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今も昔も星は僕らを見ることを繰り返す  作者: raira
原初の孤独と悠久の誓い
2/7

ナギ、黒曜石の瞳

第1話に引き続きありがとうございます!1日に1話更新を目指して頑張るのでよろしくお願いします!

集落の夜は、吸い込まれるような闇に支配される。

 唯一の救いは、広場の中心で爆ぜる焚き火の赤と、天を埋め尽くす無数の星々だけだ。

「……ねえ、カイ。あのアカボシ、また少し位置がずれたと思わない?」

 ナギが、僕の肩に頭を預けるようにして空を指差した。

 彼女の指先が示すのは、火星――この時代では、災いか、あるいは豊穣の予兆とされる赤い星だ。

「そうだね。季節が巡ろうとしているんだ。星はいつだって、僕たちが何をしていても、ただ静かに見ている」

 僕がそう答えると、ナギは少し不満げに頬を膨らませた。

「なんだか、突き放されているみたいで嫌。私は、星が私を見て『頑張れ』って言ってくれてると思いたいな」

 彼女は立ち上がり、腰に差した自慢の短槍を握り直した。

 黒曜石の穂先が、月光を浴びて鋭く光る。それはナギが三日三晩かけて、指先を血で染めながら研ぎ上げた最高の一品だ。

「カイ、明日。大人たちに内緒で『北の断崖』へ行こう」

「……あそこは禁じられた場所だ。マンモスを狙う、狂った牙のサーベルタイガーが出ると聞いている」

「だからよ。あいつを仕留めれば、誰もあんたのことを『精霊の呪い』だなんて言わなくなる。あんたは、部族一の勇者として認められるんだから」

 ナギの瞳は、未来への希望で燃えていた。

 彼女は僕を守りたいのだ。僕の「老いない」という異質さを、圧倒的な「功績」で塗りつぶしてしまおうとしている。

 その真っ直ぐすぎる優しさが、僕には痛いほど眩しかった。

 ――翌朝、霧が立ち込める中、僕たちは集落を抜け出した。

 原生林の奥深く、シダの葉が背丈ほどもある緑の迷路を、ナギは獣のような足取りで進んでいく。

「シーッ、カイ。……足跡だ」

 ナギが足を止めた。

 湿った土の上に、僕の頭ほどもある巨大な肉球の跡。まだ新しい。近くに「奴」がいる。

 空気が凍りついた。風が止まり、鳥の囀りさえも消える。

 

 その時だ。

 

 茂みの奥から、二つの金色に光るまなこが僕たちを捉えた。

 低く、地響きのような唸り声。

 

「……来るよ、カイ。私から離れないで!」

 ナギが槍を構える。だが、現れたのは一頭の虎ではなかった。

 飢えに狂い、群れからはぐれた三頭の捕食者。

 原始の青春は、いつだって死と隣り合わせだ。

 僕は震える手で、護身用の石斧を握りしめた。

 この時、僕は願ってしまった。

 ――もし、僕が本当に「死なない」のなら。

 この命をすべて使ってでも、この温かな手を離したくない、と。

 頭上の星はまだ見えない。けれど、太陽の光の下でも、彼らは確かに僕たちを見下ろしていた。

 三万年に及ぶ、僕の戦いが幕を開けようとしていた。

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