邂逅、そして修行へ…
ちょっとクロスオーバー的な?
作者お気に入りなあの方が御降臨です。
では、どーぞ!!
クリスティは現状が余りに現実と乖離しているので思考が硬直してしまっていた。
何しろ突然意識が途切れた―――実際はイェーガーに気絶させられたのだが―――とたん、別の空間にいたのである。
何も無い、内から恐怖が湧き上がってくるような、この世のものとは思えないほどの静寂さはいったいどこなのか、クリスティには分からないでいた。
「ヤッホーお嬢さん、迷子かい?」
気の抜けた声をかけられ、クリスティは思わず剣を抜こうとしたが、剣を佩いていない事に気づき後ずさる。
そこにいたのは、異様な威圧感のある眼帯を両目に付けた、不思議な少年である。
なんと言えばいいのか、そう、異様なのだ。
目の前にいるというのに、いるのかいないのか分からないほどの存在感。
眼帯で顔の大部分を隠しているのにも拘らず、自分の心理を見抜いたかのような狡猾でいて歪んだ笑顔を頬に浮かべたソレは、まさに現実離れした存在である。
「…さぞ名のある魔の君なのでしょうが、私は御尊名を知りません。
無作法、御無礼を承知でお聞きしたい、此処は一体どこなのですか?」
―――まず間違いなく、この名称不明な人型が私をここに呼び寄せた奴ね。
現実に引き戻されたクリスティは目の前の存在に細心の注意をしながら感情的な面を一切出さずにそう尋ねた。
そう、召喚魔法にあるものの中にも特殊クラスというものが存在する。
英霊の中における『勇者・聖女』といった存在から、ウィリスと契約していたような『天使』。
そして目の前にいる存在はその天使とは正反対の気配のする、生存本能が全力で逃げろと警鐘を鳴らし続けるような存在である。
「失礼な、そこらの『小悪魔』程度と僕を同じにしないでよ。
まあ考えている通り、そっちよりの存在ではあるけど、喚ばれたからってホイホイ出てくるほど尻軽じゃないもんね。
…ああ、名前ね。
僕はデュケインという。
ヴァッサーゴと呼ぶ者もいれば、『終わり無き混沌の御子』とかもあったかなぁ」
どこか子供特有の、駄々っ子じみたところがある口調で話すデュケインという存在。
その雰囲気と口調のギャップ差に戸惑うクリスティであったが、それはおそらく擬態なのだろうと推測した。
警戒度を何段階も上げて、根気よくクリスティは延々と話すデュケインを待つ。
おそらくは心を読まれているのだろうが、冷静に冷徹に対応するのは普段からやってきたことである。
「…あ、話が脱線しちゃったね。
ごめんごめん、僕ってば1人でいる時が最近多くてね、話し相手がいなくてちょっと寂しかったんだよ。
イェーガーに僕って『年よりは話が長くていけねえ』っていわれてからちょっとは気にしてるんだけど、イヤーダメだね、さっぱり気づいてなかった!!」
「イェーガーの事を、御存知なのですか?」
その言葉に思わず反射的に反応してしまったクリスティは頭の中である計算を瞬時に計算させた。
―――まさか、目の前にいるのは イェーガーに神器と加護を与えた魔神?
「おー、だーいせーいかーい!!
名前だけ言ったのにそれだけで理解しちゃうだなんて、イェーガーのマスターは中々に頭がいい。
そう、その通り。
あの戦争狂に神器をあげたのは僕。
これでも司っている権能の1つに『戦』があってね、あ、基本僕は『混沌』がメインな神様なんだけど、戦争ばっかりやっていたらいつの間にか権能増えちゃってさ、そこでイェーガーと知り合っちゃったわけ。
あいつ、欲望というか戦争に夢中すぎて見ていて面白くってさ、全力で加護あげちゃったら、世界に戦争し掛けるんだもん、マジ笑えるし」
話が脱線しかしない、どれだけ話すことに飢えていたのかしらねこの神様。
見た感じ子供にしか見えないんだけど、やっていることは性質が悪い、悪すぎる。
狂人に加護あげてどうするのよ。
「…あー、ホントゴメン、また脱線した。
時間も限られているから用事はすぐ済ませるね」
そういうと、デュケインはクリスティをゆっくりと指差す。
「じゃじゃーん!!
おめでとう、クリスティ・ツヴァイ・リンデンバーグ!!
君はこの度、僕の加護を得る権利を取得しました!!
