進行方向の戦車
246ポイント!
今日も、また少し上がった。
有り難う!
明日も頑張る。
また明日!
俺達は今、森を抜けて草原を走っている。
結局キャンプは丸々5日もあの場に留まってしまった。
車が一台増えたので、村娘達のハンナとペトラ以外の7人はピンクのバモスだ。
運転はニーナ。
シュビムワーゲンには運転手のイナとヴィーゼと花音だけ。
何故にそんな歪な乗り方に為ったのかと言うと。
俺が倒れたあの後、目が覚めると俺とマンセル以外が全員で裸で寝ていたのだ。
ヴィーゼに釣られたのだろうが、余りにもみっとも無いその姿に怒鳴ってしまった。
特にクロエが酷かった、スッポンポンで大股開きでヨダレ迄垂らして……。
そして、散乱している花音のチェキ……。
そこに写っているのは裸で悪ふざけしている全員の姿だった。
因みに俺とマンセルは酔い潰れて居たので裸には成っていない。
さて、俺に叩き起こされた村娘達は大騒ぎだ。
俺が寝ている間にイタズラされたと大暴れのクロエとニーナとオルガ。
だが、花音に撮られたチェキが全てを知らしめて。
事実を知った村娘達はピンクのバモスに逃げ込んだのだ。
それ以来、俺は村娘達と口を聞いていない。
みんなが俺を見ると、顔を真っ赤にして俯いて黙ってしまうからだ。
そして獣人の子供達は自分の痴態も含めて大笑いしていた。
それはイナとエノとエルと花音もだった。
その四人は少しは恥ずかしがるのかと思ってたのだが。
エルと花音は所詮は8才、そこまでの羞恥心は無い様だ。
イナとエノは12才だが、やっちゃったものは仕方無いとヤハリ笑い飛ばした。
それ以外は裸は当たり前なのでハナから笑っている。
陽気なのも良いが……少しは恥ずかしがれと言いたい。
みんな女の子なのに……。
と。そんなこんなでギクシャクした感じを残しつつ、森を抜けて草原に出たのが今だ。
目的地はまだまだ北の端で、その距離は相当遠い。
地図を見れば、その間にも寄れそうなダンジョンは在るのだが、その状態では危なくて行けそうもない。
それ以前にマンセルがもう嫌だと、完全拒否を決め込んでいるという理由も含めてだ。
「しかし、雨は止まないなあ」
「秋の季節雨ですからね」
マンセルが俺の独り言に答えてくれる。
「秋雨か……にしては良く降るな」
もう少し緩い感じだと思っていたが、異世界との地域差か?
「止めば一気に冷え込みますよ」
「冬か……寒いのは嫌だな」
その俺の一言にピクリと反応したバルタ。
本来4人乗りの38(t)に五人乗っているので、俺とバルタはほぼくっついている。
そのバルタが少し俺にもたれて来た。
バルタ自身も寒いのが苦手なのか?
それとも俺が発した寒いのはの言葉に、くっつけば暖かいとでも言いたかったのかは不明だが、実際に温もりが伝わるのは確かだった。
そのバルタの耳がピクピクと動いた。
魔物でも見付けたか?
「誰か居る様です」
少し予想外の答え。
「誰かとは……人か?」
「はい……戦車と馬車です」
「何処だ?」
戦車と聞けば、魔物とは違う緊張感が出てくる。
まだ前線には遠い内陸だが、敵で無いとも言い切れない。
現にここよりも王都に近いダンジョンで出くわしている。
戦争相手の敵では無いが、俺達を攻撃する意思を持っていた事には違いない。
「まだ……ズッと先ですが……」
「が?」
「進行方向が同じなので、いずれは追い付きます」
今なら回避する選択も有るとそう言いたいのか。
「それはt-34か?」
聞いたのはマンセルだ。
「違うと思います……もっと静かです」
「t-34は意味が有るのか?」
戦車なんて色々有るだろうに、それに拘る理由はなんだ?
