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探偵、飛頭蛮③ ~完結~

小豆洗い先輩は我楽多屋の蓮さんからも、メリー先輩に対する態度を何とかしなさいと言われているそうですが、未だにメリー先輩に対する態度は変わりません。


実は、メリー先輩は、何か仕事について質問があると、前までは小豆洗い先輩に聞いていましたが、最近は同じ部署で働く岸涯小僧(がんきこぞう)先輩に、よく聞くようになりました。岸涯小僧先輩は、ワイルド系で、ちょいとSっ気があり、イケメンさんです。ですので、他の部署の女妖怪から壮絶な人気があります。


「はぁ」


私の隣のデスクでため息をつく小豆洗い先輩、理由は分かってます。メリー先輩の事ですよね。多分小豆洗い先輩の心の声は

『はぁ、前までは何かあったらオレのところに来たのに、今では岸涯小僧のところに行って、やっぱり、オレの態度が悪いのかな』

と思っています。というか、心の声と言いつつ、小声で声が聞こえますよ。私も仕事中ですが、隣で言われたら、気になって仕方がないです。あぁ、本当に、メリー先輩への態度を何とかしたら済む問題なのに。


「はぁ」


辺りを見回すと、メリー先輩はいないし、私と小豆洗い先輩だけしか部屋にいません。これならラッキーです。言うなら今のうちに。


「小豆洗い先輩!まずは、メリー先輩に謝るべきですよっ」

「いきなり何を」


私は、デスクに手を思いっきり叩きつけて、小豆洗い先輩に話しかけました。私の勢いに驚いたのか、小豆洗い先輩は後ろに仰け反ってしまい、イスから落ちました。ですが、今、そんなことはどうでも良いんです。


「小豆洗い先輩がメリー先輩のことを好きなのは、見て丸わかりです」

「って、ええ。わっ分かるのか?」


当たり前です。小豆洗い先輩がメリー先輩のことを好きなのは、同じ部署のみんな知っているし (メリー先輩を除いて)他の部署の妖怪や幽霊もちらほらと知っているみたい。というか、分かり易過ぎ。


「小豆洗い先輩がそんな態度だから、メリー先輩は、岸涯小僧先輩のところへ行ってしまったのではないですか!正直言って、小豆洗い先輩よりも岸涯小僧先輩の方がかっこいいし、評価は天と地の差です」

「それは、分かってる」

「このままだと、メリー先輩は岸涯小僧先輩に取られてしまいますよっ!」

「でも、岸涯小僧はそんな気はないし」

「はいそれダメー!ダメダメのメーです。そんな甘い考えは捨てなさい」

「甘い考えだなんて」

「いつまでも、受け身でいるな!攻めなさい、攻めて攻めて相手を攻略するのが基本ですよ」


乙ゲーをやっている私には分かります。いつまでも受けはダメなんですよ。


「例えフられても、私が慰めてあげますから」

「フられる前提⁉︎」

「とにかく今やるべきことは、メリー先輩に今までの態度を改めることです。それをしないと誤解は解けません」

「誤解って」


小豆洗い先輩は知らないようなので、話しました。


「メリー先輩は小豆洗い先輩の態度で、自分が嫌われていると勘違いしているのです」

「嫌いとかそんなことは絶対ない」

「行動が裏目に出てしまいましたね」

「そんな、これからどうしよう」

「だから、まずは誤解を解いてそれからメリー先輩への態度を改めることが課題です」


ガチャリ、部屋のドアが開いて入って来たのは、ナイスタイミング!メリー先輩です。こんなチャンスは逃してはいけません。


「小豆洗い先輩がメリー先輩に話したい事があるそうです」

「私に?」

「おいっ!飛頭蛮、何勝手に」

「今がチャンスです。ここを逃したら次はないと思って下さいね」


小豆洗い先輩に私の妖気を当てて、私はさっさと部屋から出て行きました。


「飛頭蛮ちゃんも一緒にいて」

「すいません、私これから仕事がありまして」


言うが早い、素早くドアを閉めて部屋の中を2人っきりにします。そして、ドアに耳を当てて中の声を聞く体制に入りました。他から見れば、今の私は腰を屈めてドアに耳を当てている奇妙な新人社員ですね。


