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飛頭蛮、口説かれる③~完結~

只今、私は第28番部署の部屋で1人、パソコンとにらめっこしています。実はこの頃、仕事が忙しいのです。海外からのお客様の宿泊先を予約したり、誰がどのプランで行くかなどの確認が多くてね。


先程まで、メリー先輩と小豆洗い先輩が私と共に残って仕事をしていたのですが、ついに、メリー先輩が疲労でグロッキーになってしまいました。


〜プチ回想〜



「メリー先輩!」

「メリー大丈夫か⁉︎」


メリー先輩の目がぐるぐる回ってます。これはいけない!早く寮に返して寝かせないと。


「小豆洗い先輩!メリー先輩を女子寮に連れて行ってください」

「分かった……って女子寮は男が入るのは禁止だったけど」

「そんなのは、女子寮の寮長に見つからなければいいだけの話です。さ、早くメリー先輩を部屋に連れて行ってください」

「いや、オレが運ぶんじゃなくて飛頭蛮が女子寮に連れて行けば」

「メリー先輩を運ぶのが嫌なのですか?」

「いや、それはない」

「だったら、早く女子寮にGOです。残りの仕事は私が片付けてしまいますから、仕事場に戻ってくる必要ありません。あっ、それと、メリー先輩の部屋は9階の78号室です」


そう言って、私は無理やり小豆洗い先輩にお姫様抱っこするように命じてメリー先輩と小豆洗い先輩は帰って行きましたとさ。


〜プチ回想終わり〜


それと、私がメリー先輩を部屋に戻すのではなく、わざわざ小豆洗い先輩にメリー先輩を任せたのは、男子禁制の女子寮に忍び込むドキドキ感を味わってもらいたかったからのと、女子寮に忍び込む男子ってなんか良くない?


女子寮に忍び込んで、そのまま2人仲良くベッドで夜を明かすとかさ、乙女ゲームにありがちだよね。まぁ、小豆洗い先輩にはそこまでの度胸はないと思いますが。せめて、ベッドに入らずベッドの隣で寝るとか、そのくらいのことはしないとね〜。


さてさて、そんなことを思いつつ、私はメリー先輩と小豆洗い先輩が残した仕事と私の分の仕事もこなしましょうか。


カチカチカチ、

カチカチコクッカチカチカチ

カチカチカチカチコクッカチカチカチ


ゴンッ!


「いたたた…」


どうやら、眠くてうとうとしていたらしい、パソコンのキーボードの上に頭が落ちてしまいました。流石の私も疲れが溜まったのかな。今、すごく眠い。どうしょうもないくらい眠い。


このまま、ベッドで寝たいけど、まだ仕事はたくさんある。今、やっと私の分が終わって、メリーさんの分の仕事に移ったところ。私はキーボードの上にある頭を拾って首に戻します。それから、もう一度、パソコンに向かって仕事開始です。



* * *



2時間後

コクッ、コクッ、

ついに眠さの限界が来たのでしょう。頭を縦横左右に動かしていたら、私の頭は胴体とかなりずれまくって、後、少し動いたら首が床に落ちてしまう寸前まで来ていました。首を直そうと思ったけど眠さには勝てず、とうとう、首が胴体から離れてしまいました。


首が胴体から離れ、床に落ちて行きます。私は目を瞑って冷静に考えました。あーぁ、これは痛いだろうな。落ちるけど拾う気もないし。徐々に顔と床の距離が近くなってきます。


ポト

あれ?床に落ちたのに痛くないぞ?もしかして、眠さで痛感が麻痺したのかな。そう思って、目を開けると、視界には誰かの親指が見えます。つまり、私は誰かに拾われた。そして、視界が床から離れ、私を拾った誰かの目前まで持ち上げられました。


「ぶっ倒れてんじゃねぇぞ」

「なっ!」


なんと、私の頭を拾ったのは、もうすでに仕事を終えて帰ったはずの岸涯小僧(がんきこぞう)先輩ではありませんか⁉︎なんでここにいるのでしょうか?


「倒れてません」

「首が落ちただろうが」

「偶然です」


岸涯小僧先輩と話していても眠いです。そして、岸涯小僧先輩は私のパソコンに目を向けると、デスクの上にあった資料と見比べます。一体なんでしょうか?


「飛頭蛮、寝ぼけてたな」

「んー?」

「ここ、資料には9って載ってるのにパソコンには6ってなってるぞ」


岸涯小僧先輩に頭をパソコンに近づけてもらって見たところ、間違ってました。うわー!やらかした。


「しかも、ミスが多いな」

「やり直ししないと」


私がぼそりと言った言葉に岸涯小僧先輩が素早く反応しました。


「飛頭蛮は寝ろ」

「は?嫌です。この仕事は小豆洗い先輩とメリー先輩の分を私がやるって言ったものですから」


寝ぼけ眼なので岸涯小僧先輩の顔がぼやけてよく見えません。でも、不機嫌なのは声から分かります。


「仕方がない」


私の頭を掴んでいる手とは反対の手が私の視界を遮るように被されました。その瞬間、とてつもない眠気が私を遅い、私はそのまま眠ってしまいました。



* * *



目を覚ますと、真っ白い天井が見えました。その瞬間、私はここが自分の部屋ではないことを確認しました。だって、私の部屋には、ベッドの上の天井に薄○鬼の沖田様のポスターが貼ってあり、起きたらすぐ目が合って、私の1日が始まるのです。


