マンセル式ダンジョン克服法
260ポイント……。
下がったか……。
少し奴隷娘にえげつない表現をし過ぎたのかな?
もう少しソフトにか……。
明日も頑張ろう。
少し反省。
ダンジョンの中に入ってユックリ進んだ。
俺と花音の最初の場所。
地下には花音の母親も眠っている。
適当な時にでも挨拶に行くか……花音に気付かれない様にして。
さて、今回は別段、欲しい物は無い。
敢えてと言うなら、テントに寝袋か?
が、子供達はもちろん娘達もハシャイで居る様だ。
どうにかしてハシャギたい気持ちなのだろう。
イヤな気持ちを圧し殺すために。
それも理解しての事で、村娘達には。
何か欲しい物が有るのなら、車に載る分だけは好きなだけとは言ってあるが、もう大概、隙間は無い。
どうせ、化粧品か服かお菓子だろう……喧嘩に成らなければ良いのだが。
それはそれで、元気に成れるか。
マンセルは電動アシスト自転車に興味が有るようだ。
昨日の俺の一言でそれはどんなモノかとシツコク聞いてくる。
俺にそれを詳しく説明する知識は無いので、ここで実物を見てもらおう。
マンセルの知りたい技術的な事なんてサッパリだ。
モーターと電気で動くんだ、そう言ったら。
「それで何故に漕ぐ必要が有るのか? バイクでも構わないだろうに、そんな難しい事をする意味がわからん」
確かにその通りなんだが。
「人の力にどうやってモーターの力を足すんだ?」
さあ?
「モーターをどうコントロールしてる?」
わからん。
そんな事を延々と聞かれた。
俺にわかるわけがない。
なので実物を見せる事にする。
後は勝手に調べて解読してくれ……だ。
それらを考えると元国王に最初に会った場所。
ショッピングモールで良いだろうとそこに向かう。
広い建物の中で、そこで火まで焚いたのだ雨風凌げて最高だし。
多分だがそこにはキャンプ用品屋も有るに違いない。
いや、某アニメの影響でか流行っていた様だし、有る筈だ。
自転車屋は……無ければ駐輪場だな。
後は……知らん、好きに探せだ。
「魔物が居ますね」
バルタが、キューポラから半身出していた俺の服を引っ張った。
「何処だ?」
新しく住み着いたか、それとも湧いたか?
そう簡単にはいかないかと、緊張の度を上げる。
「目の前です……スライムですね」
進む、道路の脇に小さいゼリー状のスライム、色とりどりの数匹が固まって蠢いていた。
「なんだ……スライムか」
小次郎が9mm弾がオーバースペックで勿体無いと言いながら倒していたっけ。
アレもこの近くだ、この辺りはスライムの縄張りなのかも知れないな。
「イヤなもん見ちまいましたね」
マンセルが苦々しく呟いた。
「所詮スライムだろう?」
何か問題でも有るのか?
「スライムってのは死肉にタカるんですよ……特に人の肉が大好きだ」
「死肉?」
その蠢いているスライムに目を凝らすと。
端の方、影に隠れがちな所に……足が見えた。
革靴を履いた、誰かの足だ。
スライムはそれを食っていた様だ。
「まあ、だから死臭は無いんですけどね」
溜め息。
「何処のダンジョンでも、最初に集めるのはスライムで……一応は綺麗に死体の片付けをしてくれるんですが」
首を振って。
「それでも……それを見たくは無いですね」
「虫が湧くとか……ウジ虫がタカるとかじゃあ無いのか……」
「それも有りますが、スライムはそれらも一緒に食っちまうんですよ」
「ある意味……衛生的か」
死体からの疫病は防ぐ事が出来る。
「スライムって、レベルが上がれば人化けするのかな?」
人を好物として食っていれば……か?
