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最強な賢者様と私の話  作者: 天城 在禾
幼少期、もしくは悲劇
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私が成長する話、それか幼少期 パート⑥

 

パチンという音と同時に、部屋の温度が一気に上昇し、至る所に火の球が現れた。

…火の精霊王か。

火の球は部屋をくるくる回っているかと思うと執事さんの目の前に集まってきた。


「イグニス、何をしているのですか。さっさと現れなさい」


執事さんが火の球を殴ると、「いてっ」という声がして、火の球が人の形つくられていく。


「いてぇな、ゼス。殴らなくてもいいだろ?」


現れたのは、2メートル近い長身の男。

赤い髪に黒の瞳で、上半身は何も身に付けておらず、筋肉質な身体は褐色だ。

む、シルフィとは違った美形ですな。


「こちらが火の精霊王、イグニスにございます。僭越ながらわたくしと契約しております」

「よろしくなー。お、アルベルトじゃん。なになに?このお宅でドンパチすんの?」

「…イグニス、やめてくれ、誤解を招く」

「はは!分かってるって。んーで?アルベルトの息子候補は…おぉ!そっちの坊主か!お前女みてぇだなー」


イグニスはハルトの前にしゃがみこんで、ハルトの頭を撫で回し始めた。


「むぅ!女の子じゃないもん!」

「おう、可愛いなー。ブツ取って女になっ、」

「お黙りなさい」


イグニスは執事さんに殴られ、ぶっ飛ばされた。

お父さんにも見えているらしく、普段無表情なのに珍しく目を丸くしている。


「いってぇー。だってこんなに可愛いのに勿体なさすぎだろー」

「黙れ、この色魔!!」

「貴方は相変わらず頭の中が燃え滓なんですね」


どこからか声がしたかと思うと、ルーチェとシルフィがハルトを守るようにハルトの前に現れた。


「しぃ!るぅ!」

「ハルト様、あいつとは関わるな。ただの炭だ、あんなやつ」

「そうですよ。あいつの主はまともな人間のようですが、あいつはただの戦闘馬鹿です」

「酷ぇなテメェら!ゼス、何か言ってやれ!」

「事実ですね」


お父さんとお母さん、愕然としてるよ。

そりゃビックリだよね。人外が二人も増えればさ。


「まさか…二人の精霊王に愛されているとは!驚いたな。精々一人かと思っていたのだが…」

「あなた、興奮し過ぎですわ」

「うー!ねぇね、イグいや!」


キラキラと目を輝かせたアルベルト様をマリオット様が窘めた。

おー、初喋りです、奥様。

空気に紛れて隠れていた私をハルトが見つけてしまった。

ちょ、ハルト君、空気読んで!

お姉ちゃんまだ隠れてたかった!


「よしよし。大丈夫だよ。イグニスさん悪い人じゃなさそう」

「でもいや!」

「やべぇ、めっちゃ嫌われた!」

「貴方が馬鹿なことを言うからですよ。ハルト様は繊細な方なのです」


分かったから。もうハルト馬鹿はいいから。

そろそろ本題に入らせて貰えます?

私空気なの疲れたよ。


「領主様」

「ん?君はハルト君のお姉さんだね。何だい?」

「ハルトを連れて行くんですか?」


私の言葉に、部屋の空気が一気に緊張を取り戻した。

お父さんもお母さんもアルベルト様の言葉を待っている。


「いいえ、ハルト君が、はい、と言ってくれなければ、連れて行きません」


答えたのはマリオット様だった。


「…ハルトを連れて行っても、いいです」

「…え?」


マリオット様がちゃんと答えてくれたんだから、私もちゃんと話さないと。


「でも、お願いがあります」

「…何、かしら?」

「ハルトが5歳になるまで、そっちに行くのは待って下さい」

「…どうして?」

「ハルトのために。この森には精霊の加護が掛かっています。ハルトが5歳になるまで、その加護は消えません。加護はハルトを守るし、周りから隠します。そっちに今行くよりいいと思うんです」

「そうなの?あなたはどうしてそんなことを知っているの?」

「シルフィとルーチェから聞きました。シルフィとルーチェは領主様のお屋敷でハルトと遊ぶより、森で遊ぶほうがいいって言ってました。だから、そうしてください」


幼児が一生懸命頭を下げている姿に心を動かさない者などいない。

とくにマリオット様のような女性ならば。

あ、そうそう。

シルフィとルーチェにはこうやって話すから黙ってろ、と口止めはしてある。

精霊帝王の話や私のことも他の精霊王にすら話すな、と脅してある。

ハルトが二人のこと嫌いになるよ?とか言っておけば楽勝です。


「精霊王様がおっしゃるなら、もちろんそうします。アルベルト様もよろしいわよね?」

「あぁ」

「あと!」


まだありますよ、奥様。


「ハルトと一緒に私たち家族も領主様のお屋敷の近くに引っ越しさせて下さい!」

「キリヤ!?何をそんな…」

「だって、ハルトと離れたくないもん!お母さんもお父さんも嫌じゃないの?私はハルトの近くに居たいよ!」

「キリヤ…」

「もちろん、その願いも叶えよう。ハルト君を養子に迎えるとしても、ハルト君の父上と母上がお二人なのは変わらないからな」


よし、成功した!!

はー、よかった。

理解のある領主様で助かったよ。

ごめんね、ハルト。でも、ハルトの才能なら、アルベルト様の養子になったほうが断然いい。


「では、私からも」

「…何ですか?」

「たまに遊びに来てもいいかね?」

「…はい!」


こうして、ハルト養子騒動は一段落着いた。



 



ドンパチって死語ですかね?

ハルト君、毎度思うのですが、空気な時多いですよねぇ。

イグニスはラテン語のignisからとっています。発音としてはイーグニスです。

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