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Before3
俺は人生においてこれほどにないほどに興奮していた。
俺には好きな女性が一人いる。透き通る肌。この年代にしては珍しく染めていない黒髪。強気な面持ちだが、時折見せる寂しげな顔がまた素晴らしい。
しかし、そんな彼女にある危機が訪れている。
あいつだ。
高校からの付き合いだが、どうだが知らないが、彼氏でもないのに(そうであれば、それはそれで問題だが)日頃彼女にまとわりついている。心の広い聖女の様な彼女も、奴が現れた時ばかりは露骨に嫌な顔をする。
これは非常によろしくない。
あれはストーカーではなく、もはや、ただの害虫と言えよう。
害虫を追い払った程度では、消えたりしない。
殺さなければ。
生憎、奴と取っている講座が一緒であったために、盗聴器を仕込めた。お陰で、今日奴がどこへ向かうのかは把握している。
あとは、呑気に現れた奴を引き殺すまで。
全ては彼女のため。彼女に害をなすものは殺さなければ。
俺は、右ポケットに入っているナイフを握りしめ、運転席の方へと向かった。