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ファウストパトローネ  作者: 喜右衛門
異世界の暮らし
181/317

ダンジョンでの拠点

今日はキツかった。

時間が間に合わないかとヒヤヒヤだ。


焦って書いたから、どうだろうかとは思うけど。

1日一本の約束事はどうしても守りたかったんだ。


明日はもっと余裕を作る事も考える。


応援有り難う。

また明日!


 ダンジョンを行く車列は何事も無くに奥へと進む。

 魔物も魔物の死体も……人の死体も人骨までもを見付けられない。

 だが、俺達が燃やした戦車は幾つかが目には入った。

 t-34の残骸だ。

 中を覗けば死体は見れるのだろうか?


 それとも新しく湧いた魔物の腹の中か?

 ここに居た殆どの魔物は猪と共に移動をした。

 なので差し引きしても、もう雑魚レベルの魔物しか産まれない筈。

 それが強く大きな魔物に成るには相当の年数の代替えが進まなければ無理だろうから、まだまだ先の事だ。


 と、先頭のレオパルトをいきなり曲げたローザ。

 小さな前庭を持つビルの中に入っていった。

 

 「……ホテル?」

 戦車の砲手として乗り込んでは居るが、砲に付きっ切りと言うわけでも無い俺は上部のハッチから覗く。


 その俺の呟きは聞こえなかったのか流されたのか、ローザからの返事は無い。

 すぐに車回しのロータリーから、正面玄関に辿り着き、そこで停まった。


 ホテルの前で停まる事にも驚いたのだが、その脇にはt-34が数輌が綺麗に並べられている。

 一瞬……? とは成ったが、すぐに理解出来た。

 そう言えば裏庭に居た元敵兵士、今は冒険者の者が乗っていたのだ。

 今回は付いて来なかったと思っては居たが……先に来ていたのかと納得。


 ローザは停めた戦車から降りて、ホテルの中へと入っていく。

 俺達もそれに続いた。

 シュビムワーゲンやらバモスやらは適当に停めていた。

 バスはデカいのでそのまま道路だ。

 そして三姉妹はバイク事中に入ろうとしている。

 それは流石に辞めさせた。

 入れない事もないのだろうが、邪魔で鬱陶しい。

 ローザも意味が有ってもココなのだろうし。


 俺が指差した所にキチンと並べて停める三姉妹。

 それに続いてビーノが2台。

 ニーナとオルガもバイクで来ていたのかと今に為って気がついた。

 それに気付かないのもどうかとは思うが……戦車の中はやはり、視界が悪いのだから仕方無い。

 アンのバイクはその隣だ。

 小さいのから順に並ぶ。

 それを見ていると、やはり俺もバイクが良かったともう一度思う。


 視線をレオパルトに戻す

 別に悪い戦車では無いが……なんの事は無い普通の戦車だ。

 これと言って特徴も無い。

 砲が大きく為っただけだ……それも1発も撃っていないので実感もない。

 まあ5cm砲だから今までの様に逃げ回るだけでは無くて、攻める事も出来るのだろうけど……4号が買える値段ならそちらの7.5cm砲の方が断然良いのは歴然だ。

 成る程、実際に計画だけで造られなかったわけだと納得した気がした。


 「パト、行くよ」

 背後から声が掛けられる。

 子供達はもう既にホテルに入ろうとして居た。

 

 俺もその後を追う。

 玄関の大きなガラスドアを潜る。

 電気が来ていないので自動ドアのそれは開け放たれていた。


 玄関ロビーはそんなに広くは無い感じだ。

 都市のホテルならそんなものだろう。

 造りもそれほど豪華とも為っていない。

 ギラついて居ないのはそれはそれで好感が持てるのだけど、電気が無いので薄暗い感じだからそう見えるだけかも知れない。

 

 と、奥から人がゾロゾロと出てきた。

 元兵士の冒険者達だ。

 戦車兵も混ざって結構な人数だ。

 背後から遅れて来た、バスに乗っていた冒険者と合流すれば相当の数に為る。

 それはそうだと思い直した。

 本来はバス1台に乗りきれる人数では無かったのだから。

 半分程の者はここに住んで居るのだろうか?

 ダンジョンとはいえ、元は都市だ。

 魔物も居ないと為れば、住むには問題も無い。

 これは中々に理に叶っている。

 俺もこちらに引っ越すか?

