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最終試験 剣聖VS銀閃(上)

リアルとの影響で、ちょっとスランプ陥ってました。

週一がちょっと辛くなってきたんで、気分転換で別の作品作るかも…です。

では、どうぞっ!!

 



 2次予選、総当り戦では最終的に半数が振り落とされる事になった。


 いの一番でのクリスティの戦いぶりに尻込みしてしまった者達が大半で、残りの一部はこの総当たり戦で体力配分を間違え最終予選まで続かなかった者達。


 そして極一部が試験官から不適格とされて落とされた者達である。


 最終予選は現役の魔導騎士との模擬戦闘である。


 この段階で残っているのは20人といないため、日数にして約3日の間に各1人ずつが騎士と闘うことになるのだ。


 しかもこの試験では負けた場合は即座に試験が終了する事になる。


 負ければその場で試験終了、勝てば合格が決まるといっても良い。


 受験者の相手をする魔導騎士は試験官や解析系スキルを持つ者の情報とすり合わせ、まず互角の実力を持つ騎士が相手となる。


 とはいえ、現役の魔導騎士の実力と見合う者などは殆どおらず、騎士団でも平騎士にあたる者達が相手をすることになっていた。


 そしてこの試験で騎士団長や部隊長といった幹部クラスの面々が出張ってきた事は前例としてなかったし、これからも無いといわれていた。


 これまでの最高記録は十人長クラスの騎士が限界であったからだ。


 その記録を持つ騎士は現在、騎士団長になり周辺諸国にその名を轟かせている。


 しかし、その予測は今試験で1人の受験者の登場により塗り替えられることになる。


 ―――彼女、クリスティ・ツヴァイ・リンデンバーグによって。


 彼女の相手は第25代魔導騎士団団長、パトリック・ズィーベン・ブリッツである。


 幹部クラスを押さえ、一足どころか何足も飛ばした相手に長年この試験を見てきた観客や一部の貴族達は驚愕していた。


 過去数例しかないとされる女性の魔導騎士候補がこの最終試験に、しかも超大物であるパトリックを引きずり出したのだから。


 パトリックは真剣勝負の気持ちなのか、国王であるヒュルケ・ヌル・バルトリムから下賜された『白剛』と呼ばれる鎧を装備して現れた。


 それだけパトリックがこの試験に本気で臨んでいるのが一部の者たちにはイヤというほど理解させられ、結果がどうあれ穏便には済まないだろうという予感はもはや予知の域にある。


「…意外と早い対決となりましたねパトリック卿。

 私の予想としては、部隊長辺りが来ると思っていたのだけど」

「そうか?

 俺としてはあの英霊と戦った時からこの試験で俺と当たるんじゃないかって薄々だが感じ取っていたぜ?

 何しろあの英霊(イェーガー)の主にして学院や冒険者ギルドでも超弩級の大型新人だぞ?

 言っちゃあなんだが、お前と同じ位の頃の俺だってそこまでの実力にはなってなかったぜ?」


 あっけらかんと言うパトリックにクリスティはどう返せばいいのかつまってしまった。


 素直にありがとうございますと返せばいいのか、それともリップサービスのつもりなのかと、真偽の程が分からないからである。


 素直に受け取っても謙遜で返しても結局の所どうにも変わらないと気付いたのは後日のことであるが。


「―――そうですか、それでは始めましょうか?

 一応言っときますけど、手を抜いて私に勝てると思わないで下さいよ?

