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*お知らせ

勝手な都合ではございますが、1週間から2週間ほど投稿を一時止めさせていただきます。

引越しを前倒しした結果、業者が来るのに時間がかかる羽目に…おかげで、オフラインの生活が近日中に始まります。

書き矯めはしていきますので、その点だけはご安心を。

では、1章最終話、どうぞ。

 


「………はぁ」


 クリスティはこれで何度目か覚えていないほどのため息をついた。


 積み上げた騎士たちはもう40人を超えており、その殆どが無惨にも白目を向いて気を失っていた。


 最初こそ騎士たちの実家に身代金を請求して資金を増やそうと考えていたクリスティであったが、いつになれば終わるのか、この連続決闘が一向に終わらないのである。


 クリスティの最強スキル戦乙女(ヴァルキュリア)を使うこともなく身体強化のみで対処しているのだが、繰り返し作業になり始めたこの戦いに嫌気が差し始めていたのであった。


 というよりはすでに飽きているといってもよいのだが、この何十人目か分からない騎士を行動不能にして気絶させる作業が最初と比べて向上しているのに眉間のしわを寄せるクリスティはどうしたものかと悩み始めてもいた。


「弱いわねこいつら、本当に騎士なのかしら?

 ゴロツキに仰々しい鎧を着せただけのザコに見え始めたんだけど」

『同意しますマスター。

 鎧は確かに騎士のそれですが、武器に関してはそこらの山賊と同じか辛うじて上程度。

 マスターの実力を試しているにしても、これでは実力を測る前に終わってしまうでしょう』

『フレイに同意するのもしゃくですが、わたくしもそう思いますわ。

 マスターを疲弊させる作戦かもしれませんが、この程度では準備運動にもなりませんもの。

 いっそのこと【造魔(ライフメイカー)】に命じてこの雑魚の群れを一掃してしまわれたら如何でしょうか?』


【フレイ】と【フェイト】も状況把握をしているようだが、おそらくはその通りなのだろうとクリスティも当たりをつけていた。


 ―――というかフェイト、フレイに当たりがきついんだけど、大丈夫なのかしら?


『お嬢、めんどくせえなら間引くぜよ?

 今なら希望も受けちゃるってばよ』

『調子くれてるみたいだから、相手が絶望する感じのね。

 ああ、それと―――』


 イェーガーからの提言にクリスティはとある注文と共に『スグヤレ』と機械的に命を下した。


 最後の相手、ベルーナ(ナニガシ)を気絶させると、クリスティは次の騎士が挑もうとする前に山積みになった騎士たちも放って少し前までいたテーブルに戻ってきた。


「お、お疲れ様ですお嬢様!!

 すごい御活躍振りでしたね!」


 レーヴェからの手拭いを渡され労いの言葉をかけられたが、クリスティはジト目で皮肉った。


「レーヴェ、あの程度で『御活躍(・・・)』だなんて大袈裟過ぎよ。

 これから見るものを見たら、私の活躍なんて精々が草を一本一本抜く作業ね。

 草刈りの鎌でごっそり刈った方が効率がいいしもの」

「なるほど、イェーガーね、草刈りの鎌は?

 丁度交代する形であっちに行ったから何するんだって思ったら……そういうこと」


 大規模殲滅魔法という鎌を振りかぶったイェーガーを止められる者など、この場には居ない。ジョナの言葉にクリスティは無言で、しかし含みを孕んだ笑みを浮かべていた。


 年相応の少女ではあり得ない、悪意のこもった凄惨な笑みであった。


『お嬢、準備完了したぜ。

 はじめてもいいかにゃ?』

『はじめにゃさい。

 ……いえ、なんでもないわ、忘れなさい』


 先程と打って代わってノリノリなクリスティがある意味ここまで砕けた物言いをすると思っていなかったイェーガーは眼前に大軍がいるのにも拘わらず、吹き出して笑ってしまっていた。


『ぶっふぉっ!

 りょ、りょーかいしたにゃーお嬢。

 注文通りに連中をニャンニャンしてやるから、いい子で待ってるんだにゃ~?』


 ―――ニャンニャンてなんだ、ニャンニャンって。


 クリスティのツッコミ虚しく、イェーガーはにゃーにゃー言いながら詠唱を始めた。


『にゃにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃっ!

(我は憂う者裁く者悪徳を滅ぼす者!)

 にゃーにゃにゃーにゃーにゃーにゃにゃにゃーにゃにゃーっ!

