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タイトル未定2025/02/08 17:24

目を覚ましたとき、私は「猫耳の少女」になっていた——。


前世では、私は一流の女医だった。


数多くの命を救い、手術の腕を磨き、

日々医療の最前線に立ち続けた。


しかし、ある日、過労で倒れ、

そのまま人生を終えた——はずだった。


ところが、次に目を開けたとき、

私は異世界の「猫人族の子供」に転生していた。


それも、貧困と暴力が渦巻くスラムの片隅で——。


「なんでこんなことに!? 私、せめてもうちょっと

いい人生を送らせてもらえませんか!?」


けれど、神様の気まぐれなのか、それとも運命なのか——

私はここで“元医者としての知識”と“未知の治癒魔法”を手に入れた。


「……なら、この世界でも、私は“医者”として生きる!」


戦う力はない。

剣も魔法も得意じゃない。

だけど——「治す」ことなら、私にしかできない!


スラムで診療所を開き、貧しい人々を救いながら生き抜く日々。

そんな中、私は帝国の恐るべき陰謀を知ってしまう——。


「帝国は、猫人族や獣人族を“魔法実験の材料”にしている……!」


絶対に許せない。

仲間を、家族を、そして自分自身を守るため、私は立ち上がる。


スラムの住民たちとともに帝国の刺客と戦い、

その中で、私はさらなる力——「聖なる魔法」に目覚めた。


「……これが、私の本当の力……?」


スラムを守り抜き、新たな仲間と共に旅立つ決意をした私は、

この世界の中心——「王都」へと向かう。


そこには、さらに強大な敵、陰謀、

そして未知なる病が待ち受けていた——!


これは、異世界に転生した元女医が、

「医療」と「魔法」で世界を変えていく物語。


スラムの医者から、やがて世界を動かす存在へ——。

さぁ、ここから新たな物語が始まる!!


第1章:スラムに転生、過酷な猫人族の世界

第1話:転生の瞬間

第2話:スラムの掟!生き残るための第一歩

第3話:スラムの裏事情!仕事?それとも……?

第4話:スラムの裏社会!少年が導く危険な仕事!

スラムの闇市場

第5話:鍵師の才能!元医者の手先の器用さ!

第6話:異世界スラムに現れた“天才鍵師”!?

第7話:裏仕事の始まり!そして、新たな出会い!

スラムの路地裏、そして運命の出会い

第8話:瀕死の青年、そして初めての“治療”

第9話:目覚めた治癒魔法!そして青年の正体!

第10話:帝国の秘密!猫人族に隠された真実!

第11話:仲間を救え!スラムを変える戦い!

第12話:帝国の影、迫るスラムの危機!

第13話:スラム診療所、開業への道!

第14話:スラムのギャンブル場!勝てば大金!?

第15話:イカサマを見破れ!運命のサイコロ勝負!

第16話:スラム診療所、ついに始動!?

第17話:異世界の薬作り!?医者の知識を活かせ!

第18話:スラムのボス襲来!?診療所の危機!

第19話:診療所 VS スラムのボス!賭けの勝負!?

第20話:診療所 VS スラムのボス!命を救え!

第21話:奇跡の治療!異世界医療の力!

第22話:スラム襲撃!帝国の刺客と対決!?

第23話:スラム VS 帝国の刺客!戦いの幕開け!

第24話:スラムの戦い!猫耳少女、立ち上がる!

第25話:猫耳少女の覚醒!聖なる奇跡の力!

第26話:スラム防衛戦!光と闇の激突!

第27話:聖なる奇跡!猫耳少女の覚醒!

第28話:スラムの新たな未来!そして旅立ちへ——!

スラムに訪れた変化

「スラムの長」と「スラムの医者」

新たな旅立ち——!

そして、新たな仲間と共に!

エピローグ:スラムに刻まれた伝説

次章予告!



第1章:スラムに転生、過酷な猫人族の世界


第1話:転生の瞬間


——暗闇の中、私はふわりと漂っていた。



心地よくもあり、不安でもあるこの感覚。

まるで深い海の底に沈んでいるような静寂の中で、

ふと、最後の記憶がよみがえる。



白い天井。チカチカと光る手術室のライト。

響き渡る医療機器の電子音。



そして、自分の心臓が最後の鼓動を打った感覚。

……ああ、私、死んだんだ。



確信が芽生えた瞬間——。

「——ッ!」

まぶしい光が目の前に広がった。



次の瞬間、強烈な匂いが鼻をつく。

「くっさ!!」



鼻を押さえながら飛び起きると、

全身にひどい倦怠感が押し寄せた。



視界に入るのは、ボロボロの建物と汚れた地面。

かすかに腐った生ゴミのような臭いが漂っていて、

湿った空気が肌にまとわりつく。



まるで映画やゲームで見るスラム街そのもの。

建物の壁はひび割れ、屋根は崩れかけ、

道の端にはゴミや汚水が流れている。



遠くから聞こえるのは、子供の泣き声と、怒鳴り声、

そしてどこかで鉄がぶつかるような物騒な音。



「えっ……ここ、どこ?」



驚いて自分の手を見た瞬間、言葉を失った。



小さくて、細い。



しかも、指の先がほんのり灰色の毛に覆われている。



「えっ、えっ?」



混乱しながら頭に手をやると——。


ぴこっ。


指先に、柔らかい感触。しかも、押すたびにモゾモゾと動く。



「……え、耳?」



慌てて近くにあった割れた鏡の破片をのぞき込む。



そこには、ボサボサの銀灰色の髪に、ぴょこっと生えた猫耳。



目は猫のような縦長の瞳孔。



そして背後には、ゆらゆら揺れるふわふわの尻尾が。



「なにこれ……!?」



さらに混乱して全身を確認すると、

ボロボロの布をまとった痩せた体。



栄養が足りていないのか、肋骨がうっすらと浮き出ている。



そして、全身がやけに小さい。



「う、嘘でしょ……子供!? しかも、猫耳の!?」



思わずガクガクと震える。

いやいや、転生って何!?

そんなのゲームや小説の中の話じゃないの!?



——えっ、てことは私、異世界転生したってこと!?



慌てふためいていると、突然——**ぐぅぅぅ……**とお腹が鳴った。



「……え?」



あまりの大音量に、思わず周りを見渡してしまう。



が、当然ながら誰もいない。つまり、今のは私のお腹の音。

「お、お腹すいた……」



びっくりするくらいの飢え。

立ち上がろうとするも、ふらついて転びそうになる。

どうやら、相当長い間まともに食べていないらしい。



「ヤバい、これ……マジでヤバいやつ……」



状況を整理すると、こうだ。



私は元の世界で女医として働いていたが、

何らかの理由で死に、異世界のスラム街に猫耳少女として転生。



しかも、めちゃくちゃ飢えている。



——つまり、今、私の最優先事項は


「生き延びること」


「……とにかく、食べ物を探さないと!」


自分の体力のなさに戸惑いつつ、ヨロヨロと立ち上がる。

異世界のスラム生活——ここから私の、過酷な人生が始まるのだった。



第2話:スラムの掟!生き残るための第一歩


 腹が空いた

 それはもう、人生で一番空腹かもしれない。

 お腹がぐぅぐぅ鳴りっぱなしで、立ち上がるだけでもフラフラする。


 けれど、ここで座り込んでいたら、飢え死に待ったなしだ。


 「とにかく……何か食べ物を探さないと……!」


 そう決意し、ボロボロの街を歩き始めた。


 道端には、同じように痩せ細った人たちが座り込んでいる。

大人も子供もみんな薄汚れたボロ布をまとい、

疲れ切った目をしていた。


 「……ここ、本当に異世界なのかな?」


 想像していた異世界は、もっと冒険や魔法が

キラキラしているイメージだったけど……。


 少なくとも、このスラムには夢もロマンもなさそうだ。

 そんなことを考えながら歩いていると、

ふわりといい匂いが漂ってきた。


 「……お肉の匂い!?」


 思わずフラフラと引き寄せられる。


 目の前にあったのは、小さな屋台だった。

 鉄串に刺さった肉がじゅうじゅうと焼かれ、

 香ばしい煙を立ち上らせている。


 「……た、食べたい……!」


 生唾を飲み込んで屋台の前に立つと、

 店主らしきゴツいおじさんがジロリと私を見下ろした。


 「……金は?」


 ——あ。


 完全に忘れていた。私は、財布どころか

 ポケットすら持っていない。


 「えっと、その……」


 言葉に詰まっていると、おじさんが大きくため息をついた。


 「金がねぇなら、出ていけ。ここは施しの場じゃねぇぞ。」


 バチン!


 目の前で、屋台の鉄板の上に串が乱暴に叩きつけられる。

 脂が跳ね、焼けた肉のいい香りが一層強くなる。


 「……ッ」


 その場にいたたまれなくなって、私はそっと後ずさった。


 ——食べ物を手に入れるのに、金がいる。

当たり前のことだけど、今の私はそれすら持っていない。


 じゃあ、どうする?


