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ファウストパトローネ  作者: 喜右衛門
異世界の暮らし
179/317

収入

368ポイント。

今日も上がってる!


みんな応援有り難う!

まだまだ頑張れる。

また明日!


 殆ど追い出された格好で風呂を出た俺は、腹いせにバルタを捕まえて風呂に投げ込んでやった。

 バルタを捕まえるのは簡単だ。

 呼べばニコニコとやって来る。

 そこを首根っこをキュウっと捕らえて持ち上げれば、それだけでダランと大人しく成る。

 俺も少し学習しているので、風呂のキーワードを言わずに捕まえて放り込めば、暴れられる事もない。


 その簡単な仕事を終えて部屋の真ん中に有るテーブルに着いた。

 イナとエノが俺にコーヒーを淹れてくれる。

 

奥の小さなキッチンではエルとハンナとアリカとリリーが何かの料理を作っていた。

 エルは相変わらずのガスマスク姿だ。

 それが気にいったのかと不思議には思うが、その事には触れないで居た。

 そう言う事をしたがる歳に成ったのだろうと、かってな解釈だ。

 

 しかし、その4人を見ているとやはりここのキッチンは狭すぎる様だ。

 人数も増えたので……しかも女子供ばかりだ、もう少し考えてやらねばいけないのだろうとも思う。

 思うのだが……。


 懐から取り出したカードを見た。

 記載された金額は確かに増えていた。

 あれだけ魔物やら敵兵やらを倒せば増えて当然なのだが……しかし、支出も増えそうなのも確かだ。

 武器や弾薬はほぼ遣いきっている。

 幾らくらいの余裕が有るのかもわからない。

 貴族軍の報酬のシステムはシンプルだし便利だ……倒した敵がそのまま金額になる。

 が、必要経費も全てが自分持ちだ。

 これは個人経営かフリーランスの、そのままだ。

 前の世界では普通のサラリーマンだったのでこの面倒臭さは頭が痛くなる。

 その上に税金だ何だと引かれるのだろう……。

 それは天引きか?

 それとも申請か?

 考えるだけでゲンナンリだ。


 目の前に出されたコーヒーを啜りながらに、手に持つカードを縦にしてテーブルをコツコツと叩いた。

 どうするか?


 

 と、風呂場が騒がしく成って来た。

 チラリとそちらに目をやる。

 バルタが暴れだしたか?

 また裸で走り出てくるのだろう。


 が、そちらから出てきたのはクロエだった。

 手には着替えを持っている。

 風呂に入ろうとして諦めた様だ、まだ髪も濡れていない。

 その持つ着替えを膝に置いて、俺と同じテーブルにつく。

 「騒がし過ぎ」

 ブツクサと呟きながらに、エノに出されたコーヒーを啜った。


 そう言えば、クロエのした医療行為には報酬は付いていたのだろうか?

 魔物を倒すそれとは違って、どう考えてもその行為に金額を付けるのはややこしそうだ。

 弁当を売っていた子達は現金のやり取りをしていたが、それと同じでお互いで金額を決めてとか……そんな感じなのだろうか?

 少なくとも自動でカードに入るって事には為ってはなさそうだ。

 もしそうなら、その報酬は少な過ぎる。

 確認した金額を考えればだが。

 奴隷兵士ばかりだからだろうか?

 それでももう少しは……。

 やはり、自動入金は無いと考えよう。

 そう思いたい。

 あれは慈善事業でボランティアなのだ。

 転生者の奴隷だからって命に安い値段を付けられるのは……やはり釈然としない。

 アルロン侯爵の態度にチラリとそんな感じも見えたのだが、気にしないでおこう。


 そんなクロエが俺に顔を向けて。

 「なに?」

 嫌がっている風でも怒っている風でも無いが、笑っては居ない。


 「いや……頑張ったなと思ってな」

 戦争もキツいが、その負傷兵を診るのも辛かったろう……殆どが死んでいくのだ。

 そしてその事はクロエもわかっているのだろう。

 フッと目を伏せて、俺の問いには答えなかった。

 頑張ったところで、無力だった自分。

 

 そんなクロエ達にも何か報いるモノをと考えると……やはり金がと為るようだ。

 コーヒーを啜りながらに。

 「仕事……するかな」

 戦争以外なら魔物退治くらいしか思い付かないが、それでも幾らかの金には成る。



 と、外から聞き慣れないバイクの排気音が響いてきた。

 いや、知っている音だと思いなおす。

 空冷のL型2気筒の排気音だ。

 ドカッティの大排気量バイク。

 だが、それはダンジョンのショッピングモール爆発で埋もれた筈では?

