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 その日の夕方、駅前の通りを歩いていると、見知らぬ女性に声をかけられた。年のころは、二十代前半といったところ。長い黒髪の、色の白い女性だった。季節外れの分厚い毛皮のコートを身にまとい、手にはブランド物のバッグを持っていた。彼女は後ろから私に近づいて、

「木村さんですよね?」

と耳元で尋ねてきた。私は、自分の名前を知っているのだからどこかで会ったのだろうと思ったが、全く心当たりがなかった。そうして困惑していると、彼女はバッグから名刺を取り出して私に差し出した。そこには、秋元房江と真中に名前が書かれていて、その上に小さく聖フランシス学院学長と書かれてあった。聞いたことのない学校の名だったが、どうやら目の前の女性が学長らしいということはわかった。

「その若さで学長ですか?」

私が率直な感想を言うと、女性は控えめに笑った。

「実はあなたに頼みたいことがあるのですが。」

「私にですか?」

「うちの学校で教師をやってほしいのです。」

私は彼女のいう意味が、まだ上手く飲み込めなかった。すると、それを察するかのように彼女は

「詳しい話がしたいので私についてきていただけないでしょうか?」

と続けた。

 実のところ、私は今職を持っていなかった。先月まで大学にいたが、たいした就職活動もしないまま卒業してしまったのだ。たまたま教員免許も手にしていたので、彼女の発案は好都合なようにも感じられた。断る理由も見つからず、私はとりあえず彼女についていくことにした。

 彼女は近くに住んでいる自分でも知らない人通りのない方へどんどんと進み、ついにはまったく見慣れぬ建物ばかりの場所に来て、私はどこにいるのかも分からなくなってしまった。しばらくして、裏路地に面した薄気味悪いビルの前までくると、彼女は私を三階の青連宝という飲食店に案内した。

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