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NGC 1952 ― 漂白前の観測記録 ―  作者: くろーばー
第一章、『泥濘に咲く火、天を欺く星』
2/7

『理想郷(イマノセカイ)』

白亜の神都の中心地にて、民衆の歓喜と畏怖の入り混じった、耳が痛くなるほどの静寂が漂っていた。アマキ・モートはその碧眼の眼を静かに開け、民衆が空けた道を歩き始めた。

まるで漂白されたような雲一つない白い空、大理石の静かな冷たさ、甘い香油の香り、正に神の都にふさわしい幻想的な広場。


「ああ、聖人様だ」「アマキ様が来てくださった」


アマキがが歩くたび、民衆は皆競うように美しい大理石の石畳に額を擦りつけ、彼の足元に跪いた。まるで精巧に作られた操り人形劇のように揃っていた。その瞳には救済への渇望だけが宿り、隣で誰が踏みつけられようとも気づかない。聖人の歩む道は、盲目な信仰という名の『無』で埋め尽くされていた。

そのため彼が歩く道には、争いも汚れも涙すらない、あるのはただ狂気的なまでの信者の跪く姿だけ。

彼がそっと手をかざすだけで、病に伏していた老人は神権(アルカナ):『冥優之聖王(モート)』慈悲によって「痛み」を忘れ、安らかな眠りについた。

老人の顔には、「病」からの苦しみの色は漂白されていた。


(そうだ。これでいい。誰も傷つかない。誰も泣かない。………たとえこれが、私のついた最大の『嘘』だとしても、もう後戻りする事は出来ない)


右手の指輪を左手で覆いながらアマキはそう思い耽っていた。

その後、老人の家族は涙を流して感謝を述べる。だかその瞬間から家族の瞳には「老人を思うが故の苦しみ」の色と同時にその輝きまでも失われていた。

周囲の者たちは「奇跡だ!」「流石聖人様だ」と感嘆の声を上げていたが、老人の家族だけは声を発さなかった。

ーー一人、泥だらけの男が静寂を切り裂くように歩み寄ってくるまでは。

めちゃめちゃ修正しました。今後もどんどん付け足していくつもりなのでたまに読み返してみてください!

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