 一瞬でも気を抜いたら、刺身にしますから」


 2次予選では最終日の全試合をわざ(・・)と棄権していたクリスティは体力的にも何も問題が無い。


 その所為で失格にされるなど全く思っていなかったクリスティの思惑は予測通り万全の状態で事に及べるのである。


 それ故に、この戦いで全てを出し尽くすのに何の不備不調異変も無い、まさに完璧な状態なのだ。


 構えた魔剣は形態を変化させずに通常のままだ。


 パトリックも構えるとはぁとため息をつく。


「…なんつうか、イェーガーとはまた違った意味で怖いよなクリスティ嬢は。

 まぁなんだ、アレだ、俺も頑張るからお前もがんばれ、な?」


 あまりに気の抜けた言葉であったが、それでもクリスティは特に不平を言うつもりは無い。


 イェーガーとの戦いから見て、パトリックが戦闘で手を抜くような事はまず無いだろうと踏んでいたからだ。


 それに、戦闘に入ったとして手加減をして相手を出来るほど、クリスティの実力は温くない。


 否応にでも本気で相手にするだろうことは間違いないのである。



 ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■



 お互いが試合開始と同時に魔剣を振ったのだが、それを見切った者は少なかった。


 衝撃音の中心にはクリスティとパトリックが目にも止まらない剣戟を繰り返している。


 クリスティが息を深く吐くと一旦距離を開けた。


 お互い怪我など1つもしていないのだが、どこから斬りかかっても防がれるし避けられるで、千日手な状態なのである。


 パトリックとしても身体強化を限界まで使ってまでいるのにいまだ掠り傷すら付かない状況に驚いていた。


「いやー、やっぱりすごいわお前さん。

 単純な身体強化じゃ互角かぁ。

 さすが剣と身体強化系魔法でこれまで生きて来ただけある。

 その年で俺と互角とか、もう色々とおかしいぜ?」


 事実、クリスティとパトリックの年齢は10近くは慣れている。


 その上パトリックは何度も戦争を経験していて対人戦闘経験がクリスティより遥かに上回る。


 経験、実力と共にパトリックはクリスティより高みにいる人間のはずである。


 それなのに、今パトリックとクリスティはまさに互角の闘いを繰り広げていたのである。


「やはり、才能というものは恐ろしいものですね。

 たまに自分の才能にときめいてしまいます」


 軽口を叩くクリスティに、パトリックは半分以上本気で言っていると内心でボヤキながらも剣を振るった。


 そう、パトリックはこの戦闘を始めてすぐに嫌な予感がし始めていた。


 初めて会った時以上に、実力が向上しているのではないか、と。


 実際にパトリックがこの試験会場に来たのは今日が初めてで、クリスティが闘っていた2次試験などは見てもいない。


 その為、クリスティの実力が現在使用している解析系スキルでも把握しきれるのか、パトリックの背中に疲労とは違う汗が流れ始めていた。


 剣戟はまだ防げるしかわせる、しかしこんなものは序の口だ。


 身体強化だけの、ある意味剣術で以ってどこまで通用するのかいわば『試合』が多分に含まれた戦闘なのである。


 魔剣の能力やスキルなど使っていない、肉体の極限まで鍛え上げた剣士による真剣勝負。


 お互いが隙を窺っていて、少しでも隙を見せるとその瞬間急所に殺気を纏った剣が振るわれる。


「殺気が前に出すぎたな、これなら簡単に避けられるぞ!!」

「やっぱり経験豊富な騎士だと殺気を込めるとその延長線上で防がれるか…厄介ねもう。

 パトリック卿、前言撤回しますから手加減していただけませんか?」


 クリスティの肩口への攻撃をパトリックは少し体をずらしただけで避けて見せると、クリスティが厄介だとは欠片も思っていない表情でぼやいていた。


 思わず軽口で冗談まで言ってしまう辺り、クリスティのテンションは次第に愉快な方向へとかけ始めていく。


「少し早いですが、スキルを使いましょう。

 パトリック卿もどうぞ御使用くださいな?

戦乙女(ヴァルキュリア)】発動」


 スキルを発動すると、クリスティを中心に周辺が微かだが振動し始めたのである。


「それでは団長、死なないでくださいね?」


 先ほどの剣速がまるでお遊びともいえる速度でパトリックを襲った。


「っ!?」


 パトリックはクリスティの一撃に第六感働いたのか、瞬時に対応しきった。


 だが対応しきったと同時に、この一撃を受けてしまったことに後悔した。


 あまりの剣圧に、パトリックが押し負けたのである。


 クリスティのスキル【戦乙女(ヴァルキュリア)】は”闘気”と”魔力”を練り合わせ、ステータスにある、『筋力』・『耐久』・『敏捷』を格段に上昇させる能力だ。


 魔力による身体強化と闘気による重ねがけでその力を倍以上に高める究極の戦闘術。


 しかもクリスティには魔神デュケインからスキル【徒人】を下賜されており、常時発動したこのスキルのおかげで現在のクリスティのステータスは英霊と遜色ないものとなっていたのである。


 今のクリスティの力は、魔法を使わなければイェーガーとでも正面から打ち合えるほどの力を秘めているのである。


 押し負けたと同時に体勢を崩したパトリックは、続けて来るクリスティの怒涛の猛攻に徐々に生傷を増やしていった。


「…どうしたんです?