「ーだ」

「で、ーーからーの」


話し声はよく聞こえませんので、私は窓ガラスから中の様子を伺いますと、何やらメリー先輩と小豆洗い先輩が楽しそうに話をしています。これは、ちゃんと話せたのかな。うん、良かった良かった。


「蓮さんに報告しないと」


メールで我楽多屋の蓮さんに報告すると、すぐに返事が返ってきました。内容は今まで長い間、頼まれてくれてありがとう。今度何かお礼をするよという内容と、今後から小豆洗い先輩の事は温かい目で見てあげようとの事でした。


「はぁ、本当に良かったー」

「何が良かったんだ?」


声と共に私の携帯を後ろから取り上げられてしまいました。慌てて振り返るとそこには、社内で有名な岸涯小僧先輩が蓮さんからのメールを見ていました。勝手に誰かにメールを見られるのは嫌です。


「勝手にメールを見ないで下さいっ!」

「うおっ」


右手で携帯を奪い返そうとしたら、ひらりと半身を翻して躱されてしまいました。が、私は諦めません。


「ていやっ!」


そのまま、右足を軸に左足で後ろ回し蹴り。すると、左足が岸涯小僧先輩が持っている私の携帯に当たり宙高く舞い上がりました。それを飛びながらキャッチし、宙で1回転。


スタッ


華麗に着地で完璧です。これでも、カンフーは得意中の得意なんですから。


「お前変わってるな」

「変わり者扱いしないで下さい」

「へぇ」


岸涯小僧先輩の手が私の頭に伸びたかと思うと、昼間はくっ付いているはずの頭を取られてしまいました。あぁ、しまった。私の頭と胴体は人間界の昼間ではくっ付いていますが、妖怪界では、昼も夜も関係なく、くっ付いていません。ですからいつでも取り外し可能なのです。しかもそのことを自分で忘れていたとは。


「わあああああ」

「ははっ、ボールみてぇだな」


私の頭を人差し指の上で回されました。私の頭はバスケットボールじゃないんだ!


「やめてー」

「あっ、体が倒れた」

「目が回るー」


私の頭と体は連動しているのです。ですから目が回れば体がバランスを崩して倒れるに決まっているではないですか。それを分かっていてこの先輩は、もう、

これはSっ気ではなくて、単なるいじめですよ。


「はわわわぁぁ」


やっと止めてくれました。ですが、まだ目は回っています。それに、長い髪をまとめたお団子も取れてしまい、ロングヘアになってしまったではないですか。


「ロングの方が可愛いと思うけどな」

「何を…言ってぇ」


例え、イケメンでSっ気があって他の部署から人気があっても、私は岸涯小僧先輩を好きになることは絶対にありえません。こんな酷い妖怪を誰が好きになるもんですか!それに、私には本命がいますからね。


「飛頭蛮ちゃんと岸涯小僧、何してるの?」


ドアから出てきたのはメリー先輩。顔がスッキリとしていました。その後から小豆洗い先輩、仲直りして良かったですね。と声を掛けたいけど、目は回って体は床に倒れているし、頭は岸涯小僧先輩の腕の中に閉じ込められているので動けません。


「岸涯小僧先輩にいじんっ!」


いじめられました。と言おうとしたら、口を抑えられて言えません。おまけにまだ視界は回っているので辺りがよく見えない。


「ドアから出てきた飛頭蛮とぶつかっちゃったところなんですよ。ほら、飛頭蛮、大丈夫?」


なんだこの変わり様は。内心怒りながらも、私は岸涯小僧先輩に頭と体をくっ付けてもらったと同時に、素早くメリー先輩の後ろに隠れました。


「照れてるのね」

「断じて違いますからっ!」

「ははは」

「飛頭蛮はツンデレなのかな?」


小豆洗い先輩には笑われ、岸涯小僧先輩からは含み笑いでツンデレと言われました。


「ツンデレなのは小豆洗い先輩の方ですよ」

「はっ俺か」

「確かに、小豆洗いはツンデレだな」

「小豆洗いはツンデレなの?」

「メリーさん⁉︎違いますから」


この後、私たちは部屋に向かってきた同じ部署仲間の小泣じじいに、仕事をしろときつく怒られました。

飛頭蛮の本命は誰でしょう?

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