私が死ぬ話、あるいは宇宙 パート④
桐耶の魂がふわりと浮いて、宇宙を駆けていく。
桐耶から見れば神は光の球だったが、神と朔耶から見て桐耶こそが光の球だった。
「行ってしまいましたね」
「あぁ。どうだ、あんたの来孫は」
朔耶から見た神は黒髪黒目て、直ぐに人ではないと分かるような美形の青年だった。
神は着物のような、不思議な恰好をしている。
「変な子ですね…だから妻が気に入って守護霊してたんですが」
「そうだったな。いやー、お前の嫁は何考えてるかわかんねーけど」
「あら、あなたたちは女心を分かってないのねぇ」
虚空から声がして、また、天使のような女性が現れた。
彼女は朔耶や神同様、黒髪黒目の、途轍もない美女だった。
「桐華!」
「ふふ、朔耶さん、ずるいわ。私もあの子とお話したかったのに」
彼女は桐耶の曾々おばあちゃんであり、朔耶の妻である。
二人は転生する直前の魂たちだった。
「桐華が彼女と話したら彼女に悪影響が出る可能性があります」
「あら、失礼しちゃうわ。私が何かしなくてもあの子は図太くなるわよ」
「全く嬉しくないですね」
「相変わらず朔耶さんは冷たいわね。桐耶が朔耶さんみたいな人を好きにならなきゃいいけれど」
ふぅ、とため息を吐く姿がいやに様になっている。
美女とは厄介な存在だな、と神は思う。
桐華が相当な美女であるため朔耶の存在が薄れがちだが、朔耶も美形の部類に入る。
なのでこの夫婦の曾孫である桐耶の母は桐華を越える美女になってしまった。
…もちろん、二人の孫である桐耶の祖父も相当な美形だったのだが。
そして、桐耶の母はまたもや美形の男と結婚し、その子どもである桐耶の兄と妹も途轍もない美形と美少女になってしまった。
…なのに、何故か桐耶は普通の、10人中10人が「あれ、今誰かいた?」というくらいの普通な少女になってしまった。
「…お前らの家の遺伝子は不思議だ」
「神様、急に喋らないで下さい」
「あら神様、まだ居たのね」
全く、酷い夫婦である。
神を敬う気は無いだろう。
「…それで、桐華は何をしていたんだ?」
今まで居ないのは不思議だったが、桐華が隠れてコソコソするのは何時もことなので放置していたのだ。
「ふふ」
桐華が笑ったのを見て、朔耶と神はゾワッと寒気を感じた。
…嫌な予感がする。
「神様、あの子に色んな能力あげてたでしょう?」
「あ、あぁ」
確かに、瞬間記憶や語学力、魔力や神通力やその他諸々あげたが…
だから、彼女は果てしなく最強になりうる力を持っているのである。
「あの子のチートさを確立するために、私と朔耶さんの経験値と力を全部渡してきたの!これで世界征服できるわよ!」
「「何してんだあんたは!!」」
時間が来て、朔耶と桐華の魂は転生の準備を始めてしまい、神は一人で駆け回ることになった。
桐華さんと朔耶さんは魂が浄化され、記憶も何もかも無くして地球のどこかに転生します。
きっと二人は出会い、結婚するでしょう。
桐華さんが経験値と言っていますが、桐華さんと朔耶さんが経験したことに対応できる力、といったようなものだと考えて下さい。
桐耶の周りは転生前からチートです(`・ω・´)キリッ




