バイト
なし
朝 6時
まだ暗い
「あっ、したあーーーー」
陽気な声を広げる
90ドでおじぎをしつつ
「いらっさあいませえーーー」
威勢のよい声だけ
店内にひびく
出入りぃーストア山関
ここ、下町が
橋ができて
新しい市場へとつながった。
10分で銀座。
新しい橋を目指せば海
そして、埋立地
2020に向けて世界が変わる。
空間が広い
そらが高い、広がる、広がる。
現在は、ただっひろい土地。
ほったり、けずったり、くいを打ったり
ひっきりなしでダンプが入る。
そして出ていく。
新しい街は、着実にできていく
そして、変わる。
運河の向こうは、
古くからの、そして、古臭い下町を
見下ろす。
高層マンションが
何棟も何棟もそびえたつ
オリンピックを控えて
マンション業界はさらに好況。
ちょっとしたバブルの様相。
そして、2020には、始まる。
朝もやの中、
白いバンが止まりだす。
いよいよだ。
暗闇に、ハザードがまぶしい
はじまった。
現場の人が
朝食、昼食を買いにくる
工事現場のおっちゃん、とびの職人さん
下請け、孫請け会社の社員。
バンを次々に止めて
店内にハザードランプが
照り付ける。赤ランプで警察の
取り締まりのよう。
「あっ」
「したああーーー」
強面の職人も
ここではみんな常連さん。
私の職人挨拶に
片手をあげて
答えてくれる
その心地よさに、にやついていると
「佐藤」
「さとかーーん」
オーナーの鋭い声。万年不在のバイト。
パンをならべる
オーナーが呼んでいる
毎朝の光景
なし