銀閃VS天才魔導師
GWですね!!
作者も昨日からお休みでまたーりしてました!!
では、はい、どうぞ!!
GW中に後1・2回は投稿しようと思ってますので、皆様、ヨロシクです!!
クリスティにとって、敗北とは【死】を意味している。
とはいえクリスティも不敗の人間ではない。
敗北こそ何度もしているが、それでも命からがらの結果を残していて、それを教訓にしているのだ。
人生の大半を戦いで埋め尽くしているクリスティにとって、闘争こそが日常といっても良い。
経験から知っている。
この世における敗北とは、当人の”能力不足”からくる結果なのだと。
そう、”力”がなければ全てを失ってしまうという危機感がクリスティの力への執着の根源であった。
故に、クリスティが戦いに赴く時は、絶対に相手を『殺害』することを心に決めているという事だ。
しかし今回は勝手が違う。
試験であるため、相手を殺害する行為は失格である。
相手を殺害した場合はそのまま会場にいる騎士団が出動し、即座に拘束されて牢屋へ直行だ。
その為、クリスティはこの試験にはあまり乗り気ではない。
試験には合格したい、しかしその過程が気に入らないのである。
全力で相手をすれば確実に相手は死ぬ。
幼い頃ならば全力で相手をしても重傷で済んだかもしれないが、今のクリスティならば大抵の人間は一撃で殺せてしまうのだ。
あの厄介な魔神から下賜されたスキルもあるが、クリスティは手加減というものを知らない。
だが、それも過去の話である。
イェーガーとの訓練でクリスティは『手加減』を会得した。
イェーガー以外では始めて人間に使うが、クリスティは特に不安にはなっていない。
とはいえ相手に対しては礼を失する行為ではあると自覚しているが、死んでもらっては困るのだ。
だからクリスティにとって、所詮は非常に助かった。
弱すぎると手加減をしても死んでしまう可能性をも孕んでいるのだ。
そう、これは試験であると共に実験なのだ。
「…だからルーディー・フィーア・リスデン。
お願いだから期待外れで終わらないでね?」
―――期待外れで終わったとき、あなたの命はこの世にはないわよ?
本選1番手、クリスティ・ツヴァイ・リンデンバーグの対戦相手は、予選を圧倒的火力で突破した学院次席。
ルーディー・フィーア・リスデンである。
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本選の初戦から本命とかち合ったことはルーディーにとっては不運であった。
何せ目の前にいるのはルーディが見た者の中で『最強』といってもいい位の存在なのだから。
そんな相手が相手?
ばかげている。
即座に降参した方が後の対戦の支障になりかねない。
とはいえ何もせずに降参というのはさすがに決まりが悪い。
受験者であるルーディーとしては、絶対的強者と出遭った時の対応能力を見せるというのは実に理に適った事でもあるのだから。
―――だから、仕方なく、仕方なくである。
こんなのは二度とゴメンだ。
「なるべく期待には応えてみるよ。
お手柔らかに、『銀閃』ちゃん?」
その言葉と同時にルーディーは術式を発動する。
術式は瞬く間に起動していき、クリスティが目視するだけでも優に100は超えるだろう魔法陣が展開していた。
予選の倍を超えるだろう術式にクリスティは素直に感嘆の言葉を口にする。
会場はルーディの見事な魔法にどよめきが起きていて、クリスティもその中で驚いていた1人であった。
「すごいわねこの数、いくら事前に準備していたとはいえ、これだけの術式構成。
初戦の相手としては良い盛り上がりにもなるし、ちょうどいいわ。
―――蹴散らすわよ、【フレイ】【フェイト】」
『存分に、マスター!!』
『御意ですのッ!!』
魔剣と魔弓が応と答えると、クリスティは魔弓【フェイト】の引き金に指をかけた。
「―――勝負だ、クリスティ!!」
弾幕が火を噴いた。
クリスティの周囲1メル(約2メートル)を火・水・風・土の弾丸が殺到する。
ルーディーの術式は中級の魔法を中心に構成されていて、クリスティが以前ウィリスたちと面白おかしい決闘をした時以上の術式構成と密度のある魔弾であった。
1発当たった瞬間にその部位は大きく欠損するだろう一撃がこめられており、即座に厳重注意がされるだろう攻撃だったのだが、クリスティにとってはこの程度、小雨程の不快さしかない。
魔剣が振るわれると、それと同時に数十の魔弾が消し飛び、魔弓が放たれたと同時にルーディーの放った魔弾の残りが撃ち落された。
その作業としか思えないような仕草、しかもその場から1歩も動かずにやってみせたクリスティにルーディーは思わず拍手を送った。
「すごいすごい、これに対応できたのはヴォルフ以来だ!!