ちなみに拒否権は無いぞ★」
嫌な笑顔である。
見ているだけで逃げ出したくなるような、純度100パーセントな悪意の煮詰まったドロドロとした悪意ある笑顔だ。
胸が妙に熱い、ローブを摘んで見ると、自らが施した【刻印術式】の周りに黒々とした刺青があったのだ。
「あの、これは…?」
余りのことにクリスティも二の句が告げられずにいた。
クリスティはこれが一体何なのか、すぐに気づいたのである。
「ああ、僕の『戦神』としての加護をあげたんだよ。
君ってば、戦術・戦略系のスキル1つも持っていないんだもん。
今後の為にも、とっておきなって。
ああ、あと特殊スキルあげといたから、今度使ってみなよ、結構魔力の燃費がいいよ。
それじゃーねー」
「ちょっとまってこのっ―――っ!?」
最後まで言うこと叶わず、クリスティは突然自分の真下に出来た黒い穴に落ちていった。
落ちていったクリスティがおちて言った黒い穴が閉じていくのを確認して、デュケインは椅子を取り出してそのままゆったりと座った。
「さってと、色々と面白い子だったけど、これで更に面白くなるのは間違いないね。
面白いスキル一杯持っている子だから、あれ以上はいらなかった気もするけど…まぁいっかな。
イェーガーもそうだったけど、『特異点』ってホント面白いのばっかりだなぁ」
そう呟くデュケインはクスクスと笑い続けていた。
こうして、クリスティとデュケインの、最初で最後の邂逅は余りにも突然で、唐突に終わりを告げた。
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(クリスティ視点)
目を覚ました、全身はなぜか疲れていた。
その理由も分かっていた、あのタチの悪い魔神の所為だと。
「あ、お嬢ようやっと起きたんか。
いやー、なんか懐かしい魔力感じちょったらお嬢の魂だけきれいさっぱり抜けとるんじゃよ。
あ、こりゃ連れて行かれたなって思ったけん、ばってんオレ様ゆるっとまっとったんじゃきぃいいっ!?」
無言で殴りかかると、突然の攻撃に油断していたイェーガーはそのまま直撃を受けて殴り飛ばされた。
瞬間、私の耳には鈍い破壊音が響く。
音の元凶へと目を向けると、先ほどまでイェーガーがいた場所にあった壁がなくなっていた。
「…やられたわ、あの魔神、とんでもない加護くれやがったわね」
加護といえば余程のものでない限りどんな者でも有り難がるものなのだが、クリスティは全く喜べずにいた。
ステータスカードを確認した。
そこには、以前とは全く違うステータスとスキルがいくつか見え、思わず天を仰いだ。
―――やりやがったなあんのバカ神ぃ。
■ ステータス(能力)
■ クリスティ・ツヴァイ・リンデンバーグ
属性 秩序・悪
筋力 B+ (A+++)
魔力 A++
耐久 C++ (A+)
技能 B+ (A++)
幸運 A
敏捷 C+ (A++)
■ 技能 (保有スキル)
・魔法 A:特定の魔法しか使えないため、これ以上のランクは上がらないが、運用次第で最高A++までの精度にまで上昇する。
・カリスマ D+:名門貴族出身という事もあるが、彼女に対する学院の評価が低いため、一部の貴族には影響が及ばない。一般人や冒険者にはある程度の信頼はされている。
・武術 A++:剣や体術などを駆使するスキル。ランクBの段階で達人級の為、既に英雄の領域に踏み出している。内訳として、・剣術 A++ ・棍術 B++ ・槍術 A+ ・体術 A++ ・騎乗 A ・機械弓術 A+ ・短剣術 A+となっている。
・大器早成 A:成長速度の大幅補正。Aランクとなれば、事あるごとに評価が正しく見られ、面倒事があってもほとんど修正可能。ある意味運命的なレールがすでに敷かれている。同等の妨害スキルがあれば相殺される。最終的には、ステータス平均がSまで伸びる。
・徒人 S++:人という種、人型に対して大幅な攻撃補正がかかる。対象のステータスが強ければ強いほど補正がかかるが、魔獣のような存在には一切の補正がかからない。なお、常時発動スキルなので解除は不可能。
・戦事略決 S++:戦においての理非全てを記された書物を召喚する。多人数との戦闘において優位に補正がかかる。
―――なるほど、どうやってイェーガーをぶっ飛ばせれたのか、理由がようやくわかったわ。
相手が人という形をしていれば、相手が強ければ強いほど補正がかかる反則的スキル。
イェーガーは当然だけどステータスが恐ろしいほどに高い。
それゆえに、私のこの【徒人】のスキルが殴りかかった際に適用したのだろう。
結果、イェーガーは突然の一撃に予想を大いに上回る速度で襲い掛かったクリスティの拳を避ける事も敵わずにそのまま吹き飛ばされてしまったという訳である。
―――というか、イェーガーが避けれないほどの速度で殴るって…人外じみてきたわね。
「……ふぃー、痛かったぜコンチクショウメ。
お嬢、ありゃダメだぜよ?
