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世の中はどこまでも現実の味  作者: 鬼
1章 幼少期=理想
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魔法は凶器の味

 没落しかけているとはいえ流石貴族の家と言うべきか、この屋敷には大きな庭園がある。今は少し荒れ気味だが、全盛期の時は、それは綺麗なものだった。

 噴水には必ず小鳥が水を飲みに来ていたし、花で出来た道も見事だった。この庭園を見て真っ先に思いついたのが『ローズガーデン』だ。きっと当時は腕の良い庭師が居たのだろう。

 そんな立派な所だったならば、魔法の練習なんてとてもじゃないが出来ない。だが今は庭園と言うより広場になってしまっているので遠慮なく魔法の練習をさせてもらうとしよう。


 この世界では昔から『魔獣』や『魔物』、『魔族』なんてものが居るのだが、常に人間はそれらの種族と対立している。対立し始めた頃は、人間は魔物達に身体能力で大きく負けており、当初は負けっぱなしだったようだ。その身体能力に対抗するために生み出されたのが『魔法』。この力を得てからはしばらく人間の優勢だったようだが、魔物の中にも数は少ないが魔法を使える奴らが出てきた。それが『魔族』だ。魔族が出現してからは均衡が続いたが、魔族の絶対数が増え始めており現在では少々押され気味だ。

 対立し始めてから現在まで四千年近く経っているのだが、何か魔法以外の力を身に付けようとは思わなかったのだろうか。まあ、魔法を生み出したのも千年ほど研究を続けてやっと生み出したものだし、それから二千年は優勢で、そこから五百年ほどで実力が均衡、ここ数百年で劣勢になり始めているから、新しい力が出現するのはもっと後の話か。


 次は魔法に関してだ。魔法の原理は自分の体内にある『マナ』を使って『核』を作り、その『核』に空気中の『魔力』を付着させて形成されるらしい。何故こんなまどろっこしい方法になってしまったかというと、人間の持つ『マナ』の量が少ないからだ。人間では魔法全体を形成することが出来ない。

 例えば、十センチの火球を作ろうとすれば、作れないことはないのだがその魔法一つで体にあるほとんどのマナが消費されてしまうのだ。もちろん、そんな効率の悪すぎる方法では戦闘では役に立たない。だからマナの消費を抑えるために核のみを作り、空気中にある魔力を使うのだ。

 そのために必要なのが『詠唱』。これまた厄介なのが、核は自然に魔力を付着させることは出来ない。なので『詠唱』が必要となる。なぜ必要かと言うと、実は核に魔力を付着させているのが『妖精』だからだ。『詠唱』は『妖精』にその付着させる作業を頼む過程を簡略化させたもので、昔はもっと長かったらしい。ちなみに、今その作業がスムーズに行われている理由は、毎年『妖精』に大量の供物を捧げているからいるからだ。なんとも現実の味がする。


 そして、魔法は主に五つの属性を使用できる。それが『火』、『水』、『風』、『土』、『雷』、この五つだ。力関係としては『火』は『風』に強く、『風』は『土』に強く、『土』は『雷』に強く、『雷』は『水』に強く、『水』は『火』に強い。何故使用できる魔法が自然界にあるものばかりかと言うと、妖精が自然を操れる事に他ならない。ここら辺はイメージ通りで良かったと思う。近代的な兵器なんかを操っていたらきっと幻滅していたことだろう。


 復習もそこそこに、俺は実際に魔法を使ってみることにした。使える種類は今の所、火と雷だ。実は俺は妖精を感じられない。普通はぼんやりとだが妖精を感じることが出来、そして妖精とコミュニケーションをとり、そこで好かれて初めて魔法を使えるようになる。妖精も万能というわけではなく、妖精一体に付き使える属性も一つ。なので基本的に使える属性は一つ。中には二つ三つと使える人もいるらしいが、妖精は嫉妬深いのでほかの妖精にばかりかまっていると、ある日突然魔法が使えなくなった、なんてこともあるらしい。

 その点、俺はそんなこともなく自由に魔法を使える。属性も努力次第ではコンプリートも夢ではない。何故、マナの量が少ないはずの人間の俺が自由に魔法を使えるかと言うと、マナの量が普通の人間より遙かに多いからだ。見立てでは普通の人間の数百倍~数千倍といったところだ。だがこれでも普通の人と、撃てる魔法の数はあまり変わらない。なのでそれほど大きなアドバンテージではないのだ。属性は別だが。


 なにより嬉しいのは、妖精とコミュニケーションをとらなくていい事。こちとら何年も引きニートをやってたのだ。妖精は見てみたかったが、コミュニケーションはきっととれなかったことだろう。そうなったら魔法は使えなかったのだ。怖い怖い。


 そんなこんなで復習を終えた俺のテンションはマックス。撃ちたいのを必死に我慢して復習した甲斐があった。思う存分試し撃ちすることにしよう。

 使うのは雷の魔法。イメージはそのまま、空から雷を打ち落とす感じ。



「おらぁ!!」



 掛け声とともに雷を形成。広場の中央に打ち落とす。ここで誤算だったのは、興奮しすぎたせいでマナを込めすぎたことと、ここに燃えやすいものが多かったことだろう。

 打ち落とされた雷は俺の想像を超えて大きくなってしまい、地面に到着すると共に大きな破裂音を周りに轟かせた。雷は地面に逃げようと拡散し、そして運悪く花に引火。一気に燃え広がり、広場は瞬く間に火の海となった。


 初めは呆然としていた俺だったが、意識を取り戻すとトンズラをかました。家の者は俺が魔法を使えることを知らないので、目撃されなければ犯人だとは気付かれないはずだ。最後にこう言い残して、俺は自室へと逃げ帰った。



「反省はしている。だが後悔はしていない」

今回は説明回です。少し長めです。文章ぎっちりです。疲れたです

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