とりあえず、ザクっとガリっと(下)
れ、連続投稿、出来ましたー。
(クリスティ視点)
ガガガガガギギギギギギィッ!!
―――堅いわね、やっぱり。
まさかバベルワームの鱗に【フレイ】の刃が入らないなんて、さすがに予想していた以上の堅さね。
体をうねらす気持ち悪いバベルワームに一太刀入れてみたけど、まさか弾かれるだなんて。
一瞬だけ見たけど、あの鱗には筋が少し入っただけで目立った外傷が無かった。
…驚きを越して呆れるわね、何食べたらアレだけ堅くなるのよ?
『情報を更新、出力を更に3割上げなければ現状では討伐対象バベルワームに傷をつけることが困難です。
討伐対象の保有している魔法障壁は非常に堅牢です。
スキル戦乙女の出力上昇を提案いたします』
『現状の出力では魔弓による攻撃は討伐対象バベルワームによる魔法障壁に弾かれ効を為しませんわ。
スキル乾坤一擲を次弾より使用した攻撃を開始いたします』
「…イェーガー!!」
「あいよお嬢!!
『此れ為るは槍 万象を貫き穿つ 必中の槍!!』」
詠唱と共にイェーガーの右手から光り輝く槍が現れる。
私でも分かる槍の形をした魔力の結晶、属性が何かまでは分からないけど、まあ強力な魔法なのは間違いないわ。
「ぶちこめやぁっ【グングニル】!!」
投げ槍の要領で放たれた光の槍は一直線にバベルワームに向かっていく。
『グギォガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァッ!!』
瞬きする間もなくバベルワームに直撃して、バベルワームが悲鳴(多分だけど)の雄叫びを上げた。
クラクラするわね、かなり近いっていうのもあるけどこれも十分凶器だわ。
バベルワームの魔法障壁をまるで紙に穴を開ける軽さで貫いた光の槍はバベルワームの首元に逸れた。
多分だけどバベルワームもイェーガーの槍が怖くて全力で障壁を張ったんでしょうね、結局の所貫かれているけど致命傷は避けられているし、野生の勘が働いたんでしょう、運のいい奴。
【フェイト】を向けて引き金を振り絞る。
最初はあの魔法障壁に弾かれたけど今度はスキルを上乗せした一撃、まず間違いなく貫けるわ。
―――パシュンッ!!
『グルルルルルアアアアアアアアアアアアアアアアアアァッ!!』
…まあ効いているみたいね、正直胴体だしそこまで痛くなさそうだけど。
何となくだけどこのバベルワーム、思った以上に討伐は楽かも。
だって痛みに弱いんだもの、まあアレだけ強力な障壁があれば痛みとは無縁な生き方しているのは分からなくないわ。
あとはあの雄叫びをどうにかすればバベルワームは詰みね。
けど、バベルワームも只ではやられてはくれないみたい。
巨体をくねらして、私に向かってあの大きな口を開けて突っ込んできた。
「…臭いわねまったく、閉じてなさいよその口」
―――パシュンパシュンパシュンパシュンッ!!
とりあえずは4連続で【フェイト】で攻撃してみた。
もちろん撃ち込んだ場所は口の中。
堅い外側と違って内側はどんな生き物でも柔らかいもの。
だったら撃たないと。
『――――――ッ!!』
口径が小さいからそこまで大きな痛手にはならないだろうけど、あの喧しい雄叫びは止まったわ。
喉元を貫いて4本の筋がバベルワームのうなじ辺りから飛び出していく。
きっと魔弓の弾丸だ、予想通り内側は柔らかいみたいね。
外殻は魔法障壁と合わさってかなり硬いみたいだけど、やっぱり内部は作りが違うみたい、良い事を知ったわ。
「お嬢はなれてなっ、竜モドキが潜るぜい!!」
イェーガーが教えてくれたけど、それ位分かっているわよ。
私に向かってきたのはついで、本当は地中に潜ってから不意の一撃で仕留めようとしているんでしょう。
甘いわ、この前王都で食べた蜂蜜パンケーキより甘い。
「イェーガー、分かっているわよね?」
「バッチリだぜお嬢!!」
イェーガーはいつの間にか宙に浮かんでいる。
私も飛びたいけど、さすがに魔法使えないのはこういうとき面倒よね。
大規模魔法に巻き込まれるのって、ちょっと困るんだけど。
…というより、ジョナたちは大丈夫かしら?
……大丈夫、よね?
