゼ……見えるか?』

 周囲の観察をと頼もうとしたのだが、返ってきた答えは早かった。

 既に停まった時点で、意識を空に飛ばしていたようだ。

 『駄目……木が邪魔で何も見えない』


 森の中に隠れられれば、上空からの監視も役に立たんか……。


 『私達が索敵してくる』

 犬耳三姉妹がバイクで前に出た。


 『バイクは駄目だ、目立ち過ぎるし良い的に為るだけだ』

 道を避けて森の中にバイクで突っ込んでも、まともに動ける隙間は無さそうだ。

 

 『わかった、走る』

 三姉妹はアッサリとバイクを降りた。

 もう少し抵抗されるかとも思ったが、拍子抜けだ。


 『私達も後ろを着いて行くわ』

 タヌキ耳姉妹も車から降りた様だ。

 『バルタも来て……鼻と目と耳が揃えば、虫一匹も逃さないでしょう』


 『バルタは危険だろう?』

 戦車砲以外の武器を扱えない。


 『大丈夫』

 エルだった。

 『私も行くから』

 エルだって武器はと言おうとしたら。

 戦車の後ろに座っていたミスリルゴーレムの所に、走って来たエル。

 「ゴーレムを私の配下にするから解放して」

 ガスマスクに鉄帽姿だった。

 

 

 俺は森を出来るだけ音を立てずに進む。

 流石に子供達だけで行かせるわけにはいかないと俺も戦車を降りたのだ。

 だが……俺は一番にいらない人間のようだ。


 先頭はミスリルゴーレム4体が木々の間の草を踏み固めて進む。

 残り1体と土塊ゴーレム2体は最後方で2cm戦車砲とmg34軽機関銃、そして8cm,sgrw34迫撃砲の筒だけ……バラして持ってきたのだろう、筒だけでもゴーレムが支えるなら使えるのだろうし。

 それらを肩に抱えて、背中には鉄と木で出来た背負子を背負っている。

 予備の弾なのだろう。

 それらを撃つのはエルにバルタにヴィーゼの様だ、各々のゴーレムの後ろに居る。


 その背負子は先に行ったゴーレム達も背負っていた、こちらは犬耳三姉妹やタヌキ耳姉妹の予備の弾か?


 そして、その犬耳三姉妹は先頭のゴーレムの直ぐ後ろに着いて行く、イザと為ればゴーレムを盾に使える位置だ。

 そこから少し離れてタヌキ耳姉妹、後方からの狙撃の出来る位置。

 

 ……完全に出来上がった布陣。

 ただ、そこに俺の場所が無いだけだ。

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