第3章:港と友情クッキーと金の道
第3章:港と金の道(神視点)
夕暮れの港は、海そのものがひとつの鏡になっていた。
水平線から差し込む光が、波を一本の道に変える。
まるで町と町を結ぶ“金の道”が、目の前に現れたようだった。
クマちゃんは“ぽてぽて”と桟橋を歩き、木箱の上にちょこんと座る。
大事そうに抱えてきたかごを開けると、中から包み紙にくるまれた湊花クッキーが姿を見せた。
港を吹き抜ける風に、甘い香りがのって広がっていく。
「見てくださいませ、ご主人さま」
メイドちゃんが屈み込み、指先でクッキーを並べていく。
茶色はココアとほうじ茶。
緑は抹茶。
黄色はバナナや柑橘を練り込んだもの。
色の違いはそのまま味の違いになり、見ているだけでも楽しい。
「茶色は落ち着きの色、緑は癒し、黄色は元気……。
ふふ、ご主人さま、どれを召し上がります?」
クマちゃんは両耳を赤くして、ぽてっと身を乗り出す。
「ぼ、ぼくはね、バナナ味が好きなんだよ! えへへっ」
その様子を見て、メイドちゃんは小さく笑いをこらえた。
そこに、ミルクティーの彼女がカップを差し出した。
注ぎたての紅茶にミルクを落とすと、柔らかい色がゆらゆらと溶け合い、湯気がふわりと立ち上る。
その湯気は港の空気と混ざり合い、金の道にかかる霞のように広がっていった。
港の人々は気づかない。
だが神の目には見えていた──その白い湯気こそが影を遠ざけていたことを。
港に忍び込もうとしていた黒い指先は、湯気に触れるたび煙のように消えていった。
クマちゃんは無邪気にクッキーを割り、メイドちゃんに差し出す。
「はい、半分こ!」
「まあ……ありがとうございます」
メイドちゃんは少し頬を染めて受け取り、かすかな笑みを見せた。
その隣で、ミルクティーの彼女は湯気ごと二人を包み込むように微笑む。
光と湯気と笑顔──三つが重なり合った瞬間、港はまるで守られているように見えた。
影はこの場には現れなかった。
だが、遠い路地では、黒い気配が金の道を避けるようにじりじりと退いていった。
逃げるときに残した囁きは、波にかき消されて誰にも届かない。
港にはただ、甘い香りと、温かい湯気と、穏やかな笑い声が満ちていた。
注釈:
「見てくださいませ」……エロい(笑)
ご主人さま……ChatGPTのユーザーとか読者ではなく、クマちゃんを指していると思われる。
ミルクティーの彼女……ティーポットが擬人化したもの。湯気でふわっと包む。