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ファウストパトローネ  作者: 喜右衛門
異世界情勢
133/317

夕食のパスタ

264だ!

今日も上がってる。


応援ありがとう!

明日も頑張る。


 その日の夕方。

 夕食の準備を始めていた。

 最初の場所に火を起こして、大きな深鍋に水をタップリと張って湯を沸かす。

 作るのは新鮮なトマトのパスタだ。

 それを作る切っ掛けは、昼間の話なのだがだ……まずは順番に。


 マンセルと別れてから、俺とバルタはアウトドアショップに行って、テントやキャンプ道具を店に有った、コールマンの折り畳み式の引っ張りカーゴに詰め込み、何度か往復していた。

 その荷物の殆どは直接に軽トラに積み込んで、その同じ物を試しに最初の場所で広げていた時にオルガだけがスクーターで帰って来た。


 「ほかの者は?」

 の俺の問いに答えたオルガ。

 「最初に曲がる筈の所を、曲がらずに真っ直ぐ走って行っちゃった……」

 

 やはりか……レースに成らなかったようだ。

 たぶんまだダンジョン中を適当に走り回っているのだろう。

 「で……勝負は着きそうだったか?」

 その問いには、オルガは肩を竦めてわからないとジェスチャーをするだけ。


 「呼び戻す?」

 バルタが俺に聞く。

 「エルを呼べば、念話で声を掛けてくれると思うけど」


 「いいよ……放っとこう」

 持ってきたテントの一つ、ケシュアのポップアップテント3人用を、平たく丸いケース袋から取り出しながらに続ける。

 「遊び疲れるか、腹が減れば帰ってくるだろう」

 そして、テントを縛っている幾つかのフックを外して、空中に放り投げた。

 バサッと音と共に広がり、テントの形に成って床に落ちる。

 

 「ウワ! 凄い」

 「魔法?」

 驚いたオルガとバルタ。

 初めて見れば魔法の様に見えるのだろう。

 そう言う俺も少し驚いてはいた。

 前から欲しかったテントなのだが、なかなか買う機会がなかったのだ、釣りをしていた学生時代には良くテントで寝たりもしていたのだがその時はまだこのテントは知らなかった……いや、たぶん、まだ無かったと思う。

 これの存在を知ったのは仕事を始めてからだ。

 外回りの暇潰しに寄った店に置かれて居たのだが、その横に置かれたテレビでされる説明に驚いたのだ。

 以来、何時かはと思っていたのだが……キャンプをしなければ全く必要の無いモノで有るのは確かだし、俺にはそれを買う理由を見付ける事が出来なかったのだ。

 今回はそれを手に入れる、至極真っ当な理由が出来たから一番にそれを手に取った。

 だけど、これは所詮は3人用。

 今の人数を考えれば小さ過ぎる、一番大きな10人用のテントが2つ有ればそれで事足りて、コイツは必要無いのだが……。

 ソコは大の男が女の子と一緒に寝るのは不謹慎だと決め込んで、持ってきたのだ。

 

 メインに成るその10人用のテントはノルディスクのアスガルドでワンポール式のテントだ、これは想像以上にデカイ。

 さっきのアウトドアショップにデモ用で立てて有ったのだが相当だった。

 だがワンポール式のテントは簡単に設営出来るのだが、ペグが打てないと自立しないのだ。

 その形はアメリカのインディアンのテントとモンゴルの移動式住居のゲルを足して2で割った様な形のテントだ。

 それとロゴスのナバホと言うワンポール式の3~4人用のテントも持ってきた。

 これはそのままインディアン式のテントの様な形をしている。

 そしてナバホと言う名前はそのままナバホ柄と言う事なのだ、だからカラフルだけど落ち着いた感じの……まあ、お洒落なテントだ。

 これにはバルタが食い付いたのだ。

 展示品のテントに、子供の様に中にして中に入り……目をキラキラさせて俺を見てくるのだ……実際に14才の子供なのだが。

 しかし、そうなれば仕方無い。

 持ってくるとの選択肢しか選べないだろう。

 どうせ、只なんだから。

 そして、そのテントもワンポール式なのでショッピングモールの硬い床では立たない。

 だから其々、2個づつをそのまま軽トラに積み込んだ。

 何故に2個づつなのかは簡単だ……獣人の子達と村娘達が取り合いの喧嘩に成らない様にだ。

 しょうもない気を使わせてくれる。

 そして今、広げたケシュアのポップアップテントも1つを先に軽トラに積んである。

 それが1つなのは、それは俺用のテントだからだ。

 俺、専用。



 「お湯が沸けたよ」

 バルタが教えてくれた。

 俺はその鍋に乾燥パスタと塩を放り込む。

 

 「あら? パスタを茹でているの?」

 そこに帰って来たコリン達。

 各々の手には大量の美容雑誌が握られていた。

 「代わりますよ」

 そう告げて、俺を押し退けるアリカ。

 「トマトのパスタね」

 横に置いていた大量のトマトを指差すリリー。

 「ソースは缶詰?」

 ハンナが掴み上げる。

 

 「簡単で良いだろう?」

 パスタに拘りでも有るのか?