「ここ、どこ?」


それに部屋を見渡すと、物がなくシンプルです。私の部屋はコスプレの服とかフィギュアがたくさんあるから、やっぱり、ここは私の部屋じゃないね。


「起きたか」

「ん?」


突然、台所からマグカップを持って出て来たのは黒いVネックのシャツに長ズボンと珍しくメガネをかけた岸涯小僧(がんきこぞう)先輩。って、なんでここに岸涯小僧先輩がいるの⁉︎


「ここは、俺の部屋だからな」


どうやら、口に出していたらしい。それにしても、随分と物の少ないお部屋ですね。机とイスとベッドとテレビしかない。簡素…簡素すぎるぞ。


「物がなくて悪かったな」


あらら、またも声に出していたみたい。


「なんで、私ここにいるのですか?」

「寝たから運んで来た」


確かにあの時、岸涯小僧先輩の手で目隠しをされたら眠ってしまったよね。もしかしてあれは催眠術⁉︎


「仕事はやっておいたから」

「えっ……」

「なんだよ、その反応は」

「いつもの岸涯小僧先輩とは違う」

「は?」


えっ、冗談でしょ⁉︎いつもなら、仕事は自分の分だけしかやらなくて、他人の仕事は絶対に手を出さない岸涯小僧先輩が他の仕事を手伝うだなんて、ありえない。私は夢でも見ているのでしょうか。


「とりあえず、出勤までは時間がある。それまで休めよ」

「岸涯小僧先輩が気遣ってる」

「気遣って悪りぃか」


いつもとは違う岸涯小僧先輩に戸惑っています。ん、ここは岸涯小僧先輩の部屋ということだから、えーと、ここは男子寮か⁉︎って、確か男子寮は女性は入ってはダメって聞かされたことがある。私、入ってるよ。


「男子寮は女性進入禁止だって」

「隣の部屋の奴なんか、毎日、違う女を部屋に入れてるけど?そんなの今更、どうでも良くない?」

「不純だー」


そう言って、マグカップに入った温かい牛乳を私の目の前に差し出しました。


「これに、毒が」

「なわけねーよ。普段からオレのイメージはどうなってるんだ?」

「私の頭で遊ぶ、嫌な奴」

「飛頭蛮、結構はっきり言うよな」


どうやら、意地悪で毒は盛られていないようなので、私は岸涯小僧先輩から貰った温かい牛乳を飲みます。


「おかしい」

「なんだ、まだ文句があるのか」


だって、岸涯小僧先輩がこんなに優しいわけがない。いつも、私に意地悪ばかりして。もしかして、今ここにいる岸涯小僧先輩は生き別れた双子の弟とか兄とか。それか、二重人格⁉︎


「飛頭蛮の思考回路はどうなってるんだ」

「私は常に正常であります」

「口に出ていたぞ」


まーた。口に出していましたか。そして、岸涯小僧先輩は私が座るベッドの左隣に腰を下ろすと後ろにバタンッと倒れてしまいました。


「仕事の手直しは大変だったんだぞ。所々、人数は違うし、宿泊施設も違ったし。飛頭蛮は客をどこに泊まらせるつもりだったんだ?」


要は、ミスが多すぎたってことですよね。


「すいません」


何気無く、岸涯小僧先輩の目の下を見て見ると、そこにはうっすらと隈が見えました。本当に仕事を手伝ってくれたんだ。


「岸涯小僧先輩」

「ん?なんだ」


私は目を瞑り寝ていた岸涯小僧先輩に話しかけます。今日は珍しく優しかった岸涯小僧先輩に驚いたけど、少しは見直したかな?少しだからね。ほんの1mmぐらい。


「ありがとうございます」


笑顔で言いましたよ。営業スマイルではなくて。そしたら、岸涯小僧先輩は短く唸って、私とは反対方向に体を向けてしまいました。かと思ったら突然、体を起こし、なんと、私にもたれかかって来ました。案の定、体格の違う私が岸涯小僧先輩を支えきれないのは当然です。ですら


「きゃっ」


後ろに倒れてしまいました。というか、押し倒された?隣を見て見ると、そこには岸涯小僧先輩が添い寝的な感じでいました。


「何、赤くなってるんだよ」


いつも通りの意地悪そうな顔。そりゃ、いくら2次元が好きな私でもこんなシチュエーションに顔を赤くしないわけがないでしょ!私は顔を反対に向けようとしましたが、しっかりと岸涯小僧先輩の手で固定されて、動きませんでした。しかも、腰に手を回されていて、動こうにも動けない。

一体なんですか!何がしたいのこの方は!


「もう少し、寝てようぜ」


不本意ですが、体が動かない以上、どうすることもできないので、諦めて目を瞑ることにしました。やっぱり、さっきの見直した宣言は取り消そう。

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