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ファウストパトローネ  作者: 喜右衛門
異世界の暮らし
178/317

帰還

364ポイントだ!!

上がってる!


嬉しい。

応援有り難う!


明日も頑張る。

また明日!!




 俺は屋敷に戻り、風呂に入っていた。

 温めのお湯にボーッと浸かる。

 何もかもかもが簡素で狭くて小さい小屋なのだが……戦車が納まるガレージと、この風呂は大きい。

 手足を伸ばしてもその足先には触れるモノもない。

 湯は常に流れて注がれる。

 マンセルに聞けば、これは水を出す魔石の力なのだとか……良くはわからんが実質的に掛け長し温泉みたいなものだろうと、無理矢理に納得。

 そして酷く疲れた身体を癒してくれる。


 あの後……。

 初めての戦闘を終えて、身体を休める間も無く撤収作業をして……。

 あの辺りの全てを捨てて帰って来たのだ。


 俺達は引き分けの様な形だが。

 あのエリアを見渡せば完全に負けている。

 街を占領されて、国境が押し下げられた。

 失うモノは有ったが……得られたモノは何も無い。

 それでも敢えてと言うなら、魔方陣の描かれたヘルメットが2つだけだ。


 雨の残る陣地を、逃げる様に後にし。

 ヴァレーゼの街に近付かない様に迂回して。

 車輌には動けない負傷兵が優先されたので、足が無事な歩兵は徒歩で南に移動する。

 目的地は次に近いアンの居た街。

 そこからなら列車で王都まで行けると、疲弊した兵士達を鼓舞する。

 

 途中、街から逃げ出した避難民も合流しての大所帯。

 敵に追われるかも知れないと恐怖し。

 魔物に襲われるかもと震えて。

 休む事も惜しんでの行軍だ。

 それは非戦闘員で有る民間人だけでは無くて、負けたと意識下に刷り込まれた兵士達も一緒だった。

 皆が怖がったのだ。


 獣人の子供達を除いて。

 特に犬耳三姉妹は小さな魔物を見付けてはバイクで追い回して狩りをしていた。

 それは俺が指示をしたわけでは無いが、その行動には俺も積極的に参加していた。

 バルタと一緒に魔物を見付けては子供達に教える。

 その元気に走り回る姿で、うちひしがれた皆を少しでも勇気付けられればとの思いでだ。


 実際にそれは上手くいっていた。

 俯いて歩いている者の数人でもが、前を向いてくれた。

 そして雨が止む頃には……近くに来た子供達に声を掛ける者も現れる。

 

 「元気だね」

 兵士の1人なのだが、ここ何日かで顔見知りにでも成ったのだろう。

 にこやかにでは無いが、疎ましくは感じていないそんな素振りだ。

 「楽しそうで……羨ましいよ」


 「魔物を狩るのって楽しいよ、それに美味しいし」

 返事を返しているのはネーヴ。

 モンキーに跨がり、こちらはにこやかだ。


 「怖くは無いのかい?」

 

 「怖いけ時も有るけど……そう言う時は、何時もパトがねブツブツ独り言を言っているの、それもわけのわからない事」

 チラリと俺の方を見て。

 「そんなどうでもいい事を聞いていると、不思議と怖くは無くなるの」


 戦闘中の念話での話か?

 いや、違った俺の頭の中が駄々漏れのだった。

 

 「成る程、強い指揮官なのだね」

 横で聞いていた別の男だ。

 国軍の司令官だった。

 トラックが有るのだから、それに乗れば良いのにとも思ったが、怪我人と今は子供や老人迄もが乗っていてそのスペースも無いようだ。

 

 「強いかな?」

 首を傾げたネーヴ。

 「本当にわけわかんないよ? それに敵も目の前に居るのにだよ?」

 

 「だから凄いんだよ、敵しか目に入らない兵士は早死にするんだ……だから、みんな別の事を考える様に必死なのに、それを回りに普通に聞かせて自然にやらせるのはヤッパリ凄い」


 誉められている様だが、何を言っているのかがわからん。

 ネーヴも俺と同じような顔に成っている。


 「戦場では敵は1人じゃあ無いし、敵しか見ていないと恐怖だけが膨らむ……そして、判断を間違えるんだよ」

 戦車から顔を出していたマンセルがネーヴに教えてやる。

 

