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ファウストパトローネ  作者: 喜右衛門
異世界の暮らし
201/317

大量発生した苦虫と届いたスズメバチ

436ポイント。

上がった。

まだ応援してくれる人が増えてるんだって実感できる。

嬉しい。


応援ありがとう。

明日もがんばる。

また明日。


 親衛隊擬き? の襲撃犯グループは、国防警察軍に逮捕された。

 後ろ手に縛られて警察軍の豆戦車Cv35/731(i)の後に紐で結ばれて歩かされて、引かれていく。

 親衛隊擬きの司令官はそれでもブツブツとは言っているが。


 アンの父親に一喝されていた。

 「言いたい事は署で聞いてやる……が、その審議は裁判所だ、我々は状況を見て現行犯逮捕をしたまでだ、証人も居るので連行するほか有るまい」

 声音は淡々と。

 「親衛隊でもこの状況なら……同じ事をする筈だが?」

 

 そしてアンの父親はチラリとアンの寝顔だけを見て仕事に戻る。

 以前にアンは父親から厳しくされていた風に言って居たが……たぶんこれなのだろう。

 決して愛されて居ないわけでは無いと傍目からは見えるが……。

 まあ、優先順位の見せ方が不器用なだけの様だ。


 さて、と……国防警察軍を見送った俺は元国王の乗る車に顔を出す。

 自分が元国王だとバレた事が不満のようだ。

 早々に車の中の後席に隠れてしまった。

 バレる事をしておいてだから、それも始末が悪い。


 「あれは……どうするのだ?」

 自分のやる事を探してキョロキョロ、ウロウロとしている巨大なゾンビ亀を指差して。


 「適当にするじゃろう」

 魔物に丸投げか?

 助手席の拗ねたヴィーゼは可愛いが……元国王は完全にジジイだしなと、呆れるしかない。

 「それよりも、早く運転せんか……帰るのだろう?」

 と、運転席を指差す。

 俺に運転をさせたい様だ。


 俺は頭を掻いて。

 「少し待て」

 と告げて子供達の所に向かう。

 「早くせいよ」

 そんな元国王の言葉を背に受けてだ。



 その子供達。

 遊んでいた……。

 主に三姉妹なのだが。

 ゾンビ一角ウサギを追い掛けて回している。

 「おい、もう帰るぞ」

 一応の注意だ。

 「ええ、もう?」

 「まだ、日は高いよ」

 「これは食えるのかな?」

 

 「アンとエルが寝てしまって居るだろう?」

 面倒事もやっと終わったのだ、家でユックリしたいだろうが。

 そして、ネーヴだけには一言。

 「食うなよ……ゾンビだぞ」


 「でも、新鮮なゾンビだよね?」

 それって食えるんじゃあないの? と、そんな疑問が頭から離れない様だ。

 好奇心が旺盛なのはわかるが……。

 そんな話を二人でしていると、エレンとアンナが今気が付きましたとばかりにゾンビ一角ウサギを目で追っている。

 「だから、あれは元国王の持ち物だから……」

 

 そこにイナとエノの乗ったシュビムワーゲンが横に来る。

 「先に帰るって」

 イナはマンセル達を指差していた。

 もう戦車は後ろ姿に為っている。


 「ほら、俺達もだ」

 三姉妹にはそれだけを告げて、タヌキ姉妹には一つ質問。

 「花音とムーズは?」

 それにはエノが答えてくれた。

 指でトレーラーを指す。


 見れば三姉妹以外は帰る準備は済んでいる。

 それぞれが、それぞれの車に乗り込んでいた。

 「なんだ……お前達だけか?」


 『置いて行けば良いのよ』

 ヴィーゼだった。

 自分が置いてかれたもんだからか?

 

 『まだ怒ってるの?」

 イナが聞き返す。

 『怒ってない!』

 念話でも語気が粗いのがわかるヴィーゼ。

 『おいていこうって言ったのはエレン達だから、私達は声を……』

 そのエノの言葉を遮って。

 『置いていく!』

 半泣きのヴィーゼだ。


 


 屋敷に戻った俺達だが、アンの処遇に悩む事に為る。

 まだ眠ったままなのだが……。

 家には送らなくても良いのだろうか?

 ……。

 いや、正直に言おう。

 それを最初に指摘したのはムーズだった。

 アンの事などスッカリ忘れて居た俺は、小屋で煙草を吹かしながらにコーヒーを啜っていた。

 そこにやって来たムーズが。

 「アンお嬢様は……お家の方が心配されないのでしょうか?」

 妙に堅苦しい言い回しは、俺の向かいでコーヒーを啜っている元国王を見たからだろう。

 「それは、詰まりは送って行けと?」

 突然のその提案にはただ驚く。

 本気で忘れて居たからだ。


 「はい、お風邪も召していらしている様なので」

 

 「ふむ……」

 面倒臭いとは言ってはいけないのだろうとは、理解していた。

 しかし、アンも貴族で若い娘だ……しかも父親の顔を見てしまっている。

 いや、俺が見られていしまったと言うべきか?