(これなるは(いかずち)一切を断罪し撃滅し蹂躙する破界の閃光なり!)』


 イェーガーの手のひらから火花、否、空気を摩擦する雷鳴が響いていたが、それ以上にイェーガーの詠唱にリンデンバーグ領邦軍ならびにラフティル領邦軍ならびに貴族連合、そして一番間近で観戦しているクリスティたちも思わず何をしているのかとほぼ全員が首をかしげ訝しんだ。


「―――これは、酷いわね」


 クリスティとしてはイェーガーにどういう指示をしたのか理解しているだけもあって、敵対している数万の軍に対して幾許(いくばく)かの同情を禁じ得なかった。


 何しろ本来は同じ国の同じ民なのである。


 そんな民たちが、イェーガーのふざけた魔法で呆気なく死に絶えてしまう、そんな光景に思わずクリスティの表情が曇ってしまっていた。


「…クリスティ、口元が緩んでるわよ?」


 ジョナの指摘もむなしく、ついに耐え切れなくなったのかクリスティが声を出して笑い出した。


「…くっく、ぷっはは、あは、あははははっ!!

 だって、危険分子(・・・・)を皆殺しに出来るんだもの!

 たとえ自国の民であろうと、これを一掃することで王国の将来にとっても大変な益となるはずよ!?

 あぁ、楽しみだわ。

 この国に救うガンを切除する機会を得られるだなんて、私はなんて幸運なのかしら!

 しかも特等席で観戦だなんて、神に…いえ、イェーガーに感謝しないと…ふふっ、あはっ、あははははははははははは!!」


 ―――古来より、雷は神と結びつけられることが多かった。


 どの神話にも雷を操る神は主神格やそれに匹敵する位の高い神々ばかり。


 ギリシャ神話のゼウス、ローマ神話のユピテル、北欧神話のトール、バラモン教のインドラは天空の雷神であり最高神である。


 そして時代が進むにつれて人々は神を信仰しなくなり科学を進歩したがために、最高神たちはその力を弱めていくことになる。


 イェーガーが扱う魔法とは、力は弱まってはいるがその神自身(・・)から強奪してきた、最上級に危険な代物なのである。


「さぁイェーガー、この国にいる危険分子たちをその雷光を以って滅ぼしなさい!!」

「ほいきたぜお嬢!

 雷光よ平等に降り注げ【サンダラーズレイン】!!」


 イェーガーの手にあった雷光の球体が天高く昇り危険分子―――ラフティル公爵率いる貴族連合の頭上に異動して止まった。


 瞬間、雷光の球体は弾け、視界が白く塗り潰される。


 雷鳴、雷轟で更に聴覚も上書きされてクリスティたちは見聞きすることが一時的だが出来なくなったが、肌の感覚からクリスティはこの白い世界で一体何が起こっているのか、少しずつ理解していった。


 蹂躙、破壊、壊滅、鏖殺、殺戮、滅殺、消滅、そんな言葉が脳裏に走り続けていく。


 そしてその強烈な白い世界にもやがて終わる。


 クリスティたちが見た光景は―――その光景は、


「…すごい」


 平原を焦土とし、死体すら残さないその圧倒的火力。


「…すごい」


 見る者全てに絶望を与えるその圧倒的粉砕力。


「すごい…すごいわ」


 そして何よりその光景は、クリスティの高揚した精神、魂に酷く同調した。


 クリスティを始め、その光景を直視したリンデンバーグ領邦軍、並びにこの内戦を観戦していた複数の勢力。


「イェーガー、あなた、ほっんとうに最高よ。

 ふふっ、うふっ、うふふふふ、あは、あははっ、あはははははっ!

 あははははははははっはははははははははははははははははははっはははは!」


 楽しそうな、本当に楽しそうな声が戦場、いな、虐殺場に響き渡る。


 かくして、長期に亘るとされていたこの『狂境内戦』はたった1日という、あり得ない速さで決着をつけることになる。


 死者は合計で2万を超える歴史上稀に見る大量虐殺、しかも片方の軍は被害0で相手側だけというその死者たちの数に、歴史家たちは戦慄した。


 史上最悪の大量虐殺を引き起こした英霊、猟兵(イェーガー)


 そしてそれを実行するように命じた魔導師、クリスティ・ツヴァイ・リンデンバーグ。


 この2人の出会いは、世界にとっての劇薬となり、世界を犯し始める、その最初の一歩であった。




感想、レビュー、評価などなどくださると作者が悶え喜びます。

よろしくお願いします。

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