人面魚、海へ行く③ ~完結~
7月13日
「人面魚、海へ行く」
①〜③の3話、連続投稿しました
彼女達はやっとの思いで、秋田県にある、生まれ育った池に着いた。そこは、数十年前と変わらずとても綺麗な池で、たくさんの小魚達が悠々と泳いでいた。
「私達がいた時と変わらないね」
「本当〜懐かしい〜」
「さて、故郷を見れたんだし」
「海に行きますか〜」
* * *
海へ到着
「塩が体に染みるわ〜」
「ついこの前までは池にいたんだから、塩に慣れていないのは当たり前よ」
鯉子と鯉未が海をゆっくり泳いでいると、遠くから人魚がこちらへ向かって来たのが見える。
「あら、人魚さん。美しい娘ね」
「美人さんだわ〜」
「ありがとう、あなた達は誰?」
「「クリアボイス〜」」
人魚は、腰まである長い金髪で瞳の色は真紅、腰から下は紫色の魚だった。それに、美しいクリアボイスの持ち主でもある。
それから、鯉子と鯉未は今までの事情を話した。どこから来て、どうして海に来たのかなど、たまに話が脱線したり、斜め上の方に行ったりしながら、彼女達は夜が明けるまで話し通した。
「長話になっちゃったわ〜」
「ごめんなさいね」
「いえいえ、私もお話するの楽しかったです」
次第に海の中に光が差してきた。
「鯉未さんと鯉子さんは、これからどちらに向かいますか?」
「本当は、紅坂高校に戻ろうかって話だったけど」
「でもねぇ〜」
「ここまで来たら、いっそのこと外国に行っちゃおうかしらって話に変わったの」
「外国って」
「まぁ、年寄りのぶらり旅って感じかしら」
「そうね〜」
鯉子と鯉未の話を聞いて、人魚はしばらく考え込むように人差し指を口の前に当てた。
「もし、宜しければ、ご一緒に行っても良いでしょうか」
「えぇ、大歓迎するわ」
「旅は大勢で行った方が良いわよね〜」
「ありがとうございます!」
「それじゃぁ、改めてよろしくね」
「よろしく〜」
「はいっ!」
海に差し込む太陽の光が、2匹の人面魚と人魚を温かく、この大海原へと迎え入れるようだった。
これにて
「人面魚、海へ行く」編は終了です
読んで頂きありがとうございました