 パトリック卿の持っているスキル【魔人化(デモナイズ)】…でしたっけ。

 それは使わないんですか?

 ああいえ、使わずにいてくれた方が楽に終われそうなんで、出来れば使って欲しくないです」


 魔剣を振るいながらクリスティはパトリックにそう尋ねた。


 パトリックのスキルはその名と共に有名で、一度使えば勝利確実とも言われる非常識なスキルといわれていた。


 しかしその全容は最重要国家機密扱いに指定されていて、クリスティが所持する諜報組織【カラスの木(ルフト)】に調べさせても何一つとして情報は来なかったのである。


 現在も【フレイ】に解析をさせているものの、全くというほどに進んでいなかった。


 解析できないことに【フレイ】がしきりに謝罪してきているのが鬱陶しくなるほどにである。


 クリスティも戦闘をしながらあれこれと予測を立てているのだが、しっくりくるものが浮かんでこない。


「…ああ、なんつーかあのスキル発動条件が厳しくてな?

 現状じゃあ無理なんだわ」


 条件といわれ、環境、状態、時間帯、必要魔力、そして代償といったモロモロの情報に予測を立て、クリスティは環境と状態の2つにあたりをつけることにした。


 パトリックがこのスキルを使ったことが顕著にわかるのが、過去の防衛戦争である。


 クリスティは1対1の戦闘では発動しないこと、状態に関しては、今以上に怪我を負わせれば条件をクリアできるのではと考えた。


「…とはいえさすがにこれ以上押されるのも拙いんでな?

 切り札(・・・)を切らせてもらうぜ!!

怨恨鏡(アヴェンジャー)】!!」


 旋回による5連撃をかわし切って見せると、パトリックはクリスティが調べた情報網にも無かったスキルを発動させた。


 そしてその発動した瞬間、クリスティの全身に無数の剣で刻まれたような跡が浮かび出したのである。


「何よ…これはっ!?」


 しかも薄く斬られていただけに見える切り傷の筈なのに、感覚的には明らかに大怪我を負った時と同じ位の痛みが襲って来ていたのである。


 その突然の痛みに、クリスティの動きが止まってしまったことは本人からしても不覚だったとしか言い様が無かった。


 言い訳の仕様も無く、この不意の一撃は目の前にいる騎士団長(パトリック)のスキルであろう。


 そして加えて悪手だったのは、怪我の状態を見るためにクリスティが一瞬でもパトリックから目を離した事である。


 確認を終えた時、パトリックはクリスティとの間合いを3歩まで詰めていた。


 ―――間に合わないわね。


 ―――最悪だわ、こんな初歩的な失態(ミス)で負ける羽目になるだなんて。


 ―――そう思った瞬間、私の身体が勝手に動いた。


 ―――そう、まるで何かに体を動かされるような、操られているような、そんな不思議な感覚。


 ―――そんな不思議な感覚に私は不快だとか、吐き気とか、そんな感覚は浮かばなかった。


 ―――むしろ、ほっとした。


 パトリックの攻撃は確実にクリスティを戦闘不能にさせる一撃であったし、かわせる筈の無い致命的な隙であったはずなのに、クリスティの身体は対応しきってみせた。


「…おいおい、これでダメとかアリかよ!?」

「ほんっとうに最高だわ、これだからアイツ(イェーガー)といると退屈しないのよッ!!」

『フレイ、アナタが今私の身体を動かしているのよね?