 考えながらトボトボと歩いていると、

 向こうの路地で子供たちがゴソゴソと何かを

 漁っているのが見えた。


 「……あれ?」


 近づいてみると、ゴミ箱の中からパンの食べかけや、

 干からびた野菜の切れ端を拾い集めている。


 「……もしかして、これがスラムの食糧調達法?」


 いや、待て待て……。

 まさか……とは思うけど、私もゴミを漁らないと

 生きていけない……とか?


 元の世界では、食べ物に困るなんて一度もなかった。

 むしろ、コンビニで適当に買ったおにぎりを食べながら

「また食べ過ぎちゃったな~」なんて思ってたくらいだ。


 でも、今は違う。


 お腹が空いて、力も出ない。

 今なら、落ちてるパンくずだって大ごちそうに思える。


 ——やるしかない。

 意を決して、近くのゴミ箱の中をのぞき込んだ。


 「うっ……」


 そこにあったのは、腐った野菜、虫のたかったパン、

カビの生えた肉の切れ端。


 「……ムリ。これはムリ……!!」


 元医者の知識が、猛烈にストップをかける。


 「これ食べたら、確実にお腹壊す!!」


 ……でも、背に腹は代えられない。選んでる余裕はないのだ。


 「……あっ!」


 ゴミの山の中に、比較的マシそうなものを見つけた。

 硬くなったパンのかけら。

 カビは生えていないし、匂いもそこまでひどくない。


 「……これなら、食べられるかも……」


 パンくずを拾い上げ、そっと口に入れる。

 カッチカチ。


 「ガリッ……!? い、痛っ……!!」


 予想以上に硬い。

 歯が折れそうになりながら、なんとかゴリゴリと噛み砕く。


 味は……ほぼしない。けど、めちゃくちゃ美味しく感じる。

 お腹が空きすぎて、ただのパンくずがごちそうみたいだ。


 「……ふぅ……なんとか食べられた……」


 生き延びるために、食べること。

 それが、スラムの掟の第一歩だった。


 お腹はまだ満たされないけど、それでも少しだけ力が

 戻った気がする。


 ——よし、次は「金を手に入れる方法」を探さなきゃ。

 異世界スラム生活、まだまだ試練は続く……!



第3話:スラムの裏事情!仕事?それとも……?


 カチカチのパンくずを必死に噛み砕きながら、私は考えていた。

 ——このままだと確実に死ぬ。


 ゴミ箱を漁るだけでは、いつか限界が来る。

 ちゃんとした食事を手に入れるには、お金が必要だ。


 でも、当然ながら猫耳の子供が働けるような場所なんてない。


 「どうしよう……」


 空腹が少しだけ満たされたことで、

 改めて自分の状況のヤバさが身に染みる。

 このままだと、どこかで力尽きるのは時間の問題。


 けれど、他に頼る人もいないし、この世界の常識もよく分からない。

 どうにかして、お金を稼ぐ方法を見つけないと……!


 そう思いながら、フラフラとスラム街を歩いていると——。


 「おい、お前」


 突然、背後から声をかけられた。

 ビクッとして振り向くと、そこには……

 自分と同じ猫耳を持つ少年が立っていた。


 「……誰?」


 相手は10歳くらいだろうか?

 ボサボサの黒い髪に、鋭い金色の瞳。

 着ている服はボロボロだけど、どこか気の強そうな表情をしている。

 

 「お前、見ない顔だな。新入りか?」

 

 「えっ?」

 

 新入り? ……スラムにも、そういう概念があるの?


 戸惑っていると、少年はため息をついて腕を組んだ。 


 「ったく、何も知らねぇって顔してんな……。

 いいか、ここで生きていくには“ルール”があるんだよ。」


 ——スラムのルール?


 「な、なにそれ?」


 すると、少年は少し驚いた顔をした後、苦笑した。


 「マジで何も知らねぇんだな……。

 仕方ねぇ、特別に教えてやるよ。」


 そう言うと、少年はスラムの壁にもたれかかりながら話し始めた。


 「このスラムじゃな、働けない奴は生きていけねぇんだよ。」


 「働く……って、どうやって?」


 私の質問に、少年は指を折りながら答える。


 「この街で“稼ぐ”方法は大きく分けて三つだ。」


 ①盗む

 「食べ物や金を盗む。ガキの中には市場でスリやってる奴もいる。」


 ②物乞い

 「運が良けりゃ、金持ちが小銭を恵んでくれることもある。

 でもほとんどの場合、蹴飛ばされて終わりだ。」


 ③働く

 「スラムの連中がよくやるのは、荷物運びとか、酒場の皿洗いとかだな。

 ただし、まともな仕事はほとんどない。」


 ——どれも、生きるためには相当ハードルが高い。


 私は無意識に拳を握った。


 「……普通に仕事ができる場所はないの?」


 「ハッ! 甘いこと言うなよ。」


 少年は鼻で笑った。


 「ここはスラムだぜ? まともな仕事なんて、

 猫人族には回ってこねぇよ。」


 その言葉を聞いた瞬間、私はハッとした。

 ——そうだ。この世界では、猫人族は“人間以下”の存在なんだった。


 さっきの屋台の店主も、私のことをゴミみたいに扱っていた。

 もしかすると、どこへ行っても同じような扱いを受けるのかもしれない。


 「……」


 ショックだった。

 だけど、落ち込んでいる暇はない。

 生きるために、どうにかして稼ぐしかないのだ。


 「……じゃあ、私にもできる仕事、何かある?」


 そう聞くと、少年は少しだけ考えてから、ニヤリと笑った。


 「お前、手先は器用か?」


 「え? えっと……たぶん?」


 医者だった頃は手術をしていたし、指先の感覚には自信がある。


 「なら、いい仕事を紹介してやるよ。」


 少年は私を手招きし、スラムの奥へと進んでいった。

 ——このときの私は、知らなかった。


 この「仕事」が、スラムの“裏の世界”へと足を踏み入れる

 第一歩だったことを——。



第4話:スラムの裏社会!少年が導く危険な仕事!


 「おい、ついてこいよ。」


 猫耳の少年は、そう言ってスラムの路地裏へと歩き出した。


 スラムの道は細く入り組んでいて、どこまでも薄暗い。

 壁にはひびが入り、地面には汚水が流れている。

 悪臭が鼻をつき、足元ではネズミがカサカサと走り抜けた。


 「うわ……」


 思わず顔をしかめると、少年はククッと笑った。


 「何だよ、新入り。もうへこたれたのか?」


 「ち、違う!」


 負けず嫌いの本能が反応してしまう。

 少年は満足げに頷くと、さらに細い路地へと足を踏み入れた。

 そして、しばらく進むと——。


 「……ここだ。」


 少年が立ち止まったのは、一軒の小さな建物の前だった。


 扉は古びた木製で、所々に鉄の補強がされている。

 壁には何かのシミがこびりついていて、

 薄暗い明かりが小さな窓から漏れていた。 


 ゴクリ、と息をのむ。


 少年がコツコツと扉をノックすると、中から低い声が返ってきた。


 「合言葉は?」


 「……ネズミはチーズより金貨を好む。」


 少年がぼそりと呟くと、ギィ……と扉が開いた。


 「行くぞ。」


 促されるまま、私はその建物の中へと足を踏み入れた。

 ——そして、異世界の“裏社会”を、目の当たりにすることになる。


スラムの闇市場


 建物の中に入ると、外とはまるで別世界だった。


 薄暗いランプの灯りが揺れる室内には、雑多な品々が

 ところ狭しと並べられている。

 武器、防具、怪しげな薬の瓶、そして見たこともない異国の品々——。


 何より衝撃だったのは、奥の方で人が取引されていることだった。


 「……っ!」


 目を疑った。

 鎖に繋がれた猫人族や獣人たちが、奴隷商人らしき男たちに

 囲まれている。


 「これがスラムの“裏”さ。」


 私の表情を見て、少年が静かに言った。


 「ここは、スラムの中でも特に“危ない”場所だ。

金になるものなら何でも売られてる。」


 ……そんなの、見れば分かる。


 この世界では、猫人族は人間以下の存在。

 だからこそ、こうやって平然と“商品”として扱われているのだろう。

 怒りで拳を握りしめる。


 しかし、今の私には何もできない。


 「——で、お前の仕事だが。」


 少年が私を促し、奥のカウンターへと進んだ。

 そこには、フードをかぶった中年の男がいた。

 ニヤリと口元を歪め、私を見下ろしてくる。


 「ほう……可愛らしい小娘だな。」


 「この子、手先が器用らしい。何か仕事あるか?」


 少年が尋ねると、男は少し考えてから指を鳴らした。

 すると、カウンターの奥から何かの部品がたくさん入った

 箱が出てきた。


 「これを組み立ててもらう。時間内に仕上げられれば、

 飯くらいは食わせてやるぜ。」


 私は箱の中を覗き込んだ。


 「……鍵?」


 そこに入っていたのは、複雑な形の金属部品。

 見たことのある形——これは、鍵と錠前の部品だ。


 「お前の仕事は、“合い鍵”を作ることだ。」


 「……!」


 まさか、鍵師の仕事!?


