私が探る話
以降、少々更新頻度が少なくなります。
すみません…
できれば4か5の倍数で更新できるようがんばります!
神殿は閑散としていた。
別に人がいない訳じゃない。
気配はあるのに、人の姿がない。
私の言葉が当たってしまった?
…でも、敵意も殺気も感じない。
エレンを庇える準備をしつつ、アルルに案内されるままに奥へと入って行った。
「賢者の連れだよ!」
アルルが声を張り上げ、とある部屋の前まで来た。
その部屋からは、人の気配を沢山感じる。
私は嫌な予感が背筋を駆け上がるのを感じた。
部屋から一人の男が出てきた。
男は私とアルルとエレンを一瞥すると、すっと扉を開けた。
中は暗く、私たちが立つ場所からは中は見れなかった。
「…長老はこちらでお引き取りを。王は彼女を招いただけだと」
「ならこっちの男の子は入れないのかい?」
「…いえ。そちらの少年にも入って頂きます」
「ふぅーん?こいつらは精霊様の加護を受けてるんだ。…手出ししたらタダじゃすまないよ?」
「承知しております」
男はアルルに丁寧に頭を下げ、私とエレンを促した。
私は表情を消して扉を潜った。
(…キリヤ)
(大丈夫。私は、強いよ?)
心配そうな声が頭に響き、私は薄く微笑んだ。
「っ!…こちらです」
男の案内に促され、私とエレンは進む。
暗闇が、晴れた。
私は叫んだ。
「…ヴェルトっ…!!」
私の視線の先にはヴェルトがいた。
手足を十字架に打ち付けられて。
杭のようなものがヴェルトの手と足を貫き、その傷から血が滴った痕が床にある。
意識は無いのかヴェルトは私の声に反応しない。
ヴェルトは最強だ。だからこそ、ヴェルトから手は出さない。少しでも関わった相手に手を出すことを躊躇する。
そうだ、私たちは最強だ。
故に、優しさは強さで弱さでもある。
「…私、キリヤが命ずる。賢者ヴェルトの傷を無かったことに。そして、ヴェルトを私の元に!」
ヴェルトの周りをエルフの神官たちが囲んだが、私には関係なかった。
ヴェルトの手足から杭が抜け、瞬く間に傷は癒える。
そのままヴェルトの身体は浮き、私の元へふよふよと浮いてきた。
私はヴェルトに抱きついて、地面に座り込んだ。
…うん、大丈夫。心臓の音がする。
「…これ、どういうこと?サフラさん」
私は結界を形成して、十字架の裏から現れたサフラを睨んだ。
サフラは居たたまれない、といった顔をしている。
「…ごめんね?いやさぁ、キリヤちゃんが賢者をどう思ってるか知りたくて…エルフの秘術使って賢者を捕まえたんだよね」
「………………………は?」
居心地が悪そうに、サフラは身じろぎをする。
…試したってこと?
「…サフラさん」
「き、キリヤちゃん?」
「死ぬ覚悟はできてるよね?」
「え、ちょ、まっ」
「消し飛べ!」
私はサフラに向けて魔術を放った。
サフラは避けることが出来ずにもろに喰らってた。
吹っ飛んだサフラをエレンが助けているのが見えたが私は無視してヴェルトを横たえる。
ヴェルトの呼吸は安定しているし、脈も異常はない。
暫く見守っていると、ヴェルトが瞼を揺らした。
「ヴェルト?」
「…キ、リヤ、か?」
ゆるゆると瞼が開き、ヴェルトの碧色の瞳が見えた。
「…んで泣きそうな顔してんだよ」
「ヴェルトが馬鹿だから」
「あぁ?喧嘩売ってんのか」
「…ヴェルトの馬鹿」
起き上がったヴェルトに、私はもう一度抱き付いた。
私たちは神殿の一室に場所を移した。
地面に絨毯が敷かれ、私たちはその上に座っている。
ヴェルトはエルフの秘術でただ意識を失っていただけらしい。
あの杭はヴェルトの治癒能力を見て貫通しない程度に打たれていたようだ。
とは言え、私はキレているのでこいつらエルフを助けないでおこうかと思っていたらサフラに土下座された。
しかも、土下座させているのはエレンだ。
「すいませんでしたぁっ!!」
「ねぇ。これがドゲザだったよね?合ってる?」
「え、うん…」
「よかった。ほら、もっと頭下げて。地面にめり込むくらいには」
「はい…」
「…なんでエレンが頭下げさせてるの?」
「このバカ王から話は聞いたよ。それにハウエルも見てきたし。ここで君に臍を曲げられて解決して貰えないのは僕が困るんだ」
「うーん…エレンは干渉できない、とか?」
「干渉するよ、今回はね。でも僕だけじゃ足りない。君たちの力が必要なんだ」
エレンに真剣に言われて困った。
エレンじゃ足りないなんて、一体何が起きているというのか。
「ヴェルトはハウエルさんに会った?」
「ん?…あぁ。会ったな」
「私も会いに行く」
「…嫌だ」
「いや、ヴェルトが嫌なのは知らないし」
ムスッとしたヴェルトに腕を拘束された。
エレンにどういう状態だったのかと視線で尋ねると目を伏せられた。
私はため息を吐いて腕を掴むヴェルトの手に私の手を重ねた。
「ヴェルト。私のこと心配してくれてるんだよね。そんなに酷い状態だったんだ…なら、ちゃんと会わないと」
「っ…」
ヴェルトが辛そうに顔を歪めた。
私はヴェルトに笑いかける。
「…頼む。辛いなら、俺を頼ってくれ…!」
苦しそうな声が、それ以上に私を苦しくした。
あぁ、もう。
二十歳までって言ってたけど、そろそろ限界かもしれない。




