殲滅戦から電撃戦
340ポイントだ!
上がってる。
嬉しい。
ヤッパリ上がると嬉しい。
明日も頑張れるぞって為るからスッゴイ嬉しい。
みんな有り難う。
また明日!
負け戦なら、こちらの戦場をどう始末を着けるかだ。
ヴァレーゼは放棄するしかない。
その街が無い現状、伸びきった補給線では長期戦は無理だ。
撤退を考えるのだが……目の前の敵はまだ居る。
ある程度の決着を着けるしかない様だ。
その決着……俺達が生きて撤退なら、敵の戦車隊を壊滅か?
それ以外の決着は……死しかない様にも思う。
現状のまま背中を見せればそのまま後ろから撃たれるだけだ。
だが、勝機も有る。
敵が森を抜けてヴァレーゼに攻め込んだと成れば相当な戦力を掛けた筈。
俺達が見た敵戦力はこちら側だけを見るなら不正確な数だ。
現に引き込まれたとは言っても然程の抵抗は受けては居ない……それはこれからかも知れないが。
どちらにしてもこの場所を完全に制圧する必要は無くなった。
敵と引き分けて……そこにプラスがほんの少し有れば良い。
『ちょっとだけ有利な引き分けで十分だってことだ』
ボソッと小さく念話で呟く。
俺の心を覗き見ているみんなにはそれで理解出来る筈だ。
『みんな近くに居る国軍に伝えろ……作戦の変更だ』
そこで少し考え込む。
後退戦と告げるべきか?
その言葉は味方の士気を削ぐ可能性が有る。
そして、夜間で雨のこの状況では同士討ちの可能性も……。
それは追撃してくる敵と逃げてくる味方の区別が難しく為るからだ。
今は遅滞行動をしている敵……自軍の有利な地形に誘導する形の戦術行動、これも一種の後退戦なのだが……それは戦力が消耗しての事では無い。
何時でも前に出れる。
現に何度も前に出ては遅滞行動を取っている。
ロシア軍の得意技でも有るのだし……。
フランスのナポレオンがロシアに攻めた時にそれで散々苦しめられた。
敵の奴隷兵士がソビエト兵ならそれも理解しての行動だろう。
『殲滅戦から電撃戦に移行だ』
実際に電撃戦は行わないが、そう指示を出せば電撃戦を知っているドイツ奴隷兵士は戦車が来るまでは前には出ない筈だ。
殲滅戦と電撃戦は似ている様で違う。
殲滅戦は兎に角全体での攻撃と突入だ。
電撃戦はそれを幾つかのブロック、後方の砲兵……本来なら航空機か? が敵の造る戦線に穴を開けてそこを戦車が突破して前戦を前に引いく。
それらを連携しての行動だ。
その連携される戦車が来なければ前には出れない。
それ以前に高度な連携に欠かせない無線機も無いのだ……端から無理なのだが。
それも有ってか今は殲滅戦に成っている……いや、古い考えの指揮官……今ここに居る指揮官のその上か? が、そうさせているのかも知れない。
街並みも文化も古いヨーロッパだ、なら戦闘も19世紀以前のモノでも当たり前の事なのだろう。
貴族軍に至ってはもっと古い戦争の仕方をしようとしていたのだから。
大将の一騎打ちってのは何世紀前だ?