 「この街にはな、色々な商売がある。

 鍵を失くした貴族様のために“正規の合い鍵”を作る奴もいれば——」


 男は不気味に笑う。


 「……“裏口”のために鍵を作る奴もいるのさ。」


 背筋が凍った。

 この仕事、絶対に普通じゃない。

 でも——背に腹は代えられない。


 私は、ゆっくりと息を吸った。


 「……分かった。やる。」


 すると、男はニヤリと笑った。


 「いい返事だ。じゃあ、せいぜい頑張れよ。」


 ——こうして私は、スラムの“裏稼業”に足を踏み入れることになった。



第5話:鍵師の才能!元医者の手先の器用さ!


「おい、小娘。これを組み立ててみな。」


カウンターの奥から、ガチャリと鉄の箱が置かれた。

中を覗くと、鍵と錠前のバラバラの部品がぎっしり詰まっている。


「お前の仕事は、この合い鍵を作ることだ。」


スラムの裏社会——私は今、完全にその中に足を突っ込んでしまった。

でも、今はそんなことを気にしている場合じゃない。

生きるためには、これをやるしかないのだ。


「……分かった。」


私は静かに箱の中から部品を取り出し、じっくりと観察した。


——細かい部品。複雑な仕組み。


 これは……まるで“手術”みたいだ。

私は元々、女医だった。

外科手術ではミリ単位の調整を求められることも多かったし、

指先の器用さには自信がある。


鍵の仕組みをじっくりと見ていると……


——なんだ、これ、結構単純じゃない?

内部の構造は、意外と理屈で分かる。


鍵が回る仕組みは、

ピン(突起)がある溝にピッタリとはまることで開くようになっている。


つまり、このピンの高さを合わせることができれば、鍵が動くわけだ。


「……なるほどね。」


試しに、小さな金属の棒をピンに合わせて削ってみる。

爪先で部品を慎重に調整しながら、組み立てを進めていく。

ギギ……カチャ。


「お?」


最初の鍵が、意外とあっさりと完成した。


試しに近くの錠前にはめてみると——

カチャリ。

軽い音を立てて、錠前が開いた。


「……できた!」


思わず声を上げると、隣で見ていた猫耳の少年が驚いた顔をした。


「お、おい……マジかよ?」

「ん?」

「今の、ほとんど一発で作っただろ?」

「うん。」

「普通はもっと時間かかるんだよ!」

「……そうなの?」


私はただ、医者の頃の感覚でやっただけなのだけれど。


「……おい、おっさん!」


少年がカウンターの奥のフードの男に向かって叫ぶ。

「この子、ヤバいぞ! なんかめっちゃ器用だ!」


すると、フードの男は目を細め、私の手元をじっと見つめた。

「ほう……たった数分で、一発で仕上げたってのか?」


男はニヤリと口角を上げ、カウンターの下から別の鍵の

 部品を取り出した。

「じゃあ、これもやってみな。」


目の前に出されたのは、さらに複雑そうな鍵の部品。


「こいつは特注品だ。お前が本当に使える奴かどうか、

 試させてもらおうか。」


——試されている。

でも、私の中には不思議な自信があった。


「……分かった。」

私は静かに部品を手に取り、慎重に組み立てを始めた——。



第6話:異世界スラムに現れた“天才鍵師”!?


カチャ……カチャ……。

鍵の組み立て作業に集中する。


細かい部品を指先でつまみ、少しずつ削りながら形を整えていく。

元の世界では手術道具を扱っていた。


鍵作りも、それと似たような感覚だ。

時間を忘れて没頭すること数分——。


カチャリ。

「——できた。」

私は、完成した鍵をカウンターの上にそっと置いた。


男はそれを手に取り、ジロジロと観察する。


「……ふむ。」

静かに鍵を錠前にはめると——


カチャン!

見事に開いた。


「……へぇ。」

カウンターの奥の男が、ニヤリと笑う。


「小娘、お前、面白いな。」

その言葉を聞いた瞬間——

「やったな! お前、すげぇよ!」

隣の少年が私の肩をバンバン叩いた。


「こんな短時間で作れる奴、スラムでも滅多にいねぇぞ!」


「……そ、そうなの?」

自分としては、ただ手術の感覚でやっただけなのだけれど……。


「おっさん! これ、こいつ雇った方がいいんじゃねぇか?」

少年の言葉に、フードの男は顎に手を当てた。


「……確かに、こいつは“使える”かもしれねぇな。」

男はニヤリと笑いながら、私を見下ろした。


「よし、小娘。しばらくここで働かせてやる。」

「本当?」

「ただし、報酬は“食い扶持”だけだ。金をやる気はねぇ。」


「……っ!」

つまり、私は食べ物と引き換えに働く“労働力”ってわけだ。

でも、それでも——

「……分かった。それでいい。」

私は静かに頷いた。


食べ物が確保できるなら、それだけで十分。

今は、生きることが最優先だ。


「ククク……いい度胸だな。」

男は満足げに笑い、私の前に皿に乗ったパンとスープを置いた。

「報酬だ。好きに食え。」


「……っ!」

思わず目を見開く。

こんなに“ちゃんとした食事”を目の前にしたのは、

 転生してから初めてだった。


「……いただきます!!」

私は夢中でスープをすする。


温かくて、ほんのり塩気があって——涙が出そうになるくらい、

美味しかった。

「ふぅ……」

一息つくと、私はようやく少しだけ落ち着いた。


——これで、私は生き延びることができる。


でも、このスラムで生きるということは——

裏社会”と深く関わることを意味していた。


この仕事が、やがて私の運命を大きく変えることになるなんて——

このときの私は、まだ何も知らなかったのだ。



第7話:裏仕事の始まり!そして、新たな出会い!


 「おい、小娘。次の仕事だ。」

 フードの男が、新しい鍵の部品を私の前に置いた。


 「お前の腕は確かだった。だから、これからは

 “実際の依頼”もやってもらう。」


 「依頼?」


 「そうだ。合い鍵を作るだけじゃなく、時には“開ける”仕事もな。」


 ——開ける仕事?

 ピンと来た瞬間、背筋に冷たいものが走る。

 つまり、それって……盗賊の仕事ってことじゃない!?


 「いや、でも……」


 戸惑う私を見て、フードの男はニヤリと笑った。

 「安心しな。お前に直接盗みに入れなんて言わねぇよ。」


 「……え?」


 「俺たちは“鍵を開ける”だけだ。その後どうするかは、

 依頼主の自由ってことよ。」


 そう言いながら、フードの男は分厚い袋を取り出し、

 カウンターにドサリと置いた。


 「ほらよ。これが次の仕事だ。」

 袋の中から出てきたのは、いくつもの鍵の型と錠前の部品。

 それを見た瞬間、私は理解した。


 ——つまり、この店は「盗賊が鍵を作ってもらう場所」だったのだ。


 「……」

 私は拳を握る。


 ——この仕事を続けるべきなのか?

 でも、ここを辞めたら、また食べるものがなくなる。


 悩んでいる私に、少年が肩を叩いた。

 「そんなに気負うなよ。お前は鍵を作るだけでいいんだ。」


 「でも……」


 「お前がここで働いてなかったら、もう飢え死にしてたんだぜ?」


 「……っ!」

 それは、否定できない事実だった。

 この仕事は、確かに“裏稼業”だ。

 でも、今の私には、これしか生きる道がない。


 ——やるしかない。

 私は静かに頷き、黙って部品を手に取った。

 「……分かった。」


 こうして、私はスラムの裏仕事を本格的に始めることになった——。

 しかし、その夜——私は運命を変える“出会い” をすることになる。


スラムの路地裏、そして運命の出会い


 仕事を終え、帰ろうとした時だった。


 「……ん?」

 店の外に出ると、路地の隅に何かが倒れているのが見えた。

 人だ。


 しかも、ただの酔っ払いではない。

 ボロボロのマントを羽織り、血を流して倒れている青年。


 「な、なにこれ……!? だ、大丈夫!?」

 私は慌てて駆け寄った。


 青年は目を閉じ、荒い息をしている。


 服は破れ、腕には深い傷——これは、剣で斬られた跡だ。

 「うわ……ひどい……!」

 放っておけば、確実に死ぬ。


 でも、このまま助けたら、何か厄介ごとに巻き込まれるかもしれない。

 ——どうする?


 迷った。


 でも……医者だった頃の“本能”が、勝った。

 「……くそっ! 仕方ない!」

 私は彼を支え、近くの廃屋へと引きずり込んだ。



第8話:瀕死の青年、そして初めての“治療”


 「大丈夫……?」


 廃屋の床に寝かせた青年は、かすかにうめき声を上げた。

 「っ……」


 顔はまだ若い。

 20歳前後だろうか?