 それともフェイトかしら?』

『こちらで処理いたしました。

 一時的にマスターの身体を【支配(ジャック)】させていただきました。

 緊急措置だった為に事後承諾になりましたが、よろしかったでしょうか?』


 どうやらクリスティの身体が勝手に動いたのは魔剣【フレイ】が何らかの魔法、またはスキルを使って【支配】した結果だったらしい。


『構わないわ、負けるよりましよ。

 今後もこの調子で、もしもの場合は頼むわ。

 フェイト、ここからは貴女も使うわ。

 頭と心臓以外ならどこを狙ってもいいから、とにかくパトリック卿の体勢を崩しなさい』

『承知いたしました』

『承知いたしましたわっ!!』


 簡潔すぎる作戦会議を終わらせると、態々待っていてくれた、否、何かをしようとしているパトリックに魔剣を向けた。


「…それではパトリック卿、本番といきましょうか?」

「……そうだな、こっからが本番だ」


 クリスティの言葉に、パトリックがにやりと笑って見せた。


 切り札の1つを強引にだが破られて、目の前の強敵(クリスティ)に心躍らせているようである。


「まぁこれでも年長者っつーここともあるし、立場もあるからな。

 大人気ない勝ち方してると色々言われちまうんだが、ここまできたら遠慮はしねぇ。

 俺も全力前回で当たってやる、胸かしてやるから全力できな?」


 パトリックの言葉からは自分が負けるなんてありえないという自信の満ちた言葉を聞くと、クリスティは俄然燃えた。


 パトリックが着込んでいた白い鎧が黒く、黒く塗り潰されてきていたのである。


「…なるほど、それが」

「ああ、これが俺の持ちうる最強のスキル【魔人化(デモナイズ)】だ。

 さっきの言葉を返すが…手なんて抜くんじゃねえぜ?」


 パトリックの言葉にクリスティはつぼに入ったのか、お互いが剣を向けているのにも構わずに嗤ってしまった。


 それは酷く楽しそうで、漏れ出す声には抑え切れずに次第に会場を包んでいく。


「ふっくく、ふっふ、っはは、あはっ、あはははははっ!!

 ホント、これだから止められないのよ。

 ああいいわ、いいわよ、最高よ。

 魔獣とか雑魚を斬るんじゃない、本当の格上との真剣勝負はっ!!

 こんなイカレタ世界でも純粋に楽しめる数少ない娯楽よ、楽しまないと損よねぇ?

 ふふっ、手加減ですって?

 ……冗談じゃないわ、そんなこと粉微塵もしないわ、死んでもゴメンよ。

 ここからが良い所なんだから、ちっさいことなんて無視して今、この瞬間を楽しみましょうよ……イェーガーッ!!」


 クリスティは何を思ったのか、本来呼び出してはいけないイェーガーを呼び出した。


 イェーガーとしても出来れば出たくは無かったのだが、ほかならぬ(クリスティ)の命令である、しかもあのテンションで命令されて拒否などすれば、後でどんな理不尽を受けるかたまったものじゃないという理由も加味され、すぐに飛び出した。


「ヘイホーお嬢!!

 なんか用かい?」

「この闘技台(リング)を結界で囲みなさい。

 私たち2人がかりでも壊せない、さいっこうに堅い奴よ」

「アイアイサー!!」


 するとイェーガーは碌な詠唱もせず、指をぱちんと鳴らしただけで闘技場の四方に柱を地面から打ち出すと、四点を起点とした結界を構成させた。


「…必要措置なんだから、まさかダメとは言いませんよね、パトリック卿?」

「…ったく、事後承諾じゃあ今更だろうが?」


 苦笑するパトリックに審判はどうすればいいのかと尋ねて、試験続行と合図を送った。


 会場は突然現れたイェーガーに驚いていたが、結界を張るだけ張ってどこかへそそくさと出て行くとすぐに忘れて闘技台に視線を集中させる。


 小手調べは終わり、ここからが本番とばかりに向き合うクリスティとパトリックに観客は黙ってその様子を見守った。


 試験という名を借りた大陸最強を決める戦いは今、誰の予測もつかない戦いを始めようとしていた。




感想、レビュー、評価などなどくださると作者が悶え喜びます。

よろしくお願いします。

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