02.竜の話。弐
――この子供がやって来るようになったのは、暫く前、丁度襲い掛かって来る人間共を返り討ちにして追い払った日の次の日だった。
ふらっと、――そう、ふらっと、というのが一番しっくりくる――いつの間にかそこに立っていたその子供は、ぼーっとした顔でこっちを見て何か呟いた後。
パッタリと、倒れた。
内心動揺しつつ暫く様子見していると、寝ている時のような呼吸音が聞こえたので一先ず胸を撫で下ろし。
(いや、何で態々ここに来て倒れるんだよ!?)
ということに気づいた。
随分と薄汚れた格好をしたその子供には、鑑定して視た所怪我や病気は無かった。
[???:人族、状態異常 無し]
(とすると、身内か?)
“ドラゴンの血は万病に効く”とかで、俺の血を狙う輩は多い。
今まで何万人に切り掛かられたことだろう。
(どうせこいつも――って、あれ?)
子供は“何も持っていない”と言えるほど持ち物が無かった。血を持ち帰る気なら、何かしら瓶などを持って来るのにもかかわらず、だ。枝を折ること位しか出来なそうなボロいナイフと、水筒、食料が入っていると思しき鞄。よくこんな装備で此処までたどり着けたものである。
子供が目覚める気配を見せないので、鞄の中を開けてみる。
(下手に引っ掛けたら破きそうだな……と、開いた。さて、鞄の中身は、と……弁当と、後は日記、いや、手記って奴か?)
手記については……、字が汚くて読めなかった。
ただ、ドラゴンが住む場所はなんとかかんとか~の辺りだけは読めた。
(全っ然、起きねえな……。)
あまりにも起きないので、翼の先で突く。
《おい、起きろ》
返事がない。
《起きろ、子供》
……。
《子供、此処で寝んな》
べしッと強めに叩く。
「うにゃ…」
尻尾にしがみ付かれた。
《おい、しがみ付くな》
子供を振り払う。
割とあっさり取れた。と、安堵したのも束の間、
たら、と子供の頭から血が流れた。
《うおおッ!?》
――慌て過ぎだろう、と、思い出すだに嫌な記憶である。
――あの後急いで治癒魔法を掛け、浅い傷だったらしい子供は、けろっと目を覚ました。
「やっぱりドラゴンさんだ……」
と言って。
(本当に妙な子供だ)
としか思えなかった。
態々俺の巣にやって来たのに、碌な装備もしておらず、俺に襲い掛かるでもなく。どうせ他の人間と同じように俺を素材としか見ていないだろうに「ドラゴンさん」などと言う。
コレを妙と言わずになんと言うのだろう。
――子供が“妙”どころか一周通り越した“変人”である事を知るのは、もう少し先の話。
字が読めるのはチート持ちだから(強弁)
戦闘シーンが作者に書けないので省かれていますが、このドラゴンは最強系チートです。
デメリット有り(自分の固有能力で無ければ見るまで使えない)だけど、見ただけで相手の能力を使えるって反則だと思うんだ……(白目)
子供に気付かなかったのは超寝ぼけてたからさΣd(・ω・◯)