『この地は不動非ず 揺れ惑い震え崩れる 破戒の魂の一撃!!』
大地が揺れ始める、まずいわね。
間違いなくあのイェーガー私ごと巻き込む気だわ。
『マスター、剣を地面に突き立ててください。
こちらで対処いたします』
【フレイ】から助け舟、九死に一生とはこのことね。
あとでイェーガーは出来た隙間に埋め込んでやる。
【フレイ】を地面に突き立てると、急激に剣が伸びた。
「―――っ!?」
慌てて柄を両手で持地直したが擦れ違い様にバベルワームが私がさっきまでいた場所に突っ込んでいく。
そして運の悪いことに、細く伸びた【フレイ】の剣身はバベルワームに激突して砕けてしまう。
まぁ自己修復機能があるからそこまで心配はしないけど。
けどどうしよう、高さ50メル(約100メートル)から落ちるのはさすがに腰の骨が砕ける気がするわね。
「鳴動しなっ 【アースブレイク】!!」
『マスター、私を地面に向けてくださいまし。
衝撃を和らげて落下速度を落としますの!!』
今度は【フェイト】から助け舟が。
イェーガー、やっぱりあいつは地面に捻じ込むわ。
【フェイト】を地面に向けた瞬間、落下速度がかなり落ちて助かったわね。
おかげで足腰にそこまで負担にならずに着地できたわ。
『ありがとうフレイ、フェイト、おかげで助かったわ』
『当然のことをしたまでです』
『感謝などもったいないですわ!!』
【フレイ】と【フェイト】は相変わらず私思いで良い子達ね。
地面が揺れ続けて丘陵地帯だった面影がまるで無くなっている。
イェーガーがどれだけ危ない魔法を使ったのか再確認できたし、これならバベルワームも耐え切れなくて出てきそうね。
『グルルルルルギュウウウウウウアアアアアアアアアアアアアアアアアアァッ!!』
…まぁうるさいのは相変わらずだけど、計画通りだわ。
とりあえず、バベルワーム殺すまでイェーガーとうまいこと連携とらないと。
【フレイ】を強く握ると、私はバベルワームに再度突撃を開始した。
■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■
イェーガーはバベルワームが潜り込んだと同時に魔法を放った。
(ったく、ここまでデカイ捕り物はトンとしてねかったから血が騒ぐねい)
イェーガーにとってもほとんど初めてといっていいくらいの巨体を誇る生物―――無機物ならば戦艦を何百隻と沈めているが―――は【アースブレイク】を受けて飛び出してきた。
【アースブレイク】は局地的な直下型地震を引き起こして出来る地割れで対象を奈落のそこに落とすという、対人専用とされている広域殲滅魔法である。
しかし今回は毛色が違って、相手は巨大なバベルワーム。
地割れというよりは地震による振動を逃げ場の無い地中で受けたバベルワームは呆気なくその身に纏っていた魔法障壁を破壊されて耐え切れずに飛び出してきたのである。
クリスティもタイミングよく地面に着地できており、イェーガーとしても上々な出来だと頷いた。
落下速度からして墜落にも見えなくないものだったが、魔弓【フェイト】の機転でどうにか凌ぎ切った様である。
魔剣【フレイ】も剣身を伸ばして直上へ飛び上がるなど状況判断がかなり高い。
アレだけ高く飛び上がればバベルワームが真下から攻撃しようとまず届かないのだから。
「さっすがオレ様の作品たち、他の魔道具とは出来が違うねえ」
イェーガーが自己陶酔に浸っている内にクリスティは着地と同時にバベルワームに突撃していき、ふらついているバベルワームの背に駆け上っていった。
魔法障壁はなぜか発動しておらず、おそらくは自動的に展開されるものではなくバベルワームの意思次第で展開できるか否かのものであるようにイェーガーは感じた。
クリスティはバベルワームの頭上へまで到達すると眉間の中心に魔剣を深々と頭上へ差し込むと、バベルワームがここでようやく叫び声をあげた。
通常の魔剣【フレイ】の剣身は40セル(約80センチ)であるのだが、その気になれば剣の形は崩れてしまうが凡そ100メル(約200メートル)は強度を保ったまま伸びることが可能である。
そのまま下顎にまで貫通させて串刺しの形になってしまうのだが、クリスティそこからバベルワームを刺したまま逆走を始めた。
伸びている剣身は10メル(約20メートル)、しかもバベルワームに刺さっている場所は眉間、つまりは中心部分といっても良い場所だ。
それを逆送して行き体へと走っていくクリスティだが、やはりそこまでうまく事は運ばない。
あまりの激痛に体を大きく振るバベルワームに往生しているのである。
「しぶといわね、この辺りの執念深さは蛇系の魔獣を思い出すわっ」
輪切りにしてもその生命力はバカにならない蛇系の魔獣をクリスティは思い出し、この程度の怪我では足りないのだと
「お嬢っ、竜モドキ斬ってるとこワリイがそろそろお嬢の魔力がやばくねえか?
あとはオレ様がやっとくから、お嬢は離脱しときなってばよ!!」
クリスティはイェーガーを一度睨むがアイコンタクトで『首を刎ねなさい』と指示を出して暴れまわっているバベルワーム空飛び降り離脱した。
クリスティのスキル戦乙女がイェーガーが思っていた以上に強力だが燃費が悪いことに気づき、クリスティを即時離脱を推奨したのである。
浮かんでいるイェーガーとのた打ち回りながらもイェーガーを睨みつけるバベルワーム。
イェーガーとしてもこれ以上お遊びは飽きたとばかりに、何も無い空間から魔剣を取り出した。
その純白な直剣は見る物を引き込むような気分にさせる魔剣であった。
銘を【断頭台】というこの魔剣はイェーガーが持つ魔剣の中でもトップクラスの殺害数を誇る、お気に入り中のお気に入りの魔剣であった。
材料はイェーガーがもといた世界にあった現存するほぼ全ての断頭台に取り付けられた刃であり、その全てを凝縮してこれでもかといわんばかりに魔法を付与した超弩級の一品である。
イェーガーがいた世界で一番使っていた魔剣でもあり、二つ名の1つでもある【処刑執行人】も一部の地域では畏怖の名として通っていたほどである。
「バイビー竜モドキ、お嬢の踏み台ご苦労さん。
今すぐその痛みから解放しちゃるけん、まぁ感謝してくんな」
適当に挨拶すると、イェーガーは【断頭台】を振り上げた。
バベルワームは反応こそしたものの、イェーガーの元まで届くことは無い。
そしてイェーガーは【ギロチン】を振り下ろす。
―――ガギギュリギリギリギリギュイギリギリギュリっ!!
直接斬ったわけでもないのにバベルワームの首がノコギリで何か硬いモノを削っていくような音を立てて落ちていく。
当初1時間という魔剣【フレイ】と魔弓【フェイト】の計算であったが、実際のところかかった時間はたったの30分程度。
2人がかりといえど、この世界では前人未到の偉業である。
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