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ファウストパトローネ  作者: 喜右衛門
異世界の秘密
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遺跡の番人


 俺達は荒野の砂漠を適当に走っていた。

 地下への入り口を探すのだが……その目印すら無いので仕方無い。


 ヴィーゼにはそれっぽいモノを見付けたら教えてくれとは言ってあるが……それっぽいモノってなんだ?

 俺にもそれはわからない。

 洞窟のような穴か?

 井戸の様な縦穴かもしれない。

 もっと魔法的な何かで扉が有るとか?

 呪文で岩が動くとかか?


 『あ!』

 ヴィーゼの叫び。

 だが、その後に続くのは……。

 『魔物!』

 やっぱり。


 『今度はどんなヤツだ?』

 朝から走り回って、見付けたら魔物は虫ばかりだった。

 ムカデにバッタにカマキリにクワガタ。

 それのやたらにデカイ版。

 クワガタは流石に興味もそそられて見に行ったが、その実物は本当にデカかった。

 胴体だけで3号突撃砲戦車と変わらない程だと見える。

 それに巨大な顎、ハサミが着いているのだ、その姿は中々にカッコいい。

 見た目がミヤマクワガタなのが尚更によい。

 オオクワガタのデカイのを見付ければ売れると聞いた事が有るのだが……このサイズなら何十億かには成りそうだぞと……そんな勢いの大きさだ。 


 『んー……』

 考えているヴィーゼ。

 今度は虫では無いのか?

 『ぽっちゃりしたトカゲっぽい形?』

 珍しい、ここらには虫しか居ないと思っていたが……。

 『でも……殻? なんか硬そう』


 『トカゲっぽい虫って居たか?』

 これは全員に聞いている。

 殻が有るなら虫かも知れない……逆に虫っぽいトカゲって線もある。

 虫とトカゲでは足の数に違いが有るが……こちらの世界にはそんな足して二で割った様な魔物も居るかも知れないと思ったからだ。


 『さあ?』

 それぞれから返ってきた返事はそれだけだった。

 知らないか……まあ女の子だ、魔物にも虫にもそんなに興味も無いか。

 が、その一言に機嫌の悪さも乗っかっていたのは無視しておこう。


 『ヴィーゼの見たモノを画にしてくれるか?』

 と、ペトラに発注。


 頷いた雰囲気は伝わったので描いてくれるだろう。

 ペトラは大人しいが良い子だ。

 

 『あれ?』

 そのペトラが首を捻っている。

 

 『どうした?』

 念話を画にしている時に、声を発するのは珍しいと思わず聞き返した。

 

 『これって……ゴーレム?』

 もう一度頷いて。

 『トカゲっぽいゴーレムって……初めてだ』

 確信が持てたようだ。


 ゴーレムがトカゲ?

 ゴーレムって人が役に立つ道具として造ったものだろう?

 なら人形でないと……意味無いのでは?

 それとも野生のゴーレムでも居るのだろうか?


 『誰か、元国王に聞いてみてくれ』

 元国王には念話は届かない、だから誰かの中継が必要だ。

 トレーラーの中だから、側にはローラも居るはずだ。


 『それは古代ゴーレムだって言ってる……古代人の造ったモノだって』

 返事はすぐに返ってきた。

 『地上に居るなら、そのうちに地下に帰るだろうからって……』


 『それはコイツの後を着けていけば地下の入り口に辿り着けるわけって事だな』

 大きくて息を吸って。

 『みんな理解したな? 絶対に撃つなよ』


 

 『偵察に行ってくる』

 三姉妹は同時に叫んで、そして走り出した。

 荒野に、バイクの後輪が巻き上げる砂埃が三本の線を引く。

 

 『見付かるなよ』

 

 『大丈夫』

 『そんなヘマはしないよ』

 『ゴーレムは倒しても食べられないし』

 少し不安になる様な返事だが……この中で一番に目立たないのは確かだ。

 後の車輌は大き過ぎる。



 『見えたよ』

 『二本足のトカゲだね』

 『土の塊だ……』

 最後の落胆はネーヴなのだが……自分でもゴーレムだと言っていたろう?

 食えるか食えないかのその基準、それはどうにかならんのか?

