私が成長する話、それか幼少期 パート③
不穏な空気を感じてか、ハルトが私の服を掴んで、不安げにこちらを見上げた。
私は大丈夫だよ、と安心させるように笑ってハルトの頭を撫でる。
精霊王たち、羨ましそうに見るんじゃない。
「…言っていいか分かんないから、精霊帝王に聞いてみて。返事は何時来るか分かんないけど」
「…何故貴方がそれを知っている…!?」
…そういえば何でだろう?
…えーっと、あぁ、そうだ!
曾々おばあちゃんが経験とかその他諸々くれたからか!
「…あー…神様(笑)のせいかな」
「今神様の後に何かついたような…」
普通の人間は帝王のことは知らない。
精霊術を人間は使えないし、帝王を知るのは龍の王やドラゴンの王、エルフの御子様くらいだったはず。
「気のせい気のせい。ハルトは本当の弟だよ。何となく似てるでしょ?ハルト、それより疲れたでしょ、ほらお水」
私はハルトに水筒を渡し水を飲ませ、残りを私も飲む。
光の精霊王をちょいちょいと手招きし、膝を貸せと頼む。
ハルトはやはり眠くなってきたらしく、うとうとし始めた。
ハルトの意識が完全に落ちる前に、光の精霊王の膝に頭を置く。
「え、ハルト様…?」
「疲れて寝てるの。そのまま30分はよろしく!疲れたら風の精霊王と代わってもらえばいいと思うよ。私、薬草摘んでるからハルト見ててね」
「わ、分かった!」
光の精霊王はとても嬉しそうにハルトの髪を梳き始める。
風の精霊王が恨めしそうに見ていたが知らん。
私は女の子優先ですので。
これで安心して私は薬草摘みに没頭した。
ハルトはよく傷を作るから、傷薬の薬草をいっぱい摘み、少しだけ風邪薬の薬草も摘む。
久しぶりにいっぱい薬草を摘めた私はホクホク顔で起きたハルトを連れて家に帰った。
それから精霊王たちは何度もお花畑に現れ、ハルトと遊んでいる。
ハルトは近所のお兄さんお姉さんだと思っているのか、遊び相手が出来て嬉しそうである。
帝王からの返事はないようで、二人は未だ警戒してこちらを窺っている。
…普通反対だから。私があんたたちを警戒するほう。
が、ハルトが私に懐いているから手出しが出来ないらしく、恨めしそうに睨まれる。
ただ、膝枕をさせてあげた光の精霊王は少し私を信用しているらしく、光の魔術を少し教えてくれた。
まだ使えないんだけどね。
二人のハルト馬鹿は筋金入りで、ハルトが少しでも危ないことをしようものなら全力で止めにかかり、そのせいで嫌われることもしばしば…
「ハルト様!危のうございます!」
「落ちるぞ!」
「…あのね、木登りくらい自由にさせなよ」
「ねぇねも来る!」
ハルトが木登りを始め、アタフタし始めた二人を気にせずに、ハルトは私を呼んだ。
仕方なく私も木を登り、ハルトの横にくる。
「しぃとるぅ、うるさいから、や!」
「…シルフィとルーチェは心配してるんだから、嫌いとか言わないの」
「むぅ」
風の精霊王がシルフィ、光の精霊王がルーチェである。
や!と言われた二人はがーんという効果音と共にうなだれている。
「ねぇねは心配してる?」
「してるよ。でもハルトは出来ないことはしないもんね?」
「うん!」
ハルトは賢い。
私が言うのも何だが、ハルトは3歳にして色々分かっているらしい。
ハルトは自分の力がどこまで及ぶか一応分かっているようで、今登っている木だって、6メートルほどの高さがあるのだが、2メートルの高さ以上は登らない。
…だから、落ちたって打ち所が悪くなければ悪くても足を折る程度だ。
それに、シルフィとルーチェが居るからっていうのもある。
二人は精霊術でハルトを助けることができるので、ハルトは安心して遊んでいるのだ。
そうして、穏やかな日々は過ぎていく。
シルフィは造語(私が勝手に)です。
ルーチェはイタリア語で光。そのまんまですね。