 

 勘違いかと気になって、小屋の外に出たらば、アンが居た。

 バイクはドカッティ900Mモンスターだ。

 

 「帰って来たと聞いて遊びに来た」

 アンが俺の顔を見て笑っている。


 「帰り着いたのは昨日の深夜だが……誰に聞いた?」

 もう日は昇ってはいるがまだ午前中だ。

 今日一日はユックリとしようと朝から風呂に入ったのだが……ややこしい事に成りそうな予感がする。

 アンが居てややこしく成らなかったのためしはない。

 「まあそれはいいが……そのバイクは?」

 本当は気になるところでは有るが、敢えて無難な話で誤魔化そうとそう聞いた。


 「ローザが見付けて来てくれたんだ」

 パンとバイクのタンクを叩いたアン。

 「貴方のバイク、2台も有るぞ」

 と、ガレージを指差す。


 俺はその指されたガレージを覗いて驚いた。

 端にドカッティ900ssとホンダのドリーム50が置かれている。

 だが、驚いたのはそれではない。

 真ん中に2号戦車のルクス……その砲塔に5cm砲が載っかっている。

 後方に隠れ見えるプーマには砲塔が無いので、それを移植したとはわかるが……それが何故にここに有る?

 これは計画段階で消滅したドイツ軽戦車のレオパルトだ。


 「あ、戦車長……どう思います? これ」

 マンセルが俺を見付けたのか声を掛けてきた。

 

 「どうと言われても……レオパルト軽戦車だよな」

 

 「レオパルトと言うのは良くはわかりませんが……軽戦車なのに20トンを越えているですよ」

 否定的な目で戦車を睨んだマンセル。


 「ああ……重いな」

 俺も一応の相槌。


 「でも5cm砲だよ」

 そこにローザが割って入ってきた。

 「t-34中戦車と正面切っては無理だけど、上手く立ち回れば倒せる性能はあるし凄いじゃない」

 さあどうだ!

 と、そんな顔に見える。

 「速度も55km出るし……装甲も50mmも有る」


 「10トンの38(t)と変わらん」

 その38(t)はガレージの奥の奥に追いやられている。

 速度はエンジンを載せ変えての話だ。

 「t-34も倒した」

 鼻息荒いマンセルには、普通にでは無理だけどなとは言わない方が良いのか?

 

 「まあ……スペックだけなら3号戦車と同じだな」

 重さも装甲も砲も同じ、サイズも似たようなものだし……違いを探すとすれば搭乗人数か?

 3号戦車は5人だが、レオパルトは4人だ。

 その人数の差は大きい。

 そのまま戦力差に成る。


 「でしょう、それならコストの安い3号戦車の方が優れている事に成る」

 俺の同じだの一言にマンセルも頷いた。

 「こんな無駄なものを造って……」

 パンとレオパルトを叩いたマンセル。


 「でも……こっちの方がカッコいいじゃない」

 ローザも理屈ではわかっている様だ。

 

 「形は……パンターにそっくりだしな」

 そこの部分には俺も同意だ。


 「でしょう、でしょう」

 俺の言葉にはしゃぐローザ。


 「戦車長はどっちの味方なんです?」

 じろりと俺を睨んだ。

 「この戦車……買えるんですか? この値段なら4号が買えますよ」


 その一言には俺も唸るしかない。

 明らかに無駄金だ。

 4号中戦車の方がはるかに強い。

 砲も7.5cmだし、t-34中戦車やシャーマン中戦車と並べるスペックだ。


 「無理だな……金が無い」

 有っても4号を買う。


 「その点は大丈夫」

 ニコリと笑うローザ。

 「仕事を少し手伝ってくれればすぐだよ、そんな金額」


 「仕事?」

 ローザの仕事って何だ?

 戦車を売り歩くのか?

 

 「簡単な仕事」

 端に有るバイクを指差して。

 「ダンジョンに行って、そこに有る車やバイクを動く様にしてくれたら良いだけ」


 ? な顔に成る俺に説明を続けたローザ。


 「後は私が、それをここで売るから」

 そう言って両手も目一杯に拡げて。

 「ヴェルダン&ローザ商会をここでやるの」

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