 

 『ボーっと歩いてるだけだね』

 『本当、適当に歩いているって感じ、たまに左右にフラフラとよれてる』

 『石なのに意思は固くない感じだ』

 最後のネーヴは、ムフッと笑っているが。

 そんなに上手い事は言っていないぞ。


 『何かを探して居るのだろうか?』

 ゴーレムなら意味も無くただ歩くのはおかしい。

 指示が有るから動くモノなのだから。

 そう、何処かにその指示を出した者が居る筈なのだ。

 

 『そうなのかな?』

 『ヴィーゼの散歩の時に似ている感じだよ?』

 『でもヴィーゼが散歩してる時って……何時も水辺を探していない?』

 『じゃあ、やっぱり探しているんだ』

 『でも何を?』

 『聞いてみる?』

 『ゴーレムは喋れないじゃない』

 三姉妹会議の様だが、一度に話されると誰が誰だかわからなくなる。

 『食べれるモノを探しているんじゃあない?』

 これはわかった、ネーヴだ。

 『ゴーレムがモノを食べるわけないじゃん』

 『でも、誰かに命令されたのかも……食べ物を見付けてこいって』

 『なるほど……』

 会議はまだまだ続きそうだが、そこに遠慮がちにバルタが口を挟んだ。

 

 『近くに魔物が……』


 『あ! ほんとだ』

 『ムカデの魔物ね』

 『チッ……虫か』


 三姉妹でも見える位置に迄来ていたのか?

 そんなに近いなら、バルタはとっくに気が付いて居た筈だが?

 三姉妹の会話に割って入る隙間を見付けられなかったのか?

 たぶんそうなのだろう。

 戦車の中、俺に背中を預けているバルタがオドオドとしている。

 バルタ君よ、今の話の重要度は魔物の方が遥かに大きいと思うが……違うか?

 『もう少し早くに教えてくれるかな?』

 それにビクッと肩を震わせて頷いているバルタ。

 怒っているわけでは無いのだが……しかしこの性格はどうにかならんのだろうか?

 もっと前に出ろ、自己主張はしても良いのだぞと言いたい。

 子供なのだから、多少の我が儘は赦される。

 三姉妹を見ろ。

 ヴィーゼを見ろ。

 ついでにエルを見ろ……だ。


 『あの魔物は倒してもいいの?』

 三姉妹はウズウズを隠さない、その自己主張だ。


 『駄目だ、ムカデにも見付からない様に注意しとけ』

 今、ここでムカデと戦ったら俺達の存在がバレるではないか。


 『むう……』

 今、拗ねたのは誰だ? おもいっきり意識が念話に乗っかって居るぞ。

 君達は偵察なのだから、バレればその意味は無いだろうが。


 『あ! でも……気付かれた』

 

 『どっちにだ!?』

 誰か不用意に前のでたのか?

 それともムカデの位置が近かったのか……ここからではその位置関係が見えない。


 『違う違う』

 『私達じゃあ無い』

 『見付かったのはムカデの方で……見付けたのはゴーレム』


 『お互いが近付いて行きます』

 さっきの注意が効いたのか、バルタが早目に教えてくれた。


 『取っ組み合いに成りましたね』

 これはペトラ。

 ヴィーゼの目を通して見ているのだろう。


 『ねえ……どっちを応援する?』

 『私はゴーレム』

 『私は……どっちでもいい』

 『なにそれ? それじゃあ面白く無いじゃあ無い』

 『だってどっちにしたって食べられないし……』

 三姉妹の会話は延々に続くのか?

 いや、たぶん何時もの事なのだろうが……今は念話に乗っかているって事を意識して欲しいのだが。

 半分遊びの旅行気分がそうさせるのか?

 

 まあいい……。

 『全員、前進』

 今なら見える所まで近付いても気付かれないだろう。

 『距離を積めるぞ』



 ある程度近付いて双眼鏡を覗いた。

 砂埃が舞う中に、確かにムカデとゴーレムが居た。

 そのゴーレム太ったメタボなトカゲなのだが、首元に短めのマントを掛けている。

 それは明らかに人工物なので、やはり誰かの所有物なのだろうとわかる。

 そして、その姿は何処かで見たぞと考えると……思い出した。

 襟巻きトカゲだ。

 マントがその襟巻きそのものだ。


 その2体……お互いが相当のサイズのようで、取っ組み合いが怪獣映画の様にも見えた。

 ムカデがゴーレムに巻き付き締め上げる。

 トカゲのゴーレムはそのムカデの首根っこを顎で噛んでいる。

 流石にトカゲのゴーレムだ、ちゃんと口も開く様だ。

 そして転がり。

 また立ち上がる。

 五分五分のいい勝負に為っている。


 『ゴーレムが負ければ不味いよな』

 

 『応援に入る?』

 取っ組み合いとの丁度中間くらいの場所で、バイクを後方に投げて、横に並んで寝そべっている三姉妹も見えた。

 

 『駄目だ……』

 その三姉妹を制して……しかし考える。

 どうすべきか?

 今は、まだ互角だ。

 ゴーレムが勝つ可能性も残っている。


 が、それを否定する様にバルタが叫んだ。

 『もう一匹、魔物が来ます』

 指差す方向にはまだそれは見えないが、取っ組み合いに混ざれば……やはりムカデの方の応援に入るのだろうとは思われる。

 それでも確証は持てないのだが……。

 『うーん』

 唸るしかない。 



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