私が成長する話、それか幼少期 パート⑤
ついに敵(?)がやってくる日だ!
え?敵?領主様のことだけど?
人としては尊敬できる人らしい。
ハルトのことはあの後シルフィとルーチェと話し合い、大体の方針は決まっている。
お父さんとお母さんは知らない。当然だけど。
「ようこそいらして下さいました、領主様」
真っ白い髭を生やした村長さんが深々と頭を下げた。
ここは村の入り口。
そこに領主様はご立派な馬車に乗ってやってきた。
名目は視察ということらしい。
領主様、改め辺境伯オルディーティ=アルベルト侯爵。
貴族嫌い、王都嫌い、倹約家、王様の親友などの性質(?)を持つ40前半のダンディーなおじさまである。
今回は奥様であるマリオット様もご同行されている。
まぁ、息子を引き取るなら両方来ないとダメだよな。
「歓迎感謝する。皆、楽にして構わない。私は皆の普段の姿が見たいのだから」
アルベルト様とマリオット様は動きやすい恰好で来ていた。
うむ、家まで来るつもりだな?
そっちのがいいけど。
二人は村長さんに案内され、村を見て回った。
…むむむ…確かに人として尊敬できる人だ。
住人の生活を一人一人聞き、子供に対しても意見を聞いている。
始終笑顔で、野菜などを貰って嬉しそうに笑う姿は好感が持てる。
さらに、二人と魔術師らしき執事に精霊が群がっている。
ハルトに比べて断然少ないが、精霊に好かれているようだ。
精霊に好かれる人は、総じて善良な人だ。
どうやら、執事さんは精霊王の一人に愛されているようで、キラキラ感が半端ない。
私の周りはそんな人ばっかりです。
残念ながら私は中立派なので、精霊は群がりません。
というか、止めて貰うように頼んだ。
村長さんの案内で、私たちの家へ向かうことになった。
…もちろん、私たちも一緒に。
アルベルト様とマリオット様がうちの質素な椅子に座っているのに非常に違和感を感じます。
なんだこれ。嫌味か。
「…さて、本題に入らせて貰おう」
今まで、アルベルト様は私たちの生活について聞いていた。
村長さんは村に帰っている。
村人は皆本当の目的が視察ではないことを知っているようだ。
「…ご子息、ハルト君を私たちの養子にさせてくれないか?」
「…それは、ハルトに魔術師の才能があるからですか?」
「それもある。うちの魔術師の話では、ハルト君は精霊王に愛されているらしいんだよ」
「…精霊王…!?」
アルベルト様と話していたお母さんも、無言で話を聞いていたお父さんも息を呑んだ。
私は何のことか分からないように首を傾げる。
そうするとハルトも同様に首を傾げる。
可愛い。
「な、何かの間違いでは…私は精霊を見ることが出来ますが、精霊王なんて一度も…」
「ほう、見ることができるのか。素晴らしいな。だが、何か感じなかったかね?」
「…」
お母さんは口を噤んでしまった。
当然だ。感じていて、私に何かなかったか聞いたほどなのだから。
「うちの魔術師もね、精霊王の一人に愛されているんだよ」
アルベルト様が執事さんに手招きし、横に立たせた。
執事さんは60歳ほどの老紳士で、恭しく胸に手を当て一礼した。
「わたくしはアルベルト様の執事のゼスと申します。失礼ですが、わたくしの契約する精霊王をこちらに呼び出しても構いませんか?」
お母さんが頷くと、執事さんはまた一礼し、指をパチンと鳴らした。




