第14話 学ぶ戦略
少し急いでるので後書きの文をば
次回投稿は明日の16時です
門真君達の戦闘の運び方が先手を打って速攻ならば、こちらはどうか
基本的には変わらないと思う。ただ、火力の差はあるみたいで、速攻で仕留めきれない時の後方支援が役に立ってますね
それだけ言うと、門真君達に劣っているように聞こえるかもしれないが、戦闘の運び方は堅実そのもの。実際に門真君達と相対したら、少なくとも俺にはどちらが勝つかは予想できない
辛うじて勝率が門真君達の方が高いかな?というぐらいだ
「『扇射ち』」
またも、早速敵を見つけた雫ちゃんが技を発動する
どうやら複数の矢を扇状の広範囲に同時に射る技のようだ。4体の、40階層の敵であるガーザイドに向かって放たれた矢は、避ける隙間もない密度で襲いかかる
その分厚い皮膚のせいで貫通こそしなかったものの、傷口から矢が消えると同時に体液が流れ出てくることから、浅くはない傷だとわかる
というかね。今のはスキル?それとも技術的な方?凄すぎて分からなかったんだけど
多分俺も習得するのに多少時間がかかると思う。弓なんて使ったことないし、当てるだけならできるだろうが、後は微妙なところだ
「ハァ!」
「フッ!」
「「『光の槍』」」
まだ遠いガーザイドに向けて前衛2人が走り出し、同時に陽乃ちゃんと飛鳥ちゃんが魔法を唱える
前衛の頭の上を高速で抜けた光で出来た槍は、そのままガーザイド2体に当たり、貫通する。やはり強い、『光の槍』
若干陽乃ちゃんの方が威力が弱いけど、それは後衛職の飛鳥ちゃんと比べたらの話で、十分強いと思う
そして魔法が発動し終わったタイミングで前衛も到達し、残った2体へと追撃
「『剛拳』!!」
野村君は、前に俺に使った技を使って、素手で倒す。威力ヤバいね、分厚い皮をものともしない強さだったよ
そして御門ちゃんは剣で倒す。本当に切れ味のいい剣で、鑑定してみてもいいですか?
個人の物に関しては勝手に鑑定しない方針なので止めておきましょう
「よし、終わったな!」
「楽勝ね!」
「二人共、そう言って油断してるとやられちゃうよー?」
「同感」
「私達が援護しなかったらどうするの?」
「その時はその時!」
「4対2でも行けると思うよ」
元気ににんまり笑顔浮かべる野村君と御門ちゃん。それを3人が窘めるが、反省の兆しは見えない
だがモチベーションとしては高い方が良いので、まぁ士気が低いよりは全然いい
そして、スピード的には門真君達よりは速く移動しているために、44階層まで来た。意外と速いのではないだろうか?時間はもう少しなので、そろそろ帰らないと行けないが、まぁ少し伸ばしても問題は無いだろう
「こいつ火が全然効かないよ!?」
「凄い効きそうなのに!?」
敵を発見し、先制で魔法を撃った飛鳥ちゃんと陽乃ちゃんだが、相手である芋虫魔物に苦戦していた
名前は『ハイドキャタピラー』。虫だから火に弱そうというイメージだが、実際はこいつは火に強い。[火属性耐性]を持っているぐらいだし。独自の進化でも遂げたんですかね?苦手を克服したみたいな
だから魔法よりも物理で倒した方が速いのだが、それも問題があり……
「うりゃ!!」
野村君が芋虫を恐れることなく殴りつけると、柔らかい皮膚は沈み、そしてブシュッ!と音を立てて破けると、中から緑色の液体が飛び出る
「うっわ汚ない!だけど物理が効く!御門、柄澤!」
「いや無理無理無理!!」
「気持ち悪いし!出来るわけないじゃん!!」
とまぁこのように女性陣は近接での攻撃は絶対に嫌がります
野村君はともかくとして、御門ちゃんと陽乃ちゃんは顔を横にぶんぶん振っている
野村君も手を見て「うへぇ」と言っているので、あまりやりたくない模様。俺も嫌だしなそんなん
まぁその後は普通に飛鳥ちゃんが風魔法で倒しましたとさ。切れ味がいい風魔法なら楽に倒せるしね
ただやっぱりそういうところはしっかりとして欲しい感じはするな。仕方ないとはいえ、命の危機に繋がる可能性も無きにしもあらずだし
俺としてはどっちかっていうと素手でやれる野村君にビックリしたけどね。俺だってせめて剣は欲しいし
[恐怖制御]を持ってしても抗えない恐怖とはこれいかに。生理的嫌悪というのはスキルをも超えるわけか
「うぅ、ひどい目にあったよぉ……」
「それは俺の台詞だよ!なぁ飛鳥、水出してくんね。手がベタベタで気持ち悪い」
「ちょっとまってね……はい」
飛鳥ちゃんが無詠唱で作り出した『ウォーターボール』に手を突っ込んで洗う野村君。確かに素手は辛いが、文句を言いながらも出来ている野村君は本当に男前だなぁ。俺も男としては頭が上がらん
だからと言って、出来るようになりたい訳では無いが
「男なんだから文句言わないの!」
「そんなこと言って、御門は後衛に逃げてたじゃんか。しかもお前無詠唱で出来るけど、威力はそこまでじゃないんだし……」
「あー何も聞こえない!何も聞こえないから!」
耳を塞いであからさまなアピールをする御門ちゃんに、疲れたような視線を向ける野村君
ここにきてテンション高いキャラから男前にクラスチェンジしてすごいなぁと思っていたんだが、ズバリというんだな
俺なんか女の子ってだけで優しくするから無理だぞ。叶恵とかは除く
「陽乃も、後衛に逃げちゃダメ」
「うぅ、雫ちゃん……そうは言ってもさぁ……」
「槍なんだから、遠くからやれば別に付かない。槍についたのは、魔法で落とせばいい」
「さっさとこの階を降りればいいのよ。寛二を先頭にして」
「おまっ!?それは卑怯だぞ!」
「多数決よ多数決。寛二を先頭にするのに賛成の人~」
「はい!」
「まぁ、実際芋虫は嫌だし……」
「元々先頭だったし、異議はない」
「そ、そんな……」
あぁ、多数決に持ち込まれたら、女子の方が多いんだから勝ち目はないわな
膝をつく野村君に、手を合わせてご愁傷さまと瞑目。次の階は違う敵だから、そこまで頑張ってくれ
45階層。階層主が居る階層だな。そこまで来ましたよ
ここの敵は『シルバーウルフ』という狼。強さ的には迷宮外だとレベル30程度、ここだと50から60ぐらい?