 

 「部屋は適当に使って良いよ」

 ローザが俺達にそう告げる。

 「仕事は明日1日掛ければ終わるだろうから、今日はもうユックリしてくれればそれで構わないよ」

 自分の家の様な言い様だ。

 

 「ここにはもう長いこと住んでるのか?」


 「バイクを掘り出すのに拠点にしていたんだ」

 説明をしてくれたローザ。

 「ついでに近場で魔物退治も出来て、金も食料も調達出来るし一石三鳥でしょう」


 「完全に計画的だな」

 いつの間にかに横に来たマンセルがつぶやいた。


 

 

 何処でも好きな所にと言われたので、俺は最上階にすることにした。

 ホテルで一番に良い部屋は最上階と決まっているからだ。


 「たぶん、景色も良いぞ」

 そう子供達に告げて、フロントカウンターに鍵を取りに行く。

 勝手に部屋番号で探る積もりだったのだが、そこには人が居た。

 「私は戦争の前にはホテルマンをしていたんです」

 その男は言った。


 第二次世界大戦が始まる以前の職だったのだろう。

 戦争で焼けたか、潰されたかか?

 それで、失業しての兵士に志願なのだろう。

 大戦中の兵士は殆どがそんなモノだ。

 国を守ろうなんて大層な事は頭の片隅の端っこで、それを無理矢理に面に引っ張り出しての建前だ。

 マトモな仕事が有れば……誰だってやりたくは無い。

 本音のところは皆そんなモノだ。

 だから軍隊は規律で縛る。

 戦うモチベーションなんてのは無いと決めつけて、動く機械人形の様に同じ訓練を何度も重ねる。

 そしてイザ戦闘に為れば死の恐怖が、身体が覚えたそれを勝手にさせるのだ。

 銃を持って突撃。

 敵を見付けて撃つんじゃあ無い、敵のいる方向に気配が有れば撃つんだと。

 とは言っても各々の能力差は歴然に有る。

 だから、上官の号令で撃つだけなのだが。


 そのホテルマンがドイツ兵士に成り、奴隷兵士にされて、今は冒険者の使いパシリだ。

 ローザの会社の社員か?

 ドンドン落ちてブラックに為った挙げ句か。


 「最上階の鍵をくれ……空いてればだが」

 それでもにこやかにしている目の前の男には同情はしても助けて差し出せる手は俺には無い。

 差し出した俺の手は、単に部屋の鍵を受け取る為のモノだ。


 「最上階ですか? ……空いてはいますが」

 若干に歯切れの悪い返答で、俺に鍵を渡してくれた男。

 「何か問題でも?」


 「いえ、まだ誰も使っていませんので綺麗なままの筈ですよ」

 笑顔は絶やさないその男は、以前は優秀なホテルマンだったのだろう。

 不快にはさせず、聞いた事に適切に短い返答をする。

 それに頷いて返した俺は子供達に向き直り。

 「お前達はどうする?」

 

 「その部屋は広いのだろう?」

 そう尋ねたアンのフロントの男は素直に頷いた。

 「では一緒で構わない」

 それに子供達も同調する。

 

 1人手を上げたマンセルは。

 「ワシはローザの部屋に行くよ」

 そう告げて、その場から離れた。


 「わかった、何か有れば連絡する」

 その何かなんて無いとも思うが。

 そこで別れた。


 「じゃあ行くか?」

 残りの子供達とアンにそう告げて歩き始めた。

 目線はエレベーターを既に見付けている。

 フロントからすぐに目に入る場所に必ず有る筈なのだ。


 大きなホテルだ、エレベーターも幾つも並んでいる。

 取り敢えず上に昇るボタンを押した。


 ……。


 押した。


 反応が無い。

 高級な感じで静に動くとかでも無さそうだ。


 「階段はその裏ですよ」

 見かねたのだろう、フロントから声が飛ぶ。


 「階段?」

 ああ……そうか、電気が来ていないのでエレベーターは動かないのか。


 「有り難う」

 返答だけを返してそちらに移動する。

 若干に背中に視線を感じる。

 子供達のなにやってるんだろう? の、目か?


 「たぶん凄い部屋だぞ」

 後ろを振り返らずにそう告げる。

 出来ないオッサンとは思われたくは無い。

 子供達の期待には答えたい。

 勝手に押し付けた期待なのだが、それはどうでも良いのだ。


 

 と、階段を登りながらに後悔をしていた。

 フロントの男の怪訝な顔は、これを昇るのかとそう言う意味だったんだと理解してだ。

 最上階は詰まりは建物の一番上。

 階段を延々に登った先だ。


 「置いてくよ」

 軽快に足を運ぶ子供達に即されて、重い足を運んだ。

 子供達とアンの談笑が聞こえる。

 「どんな部屋なんだろうね、王宮の部屋見たいな感じかな?」

 「それは私も見た事がないな」

 「景色って何が見えるんだろう?」

 「ベッドってフカフカかな?」

 「カーテン見たいのが着いてたら凄いなー」


 期待は膨らみすぎている子供達。

 今更、下の部屋とは言えない様だ。

 顎に伝わる汗を拭った俺は、荒い息を吐いた。

 マンセルもきっと気付いて居たに違いない……言ってくれればいいのに。

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