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第19話 初対面?

 ギリギリなのは、いつもどーり。




 「先程は助けていただき、ありがとうございました」

 

 振り返ると同時に、事の収束を認めた茶髪イケメンが、頭を下げてきた。


 ……直接相対すると、違和感しか感じないな。


 「私たちだけでは、あそこまで丸くは収まらなかったでしょう。穏便に済んだのは貴方のお陰です」

 「……いや、別に構わないよ。見るに耐えなかったから、勝手に手を出しただけだし」


 うむ。こいつ(〃〃〃)に敬語言われるとか、違和感極まりないぞ。

 若干対応が雑、というよりは、親しみのあるものに変わる。これは、別に相手に親近感や安心感を与えるなんて言う目的がある訳では無い。


 最後に『よ』や『だし』を付けて、少しでも口調を柔らかくしたのだが、やはりやりにくさは残るな。時間が経ったら素の口調に戻そう。


 「それより、ここは少し目立つから、どこかへ移動しない?」

 「えぇ、それは構いませんが……」

 「あと、敬語もいらないよ。多分同年代だろうからね」

 「んん!?」


 おいなんだその反応。またあれか、歳上だと思ったってやつか? お前(〃〃)がそんな驚くのなかなか見ないぞ。


 俺、そんな老けて見えるか? いつもそうだ、やたら歳上、それも大人に見られる。


 まぁ、老けてるんじゃなくて、大人っぽいと思っておくことにしようか。

 毎回見た目も変えていることだしな。



 ◆◇◆



 場所は変わって、あまり人のいないカフェのような店。

 先程食事はしたばかりなので、俺達は飲み物だけ頼み、俺とルナ、ミレディと、その対面に勇者4人が座る。

 ……間違えた。俺の膝の上にミレディが正確である。緊張から固まってしまっているミレディは俺が介抱中だ。

 そのせいか、視線が集まっているが……ミレディの服装が相まって、なんだかメイド服を着たお人形さんである。


 流石の俺もこの状況には苦笑い。ミレディだけでなく、知り合い(〃〃〃〃)と初対面(〃〃〃〃)という体で話すなど。


 「改めて、あー、先程は助けてくれて感謝する。俺は城処(〃〃)拓磨(〃〃)、気づいていると思うが、勇者だ」

 「もっと砕けてもいいんだけど、それが素なのかな?」

 「そんなところだ。気にしないでくれ」


 名乗った茶髪イケメン……今まで意識しないよう敢えて茶髪イケメンなんて呼んでいたが、聞いての通り、相手は拓磨。

 となれば、残るメンバーも名前は分かるわけで。


 「───なるほど、樹に叶恵に美咲ね。覚えたよ」

 「一度しか名乗ってないのに、もう覚えたのか?」 

 「記憶力はいい方なんだ」


 嘘ではない。樹相手だと、少し言動に注意しなきゃ行けないからな。

 こいつと話してると、意外なところで悟られかねん。樹は感情を読むのは苦手なはずだが、推理や違和感を掴むのは得意だろう……最初に勘づかれるとしたら、樹一択だ。


 ───普通なら、な。


 「おっと、俺も名乗らなくちゃだね。俺はイブ(〃〃)。さっきは、まぁ、成り行きで手を出したけど、そんな大それた人じゃないから」

 「……まーた嘘嘘」

 「はい自己紹介」

 「ご主人様の愛しの奴隷のルナでーす」


 茶目っ気たっぷりというか、軽い感じで挨拶をするルナ。なお、ミレディについては俺から紹介済みである。

 ここまで笑顔の奴隷も中々居ないだろう。


 一言余計なのだが。


 「愛しの……?」

 「奴隷……?」

 

 女性陣、叶恵と美咲からの目が少し冷たくなる。(向こうにとっては)初対面ということもあり、普段のように露骨ではないが、俺でなくても分かる程度には冷たい。

 おい、俺の印象を下げにかかるな、ルナよ。


 「ハハハ、手は出してないよ。俺は」

 「変態だけどね~」

 「ルナは黙っててくれ、頼むから」

 「ふっふーん」

 「……イブさんは、奴隷を奴隷らしくは扱わないのだな。親しく見える」


 俺とルナのやり取りを見ていた拓磨が、意外そうに聞いてきた。

 なるほど、こいつらはもしかして、主従関係を見るのは初めてか。


 「まあね。勇者様には意外に思うかもしれないけど、別に奴隷だからって雑に扱うなんて人は、意外と居ないよ。まぁ、冒険者や貴族の中には確かに居るけど、庶民ほど、奴隷相手でも普通に接したりする……ウチは少々特殊だけどね」

 「へぇ~……ただ、なんで俺達が意外に思うなんて分かったんだ? それがこの世界の常識なんだろ?」


 ほらな。早速ツッコミを入れてきた。

 今は特に疑っている訳では無いだろうか、下手に矛盾を作ると、疑念が残ってしまうだろう。

 恐らく一度俺が殺されかけたことがあるので、樹は普段からではないにせよ、最低限の警戒はしていると思う。無論拓磨等もそうだが、樹の場合は結構厄介だ。


 「樹達以外にも勇者に会ったことがあるんだけど、その時もルナの反応からそんな感じのことを聞かれたんだ。なんでって聞き返したら、『異世界人はそう思う人が多い』って答えてね」

 「なるほど……その勇者って?」

 「この国の北西にある、ヴァルンバって国の勇者だよ」


 ちなみに俺は、樹がヴァルンバを知っていることを確信している……恐らくこいつも、図書館の本を読み漁っただろうからな。

 ある程度の地理や国の情報は、真っ先に叩き込んでいるはず。

 

 「……ねぇ、変なこと、聞いてもいいかな?」

 「ん? あぁ、構わないよ」


 すると、叶恵が控えめに聞いてくる。少し距離を感じるのは、物理的なものでは無いだろう。

 普段の叶恵の遠慮なさがない……のだが。

 

 「イブ君って、私とどこかで会ったことある……ってことは、あるかな?」

 「………」


 ……もしや、バレた?