 今までの様にほったらかしは余計に面倒を産むか。


 「で、家は何処なの?」

 そのムーズの横に立つ花音の一言。


 それには俺は首を捻るしかない。

 その序でにチラリとムーズを見る。

 「私も知りません」

 

 今度はチラリと元国王に視線を投げる。

 「ワシが知る筈も無いじゃろう」


 「元国王なのだから……家臣の家くらいは……」

 と、言い掛けて……流石にそれは無茶だと気付く。

 大宮に居れば誰なとに聞けるのだろうが……元国王は帰る気は無さそうだ。

 帰った処で、その大宮に聞きに行くのも面倒だとも思う。


 「どうしようか?」


 「誰に聞いてるの?」

 コーヒーの御代わりをくれたエノが逆に聞いてきた。

 それにもまた、首を捻るしかない。


 「その事なのだが……」

 突然の嗄れた声に驚いた俺は、後を振り向いた。

 ヴェルダン家の当主、詰まりはジジイが入り口に立っていた。

 「何時から?」

 驚いた俺の一言。


 「今さっきだ」

 チラリと元国王を覗いて居る。

 「それよりもだ、シャロン家のお嬢さんなんだが……家で暫く預かる事になっている」

 シャロン家の?

 アンの事だとわかるのに一瞬の間が必要だった。

 が、それよりも預かるってなんだ?

 「お嬢さんはどうも狙われているらしい……いや、もう狙われたか」

 苦虫を少し噛むジジイ。

 「そこで、暇に為るお前さんに預かって欲しいとの事だったのだが」

 暇に為る?

 謹慎だからか?

 それは俺か?

 「もう、居るならそのままで構わん」

 

 「何時からそんな話に?」

 それ以前に何故にジジイが?

 

 「今朝から家に来ていたのはその話だ」

 

 そう言えば、皆を呼びに来た時に……居たなと思い出す。

 えええ……大量の苦虫を口に放り込まれた気分だ。

 

 「良いでは無いか……お主、独身じゃろう」

 元国王は他人事らしい。

 コーヒーを啜る音に混ぜての一言。


 いや、だから駄目なんじゃあないのか?

 

 「それよりも……エルはどうするの?」

 今度は花音が俺に聞く。

 しかし、そんな事を俺に聞かれてもと、元国王に目線を向けた。


 コーヒーを啜る元国王。

 「今、マリーが見ておる」

 そのマリーは小屋の2階で寝かされているエルの横に居る。

 そして元国王の発言では、それもマリーに丸投げの様だ。


 「魔素の暴走だったよな?」

 そう聞いたが。

 

 「そのようじゃな」

 ズルズルと。


 「魔素を抑える方法は?」


 「無い」

 フウフウと息を吹き掛けて。

 「このコーヒー、ちと熱いな」

 元国王は猫舌か?


 「じゃあ、どうすれば?」


 「その答えが出るまでは、暫くはここに居てやるから安心せい」


 えええ……あんたもか。

 俺の苦虫は顔中に溢れていたに違いない。


 「では、元国王様のお部屋を準備させます」

 少しにこやかに為ったジジイ……当主の方。

 が、直ぐに元国王に否定された。

 「ここで良いぞ」

 俺の小屋を指差している。

 

 俺の苦虫はジジイにも伝染したようだ。

 それも大量に。


 


 さて一週間後。

 寝起きでバルタと犬耳三姉妹とヴィーゼを蹴飛ばして、1階に降りた俺。

 欠伸と溜め息とが一緒に出る。


 「器用じゃな」

 元国王がハンナの焼いたパンを噛りながら。

 

 「もう昼前よ」

 アンはその向かいで紅茶を啜っている。


 マリーとエルは一緒に座って話をしているが、そのエルの顔はまだ狐っぽいそのままだ。

 

 俺の溜め息も、そのどれに対して出て来たのかもわからない。

 たぶん……全部だ。

 もう一度、溜め息。


 「で、今日はまた狩に行くんでしょう?」

 そう聞いてきたのはエル。

 「早く行きましょう」


 えらく楽しそうにしているのは、昨日の夜にエルのオモチャが届いたからだ。

 その朗報を持ってきたのはマンセル。

 「ヴェスペが届いたよ」

 ヴェスペとは50.5cm榴弾砲を積んだ2号戦車。

 詰まりは自走砲の事である。


 エルはそれを試したくてウズウズしているのだ。

 因みにヴェスペ……ドイツ語ではスズメバチの事。

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