ここでは御門ちゃんと野村君が光っていた
「フッ、ヤッ!」
「オラァ!!」
動きの素早いシルバーウルフ相手に、こちらもヒットアンドアウェイの素早い動きで対抗して、足止めに専念する
一番意識しているのは横を通って後衛の方に行かせないことだろうか?サイドステップをして警戒を煽っている
たまに抜かれそうになっても、綺麗に
「二人共下がって!『凍眠』!」
二人が下がると同時、飛鳥ちゃんの魔法が発動する
局所的な氷点下の領域を作り出す、上級水魔法『凍眠』。分厚い氷を作り出す『凍結領域』と違い、『凍眠』は温度だけを変える。これだけだと、物理的にも動きを封じることが出来る『凍結領域』の方が有用だが……
「『アイスレジスト』!」
合わせて陽乃ちゃんが前衛2人に魔法を使用する
中級水魔法『アイスレジスト』。文字通り、魔法をかけた相手の寒冷耐性を引き上げるものだ。原理?『魔法だから』が原理だろ
『凍眠』と『アイスレジスト』、二つが合わさることで、『凍結領域』よりも有用な手段となるのだ
周囲の温度が目に見えて下がり、シルバーウルフは表面の水分をひとつ残らず凍結させ、ただでさえ白い毛が一層白くなる
筋肉は寒さで縮小、血行不良を引き起こし、極端に動きが鈍る。それによりシルバーウルフは自身の俊敏性を活かせなくなる……
満を持したとばかりに突撃していく野村君と御門ちゃんを見ながら、戦略だなぁと感心する
基本俺は、動きが早かろうが構わず広範囲魔法で倒したり、偏差射撃や高速で魔法を放って当てるから、こんな風に工夫することは少ない
だからこそ、学ぶことも多いわけで、一つ頭の中に魔法の組み合わせコレクションが増えた
なお、既に頭の中にある魔法は、前に使った闇属性の影系魔法コンボだな。めっちゃ強力になるし、避けようが無くなるから、やはり組み合わせるのは強力なのだろう
「イェーイ終わった終わったー!」
「ヘッ!楽勝だな!」
「MVPじゃん!」
「飛鳥と陽乃の魔法が無かったら無理だったんじゃない?」
「それも含めてでしょ!チームの勝利というやつよ!」
なんだかんだ言ってこの士気の高さも影響しているのだろう。ピースサインをしながら戻ってくる御門ちゃんは、汗一つかいていない笑顔を向けている
……当たり前だ。寒さに強くなっても、暑く感じるようになるわけじゃないんだし、温度が氷点下の場所にいて汗をかくわけがない
「さぁさぁ!この調子で行こうぜ!」
「確かこの階層にはボスが居るんだっけ?」
「そう。トウヤさんに聞いたら、『ポルターガイスト』っていう、騎士のモンスターだって」
「……いつの間に聞いたんだよ」
「さっき」
……はい。少し前に雫ちゃんと目が合いましたが、その時に聞かれました。なんで分かるのかね?目が合うまでは分からないっぽいんだが
確かに本気で気配を消しているわけじゃないけど、スキルで言うと気配遮断のレベル8程度ぐらいまでは気配を遮断しているのだが。自力でここまで出来るのを誇りに思えばいいのか、雫ちゃんにバレるのを悲しく思えばいいのか
あれか、陽乃ちゃんが魔力を特別感知しやすいように、雫ちゃんは気配を感知しやすいのか
まさに双子じゃないか。対称的だが、ある意味双子である証明だ
「ポルターガイストって、あの突然物が動くヤツ?」
「ゲームで言う方の、剣が勝手に動いて攻撃してきたりとか、中身が入ってない鎧が動くやつだと思うよ」
「ん。そんな感じらしい」
「中身入ってないって、どうやって倒すんだよ」
「さぁ?」
「おい!そこをトウヤさんに聞けって!」
なんか言ってるけど、流石にそれまでは教えないよ?
最初からわかってちゃ、100層を超えた後に大変だろうしね