 「あ、ゴメンね。変な質問しちゃって……」

 「いや、全然。そうだね……俺は叶恵とはさっきが初めて会ったな」

 「そっか、そうだよね……」

 「どうしてそんなことを?」


 冷や汗が垂れていないか確認しながら、俺は叶恵に聞く。どうやらバレたという訳では無いようだが……。


 「ううん……イブ君ってさ───私の知り合いに少し似てるから」

 「あ、そうね。言われてみれば、確かに似てるかも」


 叶恵が言うのに続いて、美咲も頷く。

 人の雰囲気は、そう簡単には誤魔化せない。例えば、俺なんかは、相手が姿を変えていようと雰囲気からある程度の推測はできる。

 

 だが、それは俺だからできるのであって、言っては悪いが、美咲はともかく、叶恵にそんな観察眼はないと思うのだが。


 「え? 誰に似てるんだ?」

 「樹君は分からないか……イブ君って、刀哉君に似てる気がするんだよねぇ」

 

 ……女の勘、だろうか。

 だが、この際だ。バレている訳でもないようだし、少し、普段は聞けないことでも聞いておくか。


 「ふぅん……その"刀哉"って人は、友達?」

 「え? ……う、うん」


 おい、なんだその反応は。何故顔を赤らめて恥ずかしげに頷く。


 お前はそういうキャラじゃないだろう! もっとこう、天然って感じでさぁ!


 幸いにして、周囲にはそれほど疑問をもたらさなかった。俺としては、その反応は困るのだ。


 樹がどう思うかが、気がかりで。


 「そっか。俺と似てるって言うけど、どういう人なの?」

 「そうね……取り敢えず、不思議な人、かしら?」

 「それは、俺が不思議っていうことかな?」

 「ふふ、そうかもしれないわね」


 ……褒められているのか貶されているのか分からん。


 「あぁ、頭脳明晰、運動神経抜群、戦闘力も高いが……」

 「総じて評価は『変な奴』だな」


 拓磨が言い、樹が引き継ぐ。なるほど、お前らの中で俺は変な奴か、そうか。


 「あ、そうそう。後は、何となく安心する雰囲気っていうのも、刀哉君と同じ!」

 「それ、わかる気がするわ」

 「あー、あいつの近くにいると、何故か『大丈夫』って感じするよな」

 「そうだな。俺も、刀哉は無条件で信頼出来る感じがした……本人には絶対に言えないが」


 叶恵が気づいたように声を出すと、3人も頷いた。

 それは前から言われてたな。『刀哉ってなんか安心すんだよなー』とは樹の言葉か。


 拓磨から素直にそう言われたことは無いが、やはりそう思ってくれていたのか。嬉しいのだが、男では複雑だ。


 「なるほどね。その刀哉って言う人は、不思議だけど、一緒にいると安心出来る友達ってところかな」

 「あぁ。間違いなく、最っ高の親友だな。多分後にも先にも、あいつ以上に信頼できる相手はいない」


 これ以上聞いても過大評価しか出てこなさそうなので切り上げようとすると、そう言い切った樹。だからやめろって、お前はキモい。


 樹はなぁ、一歩間違えればBLルートに入りそうで。いや、俺は絶対認めないが。


 だが……まぁ、むず痒くはある。


 その感覚を誤魔化すために、ミレディの頭に手を伸ばした。うん、髪の感触が気持ちいい。

 これはセクハラじゃありません。


 「(ねぇねぇ、もしかしてこの人達って……)」

 「おっと、ゴメンね。俺はそろそろ時間みたいだ」


 今までのやりとりで、どうやらルナが気づいたようだ。なにか言いたそうにしているが、ここでは話せない。


 丁度いい頃合いだし、そろそろ引き上げるとしよう。


 「ん、そうか……今日は本当に助かった、イブ。飲み物だけでは流石に釣り合わないから、後で改めてお礼を」

 「いいっていいって、これも何かの縁だよ。それでもアレなら、貸しってことで」

 「……では、そうさせてもらおう」


 律儀な拓磨に苦笑いをし、膝の上に乗って固まっているミレディを持ち上げて、俺は席を立つ。

 一応、少しだけ残った飲み物を飲み干し、ルナもあとに続いてくる。


 「それじゃあ拓磨、樹、叶恵、美咲……またね」

 「……まるで、また会うみたいな言い方だなぁ」

 「ハハハ、まぁね」


 怪訝な顔をした樹に、俺は笑う。


 こいつらがここにいるということは、目的は分かっているのだ。

 だったら、また会うのは必然だろう。


 背を向けて去る俺に、4人の視線が注がれる。


 ……少し気づいて欲しかった気もするが、俺はその思いをしまうことにした。

 先程の一幕で、こいつらが俺の事をどう思っているかは知ることが出来たからだ。


 だから……それで満足である。

 

 

 

 

 はい、ということで、ようやく友人達と再会させられました。


 ちなみに茶髪イケメン勇者が拓磨、頭良い勇者が樹、サイドテールで凛とした勇者が美咲で、長い髪の優しそうな美少女が叶恵です。

 どういうキャラか忘れている方は、第一章の登場人物紹介とか、幕間読むといいです。


 さて、そろそろ学園要素を入れていきますか! 次回、入れられるか?


 次回投稿は明日、多分!

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