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とりあえず、ザクっとガリっと(上)

とりあえず連日で連続投稿予定です。

 



「…でかいわね」

「なあお嬢、ワームの肉ってうまいのか?」

「……い、異常だわ、こんなところにバベルワームがいるなんて!!」

「お、お嬢様、これ本当に僕らで狩れるんでしょうか!?」

「け、け、けど、このあたりに倒せそうなのボク等だけですよね!?」


 クリスティ、イェーガー、ジョナ、レーヴェ、バーレンの順に声を上げた。


 ここはあと数日で合戦指定地であるカッツェ平原、より少し離れた丘陵地帯である。


 クリスティたちは合戦前の準備運動とばかりに、最近このあたりを縄張りにし始めたワームを討伐するために来ていた。


 目的地付近で探す手間もほとんど無く対象のワームを発見したのだが、依頼書に書かれていたワームと記載内容が違うのである。


 というより、ワームという事以外明らかに誤情報である。


 通常のワームなどではまず無い、この段階で討伐ランクがただでさえ高かったランクが更に跳ね上がった。


 バベルワーム、普段は山を縄張りにして人里どころか平原や丘陵地帯などにはまず生息するはずの無い、竜種と同格とされる災害指定危険種である。


 体長は通常のワームの倍以上、クリスティたちを見下ろしているこのバベルワームだと、凡そ30メル(約60メートル)になる。


 バベルワームの特徴はといえばその黒々とした全身と頑強無比な鱗である。


 煌々とした黒い鱗には地中を進むのにも拘らず傷ひとつ無い。


 翼が無いとされるワームだが、バベルワームにはもうひとつ別の名がある。


『地竜』という、大空を翔る竜種とは違い大地に鳴動するもうひとつの竜、そう呼ばれていた。


 ―――ちなみに、イェーガーがバベルワームが食べられるのかクリスティに聞いていたが、バベルワームの肉はその殆どが筋肉質で構成されており、非常に硬い。


 簡潔に言うと―――不味いのである。


 そしてバベルワームは討伐数が極めて少なく―――遭遇することが殆ど無いため―――その生態については不明な点が多い。


 辛うじてわかっているのは、並みの剣ではまず歯が立たず、単独ではまず不可能なほど強いということだけだ。


「…とりあえず、散開ね、レーヴェとバーレン、それにジョナは離れていなさい。

 ここは私とイェーガーでやるわ」


 今回ジョナを同行したのはクリスティとイェーガーの力を見せる為であって、戦闘に参加させる気が全くなかった。


 必要最低限の装備しか持ってきていなかったジョナにはきついようだが、鱗に歯が立たない刃物を持っていても意味が無いのである。


 加えてレーヴェとバーレンについては単純な戦力外。


 筋力ステータスには目を見張るものがあるレーヴェや耐久ステータスが英霊並なバーレンだが、如何せん他のステータスは殆ど下級冒険者に毛が生えた程度のステータスで、面倒を見ながらバベルワームと戦っている余裕はクリスティには―――イェーガーはまず手を貸すことがまず無い―――ない。


 バベルワームはクリスティたちが珍しいのか、襲ってくる気配がまるで無い。


 とはいえ、濃密な魔力を宿した()が5人もいるのだ。


 どれが食べ易そうなのか選んでいる最中なのだろう


 もっとも危険そうなイェーガーを見つめていて、イェーガー次第で状況は如何様にもなる。


「オッケーじゃんよお嬢。

 お嬢の女子力(物理)を期待してるぜい!!」


 バベルワームが食べられないと分かってか、別の意味で残念なイェーガーは妙に張り切っていた。


「…クリスティ、気をつけなさいよ」

「お、お嬢様、御武運を!!」

「お、お役に立てじゅ、もうひわけありましぇん!!!」


 ジョナが反対側へ馬に乗ってかけていく、続いてレーヴェ、嚙み噛みなバーレンと駆けて行きバベルワームの前にはクリスティとイェーガーが残るのみである。


 バベルワームは最初ジョナたち3人に目を向けたが、すぐにクリスティたちに視線を戻した。


「あら、このバベルワーム、私たちを標的にしたみたいね。

 おいしいものは最初に食べる方なのね、気が合いそうだわ」

「えーお嬢、オレ様好きなものしか食べない派だからこの竜モドキ(・・・・)とは気が合いそうにねえんだけど」

「我侭ね、そんなだからアンタはイェーガー(バカ)なのよ」

「オレ様今名前をバカとイコールな感じに言われた気がする!!」

「あら、そう言ったつもりだったのだけど?」

『グゴォガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァッ!!』


 バベルワームが吼えると、地震でもないのに大地が大きく揺れ、空気が震えた。


 クリスティも身体がビリビリと小刻みに震えていて、初めて出会う災害指定危険種に緊張の汗が一筋、流れる。


 しかし、こんな時でもクリスティの脳裏にあるのは目的の踏み台となる、哀れなバベルワームでしかなかった。


『フレイ、フェイト、あの踏み台(ワーム)を殺せるかしら?』

『解析途上ですが、マスターのスキル戦乙女(ヴァルキュリア)を使用した状態で凡そ5時間で災害指定危険種、バベルワームの討伐が試算できています』

『加えて【造魔(ライフメイカー)】が率先して攻撃を加えることで、討伐時間が5分の1以下となりますわ』


【フレイ】と【フェイト】がそれぞれ意見を出してきた。


 クリスティの持つ最強スキル戦乙女(ヴァルキュリア)は使用者の魔力と闘気(オーラ)を同時に消費していく非常に燃費の悪いスキルである。


 戦闘で使用して最長でも2時間が限界なクリスティだが、それはあくまで余裕のある相手だからである。


 今回のように巨大な全長を誇るバベルワームにクリスティが全力で斬りかかったとしても、全力全開で例え2時間かけたとしてもバベルワームは悠々としているだろうことは間違いないだろう。


「イェーガー、足止めとか横殴りとかフォローとか、モロモロ頼んだわよ?」

「…お嬢、人はそれを丸投げって言うんだぜ?」


 呆れた表情でイェーガーはクリスティを見やるが、クリスティは何を今更といった表情をしていてまるで悪びれる様子が無い。


 こんな主従ではあるが、一部を除くが非常に息の合った―――殆どイェーガーが合わせているのだが―――コンビネーションを発揮して、いまだその連携が崩れたことは一度としてない。


 クリスティが魔剣【フレイ】を抜き右手に持ち、左手には魔弓【フェイト】が握られる。


「それじゃあ、始めましょうか。

 最終的にはあの人(・・・)にいい借りが出来るわ」


 どちらかといえばリンデンバーグ領に近いこの丘陵地帯は、リンデンバーグ領に少なからず被害を及ぼしているのはまず間違いない。


 その障害を取り除いたことにより、血縁上の父であるミハエルにいい借りが出来るのだと考えたクリスティは、新たにまた計画(・・)を上方修正していく。


「あいよお嬢、とりあえず追撃は任せとけい!!」

「真面目にやりなさいよ?」

「合点承知ノスケ!!」


 クリスティはイェーガーのよく分からない掛け声にとりあえず納得して、バベルワームに単身突撃する。


 短くも長い、クリスティたちの戦いが始まった。




感想、レビュー、評価などなどくださると作者が悶え喜びます。

よろしくお願いします。

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