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決闘するそうです(私が)

 



「けっふぉうふぁっ(訳:決闘だ)!!」

「胸を貸してあげるわ、お坊ちゃん」


 クリスティの一撃を受けてウィリスはようやく事態を全て把握すると立ち上がって一言、クリスティを指差して宣言して、挑発するかのように決闘相手(クリスティ)身の程知らず(ウィリス)を馬鹿にしながら中指を突きたてながら決闘に乗ると宣言する。


 冒険者というものたちの中で人生の大半を過ごしているあたり、こういった挑発を幾らでも知っているクリスティはその様も堂に入っている。


 決闘内容は『無差別無制限の何でもあり』といういわゆる『死闘(デスマッチ)』である。


 もちろんクリスティは手加減するつもりではあるが、ウィリスはあの手この手でクリスティを事故死させる気満々である。


 イェーガーは消極的である、どうやらクリスティがウィリスにした一撃で鬱憤はどこかへ行ったようであったからだ。


 熱し易く冷め易いと自己評価して笑うイェーガーにクリスティとしてもラフティル家はともかくラフティル領滅亡の危機は去ったと安堵していた。


「あ、あの、どうやったらあんなに強くなれるんですか!?

 と、と言うかボクを弟子にしてください!」


 そしてクリスティの横には小さな少年、バーレンがちょこんと立っている。


 バーレンはクリスティに短くウォレス男爵家の4男だと挨拶するとクリスティの弟子になりたいと頭を下げてきた。


「イヤよめんどう」


 とすげなく即答するクリスティであったが、最初の印象とは違ってバーレンはしつこかった。


「お、お願いしますクリスティさん!

 ボク四男だから何とか1人で生計立てないといけないんです、ウィリスさんは怖いし酷いしでもう限界なんです、あ、これでもボク冒険者ランク銅の2なんです、決してお邪魔にはなりません!!」

「私もう金の4だしイェーガーにいたっては最高位の金の1よ?

 銅の4といわれても…そのランクの依頼受けないのだけど」


 銅といえば1人前である鉄ランクの上にあたり、ランクの上位に位置しているバーレンだったが何しろ相手が悪すぎた。


 黒竜を軽く屠る猟兵(イェーガー)にそのイェーガーの魔道具満載の装備をした上で金の1ランクの金獅子と呼ばれる凶悪な災害級魔獣を1対1で倒しきってみせるその(クリスティ)の2人を相手に、邪魔にはならないとは笑える冗談なのである。


「というより、私教えるほど他人にかまう余裕は無いのよ。

 強くなりたいのなら勝手に強くなりなさい」


 という始末である。


 イェーガーにしても、


「見る目ねえなお前さん、お嬢に調教されちまうぜ?」


 と根の葉も無い妄言を吐く始末である。


「従者としてでも良いんです、どこまでもお供します!

 食事と年に1度の実家帰りと週に1度の休みと、後たまにある臨時報酬とか貰えればもっと頑張ります!!」

「注文が多いわね!

 けど、従者ねぇ…イェーガー、どう思う?」


 クリスティはレーヴェのダメ執事振りを思い出し、少しでもその仕事量を減らせば失敗も経るのではないかと考えてイェーガーに相談するのだが、ないわーとイェーガーは首を振る。


「レーヴェのダメ執事に続き、ダメ従者かよお嬢、見る目ねえぜ」

「レーヴェについては父の意向でしょう、私の目は関係ないわ」

「尚更お嬢の目が節穴なんじゃねえかい!