じゃあ次はこれだッ!!」
楽しそうに声を上げるルーディは新しいおもちゃを見つけた子供の様なあどけない笑顔を見せながら次の術式を起動させた。
最初の予定だった『ある程度戦ったら降参する』という思惑はもうどこかへ放り捨てていた。
これほどの相手、自分が編み出した最強の魔法がどこまで通用するのか確かめてみたくなったのだ。
「術式起動、起きろマッドデモン!!」
既に魔法の詠唱を終えていた段階で魔法を任意で発動させることの出来るルーディーのスキル【魔学者】が起動される。
複数のスキルで構成されたこのスキルは魔導師にとっては理想とも言えるスキルで構成されていた。
【術式任意発動】・【詠唱破棄】・【魔法威力上昇】・【必要魔力半減】・【魔法解析】である。
ルーディーはこのスキル郡【魔学者】を十全に使うことで対象を圧倒した戦い方を実現してきていたのである。
そしてそのスキル名と同じ名を冠した魔法が発動する。
クリスティは何が起きるのかと楽しみに待っていると、会場全体が震え始めた。
そして十も数えないうちに1体のゴーレムが飛んできた。
全長5メル(約10メートル)、全身を鋼鉄で覆われていて、その隙間から炎や水が絶えず零れ出ている、超重量の騎士である。
見ただけでも4つの属性で構成された複合属性人形にクリスティはその溢れんばかりの賛辞を送った。
「こんな出鱈目ゴーレム、古代遺跡で遭遇した時以来かしら?
…いいわね、いいわ。
最高よルーディー。
あなたは強いわ、認めましょう。
このクリスティ・ツヴァイ・リンデンバーグが全力で相手をするに相応しい魔導師であることを!!」
「ははっ、ありがとうクリスティ、今まで受けた賛辞の中でも指折りの褒め言葉だよ!!
僕の全力を以って、君にその人生で数少ない敗北を贈り物にしてあげるよ!!」
無骨ながらも巨大な剣を振り回すゴーレムをクリスティは迎え撃つ。
剣というよりは包丁やナタの類であろう凶器をクリスティは迎え撃った。
さすがに魔剣ではないものの、その驚異的な重量によりクリスティははじめて後方へ飛ばされた。
観客席から悲鳴が上がる。
勢いよく飛ばされすぎて会場へとクリスティが飛び込んできたのである。
これにはさすがに審判も一時中止を宣言しようとしたのだが、クリスティは飛ばされてすぐに受身をとり、弾丸のような速度で試合会場へと帰ってきた。
吹き飛ばされた衝撃をまるで無かったかのようにアピールしてみせるクリスティに、審判はもう何も言わない。
形だけの注意をすると、すぐに離れていった。
「これで飛べるだなんて、一体どれだけの術式を起動しているのかしら。
…ていうか、スキルが発動しているのに壊れないこのお人形さんは本当に頑丈ね、驚きだわ」
ルーディーは自分の魔力残量を気にしている様子もなく湯水の如く魔法を連発している。
クリスティとしては目の前のゴーレムを倒すことで勝敗に決着が付くと思っているのか、ルーディーの放つ魔弾を殆ど目も向けずに切り伏せ撃ち落しながらもゴーレムを切り刻んでいった。
「ふふっ、こんな斬り応えのある相手、金獅子の時以来だわッ!!」
【戦乙女】を既に発動しているクリスティは豪快にゴーレムに対して逆袈裟をして斬り付けていく。
切り傷が他の切り傷と重なって行き亀裂になり、そこから崩壊が始まっていく。
ゴーレムの左足は歩行不能な―――風の魔法で浮いていた為あまり意味は無いが―――状態に陥った。
「ああっ、僕のマッドデモンが!!」
「ふぅ、硬いわね。
けどいいわ、人間相手にするよりよっぽ手加減しなくていいものねッ!!」
クリスティの持つ【徒人】は人型にのみ適用される。
よって辛うじて人型を保っているこのゴーレムはその適用範囲に入っているのだ。
左足を欠損しているのだが、それでも人型と適用されている辺り、人型で無くなるまで続くのだろう。
「…それにしてもよく出来たゴーレムね。
さすがに全壊は面倒だから、両手両足捥いで終わりにしましょうかッ!!」
クリスティは飛び上がるとそのままゴーレムの右腕を根元から切り落とした。
【戦乙女】+【徒人】という最強コンボが発動している以上、この場における最強はクリスティだ。
ここでようやく右腕から炎が溢れ出してきた。
左足からは大量の水も出始めてきており、そろそろルーディの限界も近いようである。
「―――ああ、ついでに首もいただきましょうかッ!!」
斬、という金属が金属を断ち切る音が起こると、ゴーレムは活動限界を迎えたのか崩れ落ちた。
「…あちゃぁ、僕の最高傑作が負けちゃったかぁ。
審判さーん、降参しますから試合止めてくださーい」
ゴーレムが破壊されて落ち着いたのか、ルーディが満足したような表情で両手をあげた。
「…さてと、おなかも空いたし食事でもしようかしらね」
「ああ、僕もご一緒させてもらってもいいかな?