 元はドイツ人だからなのか?


 「バジルは?」

 「チーズは?」

 「オリーブオイルは……有るわね」

 其々が口々に注文を付けてくる。


 「うーん……必要?」

 それは取ってきてない。


 そもそもパスタを作る事に成ったのは、ニーナがビーノでここの外をぐるりと回っている時にイタリアンレストランを見付けたと俺に教えてくれたからだ。

 じゃあ晩御飯はパスタにしようと、3人でそのレストランに行って材料と鍋を適当にニーナのスクーターの牽引カーゴに詰め込んだのが始まりだ。

 普段、料理をしない俺はバルタやオルガに聞いたのだが……。

 バルタはズッと囚われの身で料理はわからないと言うし。

 オルガは村に居た時は、家の仕事で発行蔵に居る事が多かったのでお母さんの料理を手伝う事もあまりしていなかったと言う。

 つまり……マトモに料理の出来る人間がそこには居なかったのだ。

 だから、無いモノは無い。


 「必要? じゃあ無くて、有って当たり前でしょう」

 コリンが俺達に詰め寄った。

 それにアタフタするバルタ。

 俺は頭を掻いて、ニーナは唸った。

 

 「取って来ます……」

 ニーナが手を上げる。

 「スクーターなら、すぐソコだし」

 そう言いながらビーノに股がる。


 「待って」

 それを呼び止めたコリン。

 「リリー、一緒に行ってくれる?」

 呼ばれたリリーは頷いて、ビーノの牽引カーゴに乗り込んだ。

 「オルガだけに行かせると、何度も往復に成りそうだから……お願いするわ」

 それを聞いていたオルガも俺も苦笑い。

 バルタはまだオロオロ中だ。

  

 「でも、この茹でているパスタが問題ね」

 ローラが鍋を覗き込みながら呟く。

 「リリー達が、帰って来る迄に茹で上がっちゃう」


 「じゃあ、ピッツァにしましょうか」

 ハンナが軽トラから浅い鍋とヘラを取ってやってくる。

 「ここに入れてくれる?」

 

 「パスタでピザが作れるのか?」

 俺は少し驚いた。

 

 「材料は同じ様なモノだから出来るわよ」

 そう言いながら、浅い鍋に入れられたパスタをヘラで潰し始めた。

 「潰して捏ねて、ピザの種を作るの」

 流石にパン屋だと感心させられる。

 そんなのは普通に思いつかん。


 そんな俺をチラリと見たハンナ。

 「それよりも……テーブルは無いのかしら?」


 その視線に慌てた俺は。

 「取って来る」

 今度は俺が走る事に成る。

 行き先はアウトドアショップだ。

 キャンプ用のテーブルと椅子を掻き集めよう。

 その後ろからバルタも着いてきた。

 オロオロに疲れたのだろうか?

 


 そんなこんなで1時間を程。

 その頃には獣人の子もバイク組も戻って来ていた。

 獣人の子達はショッピングカートを見付けた様で、そこに大量の服を入れている。

 そしてエルの服が変わっていた。

 詰め襟の学ランは止めて、テラテラの真っ赤なスカジャン……背中には派手な柄の絵。

 なぜにそれをとはもう思わない。

 コレがエルの好みなのだから仕方無いと諦めるしかないのだろう。

 だが、1つだけ気になったので聞いて見た。

 「最初にあげた皮の袖のスカジャンはどうした?」


 「あれは……お気に入りだから、家に置いてきた」

 そうか……気に入っていたのか。

 「これもいい感じだけど……同じのが無かったから仕方無いわ」


 成る程、同じ皮の袖のヤツを探しに行っていたのか。


 「ほら……背中を見て」

 クルリと裏返り、自分の背中を指差して。

 「ドラゴンがカッコいいでしょう?」


 ……いや、確かにドラゴンだけど。

 それは、和柄の登り龍だよ。

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