 ったく、見た目もどっかレーヴェの子犬っぷりに似てるし、ワンニャン博物館でも作る気かえ!?」


 おっとり系ワンコに続きワンパク系ワンコがとぶつぶつ呟くイェーガーにクリスティはもう決めたのかバーレンを従者として雇用することにした。


「その代わり役に立たないと捨てるから、覚悟しておくように」

「が、頑張ります!!」

「とかいってお嬢あれから失敗続きのレーヴェ捨ててねぇじゃんか」


 とイェーガーの言葉にもクリスティは耳を貸さないのであった。


 1日に最低3回は失敗を続けているレーヴェであるが、結局のところ執事見習いとしては一体何年働いているのかと思うほどに使えない。


 それなのにクリスティがレーヴェを捨てない理由は、単純に『小間使いがいないといざという時に困る』という実に曖昧なものであったという。


 無意識か故意なのか、あまり適当振りにイェーガーは呆れ果てていたが。


「これから貴方は私の物よ、死んでもその魂縛っておくから、覚悟しておきなさい」


 何処か病的じみたクリスティの言動にバーレンも気づいたがすでに遅く、


「も、もしかして、なんかボクやっちゃいました?」

「ご愁傷様だぜまったく」


 イェーガーはもうそれ以上何も言わなかった。




 ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■




 2日後、以前ケイロンと決闘をした闘技場ではクリスティと、そしてどこから出したのか椅子に座ったイェーガーが寛いでいる。


「それでイェーガー、どれくらいの人数(・・)が来ると思う?」


 クリスティはウィリスが一体どういう手で来るのかすでに予想していた。


「確かあのボンボンの派閥って何十人いたっけかね?」

「確か…48人だったかしら?

 召喚獣含めてその2倍ね、斬り甲斐があるわ」


 ルールの上ではなんの問題もないが、いざ実際にしてみると面白い光景になるとクリスティはくすりと笑ってしまっている。


 数十人の学生と召喚獣の群体に対する1人の少女と英霊。


 普通に考えれば圧倒的不利にも拘らず、クリスティの余裕は崩れることはない。


 派閥にいるのは全て貴族学生であり、実践など殆どした事の無い者たちばかりである。


 魔法の技術はあるがそれは的に当てたり動かないものを当てたりするだけ。


 動く的や移動しながらの魔法といった高度な技術、学院の、しかも貴族には殆ど出来ないとクリスティは調べ上げていた。


 ―――主に調べせられたのはイェーガーだが。


 それに加えて、クリスティとイェーガーは実戦経験が豊富だ。


 クリスティに至っては攻撃、または防御系魔法は使えないが、大抵の魔法詠唱でどういった魔法が起こるのか予測でき、身体強化やスキルで限界まで底上げされた身体能力で対処することが可能である。


 いざとなれば絶対的な防御力のある(イェーガー)を使う気も満々であった。


「てことは、大体48ほどの家の面子を潰すと。

 …おいおいお嬢、オレ様個人はおもろいけどお嬢ヤバクね?