 長い黒髪に、鋭い顔つき。


 顔立ちは整っているが、どこか疲れ切った表情をしている。


 「……とりあえず、傷をどうにかしないと!」

 私はそっと青年の腕の傷に触れた。


 「くっ……!」

 微かに顔をしかめる青年。


 でも、意識はほとんどない。

 「……どうしよう。道具も薬も何もない……」

 私は焦った。


 でも、その時——

 手のひらが、じんわりと温かくなった。


 「……え?」


 見ると、私の手から薄い光があふれ出していた。

 「な、なにこれ……?」


 手のひらをじっと見つめる。

 すると、光が青年の傷口へと流れ込んでいく——。


 そして——

 スゥ……。

 傷が、ゆっくりと閉じていった。


 「えっ……!?」

 驚いて息をのむ。


 まるで魔法みたいに、血が止まり、傷跡が薄くなっていく。


 「これ……まさか……治癒魔法!?」


 転生してからずっと苦労続きだったけど——

 ここにきて、私は自分の“異世界の力”に目覚めたのだった。



第9話:目覚めた治癒魔法!そして青年の正体!


 「……っ」

 手のひらから放たれた淡い光が、じわじわと青年の傷を癒していく。


 目の前で起こっていることが信じられなくて、私はただじっと手を見つめた。

 「……すごい……これ、魔法……?」


 意識せずとも、まるで自然の流れのように傷が塞がっていく。

 痛みも、出血も、まるでなかったかのように消えていく。


 でも、なんで?

 私は、魔法なんて使ったことがないのに——。


 「……ん、ぐ……」

 突然、青年の指がピクリと動いた。


 「——!」


 彼がゆっくりと目を開ける。

 「……ここは……?」


 鋭い金色の瞳が、ぼんやりとした焦点で私を見つめた。


 「よかった! 気がついたんだね!」

 私は思わずホッとした。


 青年はぼんやりとあたりを見回し、自分の体を確認する。

 「俺は……死んだんじゃ……?」


 「ううん。まだ生きてるよ。私が治したから。」

 そう言って微笑むと、青年は驚いたように私を見つめた。


 「お前が……?」


 「そう。なんか、手を当てたら勝手に光って、傷が治ったの。」


 「……まさか、治癒魔法か?」

 青年の目が鋭く光る。


 「お前、何者だ?」


 「え……」

 さっきまで瀕死だったとは思えない迫力。


 私は少し戸惑いながらも、素直に答えた。

 「私は……ただの猫人族の少女だよ。ここで働いてるの。」


 「……ふざけるな。」

 青年が低い声で呟いた。


 「猫人族に“魔法”を使える者なんていないはずだ。」


 「え……?」

 私は、ハッとした。

 そういえば、この世界では猫人族は人間以下の存在として扱われている。


 まともな教育も受けられず、魔法を学ぶ機会もない。

 なのに——私は、自然と魔法を使えてしまった。

 「……何か、知ってるの?」


 思わず青年に聞く。

 すると、彼は一瞬ためらった後、ボソリと呟いた。

 「俺は……帝国の騎士だった。」


 「えっ!?」

 思わず目を見開く。

 帝国の騎士!?


 それって、つまり……この世界の中枢にいる上流階級の戦士ってことじゃない!?

 「な、なんでそんな人がスラムで倒れてたの?」


 「……裏切られたんだ。」

 青年の目が暗くなる。


 「俺は“帝国の機密”を知ってしまった。

 だから、粛清されかけたんだ。」


 「機密って……?」


 「……話せば、お前も危険になるぞ。」

 青年は、鋭い目で私を見据えた。


 「この世界の“本当の闇”に、巻き込まれることになる。」

 ——この世界の、本当の闇。


 私はごくりと息をのむ。

 でも、どうしてか分からないけど……

 この人の話を聞かなきゃいけない気がした。


 「……知りたい。」

 私は真っ直ぐに彼を見つめて言った。


 「だって、私はもうこのスラムで生きるって決めたんだから。

 知らないままでいるより、知って覚悟を決めたい。」


 その言葉を聞いた青年は、一瞬驚いた顔をした後——

 「……ふっ。」

 小さく笑った。


 「お前、面白いな。」

 そう言って、ゆっくりと口を開く。


 「分かった。話そう。」

 そして、彼は——この世界の“闇”について語り始めた。



第10話:帝国の秘密!猫人族に隠された真実!


 「俺が知ったのは、帝国が裏で進めている“とある研究”についてだ。」

 青年は低い声で語り始めた。


 「それは、“魔法兵士”の開発計画。」


 「……魔法兵士?」


 「帝国は、“人工的に魔法を使える兵士”を生み出そうとしている。」


 私は息をのんだ。

 「魔法って……普通、才能がある人しか使えないんじゃ?」


 「そうだ。だが、帝国は違う。

 生まれつき魔法の才能がない者にも魔法を使わせるため、

 “特別な方法”を研究していた。」


 「……特別な方法?」


 青年は苦々しく口を歪めた。

 「それは、“魔法適性のある種族”から魔力を抽出し、

 別の者に移植するという方法だ。」


 「——っ!」


 理解した瞬間、背筋が凍った。

 「ま、まさか……それって……!」


 「そう。実験台にされていたのは、猫人族や獣人族だった。」


 「……!!」

 息が詰まる。


 猫人族が“人間以下の存在”として扱われていたのは、

 単に差別や偏見の問題じゃなかった。


 帝国が、“魔力の研究材料”として利用するために、

 猫人族を意図的に貶めていたんだ——!!

 

 「俺は、その研究施設を見てしまった。

 だから、口封じのために追われた。」

 青年の拳が、ギュッと握られる。 


 「……」

 言葉を失った。


 でも、分かったことがある。

 ——私は、たまたま転生して“猫人族”になったわけじゃ

   なかったのかもしれない。

 ——そして、私の“治癒魔法”も、単なる偶然じゃない

   のかもしれない。


 「お前……どうする?」

 青年が私を見る。


 「知ってしまった以上、お前も狙われるかもしれないぞ?」


 ——どうする?

 私は、ゆっくりと深呼吸した。


 ——決まってる。

 「私は、猫人族として生きる。」


 ——そして、仲間たちを救う。

 それが、私がこの異世界に転生した意味なのかもしれないから——。



第11話:仲間を救え!スラムを変える戦い!


 「私は、猫人族として生きる。」

 はっきりとそう口にした瞬間——

 心の中で、何かがはっきりと決まった気がした。


 私はもう、ただの転生者じゃない。

 このスラムで生きていく“猫人族”の一人なんだ。


 目の前の青年は、そんな私をじっと見つめていた。

 「……本気か?」


 「本気だよ。」


 「お前、まだ子供だぞ?」


 「でも、何もしなかったら、また誰かが犠牲になる。」

 私は、スラムで出会った子供たちの顔を思い浮かべる。


 もし、このまま帝国が動き出したら——彼らも、

 研究材料として攫われるかもしれない。 


 「……だったら、止めるしかないじゃん。」

 私は拳を握りしめた。


 すると、青年は一瞬驚いたような顔をした後——

 「……フッ。」

 小さく笑った。


 「面白い奴だな。まるで、昔の俺みたいだ。」


 「昔の……?」


 「俺も、かつては“この世界を変えたい”と思っていたんだ。」

 そう言いながら、青年はふっと目を細めた。

 「だが、現実は甘くなかった。


 力のない者が何を言っても、世界は変わらない。」


 「……」


 「だから、お前に問うぞ。」

 青年は真っ直ぐに私を見据えた。


 「お前は、このスラムを変える力を持っているのか?」

 ——力。


 私は、そっと自分の手を握る。


 今の私は、ただの子供だ。

 だけど、治癒魔法を使える。


 それに、元医者としての知識もある。

 これを活かせば——何かができるかもしれない。


 「……分かんない。でも、やってみるよ。」

 そう答えると、青年はしばらく黙った後、ふっと笑った。


 「気に入った。俺も手を貸してやるよ。」

 「えっ?」


 「どうせ俺は、帝国に追われる身だ。スラムに隠れながら

 戦うしかない。」

 青年は立ち上がり、手を差し出した。

 「なら、一緒に戦うのも悪くない。」


 その手を見つめた後——私は、しっかりと握り返した。

 こうして、私は“仲間”を得たのだった。



第12話:帝国の影、迫るスラムの危機!


