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ファウストパトローネ  作者: 喜右衛門
異世界の暮らし
208/317

エルの子分

454ポイント。

今日は上がってる……良かった。


上がるとホントに嬉しい。

まだ評価が貰えるんだって気づかせてくれる。

そしたら、また頑張れる。

書いてるととても不安になる時がある。

たぶん思い込みなんだろうけどね……。


みんなありがとう。

また明日。


 微かに聞こえる笑い声となにやら騒がしい物音。

 ガタゴトと響くそれは、部屋の模様替えでもしている様な勢い。

 それが階下で聞こえる。

 俺は、ボケた頭で考えた。

 何故にベッドで寝ているのだろうか?

 ふと窓を見れば、赤色の空。

 朝焼け?

 夕焼け?

 しかし耳に聞こえるのは生活の音……。

 

 静に身体を起こす。

 足元にも横にも裸で寝ている子供達は居ない。

 なので……これは夕焼けだと気付く。


 気付くと、色々と思い出してきた。

 意識が朦朧として、ベットに運ばれた事。

 その時の抱えられた腕がやたらに固かった事……まるでミスリルで出来た腕の様に。

 溜め息が1つ漏れる。


 俺はノソノソとベッドから這い出して、階段から階下を目指す。

 ギシギシと音を立てる階段を降りた先、1階のフロアーでは子供達に囲まれたミスリルゴーレムが5体も居た。

 

 大きな鉄の深鍋を持った1体、階段の途中の俺にはその中身も見える……スープだろうか? それともシチュウ?

 どちらでも良いが、それは夕飯なのだろう。

 そしてそれが満タンに入った深鍋は、その重さも相当だと思う。

 30kg? 50kg?

 そんな量の物を簡単に運んでいるミスリルゴーレム。

 ゴーレムなのだからその重さは持てるだろう……だが、中身が液体だ。

 それを溢さずに運ぶ事は……俺の支配する何時ものゴーレム君では無理だ。

 必ず途中で……? になり、そして別の事を考え出すのか、その場で溢しても気付かない。

 そして5体のうちのもう1体は、焼いた肉を均等に切り分けている。

 ナイフを持ち、それを器用に返しながらにリズム良く動かす手と腕。

 皿を運んで並べている者も居る……もちろんその通った跡には割れた皿は落ちてはいなかった。

 そして極め付けは、吹かしたジャガイモ、焼きたてのパン、青々としたサラダを入れたそれぞれ3つの大皿を、ベテランのウエイトレス並みの器用さで一度に運んでいるミスリルゴーレム。

 ……。

 成る程、確かに性能差は歴然と有るようだ。

 彼等なら銃を持たせても敵を倒せるのでは無いだろうか?

 と、1体のミスリルゴーレムがテーブルの前で止まっている。

 沢山の瓶入りの飲み物の入った木箱を両手で持ち……なにやら考え込んでいた。

 微妙なその動きで、なにをしたいのかはわかる。

 瓶を一本一本、テーブルに列べたい素振りなのだが……木箱を両手に持っているのでそれが出来ないで居るようだ。

 

 ふむ……多少の出来の悪い者も居るようだ。

 失敗作とまでは言わないが、まあ可愛くもある。

 「一度、箱を床に置いてはどうだ?」

 少し遠くからでは有るがアドバイスを送ると。

 あ! っと、そんな顔で俺を見たミスリルゴーレム。

 流石に元国王も5体も造れば……アホの子が混ざるのだろう。

 それは言わないで置いてやろう。

 1体くらいは御愛嬌だ。


 「おお、起きて気よったか」

 その元国王が俺を見て笑う。

 「あれくらいで気絶するなんて……軟弱過ぎでしょう」

 嫌味はマリーだ。

 「おかげで残りのゴーレムの起動は私達でやったわよ」

 

 「まあ仕方無いじゃろう」

 そんなマリーに声を掛けている元国王。

 「最初の起動は全体に魔素を馴染ませる事からじゃから……相当に高い能力を必要とされる仕事じゃしのう」


 「もっと、自分の能力を鍛えときなさい」

 俺を指差したマリー。


 「あれは……最初だけなのか?」

 俺も少し不安に思っていた事を聞いてみた。

 毎回あれでは、エルの身体が心配に成る。


 「最初の最初だけよ」

 明らかに機嫌が悪そうだ。

 マリーでもあれはシンドイのだろう。


 「一度、動かせれば後はそれを維持するだけの魔素を注ぐだけで良い」

 元国王の説明。

 「もちろん、止めた後の再起動も簡単じゃ……ほら、パソコンと同じじゃ」


 「パソコン?」

 三姉妹がそれは美味しいのか? と、そんな顔で聞き返してくる。

 

 「残念だが……食い物じゃあ無い」

 その俺の一言で、三姉妹を含めた全員があからさまにガッカリしていた。

 

 だが、元国王の説明も理解出来た。

 確かにパソコンは最初の立ち上げにやたらと時間が掛かる。

 そして……面倒臭い。

 そんな事を自分の魔素をエネルギーにしてやっていたのかと納得。

 osやら初期設定やら……別段、難しくは無いのだが鬱陶しい。

 だがそれも最初だけ、その後からは起動ボタンを押すだけだ。

 やらせる指示はその都度だが、それも合わせてゴーレムを動かすのは似ていると元国王は言いたいのだろう、たぶんそんな感じの事なのだ。

 

 「でじゃが……」

 元国王が、先程のどんくさい1体を指差して居る。


 失敗の言い訳か?