うっかりダメワンコ殴ったときにゃあ首から上が消えちまってるぜい。
まっ、オレ様はアレぐらいのパンチへでもねえけどな!!」
吹き飛ばされたのに平気な様子で帰ってきたイェーガーは窘めるように私に言う。
確かに、レーヴェは意外とステータスが高い。
特にスキルを使っていたならば、確実に私のスキルが増幅されて致命傷の一撃を加える事はまず間違いないわ。
―――まぁ、いざとなればイェーガーいるしそこまで心配はしてないけど。
「…なーんかお嬢楽観してるみてえだけど、オレ様のあの神器、お嬢クラスの奴じゃねえと復活するにも出来ねえぜ?」
「え……?
初耳なんだけど?」
まさにイェーガーの世界で言うところの『寝耳に水』である。
おもわず固まってしまっていた私にイェーガーがいやらしい笑いをしながら答えた。
「だって、聞かれてねえしぃ?」
「……イェーガー、この際死者蘇生に関したデメリット、今ここで洗いざらい喋りなさい。
大丈夫、殴ったりしないから」
拳を強く握り締めた時に起きるギチギチという音が近くで聞こえるが、全く気にならない。
ソレよりも気になることがあるんだから、そっちを最優先しないとね。
「ひひっ、いいぜい。
まぁ簡単に言っちまうとさ、種族の差って奴よ。
お嬢のステータスと、この前ぶっ殺して蘇生させた火龍のステータスな。
何とビックリ、お嬢の方が現状超たけーんだけど、ソレってヒトっつー枠の中でのステータスな訳よ。
お嬢のステータスを火龍のやつに変換すると、まぁどっこいどっこいか少し上くらいかえ?
つまり、そんだけステータス高くて魂の核も強くねえといけねえ訳。
そんなんでワンコクラスの人間1人蘇らせたとしても、魂の方が神器の力に負けて魂が爆散!!
…てなわけよ、アンダスタン?」
イヤというほどに理解した。
なるほど、種族の差というより一定以上の強さを持っていないとレーヴェクラスの実力を持っていたとしても碌な結果が待っていないというわけね。
というか、碌な結果がやってくるとしかいえないか…厄介ね、イェーガーの言うとおり、このスキルの制御をどうにかしないといけないわ。
とりあえずは、
「…オッケーよ、クソったれ。
なによ、とんだ欠陥品じゃないその神器。
それ位神器の重ねがけで魂の保管とかソレっぽい事しなさいよこの不器用。
片手で出来ない事の内の1つがソレだなんて、結局頼りにならないじゃないのよ」
悪態はついておかないといけないわね、なんかムカつくわ。
八つ当たりに近いんだけど、正直皮算用してた自分に非が大いにあるから余計にムカつくのよね。
まあ反省とかはしないけど。
「あっれー!?
オレ様なんでか怒られてる!?
ひっでーぜお嬢、オレ様今までさんざ頼りになったじゃんか!!
つうか、神器の力の重ねがけなんざ掛け算やったってダメなもんはだめだっつの!!
余計に失敗してロクでもねえ事になるのが目に見えてるしぃ!!」
言い訳してるイェーガーに私は仕方なく代案、というか残された手段を提示した。
「そう、なら神器が当てにならないのなら、基本的というか、他に方法が無いのよね。
スキルの制御ね。
イェーガー、このスキルに有効な制御系のスキルってある?」
無駄に知識のあるイェーガーなんだから、それくらいは分かるでしょう。
少し考えているポーズをするイェーガーに、根気よく待って5分と経たずに結論が出た。
「そうさねぇ、お嬢が少し前にボコッた近衛騎士いたじゃん?
あいつの持っていたスキル【身体精密操作】が無難かねえ。
最善手としては自己封印系のスキルだけど、ステータスも一気にガタ落ちしちまうしあんま薦めれねえなぁ」
ああ、いたわねぇ名前は忘れちゃったけど。
確か…ダメね、1文字も思い出せないわ。
ゴールドバーグとか、そんな感じだったかしら?
「自己封印系は無しね、そんな事する位ならこの不便な生活していたほうがマシだわ。
普通に【身体精密操作】を会得しましょう。
イェーガー、あてはある?」
「バッチリだぜよお嬢、試験前までにバッチリ会得できるし、今後の為にもなるからビッシビシ扱いてやんよ」
どこまでもイェーガー頼りな気がしてならないけど、まあ別にいいでしょう。
私はレーヴェたちに修行してくると一方的に言ってイェーガーと一緒に王都を去っていく。
レーヴェは最初全速力で追走してきていたが、さすがに転移してしまえば追いつけない。
こうして試験2日前まで、私にとって過去最大級の特訓が始まった。
感想、レビュー、評価などなどくださると作者が悶え喜びます。
よろしくお願いします。