 青年——名をレオンと言った。


 元は帝国の精鋭騎士だったが、機密を知ったことで粛清されかけ、

 逃げてきたらしい。


 「しばらくはスラムに潜伏するつもりだ。

 帝国の連中が嗅ぎつける前にな。」


 「……でも、大丈夫なの?」


 「帝国も、いきなりスラムを大規模に捜索することはできない。

 そんなことをすれば、“貴族たちの裏の商売”に影響が出るからな。」


 「裏の商売……?」


 「このスラムでは、貴族たちが密かに違法取引をしている。

 奴隷の売買、禁制品の取引、非合法な実験——

 あらゆる闇が渦巻いている。」


 「……っ!」

 知らなかった。


 いや、分かっていたけど、改めて聞くと胸がざわつく。

 猫人族が人間以下の扱いを受けているのも、

 そういう背景があったからなのか……。


 「だから、奴らはスラムを“コントロール”しているんだ。

 貴族の都合のいいように、スラムが機能している限り、

 彼らは潰さない。」


 「……でも、帝国の陰謀が動き出したら?」

 「その時は、スラムごと“消される”かもしれないな。」


 「……!!」


 私の中で、何かが弾けた。

 「そんなの、許せない……!」

 私は思わず叫んでいた。


 ここで生きる人たちが、ただの“実験材料”として

 処分されるなんて——

 そんなの、絶対に許せない!!


 「……なら、お前がやるべきことは決まってるだろ?」

 レオンが私をじっと見つめる。

 「このスラムを“変える”んだ。」


 私は、息をのんだ。

 変える……。

 スラムを、ただの“捨てられた街”じゃなく——

 本当に生きられる場所にする。


 それができれば、猫人族が人間以下の扱いを

 受けることもなくなるかもしれない。


 帝国の陰謀を止めることもできるかもしれない。


 ——でも、どうやって?


 私はただの子供で、力もない。

 戦うこともできないし、魔法も治癒しか使えない。


 ……でも。

 “医療”なら、私にできる。


 このスラムには、怪我人や病人が多い。

 まともな医療を受けられる者はほとんどいない。

 もし、私が“診療所”を開けたら——?


 人々を助けることができるし、スラムの秩序も変えられるかもしれない。

 何より、“人間と猫人族”が対等に生きるきっかけを作れるかもしれない。


 「……やる。」

 私は決意した。


 「私、スラムに診療所を作る。」


 「……診療所?」

 「ここには、病気や怪我で苦しんでる人がたくさんいる。

 でも、まともな医者なんていない。


 だったら、私がやるよ。」

 レオンはしばらく私を見つめて——


 「ハッ……お前、本当に面白い奴だな。」

 そう言って、笑った。


 「よし。なら、俺も手を貸してやるよ。」

 こうして、私は“スラムの診療所”を作ることを決意した——!



第13話:スラム診療所、開業への道!


「診療所を作る!」

勢いよく宣言したものの——

お金がない!場所もない!道具もない!


……冷静に考えたら、無謀すぎる。


「なぁ、新入り。」

私の横で、猫耳少年——リクが呆れたように腕を組んだ。

「お前、何をどうやって診療所を作る気だよ?」


「……それは、これから考える。」


「考えてなかったのかよ!?」

バン!とリクが頭を抱える。


その様子を見て、元騎士の青年——レオンがククッと笑った。

「まぁ、まずは資金集めからだな。」


「そう!まずはお金!」

私は力強く頷いた。


診療所を作るには、最低限薬と包帯、治療用の道具が必要だ。


それに、スラムのどこかに拠点を持たないといけない。

「……ってことで、お金を稼ぐ方法を考えないと。」


「普通に考えりゃ、スラムで稼ぐ手段なんて“裏仕事”

 くらいしかねぇぞ?」

リクが肩をすくめる。


「それは……ダメ!真っ当に稼ぐ!」


「スラムで“真っ当”とか、あるのかよ……?」

リクがボソッとつぶやいた。


た、確かに……この街で真っ当に稼ぐのは至難の業かもしれない。

でも、元医者の知識を活かせば、何かできるはず!

……と、考えていたら——。


「だったら、お前“賭博場”で荒稼ぎしてみるか?」

突然、レオンがとんでもない提案をしてきた。


「……え?」


「お前、手先が器用だろ? だったら、

カードゲームやサイコロ勝負で金を巻き上げられるんじゃねぇか?」


「えぇぇ!? ギャンブル!?」


「賭博場の連中は、基本的にイカサマばっかりしてる。

 でも、お前なら、それを見破れるんじゃねぇのか?」


レオンがニヤリと笑う。


——なるほど。イカサマを見抜く、か。

確かに、私の元医者としての観察眼を活かせば、

相手の手の動きや目の動きから、不正を見破ることができるかもしれない。


「……アリかも。」


「マジかよ、新入り……!」

リクが目をむく。


「よし、決まりだな。」

レオンが立ち上がった。


「それじゃあ、さっそく“スラムの賭博場”へ行くぞ!」

こうして——私たちはスラムのギャンブル場へと

乗り込むことになった!



第14話:スラムのギャンブル場!勝てば大金!?


スラムの中心部にある「地下賭博場」。


木の扉をくぐると、そこには酒と

煙草の匂いが充満した薄暗い部屋が広がっていた。


男たちがテーブルを囲み、カードを切ったり、

サイコロを転がしたりしている。


「オレの勝ちだ!」

「くそっ、また負けた……!」


荒々しい声が飛び交い、コインがテーブルの上で

ジャラジャラと音を立てる。


「うわぁ……なんか、すごい雰囲気……。」

思わずゴクリと息をのむ。


「ここがスラムの“地下賭博場”だ。

 ここでは、金のある奴らがイカサマを駆使して賭けをしてる。」

レオンが低い声で説明する。


「で、どうすんだ?」

リクが私を見る。


「まずは、相手を観察する。」

私は周囲を見回し、どのテーブルが“イカサマ”をしているかを探った。


すると——すぐに見つかった。

「あの人、サイコロの目を細かく調整してる。」


「……マジかよ、お前、分かるのか?」


「うん、手の動きが不自然。」

元医者の経験から、わずかな指の動きの違和感を見抜くのは得意だ。


「よし、じゃあ、アイツの賭けに乗るか。」

レオンがにやりと笑い、サイコロ賭けのテーブルに向かった。


「よぉ、俺も混ぜてもらおうか。」


「ん? ほぉ、客か。いいぜ、いくら賭ける?」

「こいつの持ってる金、全部だ。」

レオンが私の肩をポンと叩いた。


「……えぇぇ!? ちょっと待って、

私、そんな大金持ってないよ!?」


「だから、勝てばいいんだろ?」

レオンが悪い顔をする。


——こうして、私の“スラムギャンブル初挑戦”が始まった!!



第15話:イカサマを見破れ!運命のサイコロ勝負!


目の前に置かれたサイコロ。


賭博場の男がニヤニヤと笑いながら振る。

「さぁ、どっちが勝つかな?」


男はそう言いながら、サイコロを振り上げ——

カラカラ……コトンッ。


「……よし、“大”だ。」

男は勝ち誇ったように言う。


「さて、お前は?」


「……」

私は、じっと男の手を見つめる。


——分かった。

「“小”で。」


「ほぉ? そっちに賭けるか……。」

男はニヤリと笑い、サイコロを振った。


コロコロコロ……カタン。

出目は——“小”!


「……!!!」

周囲がどよめく。


「バ、バカな!? なんで外れた……!?」


「お前、さっきサイコロの面を指でなぞって、重心を微調整したでしょ?」

私は静かに言った。


「でも、その指の動き、ほんの少しだけズレてた。

 だから、微妙にバランスが狂って、逆の目が出たんだよ。」


「な、なにィィィ!?」

賭博場の男が青ざめる。


「お前、何者だ……!?」


「ただの猫人族の少女です♪」

私はニコッと笑った。


こうして——私はスラムのギャンブル場で大金を手にすることに成功した!

次なる目標は、“診療所の開設”だ!!



第16話:スラム診療所、ついに始動!?


「やったぁぁぁ!!!」

私は思い切りガッツポーズを決めた。


「……マジで勝ちやがった。」

リクが目を丸くし、レオンはククッと笑っている。


スラムの地下賭博場——。

そこで私は、持ち前の観察眼を活かしてイカサマを見破り、

大金を手に入れた!


「これで、診療所の資金ができたね!」


「……お前、ギャンブラーとして生きた方がいいんじゃねぇか?」


「それはダメ!私は医者だからね!」

私はふんっと胸を張る。


こうして、私たちはスラムの一角にあるボロ屋を買い取り、

「スラム診療所」を開設することに決めた。


「……さて、場所は確保した。あとは道具と薬か。」

レオンが腕を組む。


「薬はどうすんだ? 高級薬なんて買えねぇぞ?」


「そこは、私の知識でなんとかする!」

私はニヤリと笑い、スラムの市場へと向かった——!



第17話:異世界の薬作り!?医者の知識を活かせ!


スラムの市場には、いろんな薬草や怪しげな薬が並んでいた。


「ふむふむ……これとこれを混ぜれば、消毒薬が作れそう……!」

私は真剣に材料を選ぶ。


元の世界で学んだ薬理学の知識を活かせば、

異世界の材料でも十分使える薬を作れるはず!


