届かないほど近くの君へ
超短編となりました!
いつの間にか始まっていつの間にか終わるという感じです。
今時の恋は、画面の向こうの人に恋をしたりなど ありえない話じゃないかな…と思いこの小説を作りました。
少し詩っぽい要素も入ってしまいましたが、
それでもおkという方は読んでいただければと思います!
好きになればなるほど遠くなるってよく聞くけど、
それはただの錯覚だと私は思う。
きっと好きになると見える差があって
最初から極限に遠くて
届かないから好きになるんじゃないかな。
ずっと見てきた君の世界と私の世界は
これから先 交わることはないのだろう。
「…んぁ?」
チャイムが鳴った途端ざわめき出す教室で
眠りから覚めた私はまだぼんやりとしている目を擦り辺りを見回す。
「まぁた居眠り? 飽きないねぇ…」
やれやれと呆れながら話しかけてきたのは小学校からの友達だ。
「いやぁ…昨日好きな歌手が新曲出しててさ…。ずっと聞いてたら寝るの遅くなっちゃって…ふぁぁ…。」
欠伸をしながら昨日のことを思い出す。
「あぁ、あの元カレさんか。」
…そう、今人気急上昇中のあの歌手は私の元カレなのだ。
『_別れよう。』
今から一年前の春、
なんの前触れもなく交際は終わりを告げた。
上京し、本格的に歌手を目指すそうだ。
その時の私はまだ何も知らなくて
ただただ現実を受け入れるしかなかった。
本当のことを言うと今でも彼のことを想っている。
実に未練タラタラだ。
まぁ、今更遅いんだけどね。
「あ、もう放課後だったんだね。寝てたからわかんなかった。てかまだ寝るつもりだからじゃーねー。」
友達に別れを告げ携帯から流れる曲を聞きながら帰り道を急ぐ。
早く家に帰って真剣に曲を聴きたい。私の頭にはその言葉しか浮かばなかった。
帰宅後、いつも通り曲を聞き
いつも通り彼についての情報を集める。
某動画サイトでは
『かっこいい』
『イケボ過ぎてやばい、超好み』
と、いつも通りのコメントが書かれている。
…やっぱり君は遠い存在なんだな。
この時、彼との距離が見えた気がして寂しくなるのは
私だけの秘密。
連絡先も新しい住所も知らない、私はただのファンなのだ。
「…はぁ、自分勝手だなぁ…。」
会いたい、なんてさ?
今 彼は多勢の人に好かれているのに
自分だけ特別なんて、そんな…ねぇ?
私はまたいつも通り自重気味に笑う。
これも日課になっちゃったなぁ…。
翌日
何事もなく学校を終え家に帰ろうとすると
近くの家電店のテレビから流れるノイズ。
嫌な予感がした。
『人気歌手 熱愛か!?』
_ほらやっぱり。聞かなきゃよかった。
私は耐えきれず、人の隙間を抜け走り出す。
嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ 嫌だ。
そのまま家に帰り自室にこもる。
そうだよね。君の世界に私はいないから
当たり前だよ。当たり前…。
いつの間にか頬を伝っていた雫は
私を深い眠りへと誘った。
その次の日から私は抜け殻のように毎日を過ごした。
目に映るものは全てモノクロで
耳に入るものは全てノイズだった。
未練タラタラ過ぎて、本当嫌になっちゃう。
携帯も放置しテレビも見ない。
…けど、そろそろ彼が恋しくなってきたなぁ…。
そう思うと同時に私は携帯から彼の曲を流していた。
久しぶりに見る彼の姿はとても綺麗で
好きなんだなぁ…と改めて実感した。
その瞬間私はいても立ってもいられず
イヤホンを耳に装着し携帯だけを持ち家から飛び出した。
時刻は夜中1時過ぎ。
家から離れた草原に着き、私は倒れ込んだ。
田舎、ということもあってか周りには人一人いない。
携帯は彼の綺麗な歌声を私の耳に届けている。
私にはまだ何の才能もなくて
何がしたいのか、
何ができるのか、まだわからないけど
絶対君の世界に入り込んでやる。
何が何でも君の瞳に映れるように。
私はそう心に決め
闇の中に彼の曲の歌詞の一部を大声で叫んだ。
『いつか君に追いつけるよう、僕も明日へ歌う。』
ここまで読んで下さりありがとうございます!
最後は少しあやふやな感じで終わらせてしまいましたが、
この先は読者様のご想像におまかせしたいと思います!
彼女は彼の世界に足を踏み入れることが出来たのか…?
まだまだ素敵な作品を作れるように頑張りたいと思いますので、これからもよろしくお願いいたします!