アンが以前に言っていた転生者がもたらした中途半端な知識でのイビツな形、それがここに現れているのだろう。
とにかくここで作戦を混乱しない程度に変えて、後退戦へのタイミングをはかるしかないだろう。
それが俺の理解出来るベストで、実際には行われない電撃戦の指示だ。
『ヴィーゼは今は何をしている?」
俺はペトラの肩に手を当てて聞いたのだが。
『これからドカンの予定」
ヴィーゼ本人が答えてきた。
「岸の近くの草の影に居るみたい……浅い所で頭とお尻が水面から出てる」
念話を通さずにペトラの見た景色を教えてくれた。
「今は、岸に手榴弾を並べて……準備中?」
『ドカンとやったらすぐに戻ってこいよ……でないと置いてくぞ』
気付かれずに岸近く迄行けたのだ。
後は驚かすだけでじゅうぶんだ。
もう……追い掛ける足を送らせる事が出来ればそれで良い。
『マンセル、バルタ……敵の戦車の足を狙え」
どんなに硬い戦車でも履帯の強度はそれほどでもない。
そして移動出来なければ追っては来れない。
『それはまた無茶な注文だ」
呆れる様な声のマンセル。
それはそうだろう、履帯が切れても砲はそのまま動ける、それは固定砲台に為るだけだ。
撃たれる弾の数は減らないし、当たれば終わる。
その中を走り回らなければ次の戦車も狙えない。
『倒せそうなら倒すさ」
問題はそんな敵戦車の数が少ないと、そう言う事だ。
『まあ、死にたく無ければアクセルは目一杯に踏み続けろ」
火を吹く倒した敵戦車を盾にして一気に西に移動する。
見えない敵はバルタの撃つ砲撃で確認出来る。
そしてそのバルタ、裸足の足で前に座るマンセルの背中を蹴っている。
右の肩を蹴られたマンセルは戦車を右に曲げて、左を蹴られれば左に向かう。
成る程、見えないマンセルが自在に戦車を動かしていたのはバルタのおかげだったのかと納得だ。
そしてそれは敵の撃つ砲弾を巧みにかわしていた。
だが、それも数輌の戦車を止めただけですぐ終わる。
背後に残した固定砲台と為った戦車が砲撃を仕掛けてきて、それを避けるだけが精一杯の状況だ。
敵を攻撃する間が取れない。
『しかし、妙に正確に撃ってくるな……」
夜の雨の中で……しかもt-34でだ。
『近くに、エルフが居るみたいですよ……そんな感じがします」
ペトラそう教えてくれる。
『そのエルフも見えては居ない見たいですけど……たぶん私達と同じように情報を共有してるんじゃあないかな?」
エルフの能力持ち同士の感じるってやつか。
初めてエルとペトラが出会ったときの会話だな。
『そのエルフの頭の中は覗けないのか?」
『それは……無理見たいですね、お互いが認め合って居ないし」
無線機のチャンネルが違うって感じか……電波は近いので雑音が入るからわかるそんな所だろう。
『なら、ソイツを倒せば良いのかな?」
それで繋がりが切れて分断出来るのでは無いだろうか。
わざわざペトラは近くにと、言った。
そのエルフ以外は殆どがフェイク・エルフで通信の能力は無いってことだろう。
『でも、問題はそれは何処に居るかだが……」
『たぶん有れね』
イナがその俺の言葉に答えてくれた。
『丸っこい戦車に乗っているヤツ』
エナにも見えている様だ。
丸っこいというならシャーマン戦車か。
『ソイツは何処に居る?』
倒すべき優先順位が決まった。
奥に隠れては居るのだろうが始末してやるさ。
俺はHEAT弾を握りしめる。
『大丈夫』
『私達がやるから』
イナとエノが同時に。
『さっきからチョコチョコと顔を出してるんだけど……』
『もう少しで射程内に入れるから任せて』
kar98k小銃で狙撃するのか。
『車で走りながらでは無理だろう』
シュビムワーゲンは大概に揺れる、そこからの射撃は不可能だとも思うが。
『私達は停まってるは……動いているのは敵の戦車の方』
『こちらに向かって走ってくるのよ』
状況が見えないので焦って出てくる、そんな感じか。
パンと乾いた音。
後方そちらを注視していたから聞こえたのだろうが、思いの外近い。
そしてすぐ後に後方で固定砲台に成っていた戦車が火を吹いた。
こちらは三姉妹の誰かの仕業だと思われる。
その燃えた戦車に照らされたシュビムワーゲン。
運転席には女の子1人。
後席には銃を構えて仁王立ちの女の子。
イナとエノだが、どちらがどちらかはわからない。
事を終えた車はすぐに闇に走り込んで消えたので黙視は出来ない。
だが、敵戦車の挙動は変わった。
動けるヤツは後退を初めて、固定砲台と成っていたヤツからは戦車兵が逃げ出している。
もちろんそれを三姉妹がstg44短機関銃の餌にしている、逃す筈もないとそんなところか。
しかしこれで奴らの無線機……エルフの通信能力はわかった。
その範囲は狭い?
違うか、奴隷兵士をコントロールするにはだろうか?
エルやペトラは離れて居ても通信は出来ている、エルフ同士とエルフと奴隷兵士では範囲と距離が変わる……そこはエルやペトラと同じだ。
だが、それでも通信手段は持っている……。
詰まりは奴らには電撃戦が可能だと言う事だ。
笑うしかない。
今回がどうにか為ったとしても何時かはそれをやられる日が来るんじゃあないか?
その事を知っている奴隷兵士達の言葉を聞ける者が現れたその時が、こちらの国の負ける日に成るのだろう。
エルフ供もこちらと変わらぬバカで居てくれれば良いのだが……。
いや……もうその片鱗は見せているか。
通信を戦争に利用していたのだから……。
後は理屈だけだ。