「あ、この葉っぱ! これ、抗菌作用あるやつだ!」


「お前、本当に医者だったのかよ……。」

リクが呆れた顔をする。


「じゃあ、こっちはどうだ?」

レオンが不思議な青い液体を持ってきた。


「それは……」

私は少し匂いを嗅いで、ペロッと舐めてみる。

「——ふむ! これは鎮痛作用がある!でも、

量を間違えると毒になる!」


「なぜ舐めた……?」


「知識だけじゃ分からないから!」


「いや、普通は試さねぇよ!?」

こうして、私はスラムの薬草や材料をかき集め、

独自の医療セットを作ることに成功した!


「よし、あとは診療所の準備だね!」

こうして、私たちの「スラム診療所」計画は、

順調に進んでいった——。


しかし——。

「……へぇ、面白ぇことやってんなぁ。」


その時、診療所の前に立つ“黒い影”があった。

スラムのボスが現れたのだ——!!



第18話:スラムのボス襲来!?診療所の危機!


ギィィ……

ボロ屋の扉がギシギシと音を立てて開く。


「お前が“スラムの医者”ってやつか?」

低く響く声。


そこに立っていたのは——

スラムを牛耳る大男だった。


黒いマントに、ギラリと光る短剣。

筋骨隆々の体に、鋭い目つき。


「お前……誰?」

私は思わず警戒する。


すると、大男はニヤリと笑った。

「俺は“バルド”だ。スラムの長ってやつさ。」


スラムの長——!?


リクが小声で囁く。

「ヤベぇぞ、新入り……。バルドってのは、

このスラムの裏社会を牛耳ってる男だ……!」


「つまり、スラムの“ボス”ってこと?」


「そういうことだ。」

レオンが低く呟く。


「で? 何の用?」

私は強気に尋ねる。


すると、バルドは大きく肩をすくめ、

「まぁ、お前に“警告”しに来たんだよ。」


「警告?」


「ああ。」

バルドはギラリと目を光らせ、こう言った。


「このスラムで勝手に“商売”を始めるなら、“俺の許可”が必要だ。」


「……!!」

つまり、診療所を開くなら“上納金”を払えってことか!?


「ふざけないで!」

私は即答した。


「私は、みんなを助けるためにここで診療所を開くの!

 金儲けのためじゃない!」


「そうかよ。」

バルドはニヤリと笑い——

ドゴォンッ!!

突然、診療所の壁に拳を叩きつけた。


「——ッ!?」

壁にヒビが入り、埃が舞う。


「俺はな、“筋を通さねぇ奴”が嫌いなんだよ。」

バルドの目が、鋭く光る。


「お前、ここで“診療所”をやるなら、俺に従え。

 さもなくば——消えるんだな。」


「……!!」

これは、診療所の存続をかけた戦いだ——!!



第19話:診療所 VS スラムのボス!賭けの勝負!?


バルドのプレッシャーに、リクが青ざめる。

「ヤベぇぞ、新入り……どうする!?」


「……考える。」

私は、ギリギリまで思考を巡らせた。


——戦えば、勝てる可能性は低い。

——でも、ここで引いたら、診療所は潰される。


「……じゃあ、勝負しよう。」


「……は?」

バルドが片眉を上げる。


「勝負だよ。もし私が勝ったら、この診療所はスラムで

正式に認めてもらう。」


「……ほぉ?」

バルドは興味深そうに顎を撫でた。


「で、俺が勝ったら?」


「……この診療所を撤退する。」


「……!」


リクが「おい、新入り!」と止めようとするが——私は決意していた。


「勝負の内容は?」


「……そうだね。」

私はニヤリと笑った。

「“命を救う”勝負なんてどう?」


バルドは少し驚いた後、ククッと笑った。

「面白ぇ……!」


こうして、スラム診療所の存続をかけた“勝負”が始まった——!!



第20話:診療所 VS スラムのボス!命を救え!


スラム診療所の存続をかけた勝負——。


その内容は、「命を救う対決」だった。


「ルールはこうだ。」

私はバルドを見上げながら、はっきりと言った。


「このスラムで、一番重傷の人を連れてきて。

 あなたが“助かるわけがない”と思う人をね。」


「……ほぉ?」

バルドは眉を上げた。


「その人を、私とあなたの方法で助ける。

 どちらの方法が本当に“命を救えるか”を比べるの。」


リクとレオンが驚いた顔をする。


「おい、新入り……マジでそんな勝負する気か?」


「うん。私は“医者”だからね。」

勝負に勝つには、私の強みを最大限に活かすしかない。


だから、この「命を救う勝負」なら、絶対に負けない自信があった。


「ククッ……面白ぇ。」

バルドは口元を歪めて笑う。

「いいだろう。その勝負、受けてやる。」


そして、彼は部下に命じた。

「“死にかけの奴”を連れてこい。」


数分後——。

ズルズル……!

ボロボロになった男が、ストレッチャーに乗せられて

運ばれてきた。


「うわっ……!」

私は思わず息をのむ。


男の全身には、深い刃物の傷と火傷の痕があった。

血は止まっておらず、呼吸もかすかにしか聞こえない。


「こいつは、昨日の戦闘で死にかけてる奴だ。

 帝国兵と戦って、ボロボロになったが……もう助からねぇ。」

バルドは腕を組み、不敵な笑みを浮かべる。


「さて、どうする? 俺は“スラムのやり方”でコイツを助けるが……

 お前は“医者のやり方”で助けられるのか?」


——来た! これなら、私が勝てる!!

私は、ギュッと拳を握りしめた。

「……もちろん!絶対に助ける!」


こうして——

スラムの医者 VS スラムのボスの「命を救う勝負」が始まった!



第21話:奇跡の治療!異世界医療の力!


「まずは……止血!!」

私は男の傷口に手を当てた。


すると——手のひらが、じんわりと光る。

「……来た! 治癒魔法!」

治癒魔法を使うと、男の傷口が少しずつふさがっていく。


しかし、魔法だけでは完全には治せない。

「ダメ……! これだけじゃ足りない!」

私は即座に自作の薬を取り出した。


「これは……俺が見たことのない薬だな。」

レオンが驚く。


「ふふん♪ これね、スラムの薬草を組み合わせて作った“消毒薬”!」

私は手際よく傷口を消毒し、薬を塗る。


「そして、この包帯で圧迫止血!」

ギュッと布を巻きつけると、出血がピタッと止まる。

「ふぅ……これで、ひとまず落ち着いた……!」


すると、バルドが低く笑った。

「なるほどな。お前の“医者のやり方”ってのは、

確かに凄ぇもんだ。」


「でしょ?」

私は得意げに笑う。


しかし——


ドガァァンッ!!

突然、壁がぶち破られた!!


「——!?」


煙の中から現れたのは……黒ずくめの男たち。

「おいおい……随分と楽しそうなことをやってるじゃねぇか。」


「こ、こいつらは……!!」

リクが青ざめる。


「“帝国の処理班”……!!」

——帝国の刺客が、スラムに襲来したのだ!!



第22話:スラム襲撃!帝国の刺客と対決!?


「ははは……見つけたぞ、“逃亡者”レオン。」

黒ずくめの男が、ニヤリと笑う。

「そして、お前だな。帝国の“魔法適性”を持つ猫人族……!」


「……!!」

背筋がゾワッとする。


帝国の連中は、私の魔法適性をすでに知っている……!?


「おいおい、待てよ。」

バルドが一歩前に出る。


「ここはスラムだぜ? 帝国の奴らが勝手に乗り込んでいい場所じゃねぇだろ?」


「黙れ、スラムのゴミ共が。」

男は冷たく言い放ち、剣を抜く。


「貴様らに選択肢はない。

 今すぐ、その猫人族を渡せ。さもなくば——」


「……さもなくば?」

バルドが、ニヤリと笑った。


「ぶっ飛ばされるってことか?」


「……なに?」

——ゴゴゴゴゴッ……!

バルドの巨体が、ゴキゴキと音を立てて膨れ上がる。


「おい、お前ら。」

バルドが部下たちを見渡す。


「俺はな、筋を通さねぇ奴が大っ嫌いなんだよ。」


そして——

バルドの拳が、帝国兵の顔面に炸裂した!!


ドゴォォォン!!!

「ぐわぁぁぁっ!?」

男が吹き飛び、壁に激突する!!


「チッ……スラムのゴミ風情が……!!」

帝国兵が剣を構える。


しかし、その瞬間——

「うおおおおおお!!」

スラムの住民たちが一斉に立ち上がった!!


「お前ら、診療所の恩を忘れたわけじゃねぇだろ!?」

バルドが叫ぶと、住民たちが次々と武器を構える。


「そうだ! こいつはスラムの“医者”だ!」

「俺たちは、こいつに助けられたんだ!」

「スラムの医者を、スラムの皆で守るんだ!!」


スラム VS 帝国の刺客——

決戦が、今、始まる!!