確かに今まで、俺達に敵対してきた戦車は、奪われた小次郎のシャールb1以外はt-34だったが。
「敵国の1つフェイクエルフ共は、赤い星の戦車を使いたがるんですよ……だから自ずと一番多いt-34に成るんです」
成る程、ソ連戦車に拘るのか。
そう言えば、ドワーフの里で売っていたのはドイツ製の戦車や乗り物だった。
こっちは黒十字か白十字に拘っているのか?
「普通のエルフもか?」
普通が良くはわからんが……どう表現して良いのかがわからん。
「真性エルフは白い星ですね」
真性エルフで良いのか。
で、そいつ等はアメリカ製の戦車と。
「なら……シャーマンか……」
俺のスキルと同じ名だ……ややこしい。
「赤い丸に白と青の輪か、丸で囲ったBか、何も描かれていない戦車はパピルサグ人で……ミュルミドーン人はそれらの混合でバラバラです」
「なに? パピルサグ? ミュルミドーン?」
「東の国のパピルサク人ですよ蠍の尻尾の竜人です……南のミュルミドーン人は蟻の姿の昆虫人、どちらも亜人です」
「成る程……」
さっぱりわからんが、敵なのだろう。
「で、イギリス戦車か……そのパピルサグ人てのは」
「旦那……軍人でしょう?」
呆れて居るのが手に取る様にわかる。
それに最近は戦車長とも言われ無く為った……。
俺の立場が微妙に成りつつ有るのか?
「まあ、そんなのを気にしなくても勝ってきたんでしょうけど……せめてもう少し……」
勉強しろと?
「いいだろう? 味方が黒十字か白十字でじゅうぶんだ」
今知ったのだが。
あれ? 小次郎のシャールb1はフランスでは?
フランス敗戦後にドイツに接収されたb2戦車だったのか……マーク違いで全く同じモノだが。
「まあ……戦車長がそう言うならそれでも良いんですがね」
うわ……この戦車長って言葉は嫌みっぽいな。
まあ、何でもいいや。
「で、何でt-34だ」
その部分がわからん。
「だから北の国はフェイクエルフの国なんですよ」
「あ……成る程」
「まあワシ等以外は全部敵で連合軍ですから、混ざっている事も有りますがね」
それって東西南北を囲まれているって事か?
「因みにですが、それら全部の国に貴族階級は無いので、戦車に乗ってるのも一般軍人ですよ」
不思議な言い回しだが、こっちの国で戦車は貴族兵で、それ以外は一般兵って事か。
ややこしい。
軍としての別組織なのか?
そんなんで勝てるのか?
「で、どうするんです?」
マンセルが面倒臭いとの思いを隠さなく為ってきた。
「避けるか……追い付くかですよ」
「t-34じゃあ無いなら味方の可能性の方が大きいんだよな?」
ウーンと唸り。
「味方なら避けたとバレると不味いよな?」
バルタのいう距離ならまずそれがバレる事も無いのだろうが……万が一というのも有るかも知れない。
味方で戦車なら確実に貴族なのだし……それは厄介事の元に成りそうだ。
「……じゃあ、真っ直ぐ走りますよ」
いいですね?
と、念を押された感じか。
マンセルに無理矢理決断させられた様なものだが、それも仕方無い。
『みんな聞け、前方に戦車が居るが敵か味方かがわからん、だから俺よりも前には出るな……注意して進め』
特に犬耳三姉妹にはしっかりと言い含めたいが、流石に念話の大声でしかも名指しでは三人も怒るだろう。
だから雨の中でもキューポラから半身を出して、勿論三姉妹を睨みつつの指示だ。
せっかく乾いた背広がまた濡れるではないか。
だがその甲斐有ってかバイク部隊は38(t)の後ろの影に隠れてくれた。
いや、違うか。
犬耳三姉妹は何時も素直だ。
俺に対しても……自分に対しても。
ただ少しだけ調子に乗る事が有るだけだ。
あと、我慢も若干足りないか。
「随分と近付いて来ました……たぶんもうパトでも双眼鏡を使えば見えるかも』
俺が半身外に出たので念話と音声を同時に掛けてくれるバルタ。
見えはしないが頷いて返して、双眼鏡を取り出した。
常に首から下げているのは重いので、戦車の中に置きっぱにしていたヤツだ。




