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第2話 先輩!二人で騎士と道化師に変身だ!

 灰色の空を、細い雲が足早に流れていく。

 チャリチャリと、歩く度に甲冑の擦れる音がする。建早は、黒い甲冑をつけ、大きな剣を佩いた騎士に姿を変えていた。

 一方葦原は、先が二股に割れた帽子を着た道化師の姿になっていた。手に持った杖がの鈴がチリンと優しく鳴る。歩きながら、葦原は自分の手をしげしげと眺めた。

「……なるほど!これが<世界同調>!」

「ああ……ダイブした時、俺たちの意識とこの世界観が共鳴する。その結果、世界の物理ルールに適した姿になれるんだ」


 先に立って歩きながら建早が葦原に聞いた。


「世界同調のメカニズムは?」

「え、えっと! <認知適応フィルター>と<共鳴同調核>によって、世界観のルールを読み取り、ダイブ者の認知構造を分析し、最適な<世界内アバター>を生成するものです!」


 養成機関で習ったことを必死に思い出しながら、葦原が答える。この世界では、こちらがどういう人間で、どれだけ適応力があるかでどんな姿になるかが決まるのだ。


「……いいだろう。基礎は出来ているようだな」


 建早が振り向かず頷いた。


「正確には、自己認識と対象世界が干渉しあってるんだけどな。いわばお互いのイメージの融合だ。お前が、怖いとか抵抗を感じていると、うまく馴染めない。姿が不安定になったり、現地の法則を受け入れられなくなって……」

 石畳の道には亀裂が走り、所々踏み込むとぐにゃりと歪む。


「最悪、強制排出される」


 建物の輪郭は、一見均衡を保っているように見えるが、よく見ると呼吸するように膨らんだり萎んだりしていた。

 押し殺した声で、建早が言う。


「この世界観、既にかなり不安定だな。足元、気をつけろ」

「はいっ!先輩!」

「何だ」

「さっきの説明ってつまり、心が強いかどうかが重要になって来る訳ですよね!」

「……簡単に言えばそうだ」

「先輩、ダイブする前も俺のこと助けてくれましたよね。さっきも気をつけろって言ってくれたし。ありがとうございます!」

「……」

「強いって、そういうことですよね? 俺見習います!」

「……っ……俺はただ、くだらんことでヘマされて、足を引っ張られたら困ると思っただけだ」


 建早が急にそっぽをむく。隣に駆け寄って、葦原はにっこりと笑って言った。


「またまた~……あっ、これから何処に行くんですか?」

「まず、情報収集するために酒場へ行く。あそこだ」


 建早が指を刺した通りの先に、アーチ型のドアがあった。壁に添えつけられた鉄の吊り看板には、蛇が巻き付くような意匠と共に、<ファングの酒場>と名前が刻まれていた。



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