 「そう、だから俺なんかは銃の弾を込める時にルーチンワークの様に決まった雑談をするようにしているのさ」

 最初の兵士だ。


 「コイツの話は、故郷のかみさんの造るシュニッツェルが不味いって話だ」

 司令官が笑った。


 「本当に不味いんですよ、あんなの誰が作ったって旨い筈なのに……それが不味いって相当でしょう」

 声に明るさが少しだけ乗っかった。


 「シュニッツェル? ってナニ?」

 食べ物だろうと推測は出来た様だけどモノがわからないとそんな顔。


 「ドイツって国の、カツレツだよ」

 俺も参加する。

 「とてもメジャーな料理で……カレーライスに不味い筈は無いってのとおんなじ意味かな?」


 「カレーライスって……何です?」

 今度はマンセルが首を捻った。


 うーん、異世界には無い料理か……。

 「カレーは今度、花音と一緒に作ってやるよ」

 何処かのダンジョンで材料を仕入れればすぐ作れる。

 「シュニッツェルは……クロエかアリカが作れるんじゃあないか?」


 少し考えたネーヴ。

 「今度……作って貰おう」

 美味しいモノらしいとは理解した様だ。


 「今みたいな話を戦闘中に出来れば、視野も狭く成っていないし……恐怖もコントロール出来てるって事なんだよ」


 また考え出すネーヴ。

 「でも……パトのはもっとわけわかんない、変な事ばっかりだったけど」


 「確かに戦車長のブツブツは意味不明でしたね……でも、笑えたろう?」

 マンセルも同意しているが、随分と失礼な事を言われている気がする。


 「確かに……騙されたとか、そうなのか! とか、自分で言って自分で納得して、自分に突っ込んでた」

 頷いたネーヴは笑いながらに。

 「うん、笑えた」


 明らかに馬鹿にされている気がする。

 が、今の俺の心の考えにはネーヴもマンセルも反応がない。

 『俺の心の中は筒抜けじゃあ無いのか?』

 念話で確認だ。

 

 それにはペトラが答えてくれた。

 『今は、普通にしてます……パトさんの頭の中はオープンにはしてないです』


 『成る程、自在にスイッチ出来るのか……なら、出来れば辞めてくれ』


 『花音ちゃんに言われたんです、戦いに為ったらそうした方が良いって』


 花音が?

 そう言えば、戦闘の直前に何か変な事を言っていたが……あれは、花音の注意だったのか?

 変な事を……それを考えるのはいいが、聞かれたくない事は考えるなとでもか。

 確かに、心を覗かれるそれを経験したその直後だ。

 自分が転生者だとか、それ以外にも危険だと思えることには、無意識にだが注意を払って居た。

 

 『樺音ちゃんが言うには、これだけの人数にそれぞれ指示を出していたら、パトさんがややこし過ぎて混乱するから、なら考えを全部オープンにすれば、それは指示とおんなじだって』


 成る程、確かにだ。

 そしてその事に俺が気付いて居ない事も重要なのだろう。

 気付いて居れば、それに合わせて構える。

 それは、ヤッパリ混乱しそうだ。


 だが、その事で子供達は見事に連携出来ていた。

 やはり、花音は賢いのだろう。

 多少のズルは着きそうだが。

 

 

 そんな事を思い出しながらの風呂だ。

 あああ……と、大きな声が漏れ出る。


 「おじさん臭いよ」

 目の前に浮いている、ピンク色をした尻が喋った。


 「ヴィーゼ君……何故に居る? それも裸で……」

 

 「だって、お風呂だもん……服を着てては駄目でしょう」


 「その風呂に何故居るのかと聞いている……そして、尻を向けるのはよしなさい」


 「パトが入るって言うから、一緒にと思って」

 パシャパシャと水を掻きつつ。

 「それに泳いでいると、お知りって浮くのは普通でしょう?」


 「風呂で泳ぐのはよしなさい」


 「広いんだし良いじゃん……誰も見てないし」


 いや、見えているぞ……大事な所が丸見えだ。

 そんなヴィーゼを摘まみ出そうと立ち上がったら。

 ガラリと音と共に、今度は三姉妹が入ってきた。

 もちろん全員が裸だ。


 「あ! パトこんな所に居たんだ」

 「探してたんだよ」

 「バルタが逃げちゃって、捕まえて欲しかったんだけど……」

 三姉妹は何も隠そうともしない。

 小さいモノも大事な所も……。

 

 「少しは恥ずかしいって感じてくれ……何時まで子供のつもりなんだ?」

 俺は、溜め息とと共に吐き出した。

 

 「まだ11だし」

 三人で声を合わせた。

 「私は6才」

 オマケはヴィーゼだった。

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