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ファウストパトローネ  作者: 喜右衛門
異世界の暮らし
189/317

嘘の顛末報告

396ポイント。

増えないなぁ。

何でだろう……。



明日……頑張ろう。

応援有り難う。

また明日。



 俺を睨み付ける中央の男。

 その横の男が尚も続けた。

 「配下の者の話では、ヴェルダン伯爵は国軍の兵士の治療の手配を先にしてから動いております」

 紋章衣も軍服も着ていない背広の男。

 その服は俺のダンジョン産の背広にも似ているが、少しだけ違う形だ。

 有り体に言えば古臭い。

 だがそんな事はどうでも良い……この男は国軍の偉いさんだ、それも相当に立場が高い。

 一応は貴族を立てては居るがその言葉を明らかに否定している。

 右大臣だったか左大臣だったかの民間からの成り上がり組の上の方なのだろう。

 貴族社会でわかりやすく言えば、一代貴族で爵位の外に居る……そんな感じか?

 どこぞの転生者が持ち込もうとした民主主義の成れの果てだろうか?

 それが形を変えて、上級者国民って感じの立場を手に入れたのだろうと思われる。

 ややこしい事だ。

 せめて貴族の様にわかりやすい格好をしてくれないものか。


 「治療が先なら……撃たれたのが先と成りますね」

 これは国防警察軍の偉いさんの言葉。

 先の適宜対応の裏付けと成ると頷いて居る。


 「わしの息子が死んだのだぞ……この男の行動で」

 バンと机を叩いた中央の男。

 あの公爵の父親の様だ。


 「公爵様の作戦通りでした」

 俺は適当に嘘を着く事にした。

 「命令自体は直接は受けては居ませんでしたが、その行動で見ればわかります」

 

 「作戦だ?」

 ジロリと見られた。


 「はい作戦です」

 俺は唾を誰にも悟られないように気を付けて飲み込み、続ける。

 「あの時の状況は、丘の上に敵戦車が並んで居ました……そのまま全体で反撃に出れば明らかに混戦は必至」

 公爵の父親の顔を伺いつつ。

 「だが……敵は怯んでくれました、あの状況でも動かない戦車隊の車列にです」


 「どういう事だ?」

 

 「砲を向けて待ち構えているのに動かないのです……それを見た奇襲を仕掛けた方はどう思いますか?」


 「自分達が奇襲を仕掛けたのなら……敵もと、考えたのか……」

 国防警察軍の偉いさん……もしかしてアンの父親?


 「はい……明らかに罠を警戒するようにその一線を越えようとはしませんでした……その躊躇を利用して横からの国軍の進撃をさせる見事な策だと判断しました」


 「貴様は戦車だろうが」

 握っていたペンを俺に差し向ける。


 「はい……その場で一番に小さい戦車です……敵から見れば雑魚の偵察戦車でしょうか?」


 「元々、脅威を与えない戦車が1輛で目の前を走り回られば……余計に罠を疑うか……」

 国防警察軍。


 「はい……咄嗟の作戦では最良かと思います」

 実際は罠に引き込もうとしたのは敵の方だったのだが……あの時の動かなかったのは正解だったと、素直に思う。

 「何も無いのに、何かが有ると思わせるその為に何もしない……ただ、その作戦には補完が必要でした」


 「本当に何もしないわけにはいかないのだしな」

 頷いたのは国軍の背広。

 「そのお陰で我々は敵の横を着く事に成功している」


 「そのタイミングを見逃さない判断も、これ以上は無い決断だと思います……そこからの戦車隊は見事に敵を押し戻しましたから」

 流石に嘘が大き過ぎるのかとも思うが続けるしかない。

 「何もしないとの命令も有りません……実際にテントからも出ていません、詰まりはそれらが全て作戦なのだと判断しました」


 「では……何故負けた」

 

 「ですから……情報です」

 唾を飲み込み。

 「敵の通信手段の方法がわからなかったのです」


 「国軍は実際に敵の塹壕まで到達して、貴族軍の戦車隊もその手前まで進撃していた」

 背広だ。

 「何も無い所からの作戦としてなら成功しているのか」


 「はい、それも圧倒的に敵の数の多い状況でです」


 「そのバランスを崩したのが、エルフの通信手段……」

 黒服が唸りながら。

 「しかし、エルフが繋がると言う事はわかっていた筈だ」


 「それも、いわば古い情報でした……エルフは繋がるのだから、痛みと恐怖をばら蒔けばと……」


 「エルフはそれに対抗する方法を見付けたと……」

 