第23話:スラム VS 帝国の刺客!戦いの幕開け!


「帝国の処理班……だと?」

バルドが拳を鳴らしながら低く唸る。


「そうだ。」

黒ずくめの男が剣を構える。


「貴様らスラムのゴミ共に選択肢はない。

 おとなしく、その猫人族を差し出せ。」


——私を狙っている。

帝国は、私の“魔法適性”を知っているらしい。


つまり、私は「実験材料」として連れ去られる可能性がある。

……絶対に捕まるわけにはいかない!


「おい、帝国の犬ども。」

バルドがゆっくりと前に出る。


「ここは俺たちの縄張りだ。勝手に乗り込んでデカいツラしてんじゃねぇぞ。」


「ふん、スラムの長ごときが、何を偉そうに。」

黒ずくめの男は鼻で笑い、剣を振り上げる。


「ならば、力ずくで奪うまでだ!」

——バシュッ!!!

突然、男の剣が空気を切り裂く。


その瞬間——“影”がバルドに襲いかかった!!


「なっ……影が動いた!?」

私は驚いた。


黒ずくめの男の足元から、まるで生きているかのように影が広がり、

バルドの足元を絡め取る!


「“影縛り”か……チッ、厄介な能力を持ってやがる……!」

バルドが影に足を取られ、動きを封じられる。


「フフ……これでお前は終わりだ。」

黒ずくめの男がバルドに向かって剣を振り下ろした


——その時!

「ふざけるなぁぁぁぁぁっ!!!」

ドガァァァン!!

バルドが全身の筋力を爆発させ、影の束縛をぶち破った!


「テメェらごときが、この俺を止められると思うなぁぁぁ!!!」

バルドの拳が黒ずくめの男に炸裂する!!

ドガァァァン!!!


「ぐっ……!?」

男は吹き飛び、壁に叩きつけられた!


「よし! バルドがやったぞ!」

リクが叫ぶ。


「このまま一気に押し返すぞ!!!」

スラムの住人たちが、各々の武器を持って突撃を開始する!


「ちっ……!」

黒ずくめの男が起き上がると、後ろの部下たちに命じた。

「全員殺せ! そして、猫人族の少女は確保しろ!!」

——帝国とスラムの全面戦争が始まった!!!



第24話:スラムの戦い!猫耳少女、立ち上がる!


「くそっ、みんなやられちゃう……!」

スラムの住民たちは勇敢に戦っているが、

やはり相手は帝国の精鋭部隊。

次々と斬られ、倒れていく。


「このままじゃ……!」

私は歯を食いしばる。


私にできることは、戦うことじゃない。

でも——

“仲間を助ける”ことはできる!!


「みんな、負傷者を私のところに連れてきて!!」

私は急いで治療の準備を整えた。


「おい、あんた治療なんかしてる場合かよ!?」

リクが焦る。


「今やらなかったら、みんな死んじゃうでしょ!!」

私は即座に治療を開始した。


「大丈夫! 私がみんなを回復させる!」

手のひらから放たれる治癒魔法の光が、次々と仲間たちを癒していく。


「おお……! 体が軽くなった!」

「すげぇ! 本当に治った!!」

仲間たちが次々と回復し、再び戦場へ戻っていく。


「クソッ……! なんでこんな奴が猫人族に……!?」

帝国の兵士が焦る。


——でも、まだ足りない。

「もっと……もっと力があれば……!!」



その時——

私の中で、何かが弾けた。


——ドクン!!

身体の奥から、異常な熱が広がる。


「う……!? これ、なに!?」

視界が眩しくなり、全身が光に包まれる。


——ズドォォォン!!!


次の瞬間——

私の周りに、眩しいほどの金色の魔法陣が展開された。


「な、なんだ、この光は……!?」

リクやレオンが驚いている。


——“覚醒”したのだ。

「……これが……私の、本当の魔法……?」

全身が軽い。


まるで、今までとは違う何かが自分の中で開いたような感覚——。

その時、私は“異世界の特別な存在”になったのだと、確信した。



第25話:猫耳少女の覚醒!聖なる奇跡の力!


帝国兵たちが私を見て、怯え始める。


「お、おい……! なんだあの光……!?」

「猫人族の魔法じゃねぇ! これは……まるで……!」


そう、私の体から放たれる光は、ただの治癒魔法ではなかった。

「これは——聖なる力?」


そう呟いた瞬間、

私の手から放たれた光が、スラムの人々を一瞬で回復させた!


「すげぇ……! 傷が一瞬で治った!!」

「これ……まるで、神の奇跡……!?」

帝国兵たちの表情が青ざめる。


「くそっ……こんな奴、放っておけるか!!」

黒ずくめの男が剣を構え、私に向かって突進してくる。

「お前さえ捕まえれば——!!」


——ズドン!!!

しかし、次の瞬間——

バルドの拳が、男の腹に突き刺さった!!


「が……っ!!」


「テメェは俺に勝てねぇよ。」

バルドが低く呟くと、黒ずくめの男はそのまま倒れ込んだ。


帝国の刺客たちは、一瞬で戦意を失った。


「チッ……退くぞ!!」

帝国兵たちは撤退を開始し、スラムに静寂が戻る。


「……勝った……?」

私は、ようやく息をついた。


「お前……何者なんだ?」

バルドが驚きの表情で私を見つめる。


「私……ただの猫人族の医者、なんだけど。」

私は苦笑した。


でも、この日——私は正式に「スラムの救世主」

と呼ばれるようになったのだった。



第26話:スラム防衛戦!光と闇の激突!


——ズシャアァァァ!!!

帝国兵の剣が、空気を裂くように振り下ろされた。


「くそっ!」

バルドが咄嗟に身を引くが、剣の一撃で地面が大きくえぐれる。


土煙が舞い上がり、視界が一瞬真っ白になった。


——カランッ。

砂埃の中、転がる瓦礫の音が響く。


「ぐっ……チッ!」

バルドは腕で顔を覆いながら後退する。


「こいつら、ただの兵士じゃねぇぞ……!」

「当然だ。我々は“処理班”——“消す”ことを専門とする部隊だ。」

黒ずくめの男が、鋭い目を光らせながら剣を構えた。


「猫人族の少女、そして“帝国を裏切った男”……

お前たちは、ここで消える運命だ。」


——ドン!!!

黒ずくめの男が、一瞬で間合いを詰める。


「はや……!」

そのスピードに、私の心臓が跳ね上がる。


バルドが迎え撃とうと拳を振るうが——

ヒュンッ!


「っ!?」

バルドの拳が空を切る。


「遅い。」

黒ずくめの男は、すでにバルドの背後に回っていた。


——シュバッ!!

男の剣が、バルドの背中を切り裂く!


「ぐっ……!!!」

血が舞う。


「バルド!!」

私は叫んだ。


バルドが片膝をつく。

背中から血が流れ、地面を赤く染めていく。


「ふん、所詮はスラムのチンピラか。」

黒ずくめの男が冷たく呟く。


「この程度で、我々に勝てると思ったか?」


「チッ……」

バルドは歯を食いしばり、拳を握る。


「俺が……負けるわけねぇだろ……!」

再び立ち上がろうとするバルド。


でも、血が多すぎる——!

このままじゃ、戦えない!


「バルド、待って!」

私は駆け寄ろうとするが——


「させるか!」

——ギュンッ!!!

黒ずくめの男が、まるで影のように滑るような速さで

距離を詰めてくる。


「——しまっ……」

避ける時間がない。

男の剣が、私の喉元に迫る。


——死ぬ!?

そう思った瞬間——


「——そいつには指一本触れさせねぇ!!!」

ドガァァァァン!!!!

雷鳴のような衝撃音とともに、バルドの渾身の拳が男の

顔面に炸裂した!!


「ぐあっ……!?」

黒ずくめの男が吹き飛ぶ。


「バルド!!」


「ハッ……俺をナメるなよ……。」

バルドが、血まみれになりながらもニヤリと笑った。


「お前は……このスラムの長だもんな!」

私は胸が熱くなった。


でも、まだ終わりじゃない。

帝国兵はまだ何人もいる。

バルドも、リクも、レオンも戦っている。


私にできることは……?

戦う力はない。


でも——

「私は“治す”ことで戦う!!!」

私は治癒魔法を発動し、負傷者を次々と回復させた。


「ぐっ……!?」

「おおおおっ! 体が軽くなった!!」

「まだ戦えるぞ!!!」

回復したスラムの戦士たちが、次々と立ち上がる。


「馬鹿な……猫人族の小娘が、ここまで……!」

帝国兵たちが焦りを見せる。


「くそっ……なら、直接仕留めるまで!」

黒ずくめの男が、再び剣を構えた。


そして——


——ドクン。

身体の奥から、異常な熱が広がる。


「……っ!?」

全身が金色の光に包まれた。


「な、なんだ、この光は……!!」

帝国兵たちが後ずさる。


視界が一瞬、まぶしい光で満たされ——

——ズドォォォン!!!!

