そうだ、星に行こう
「よっしゃぁぁぁああ!!!」
夏休み、それは学生の一番喜ぶと言っても過言ではないほどに愛され、待ち望んでいた時間。その限りある時間の一週間を植物のような生活をしていたとは思えない声が家を響かせる。
「やっと、やっと手に入れた!友達からおすすめされてから約二ヶ月も待ってやっと来た!」
そう語る彼女の前には人が一人入るのには少し大きすぎる「箱」が置いてあった。
「お小遣いにしたらほぼ五年分、その三年分を親が負担してくれたから実質二年分っ!こんな大金を出して買ったのは初めてなのに何故か安心している私がいる…」
そんな彼女の前に置いてあるのは一つ約四十万もする箱、否「Gathering Of Stars」通称「GOS社」が販売している「VR用ゲームルーム」である。VR用ゲームルームと言う名前をしているができるゲームは一つしか無いため「レガシーノヴァの箱」と言われている。
「よーし、エアコンセントを繋げて、部屋の掃除もしたし早速やるぞー!…これどうやってするんだ?壊れそうで怖いし…ボタン的なのはどこに…」
『ガチャッ』
その瞬間、箱の姿をしていた物が開き、声が聞こえて来た。
『部屋の広さ、傾き、温度、湿度を計測中……完了しました。タイプCを展開します。続いて顔、指紋、網膜の登録します。カメラの正面に立ってください。』
目の前の箱だったものが一瞬で形を変え、椅子のようなものが箱の中から出てきた。その周りにはモニターがあり、おそらくカメラであるものが表示されている。
「な、なにこれ、これが最近のVRゲームなの?とりあえず椅子に座ればいいのかな、いいよね?」
その問いに、箱だったものから声が返ってくる。
『はい。』
「こっちの声聞こえてたんだ、」
そう呟きながら椅子に座る。思ったよりフカフカだなと思いカメラに顔を向ける。
『顔、網膜の登録完了。続いて手を置いてください。……指紋の登録完了。VRシステムを起動します。』
その瞬間、黒い背景が全て白になる。そして気づけば視界の全てが白になった。




