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ファウストパトローネ  作者: 喜右衛門
異世界情勢
114/317

トンネルを抜けると……

222ポイント!

上がってるぞ!


よし信じたw

このままだ!


ポイント有り難う!

明日も書ける!

有り難うみんな! 




 暗いトンネルの中を俺の懐中電灯の光とモンキーのライトで慎重の進んで行く俺達。

 犬耳三姉妹は流石にバイクを降りて押していた。

 ライトの為だけにエンジンは掛けたままだけど、歩く速度に合わせるのは遅すぎて乗り難いのだろう。


 「薄気味悪いわね」

 俺の後ろを少し遅れて歩くオルガがコリンにしがみついて呟いた。

 「壁のシミが気持ち悪いよね」

 ローラも同意はするが、こちらは一人で俺のすぐ横を着いてきている。


 俺は懐中電灯の光を上下左右に振ってみた。

 シミは滲み出した水がコンクリートの壁を伝い、光の当たる加減で白く黒くを変化させている。

 

 「まあ、まだ魔物も居ないみたいだし怖がる必要も無いと思うぞ」

 たぶんそう言う問題では無いのはわかっては居るのだが、一応はだ。

 魔物の居ない元の世界でも、古びたトンネルは何故か怖いのだ。

 出ないとわかっていても、居ない筈のナニかが……そんな気配が……脳裏の何処かに引っ掛かるのだ。

 そんな気がするのだ。

 だ。

 ……。

 チラリと横に歩いて居るエルを見た。

 ローラの反対側だ。

 そんなエルも俺を見て目が合う。

 「魔物の気配は無いわ……でも、何か居るかも」

 

 「何ってなに?」

 俺に代わってオルガが震える声で聞いてくれた。


 「わかんないけど……確かに何か変よね」

 エレンが答える。

 「匂いはしないけど……」

 鼻を動かすアンナ。

 「何が同とかって説明出来ない何か……」

 キョロキョロと辺りを確認しているネーヴ。

 

 いや……それって、怖いヤツじゃん。

 ブルブルっと背中が震える気がした。


 「キャ!」

 突然にオルガが悲鳴を上げる。


 「なんだ!」

 俺は振り返って懐中電灯を構えた。

 光に照らされたオルガは腰の引けた低い姿勢だ。

 同じ姿勢に成ってしまっている俺の腕を掴んだエルはそのまま上に押し上げて天井を照らす。

 「水が落ちてきただけよ」

 確かに滴が垂れているのが見えた。

 

 「脅かすなよ……」

 そんな俺の呟きに、エルが目線で訴えている。

 こんな事で驚かないでよ、と。


 「まあ気配は有っても襲ってこないのだし、それは居ないのとおんなじだよね」 

 エレンが明るく笑った。

 「チョッと気に成って鬱陶しいだけよね」

 アンナも笑ってる。

 次はネーヴか? と、俺は視線を向けたら。

 そのネーヴは黙って笑っていた。

 ? な、顔をして。


 「で、どうするの?」

 俺の肘を掴んだエルが俺に聞く。

 「どうするも何も、気配だけでは……」

 そんな俺の言葉を遮って。

 「違うわよ」

 もう一度、腕を取って今度は横に光を動かす。

 照らし出されたのは駅のホーム。

 そこを伝えば地上に出れるのだろうが……。

 俺は光を下に落として床を見た。

 平らに均されたそれはまだ先に続いている。

 「そこから上がっても、車は出せないでしょう……通れそうな所を探す?」

 エルはこの人工的な床は車の為に造られたモノだと理解している様だ。

 俺もそれには疑問の余地もないと思っている。

 大規模に造ったこの床を見ればそれが普通の考えだろう。

 「先を見てみよう」

 そのまま進むと意思を示すのがこの場合の正解だとは思うのだが。

 俺はそれを言えずに。

 「取り敢えず上に出るか?」

 完全に逃げている。

 一応の言い訳は、上に繋がっているのなら上からでも探せるだろう?

 見付けられ無い時はもう一度ここに戻ってくれば良いのだ。

 オルガ達も震えているのだし、それが正解だと……そう言う事にしといてくれ。


 「え……バイクを置いてくのは嫌だな」

 もちろんエレンはそう言う事にはしてくれない様だ。

 「段差と階段は?」

 アンナもだ。

 「良いよ……私達だけで先に行きましょう」

 ネーヴはそう結論付けた。

 

 「じゃあここから二手ね」

 エルもさっさと決めて掛かり、プラットホームに手を伸ばす。

 言ってみただけだからとの言い訳はさせてくれない様だ、三姉妹も既に走り出していた。

 え~……。

 呆けて見送る俺にエルの声が飛ぶ。

 「パト……昇れない」

 プラットホームの縁に半身を掛けては居るが、足場の無い状態でもがく脚をバタバタとさせている。

 遠ざかるバイク。

 もがくエル。

 両方を見比べて、頭を掻きながながらに諦める事にした。

 上で落ち合おう。

 

 俺はエルの腰を持ち上げてプラットホーム上に転がしてやる。

 それを見ていたローラは次は私とばかりに俺の横に立った。

 残りの者は……何故かその後ろに並ぶ。

 イナとエノは成長変化を使えば自力で上げれそうなモノなのに。

 コリンだってギリギリ行けそうだろう?

