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彼がシスターを口説かなければならなくなった理由(わけ) 1

 ハミル・クロルフェニは、エスタマゼナ王国クロルフェニ王朝の第5代国王である。

 王位を継いだのは若干21歳の時。父である前王が、老衰にて死去したからだった。

 若き王がその位に就いてまずしなければならなかったのは、大臣の刷新(さっしん)でも、軍部の粛清(しゅくせい)でもなかった。

 そうではなく、無意味に苦労させられたのは、父が築き上げた後宮の処分だったのだ。

 ハミルは父が60歳の時にもうけた子である。なかなか子ができなかった彼の父は、その歳になるまで次から次へと側妃を娶り、なんとか世継ぎを得ようと努力を続けたのだった。

 その結果、後宮には53人の妃がおり、巨大な後宮ができあがっていたのである。

 ハミルの実母は、彼を生んでしばらくして、他の妃たちに苛め抜かれ、心身ともに衰弱して死んだらしい。彼は生まれた時から王妃を母として育てられたので、詳しいことは、未だによくは知らないのだが。

 ただ、たくさんの義母たちの殺意をともなう嫉妬と、次の権力者に取り入ろうとする色仕掛けを含む媚には、幼い頃から辟易(へきえき)させられてきた。

 彼が成人するまでに、毒見役がいったい何人死んだことか。また、媚薬を盛られて、気色悪い目にどれくらい()ったことか。

 彼が女を知ったのは11歳の時。相手は父の側妃だった。もちろん、合意でなどであるわけがない。

 これで女好きに育ったら、その方が奇跡である。

 そんなわけで、エスタマゼナの国王は、成人する頃には、それは立派な女嫌いに育ちあがってしまっていたのである。


 それを憂えたのは、ハミル王本人ではなく、前王から仕える、並み居る重臣たちだった。

 このままでは、クロルフェニ王朝は途絶えてしまう。その先にあるのは、次の王位をめぐる内乱である。

 そこで重臣たちは、王に内密に策を講じた。

 毎日毎日、入れ代わり立ち代り、妃を娶るべきだと、上申という名の波状攻撃を仕掛けたのである。

 一月後、いいかげんうんざりした王は、とうとう面倒くさくなって言った。

「わかった。おまえたちがこの国の王妃にふさわしいと思う女性を見繕ってこい。その女性と結婚しよう」

 そうして王の言質を取った彼らは、ナザール大陸全土で最も勢力を持つグロスタ教大司教、前王の弟でもあるアレクシード猊下に、妃の斡旋を頼んだのである。 

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