 「はい、その証拠に……」

 少し言葉が詰まる……賭けを仕掛けるタイミングがここかと正確に判断が出来ない。

 が、続けるしかない。

 「敵の司令官を追い詰めた、公爵はその敵の被るヘルメットの魔方陣を見て理解したようです」


 「その時に撃たれたと聞いたぞ」


 「敵の司令官の魔法です、私は近くに降りましたが……私には魔法が使えません、なのでその予兆を感じる事も、対処法もわかりませんでした」

 苦々しい顔を造り。

 「敵の卑怯な不意討ちです」

 少しだけ吐き捨てる様にした。

 

 そして少し間を開けて。

 「その時に、公爵がエルフの被るヘルメットの意味を俺に伝えたのです……今だ、ヤツを撃てと」

 真っ赤な嘘にも限度が有るが……さあどうだ?

 

 「その状態なら、痛みと恐怖をばら蒔けると……か」

 頷いた背広。

 「そのヘルメットはどうした?」


 「公爵の指示通りに持ち帰る事に成功しました……今は当家の主が魔法省に持ち込んで居るかと……」

 これで逃げると言う所にも意味を持たせられた筈だ。

 敵前逃亡だ云々は無いだろう。


 「そんなモノに意味は有るのか?」

 黒服……それらの古いと言われた情報を持ち込んだ大元だ。

 何を考えているのかはわからないが……わかりやすく火の粉を避けようとはしている様だ。

 詰まりは今は目立つ事はしないだろう。


 「意味は有ると考えたようですが」

 チラリと中央の男を見た。

 「有利に成るかどうかは別にして、不利の理由がわかればとの事だと推測はしました」

 


 

 俺は部屋を出て扉を閉める……そして大きく息吐き出した。

 取り敢えずは嘘でもあの状況を取り繕う事は出来たようだ。

 戦場での公爵の言葉は無かったが、その公爵との距離が一番に近かったのは俺なのだから……腹に手を突っ込める距離だ。

 側に居たアルロン侯爵よりもズッと近い、侯爵に聞こえない声も聞こえたと言っても誰も否定は出来ない筈だ。

 ましてや、死に際の小さな声だったと言えばそれも納得出来るだろう。

 

 だが、まだ安心は出来ない。

 明日も来いとの命令だ。

 その時には、どう転ぶかはわからない。 

 現に今も、中で議論は続いている様だし……。


 中の面子で俺を支持してくれそうな者は二人、たぶんだがアンの父親と国軍の偉いさんだろう。

 反対に親衛隊は俺に責任を押し付けたいと考えていると判断するのが妥当か。

 真ん中の公爵の父親は、息子の死の責任を誰かに取らせたいだけの様だし、ソコを一番に気を付ける部分か。

 

 「随分と紛糾したようだな」

 椅子に座っていたアルロン侯爵が俺に声を掛けてきた。

 何度目かの呼び出しで、あの時の状況説明は終わっているのだろう侯爵。

 俺は状況そのもには嘘は着いていない……なので矛盾する事も無い筈だ。

 

 「はなから勝てない戦でも、実際に負けたのですから……その責任の所在を明らかにしたいのでしょう」

 

 「勝てない戦か……」


 「戦力差が有りすぎましたね……それでも生き残りがあれだけ居れば大したモノだとは思いますが」


 それには侯爵も頷いて居た。

 



 俺は貴族軍総司令部の建物を出た。

 ロータリーには誰も居ない。

 ジジイの馬車も勿論無い。

 やはり歩きかと足を出す。


 と、聞き慣れた音が近付いて来た。

 アンのドカティ900Mモンスターだ。

 この並びの何処かに国防警察軍の司令部が有るのだろう。

 詰まりはアンの職場。

 

 そう言えば長い休暇とか言っていたが、どうなったんだろう?

 左遷とは聞いてはいないが……地方ではあっても司令官だったのだし。

 今の役職は聞かない方が良いのだろうか?


 そのアン。

 俺を見付けたのか真っ直ぐに此方に走ってくる。

 それには、一応は俺も手を降ってやった。


 「どうしたの?」

 隣に停まったアンが俺に聞くので。

 貴族軍総司令部を親指で指し。

 「呼び出しだ」


 「アンは?」


 「父上に少し用事が……今はその貴族軍総司令部にいる筈なんだけど」


 「ああ……やっぱり」

 頷いて。

 「たぶん、会ったな」


 「ん?」

 少し怪訝な顔。


 「俺を呼び出した方の中に居たと思う」

 笑って答えた。

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