「するわけ無いでしょう……スライムですよ、何処まで行ってもスライムです」
そりゃそうだ。
ブヨブヨ蠢いてる透明な身体に脳らしきモノも見えない。
知能も原生動物依りも劣りそうだ。
最弱は最弱で居てくれ、そうで無いと夢も希望も無くなる。
人は下が見えるから、夢と希望が持てるんだ。
下だと見下してたやつに見下ろされては堪らん。
俺はルガーp08を腰から抜いて構えた。
スライムの一匹に狙いを着けて撃つ。
パチンと弾けた透明な身体がドロリと溶けて消えた。
そのスライムの空いた場所に別のスライムが入り込み、そこで蠢きだす。
人肉とスライムの死体……液体も一緒に食っているのだろう。
確かにマンセルの言うとおり、あまり見たくは無いものだという事に俺もそう思うと首を振る。
地下鉄駅上ショッピングモールにはスグに辿り着けた。
初めての時は気付かなかったが、このダンジョンはかなり小さい。
戦車や車を適当に、駅前の歩道に乗り上げて停めて、そこからは徒歩だ。
戦車から降りた俺は辺りを見渡す。
ここらにはスライムは目に付かない。
ここまでの道では至る所に居たのだが、もうこの辺は食いつくしたのだろうか。
もしそうなら有難いとも思う。
見たくないモノを見なくて済むのだから。
「スライムは骨まで溶かして食いますから……探しても無理ですよ」
マンセルも戦車から降りて、俺の行動を見ながら教えてくれた。
全員で中に入る。
入ってスグのホールが前回の場所。
焚き火の跡もそのままだ。
「ここでキャンプだな」
少し離れたがガラスに戦車も見える。
ナンならガラスを割ってここまで持ってきても良さそうだが……そこまでする必要も無いかと頷いた。
「ねえ、探検してきていい?」
「危ない事はしないし……銃も持ってくから」
エレンとアンナだ。
銃をポンと叩いたのはアンナの方。
「いいよ、あんまり遠くには行くなよ」
「わかってる、バルタ一緒に来て」
バルタの手を引いたのはネーヴだった。
「ここって前に来たこと有るんでしょう? 案内してよ」
それを見ていたエル。
「ねえ、私達もいい?」
イナとエノを指差して。
「一緒に行くから良いでしょう?」
自分が小さい子供だからだろうか、何時もはそんな事を気にした事もないのに……いや、子供だから駄目だと言われる前に先に予防線を張ったのか。
成る程、抜け目の無いやつだ。
「いいよ、花音やヴィーゼも連れてってやれよ」
別段、子供だからと止めはしない。
みんなは十分に戦える事はもう知っている。
そんな獣人の子達依りも問題なのは村娘達だ。
この娘等は、年は上だがまだ戦う術が無い。
やはり、この娘達は俺と一緒に行動かな?
と、悩んでいると。
「私達に銃を貸してくれない?」
言い出したのはコリン。
俺のMP-40を指差している。
「撃った事が有るのか?」
「無いけど……撃ち方は前に教わったわ」
村での事か。
「無いなら駄目だ、そんなぶっつけでウロウロはさせられない」
何処かで、俺の目の届く所で経験して、ある程度の連度を上げてからでないと危なくてしょうがない。
「何処かに行きたい所が有るなら、俺が着いて行くぞ」
「じゃあ、自転車の所へ」
俺は娘達に声を掛けたのに、答えたのはマンセルだった。
「え……ああ、わかった」
どんだけ気になるんだ。
ダンジョンの恐怖に打ち勝つんだ、相当だろう事とわかってはいたが。
「みんなも着いておいで、ついでに銃の撃ち方も教えるが……どうする?」
教えて欲しいならと、シュビムワーゲンが引っ張る牽引車を指差して。
「どれでも好きなのを銃を取ってこい」
それに頷いたのはハンナにコリン。
二人が取って来たのは俺が何時も持っているMP-40サブマシンガン。
替えのマガジンもしっかり掴んでポケットに入れているので、村で教えて貰ったと言うのも嘘では無いようだ。
しかし、コリンの格好が……ブレザーの女子高生そのまんまでサブマシンガン。
しかもポケットにマガジンが刺さったどっからどう見ても外国人の娘。
いろんな要素が目白押しだ。
だが、ここまでごちゃごちゃだとそういうもんか? と、思い込んでしまいそうに成る。
たぶん、それは美人だからか?
「まあいいや」
俺は左右を見て、獣人の子供達が行かなかった方に指を差して。
「行くか?」