 まあ、別に気にしてはいないと笑ってやろう。


 「あの子を解放してくれんかの?」

 

 ?

 「解放?」


 「一度、機能を停止させてって言ってるの」

 マリーだ。

 「貴方が動かしていると……随分とバカな子にしか為らないから、機能を止めてエルで再起動させたいのよ」


 その言われように口が閉じれなくなる。

 あの子の能力の無さは……俺のせい?


 「それにの、エルの魔素量では3体を常に動かしていてトントンの様でな……今の溜まった分を、あの子も含めた2体で消費させたいのじゃ」


 「それが終わったら、貴方がその2体を好きに使えばいいわ」

 マリーが。

 「序にだけど……1体だけならなクロエでも使えるわよ」

 ニヤリと笑う。


 その笑いは……俺よりもクロエの方がゴーレムも賢く成るとそう言いたげに見える。

 

 「他の者は誰か使えないのか?」

 癪には触るが事実なのだろうから、それ以上に深くは聞かずに、話を反らした。


 「もう少ししたら花音は可能性が有るわね……後は……」

 少し考えて。

 「無理かな?」


 詰まりは、病気? 怪我? 起因のエル以外は転生者にしか動かせないという事か。

 転生者の持つという特別に高い能力が必須なのだろう。

 

 「それよりも早く」

 もういいでしょうと、急かすマリー。

 

 俺は、その残念ミスリルゴーレムの前に立ち……マリーを見た。

 機能停止はどうやるんだ?

 

 「ゴーレムの額に人差し指を押し付けて」

 マリーが仕草で。

 「長押しよ」


 「こうか?」

 なんだか、ゲームみたいなセリフだなと、それをやってみる。

 暫くそのままでいたらば、ゴーレムがスーっと体育座りにポーズをとり……動きが止まった。

 機能停止はこの姿勢に成る様にプログラムでもされているようだった。


 「エル……」

 俺は、相変わらずのガスマスク姿を手招きをする。


 呼ばれたエルは、その体育座りをしているミスリルゴーレムの額を指先で3回……コツコツコツと叩いた。

 

 スクッと立ち上がるミスリルゴーレム。

 そして、エルは木箱を指差しながらに指示を出す。

 「これを配って」


 言われたゴーレム。

 片腕で器用に木箱を抱えて、順番にテーブルに瓶を列べ出した。

 スムーズに……立ち止まる素振りもなくに。


 「これでバカな子は居なくなったわね」

 大笑いのマリー。


 「まだ、ガレージに2体程居るぞ」

 元国王も笑っている。

 「あれは元からそんな能力も無いがな」

 

 なんともカチンとくる言い様だ。

 「なら、もう少し賢く造り直してくれよ」

 鼻を鳴らして。

 「別で造ってくれても良いぞ」


 「あれは既製品じゃしな……あれ以上の能力は無理じゃな」

 元国王は顔の前で手を振って。


 「別で造るにしても……もう材料が無いわ」

 マリーも駄目だと言う。


 「1円玉は500kgしか無かったのか……」

 それでも俺の予想よりも遥かに多いのだが。


 「いやミスリルはまだまだ残っていますよ」

 マンセルが横から手を挙げている。

 「無いのは飛空石の方です」


 「ミスリルだけでゴーレムを造っても重く成って使えないわよ……100kgのゴーレムなんて運ぶのも大変だし、家に入れれば床が抜けるわよ」


 「芯までミスリルなら100kgではきかんしの」

 

 飛空石は重さの調整だったのか、それも納得。

 「なら……普通のゴーレムは?」

 土塊でも造れるのだろう?

 

 「そうじゃな……気が向けば」

 チラリと獣人の子達に目を向けて。

 「この子等でも使えそうなゴーレムを造ってやっても良いが……」

 そこでニヤリと嫌な笑いで続けた。

 「能力……知能じゃが、どうなるじゃろうな?」

 

 わけのわからん行動が増えるかもと言いたいのだろうか?

 確かに、俺であの性能だ。

 三姉妹が使えば……。

 倍に増えた三姉妹の映像が頭に浮かぶ。


 「いや……今の話は無しだ」

 俺は、大慌てで前言を撤回した。

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