まるで“神の奇跡”のような閃光が、スラム全体を包み込んだ!!



第27話:聖なる奇跡!猫耳少女の覚醒!


——金色の魔法陣が、地面いっぱいに広がる。


「こ、これは……!!?」

帝国兵たちが動揺する。


「まさか……“聖なる魔法”……!?」


聖なる魔法——。

それは、帝国の中でも王族や神官だけが使えるとされる特別な力。


でも、私は猫人族。

それなのに、なぜ……?

「……もしかして、私……?」

私は自分の両手を見つめる。


——私は、普通の猫人族じゃない。

 転生してきた時から、何かが違う。

 だから、この“奇跡の力”を持っているのかもしれない——!


「……っ!」

私は覚悟を決め、全身に力を込めた。


「——“聖なる癒し”!!」

光が、スラム全体に広がっていく。


「ぐおおおおっ!?」


「体が……回復していく……!!」

スラムの人々の傷が、みるみるうちに癒えていく。


「くそっ……こいつ、何者だ……!!?」

帝国兵たちが震える。


そして——

「このまま押し返せぇぇぇ!!!」

バルドの雄叫びが響き渡る。


スラムの住人たちが一斉に反撃を開始した!

「チッ……引くぞ!!」

黒ずくめの男が叫ぶ。


「このままじゃ勝ち目はない!!」

「お前のことは……必ず回収する……!!」

そう言い残し、帝国兵たちは撤退していった。


「……勝った……?」

私は、ようやく息をつく。


「お前、マジで……何者なんだ?」

バルドが息を切らしながら、私を見つめた。


私は、自分の手を握りしめ——

「私は、スラムの医者だよ!」

ニッと笑った。


この日——私は正式に「スラムの救世主」と呼ばれるようになった。



第28話:スラムの新たな未来!そして旅立ちへ——!


◆スラム防衛戦——終結。


帝国の処理班は撤退し、スラムの住人たちが勝利の雄叫びを上げた。


「やったぁぁぁぁ!!!」

「俺たちが勝ったんだ!!」

「バルドの兄貴が帝国兵をぶっ飛ばしたぞ!!」


歓声があちこちで沸き上がる。


傷を負った者もいるが、私の治癒魔法でほとんどの負傷者は回復した。


私は、ぼんやりとスラムの街を見渡した。


——壊れた家。

——焼け焦げた道。

——傷ついた仲間たち。


戦いは終わったけれど、スラムはまだ傷ついたままだ。


「……ここからが、本当の勝負だね。」

私はギュッと拳を握る。


私の戦いは、これで終わりじゃない。

 スラムの未来を作るのは、これからなんだ——!



◆スラムに訪れた変化


戦いから数日が経った。


「おい、新入り!」

私が診療所で薬を調合していると、リクが元気よく駆け込んできた。


「どうしたの?」


「すっげぇことになってるぞ!」


「すっげぇこと?」

私は首をかしげながら、診療所の外に出た。


すると——

「——えっ!?」

私は目を見開いた。


スラムの街が、少しずつ“変わり始めて”いたのだ。


「みんなで協力して、家を修理してるの?」


「ああ。戦いが終わってから、スラムのみんなが動き始めたんだ。」

リクが誇らしげに言う。


「お前の診療所ができてから、スラムのみんなの意識が

変わったんだよ。」


「……!」

私は、胸が熱くなるのを感じた。


ほんの少し前まで、このスラムはただの“生き延びるだけの

場所”だった。


でも、今は違う。

“未来を作ろう”とする意思が、生まれ始めている。

私は、このスラムを変えることができたんだ——!



◆「スラムの長」と「スラムの医者」


「——それにしても、お前……すげぇ奴だな。」

夕暮れ時、診療所の前でバルドが低く笑った。


「まさか、スラムのチビ猫が帝国の兵をぶっ飛ばすとはな。」


「ぶっ飛ばしたのはバルドでしょ!」

私は思わず笑う。


「でも……私がここに来たときは、こんなふうになるなんて

思わなかった。」


「それが“運命”ってやつなんじゃねぇの?」

バルドがニヤリと笑う。


「お前がいなかったら、このスラムは終わってた。

 つまり、お前がここに来たのは“意味のあること

”だったってわけだ。」


「……そう、かもね。」

私はしみじみと頷いた。


バルドは大きく伸びをすると、私の頭をポンと叩いた。

「これからもスラムを頼むぜ、“スラムの医者”さんよ。」


「もう! 子ども扱いしないで!」

私はムッとしたが、どこか嬉しかった。



◆新たな旅立ち——!


戦いが終わって数日後。

「お前……ここを離れるのか?」

バルドが腕を組みながら私を見下ろす。


「うん。」

私は、しっかりと頷いた。


「このスラムは、もう大丈夫だと思う。

 だったら、今度は“もっと広い世界”を見てみたい。」

私の治癒魔法は、ここで終わらせるべきじゃない。


この世界には、まだまだ助けを必要としている人たちが

いるはずだ。


だったら——私は、もっと遠くへ行って、もっとたくさんの

命を救いたい!


「それに……」

私は、ぎゅっと拳を握る。


「帝国の陰謀も、このまま放っておけない。」

帝国が猫人族を“実験材料”にしようとしていること。

私は、それを止める方法を探したい。


「フッ……相変わらず無茶しやがるな。」

バルドが鼻で笑う。


「まぁいい。お前がどこに行こうが、お前はもう

“スラムの英雄”だ。」


「英雄って……やめてよ、恥ずかしい。」


「ははっ、もう遅ぇよ。」

バルドは豪快に笑うと、私の頭をグシャグシャとかき回した。


「お前がまたここに帰ってくる時には、スラムはもっと

良くなってるぜ。」


「……うん!」

私は笑顔で頷いた。



◆そして、新たな仲間と共に!


「お前、旅に出るなら俺も連れてけよ。」

リクが腕を組んで言った。


「えっ!?」


「何驚いてんだよ!?」

「だって、リクはスラムに残るかと思ったのに……。」


「バーカ! お前を一人で行かせたら、絶対危なっかしいだろ?」

リクはフンッと鼻を鳴らす。


「俺も、お前と一緒に行く。文句あるか?」


「……あるわけないでしょ!」

私は満面の笑みを浮かべた。


そして——


「……俺も、行くぞ。」

低い声が響いた。


振り向くと、レオンが壁にもたれかかっている。


「お前は、まだまだ“この世界”のことを知らなすぎる。

 俺が少しは教えてやる。」


「レオンも……!」

こうして、私は最高の仲間たちと共に、新たな旅へと

出発することになった!



エピローグ:スラムに刻まれた伝説


——それから数年後。


スラムは、かつての荒れ果てた街ではなくなっていた。


バルドの元で、スラムは少しずつ発展し、診療所も拡大。

ここは、単なる“底辺の街”ではなくなりつつあった。


人々は、こう語り継ぐ。


「かつて、このスラムを救った“猫耳の医者”がいた。」

そして、その少女は、**さらなる運命の戦いへと

向かっていった——。



次章予告!

次回、「異世界医療の革命!王都へ向かえ!」

新たな旅の先で、猫耳少女は王都の“貴族社会”に挑むことに!?

次なる舞台は、帝国の中心・王都!



ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます!


「異世界転生×医療×成り上がり」——

そんなテーマで始まったこの物語。


最初はただの猫耳少女だった主人公が、

スラムの底辺から這い上がり、

やがて世界を動かす存在へと成長していく——

そんな熱いストーリーを描きたいと思って書きました。


スラム編では、

「異世界の過酷な現実」「貧困と差別」

「それでも生き抜こうとする人々の強さ」

などをテーマにしました。


最初は弱々しかった主人公が、仲間を得て、

知識と魔法を活かしながら成長していく過程を書いていて、

自分でもとてもワクワクしました!


そして、スラムを救い、帝国の陰謀に立ち向かうことを

決意した主人公。

ここから舞台は一気に広がり、「王都編」がスタートします!


王都編では、

「貴族社会の闇」「医療と政治の駆け引き」「

異世界の医学革命」をテーマに、さらにスリリングな

展開を描いていきます!

スラムでは生きるために必死だった主人公が、

今度は「世界を変える戦い」へと足を踏み入れることになります。


また、新たな仲間や敵、貴族たちの陰謀、そして主人公の

「未知なる力の覚醒」も絡んできて、物語はますますスケールアップ!

「異世界×医療×冒険」ならではのワクワクする展開を、

これからもどんどん詰め込んでいきます!


読んでくださった皆さんに楽しんでいただけたら、

とても嬉しいです!


これからも「猫耳少女の異世界医療革命!」を、

どうぞよろしくお願いします!!


——次なる冒険は、王都で待っている!!

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