 まあ……良いけど。

 と、順番に転がしていく。

 各々は俺が腰を掴むと変な声を上げていたが、嫌なら自力での突っ込みは無しにしといた。

 面倒臭いだけだ。


 俺だけは最後に自力で上がる。

 誰も上げてくれる者が居ないのだから仕方無い。

 居ても頼まないけど……。

 そんな気色の悪い事。


 明かりは俺の懐中電灯だけに成ったが、地下鉄の駅なんて何処も似たり寄ったりだから、階段を探す事も容易だ。

 


 見付けた階段を登り。

 駅の改札を乗り越えて外に出る。

 駅前のロータリーが目の前に在り所々に木々が侵食していた。

 林と言える程ではないが、明らかに違和感の感じられる緑。

 でその右手に背の高い大きなビル、百貨店の様だ。

 左手は背は低いが横に伸びた複合商業施設の様だ。

 その両方を含めた目に入る全ての建造物には蔦が這っていた。


 この駅で降りたご年配の御姉様は右に。

 そうでないお姉さんと子供は左に行くのだろう。

 そしてどちらに行くにも少し濡れなければ行けない様だ。

 条件は同じ。

 こちらには高級品に拘る御姉様方は居ない。

 だが、俺はどうせなら高級な背広が欲しい。

 だから右に向かう事にする。

 どうせ誰もわかってないのだ、着いて来るしか無いのだと歩き出す。

 

 「魔物も居るのよね?」

 後ろのオルガはまだ不安そうだ。

 「そうだな、居るかもな?」

 そう答えてエルを見る。

 エルは首を振って居ないと教えてくれた。

 まあ、居ても居なくても欲しいモノが有るのだ、だから取りに行く。

 車は後で適当に探せば良い。

 だいたい魔物なんてのは見えるし触れるのだ、だったら銃で撃てば良い。

 戦って勝てば良いのだ。

 勝てそうに無ければ逃げれば良い。

 単純な話だ。

 ここまで来て怖じ気付いてどうする。


 蔦や草木を掻き分けて、常に開け放たれているガラスの扉を潜る。

 建物の中は光も入らず暗かった。

 だがその暗さのせいか草木の侵入も無い、ほんの少しの誇りっぽさだけで済んでいる。

 濡れた服や身体にその埃がまとわり着いて来るがさっさと上に登って着替えれば良いだけだ。

 高級百貨店の造りなどどれも然程変わらん。

 だいたい紳士服は二階か三階だ。

 なので階段かエスカレーターを探そうとするのだが、ここで大きな誤算に気が付かされた。

 

 俺達には御姉様は居ない。

 だが、御姉様予備軍は居た。

 予備軍だ、つまりは何時かは歳を取りその御姉様に成る。

 元々はその素養が有るのだ。

 そしてその片鱗をいち早く見せたのは、やはりコリンだった。

 覚醒させたスイッチと為ったモノは、高級百貨店の一階の出入口付近から一番目に着く所に必ず有る超が付く高級化粧品売り場。

 一目でそれともわかる華やかな色合いを演出している店構え。

 そこに俺の懐中電灯の光が当たった瞬間に、それまで少し腰の引けて大人しくしていたコリンが俺を押し退けて前に出た。

 ピンク色の歓声を上げながら。

 そしてそれはオルガに伝染してローラにも伝わる。

 そうなればイナとエノにも影響が出ないわけもない。

 俺とエルはその五人に引き摺られて幾つも有る有名メーカーの化粧品選びに付き合わされる事と為った。

 これはなんだ?

 あれはどうだ?

 どうすればいいの?

 それを俺に聞くなと言いたい……が、そんな根性も見せたくは無いので店の奥に回って販促様のカタログを探しそれを手渡した。

 高級な紙に印刷された薄っぺらいモノだが、そんなモノだけでそれが何かを完璧に理解して見せる五人。

 そして最初に手に取ったモノはやはり口紅か……それが一番わかりやすいからだろう。

 コリンは自動電気スタンドと化した俺を横に置いて自身の口にそれを当てた。

 色は薄いピンク色だ。

 流石にいきなり濃い赤色は躊躇したようだ。

 年齢的にもその方が良いだろうと、コリンの研ぎ澄まされて冴え渡った勘が判断したのだろう。

 

 だが、すぐに落胆が伝わってきた。

 色が乗らないのだ。

 理由は俺には簡単にわかった、時間凍結で固まっているのだ。

 そして、それは俺ならすぐに解除出来る。

 出来るのだが……大いに悩まされた。

 それをすれば確実にここに居る時間が伸びる事は明白だ。

 チョッと行って、すぐに帰るという俺の目論見は果たせなく成る。


 しかし、明らかにへこんで潤んで居る五人のその目には、それを抵抗する術は俺にはなかった。

 口紅を手に取り、自分の甲にピンク色の線を引く。

 「これで……使えるよ」

 そして俺は建物じゅうに響き渡る五人の黄色い歓声に怖じ気付く事に為る。

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