 貴族派が黙っちゃいないぜ」

「まあ本当に48もの家を潰せるとは思えないわね。

 大体このステージ、いくら陣形を整えても精々半分くらいしか揃えられそうにないもの。

 となると取り巻きは実力の高い学生ばかりになるはずよ。

 例外はまああるとして…大体が高位貴族な筈、召喚獣を失うなんて事になったら、家の権威は失墜ね」

「お嬢楽しそうじゃん」


 相手を陥れるとき、主に2種類のタイプがいる。


 自分の手を汚さず、他者を操って相手を陥れるか。


 自分の手で準備から最後まで自分の能力を最大限に使って相手を陥れるか。


 クリスティは後者である。


 相手を自分が作り上げた舞台(ステージ)に招き寄せ、圧倒的有利な立場から叩き潰す。


 もちろん相手を錯覚させるために相手にもメリットがあるように見せかけるやり方であるが、クリスティはこれまで失敗したことなどない。


 狙った獲物は全て地に落としてきた。


 前者については経験としたことはあるが、まだるっこしいのが面倒なので早々に飽きたようであるが。


「楽しいわよ、だって鬱陶しい連中を半分とはいえ潰せるんだもの。

 貴族派の勢力を削れることだし、一石二鳥もいいところよ」


 しかもこれは貴族であるウィリスが仕掛けた決闘であり、もしその決闘で敗北しようものなら、公爵家としては恥の上塗りになることになることは間違いない。


 クリスティとしてはウィリスを筆頭に有力貴族の家を徹底的に潰せれれば儲けものと画策していた。


 以前のクリスティならばここまで徹底的に貴族に対して敵対的、あるいは一方的なことは仕掛けなかっただろう。


 だがそれも、クリスティに()がなかったからだ。


 ケイロンとの決闘もクリスティは個人では貴族に真っ向から戦うことを避け、落とし所を探しながら戦っていた事もあり、やはり詰めが甘いと実感させられたのである。


 しかし、イェーガーがいれば話は違ってくる。


 力があれば、あらゆる理不尽を退けることが出来る。


 そしてクリスティは今まで受けてきた理不尽の一部を丁寧にも本人たちに返そうとしているのである。


 直接間接問わず、貴族(・・)という枠にいる珍獣たちを狩ることにクリスティはもう躊躇もしなかった。


 何より大義名分もある、悩む必要もなく果断した結果が、今のクリスティたちの状況である。


「まぁ、お嬢が楽しいなら別にオレ様ナニもいわねーぜい。

 つーか今頃ダメ執事とダメ従者何してるんだろな?」

「昼寝でもしてるんじゃない?

 仕事は終えているし、別に咎める気は無いわ」

「せめて主であるお嬢の雄姿を見に来るとかいうのはないんかねぇ」


 ぼやくイェーガーにクリスティは今更ながら決闘時における作戦を考え付いた。


「決闘中は戦闘は主に私が受け持つわ。

 イェーガーは防御に専念しなさい。

 あ、たまにムカつくのがいたら召喚獣を木っ端微塵にしてもかまわないわよ?」

「んじゃそうさせてもらうぜ。

 どうせ黒竜ほど強くねえし、トラウマになるくらいのもん見せ付けちゃる」


 哀れな被害者たちがどれくらいの数になるかは不明だが、間違いなく大人数が犠牲になるだろうと踏んだクリスティは、満足そうに頷いていた。


「あら、来たわよ。

 哀れな子羊たちが。

 狼が口を開けているのに突っ込みに」

「群れる羊も中々怖いもんだぜ?」


 おどけるイェーガーにクリスティは肩をすくめてみせる。


「じゃあ、爪と牙を研がないとね。

 精々狩を楽しむとしましょうか」


 椅子から立ち上がると、ぞろぞろと上がってきたウィリスたち御一行を迎えた。


 クリスティの予想とは違い、闘技場にいるのは計41人という人数である。


 残りの7人は戦力外なのか、観客席にもいない。


 嬉しい誤算に内心クリスティはウィリスの愚かさに手を叩いた。


「イェーガー、今私顔がにやけそうよ」


 顔の引くついている時点ですでに手遅れだが、先頭にいるウィリスにはあまりの人数に慄いたのかと勘違いしていた。


 つくづく幸せな頭をした青年である。


「ふっ、あまりの戦力差に自らの無力さを思い知ったか。

 先日の屈辱を倍にして返してやる、覚悟するのだね」


 クリスティとしては負け犬(ウィリス)がきゃんきゃん吠えているようにしか見えていない。


「それじゃあ…始めましょうか。

 ああそうそう、ちゃんと手加減してあげるから心配しなくてはいいわよ」

「ふんっ、世迷言を!!

 やって見せるがいい!」


 ウィリスは手を振ると後ろに控えていた学生たちが半月状に並び始める。


 遠距離からの一斉攻撃をかける気で、開始早々に決着をつけようとしているのであろう。


 愚かではあるが馬鹿ではないということなのか、クリスティは評価を上方修正した。


「まぁ元々赤点だから少々点が増えたところでダメなものはダメなんだけど」


 と散散な評価である。


 そして決闘開始と同時。



 クリスティは背後から奇襲を受けた。

感想、レビュー、評価などなどくださると作者が悶え喜びます。

よろしくお願いします。


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