色々とお話もしたいし、奢るよ?」
「財布も破壊されたいなんて自虐的な趣味をしているのねルーディー。
遠慮なく高級料理店で奢られてあげるわよ?」
本選初戦は前例の無い破壊規模に観客も予選通過者を卒倒させて、予選通過者の何人かが棄権するという事態を引き起こした。
なお、本来ならば緒戦のあと何試合かする予定であったが、あまりの破壊規模にステージが原形をとどめていない為、本選初日は僅かに1試合という短い時間で終わった。
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「…いやぁ、あれすごいなぁクリスティはん。
あんなでかい式神ズバズバ斬っといて汗一つかいとらんよ。
どないなもんよ、アルトリウス。
あんさんならアレ、どれくらいで倒せるん?」
アレ、と顎で指したのはクリスティであった。
ミュンハウゼンはクリスティとゴーレムの戦いに驚きながら見ていたが、それでもまだまだクリスティが本気で戦っていないことは確かだと気付いていた。
全力ではあるのだろうが、あれでは大雑把、大味が過ぎる。
本気で殺し合いをするとすれば、こんなものでは済まない事になっているだろうとミュンハウゼンは辺りをつけている。
アルトリウスは少しばかり瞑目していると、ぽつりと呟く。
「…10分だな、それ以上は負ける公算が高い」
黒蹄騎士団団長から最も聞きたくない言葉であった。
剣術では間違いなく互角か、それ以上と断じたアルトリウスからすれば、保有しているスキルにしても差がある為、どうしても勝てる公算が見当たらない。
負けない戦い方をするしかないだろう。
10分は善戦出来る、だがそれ以上は持たない、と断言されたのである。
だがそれも―――、
「…まぁ、お前がいれば10分以上は戦えるがな、ハルミン」
ミュンハウゼン―――ハルミンは人の悪そうな笑みをしながらウヒヒ、と笑って見せる。
「そうやねぇ、まぁクリスティはんと正面でかち合ったらイヤやし、僕としてはあの彼と戦うのイヤやわ。
相性悪すぎやアレ、絶対千日手になって決着付かんわ」
そうごちるハルミンはうへぇ、とぐったりとした表情をしながら苦笑する。
「…なるほど、結論としては正面から相手をするより搦め手からか。
この国に来てから日が浅い、まだ日は貰っているのだ。
ギリギリまで使って落とすぞ」
「アルトリウスは元気やねぇ、僕は裏方にまわっとるから、好きにしてもええよ?
研究しながら遊んどるから」
「お前も働けバカ」
2人は周りに誰もいないとばかり好き放題に話していたが、気付いていなかった。
いや、細心の注意を払ってはいた。
ハルミンは魔法的な警戒網を、アルトリウスは騎士の勘を働かせていたのだが、それでも網には掛かっていなかった。
だからこそ話し込んでいたのだが、2人は忘れていた。
この国にいる規格外、彼という最強で最悪な英霊がいるということに。
感想、レビュー、評価などなどくださると作者が悶え喜びます。
よろしくお願いします。




