表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最強な賢者様と私の話  作者: 天城 在禾
復讐、もしくは出会い
27/134

私が復讐する話 パート③

 

 

私は誰一人として殺してはいない。

そのことに気付いたディグザムは楽しそうに笑った。


「おいおい!殺さねえのかぁ?」

「復讐は殺すことじゃないから。…どう?強くなった?」

「あぁ!予想以上だぁ!惚れ惚れするぜ!その強さ。それ以上にその目になぁ!」


私とディグザムは同時に動いた。

ディグザムは剣を持ち、私はあの時のナイフで。

リーチがある分、ディグザムの剣が私に細かな傷を付ける。

私は未だ傷一つ付けていない。


「どうしたぁ?何を考えてんだ?」

「これからどうしようかと。私が10歳になるまで一週間あるんだよねぇ」


振り下ろされた剣を捌ききれず、地面を蹴って距離をとる。

ディグザムは距離を詰め、今度は剣を突き出してきた。

それをしゃがむことで避ける。


「なら一週間ずっと殺し合ってりゃいい!お前となら一生殺し合ってても楽しそうだ!」

「ヤダ。疲れるし」


避けた先にディグザムの足があり、それを蹴って反動を付けつつ、脛を殴った。

少し体勢を崩したディグザムの剣を手からたたき落とし、一本背負いを喰らわせた。

背中を打ち付けたディグザムに乗り、腹に足を入れる。


「ぐっ…」


そのまま首筋にナイフを走らせた。







ディグザムは首から血を流し、ぐったりとしていた。

もちろん死んではいない。

ナイフには薬が塗ってあり、それがディグザムの体に回っただけだ。

私はディグザムの足の腱を切り、歩けないようにした。

あぁ、疲れた。

ディグザムの側に座り、息を吐く。


「私の復讐は、殺すことなんかじゃない」


懐から狼煙となる薬を取り出した。

軍で使われている薬で、緊急事態の時の狼煙である。

それを炎にくべ、気絶しているディグザムの部下たちをひとまとめにして縛る。

この狼煙、緊急事態用なので、軍に属する魔術師たちがいち早く飛んでくるから、早く帰らないといけない。

もう、空は明るくなっていた。






 

「スーウ!」


森で一泊し、深夜に帰ると食堂にはミゼンとヴェルトが待っていた。


「ただいまー」

「…ただいまじゃない!一体どこに…!」

「恩人に会いに?」

「…ヴェルトもそう言った」

「…あ、あははー…」


当然、受けた傷が治っているわけがなく、私は傷だらけだ。

しかも、魔術師たちにバレないように駆け回っていたから泥だらけだ。


「…ミゼン、ちょっとそいつ貸せ」

「…あ、ああ…」


ヴェルトは怒っていた。

一目見てそれが分かったので、私はなるべくヴェルトの方を見ないようにしていたのだ。

あまりのヴェルトの剣幕に、ミゼンはすんなり私を引き渡した。


「…テメェが書いた場所を調べた。ヘルトモルテ。英雄殺しの山だ。あそこは10年前から闇ギルドのアジトがある。そこに恩人だと?」

「…うん。恩人」

「テメェを奴隷にした恩人だとでも言うのか!?」

「そうじゃなくて…ごめんなさい」


言い訳をしようとして止めた。

ヴェルトの目が、今にも泣きそうだったから。

私が謝ると、ぎゅう、とヴェルトに抱きしめられた。


「…無事でよかった」

「…うん。心配かけてごめんなさい。待っててくれてありがとう。」


私はヴェルトの大切な人の1人になっていたようだ。

そうだよね、ごめんね。

3年近くヴェルトと一緒にいたもんね。

私はヴェルトを抱きしめ返し、疲れと安心からか、寝てしまった。




 



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